小児科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:25

新たなRSウイルスワクチン、高齢者と乳児の双方で効果を発揮

 ファイザー社が開発したRS(呼吸器合胞体)ウイルスワクチンは、高齢者と乳児の双方でRSウイルス感染症を安全かつ効果的に予防するという2件の臨床試験の結果が報告された。ファイザー社は、同ワクチンの高齢者に対する接種が5月までに、妊婦に対する接種が8月までに米食品医薬品(FDA)により承認されるものと見ている。これらの臨床試験の結果は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に4月5日掲載された。  RSウイルスに感染しても、通常は風邪様の症状が現れる程度だ。しかし米国では、1歳未満の子どもの気管支炎と肺炎の最も一般的な原因ウイルスがRSウイルスである。また、このウイルスは高齢者、特に健康状態が不良な人にリスクをもたらす。米疾病対策センター(CDC)によると、毎年、5万8,000〜8万人の5歳未満の子ども、および6万〜16万人の高齢者がRSウイルス感染症で入院し、さらに6,000〜1万人の高齢者が同感染症により死亡しているという。

リチウム濃度の高い水道水を摂取した母親の子どもは自閉症リスクが高い

 リチウム含有量が多い地域の水道水を摂取していた妊婦では、含有量が少ない地域の水道水を摂取していた妊婦と比べて、子どもが自閉症(ASD)になる確率が高いとする研究結果が報告された。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)David Geffen School of Medicine神経学教授のBeate Ritz氏らが実施したこの研究は、「JAMA Pediatrics」に4月3日掲載された。  リチウムはアルカリ金属元素に分類される元素で、地殻内部に広範に分布している。リチウムには精神安定作用があることから、うつ病や双極性障害の治療に用いられることもある。しかし、妊娠中の女性に対する使用については、流産や子どもに先天性の異常が生じるリスクが否定できないことから、統一見解が得られていない。

ペットは子どもの食物アレルギーのリスクを低下させる?

 ペットを飼うことで、子どもの呼吸器アレルギーの発症リスクが低下し得ることは研究で示されているが、食物アレルギーのリスクも低下する可能性があるようだ。日本の研究で、犬を飼っている家の子どもでは、卵、牛乳、ナッツ類に対して、猫を飼っている家の子どもでは、卵、小麦、大豆に対してアレルギーを発症しにくいことが明らかになった。福島県立医科大学医学部小児科学講座の岡部永生氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS ONE」に3月29日掲載された。  この研究では、環境省が実施している「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータから抽出した6万6,215人のデータの解析が行われた。これらの子どもの21.6%(1万4,306人)には、胎児期のペット(室内飼い・外飼いの犬、猫、ハムスター、亀、鳥)への曝露歴があった。また、10.5%(6,933人)は幼児期初期に室内で犬を、7.7%(5,092人)は猫を飼っていた。

少しの体重増加でも子どもの高血圧リスクが上昇

 子どもの場合、体重が平均を少し上回ったくらいでも高血圧のリスクが上昇する可能性が、米国から報告された。論文の筆頭著者である、米カイザーパーマネンテ南カリフォルニア病院のCorinna Koebnick氏は、「小児期の高血圧は成人期に引き継がれることがあり、心臓や血管にダメージを起こし得る。それによって生じた臓器障害は元の状態に戻すことが難しいため、子どもの高血圧の予防が非常に重要だ」と話している。この研究の詳細は「JAMA Network Open」に3月14日掲載された。

第5回AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会の開催について【ご案内】

 一般社団法人AYAがんの医療と支援のあり方研究会は、5月13~14日に『第5回 AYAがんの医療と支援のあり方研究会学術集会』を開催する。今回は、「Co-Creation ―対話からはじめる共創―」とし、長期的健康管理や身体活動性の維持、新規就労など社会とのつながりにおける課題、AYA世代と家族、終末期医療などAYA世代のがん医療を取り巻く多様な課題について取り上げる。大会長の渡邊 知映氏(昭和大学 保健医療学部)は、「この学術集会を通して、当事者と家族・医療者・支援者それぞれが向き合いながら、ときには立場を超えた対話をすることに挑戦したい」としている。  本研究会は、思春期・若年成人(Adolescent and Young Adult,:AYA)のがん領域の学術活動、教育活動、社会啓発および人材育成などを行うことにより、わが国の思春期・若年成人がん領域における医療と支援の向上に寄与することを目的としている。

乳児期アトピーの“早期治療介入”、鶏卵アレルギーの発症予防に/国立成育医療研究センター

 国立成育医療研究センターの大矢幸弘氏らの研究グループは、2023年4月10日のプレスリリースで、食物アレルギーの発症リスクが高い、乳児期早期発症のアトピー性皮膚炎の乳児に対する早期の積極的治療が食物アレルギーの発症を予防することを世界で初めて実証したと発表した。  大矢氏らは、食物アレルギー予防のためにアトピー性皮膚炎の乳児に対して早期に治療を行う臨床研究「アトピー性皮膚炎への早期介入による食物アレルギー発症予防研究/多施設共同評価者盲検ランダム化介入平行群間比較試験:PACI(パッチー) Study(スタディ)」を実施し、研究対象となるアトピー性皮膚炎の生後7週~13週の乳児を、標準的な治療を行う群と、ステロイド外用薬などを使った積極的な治療を行う群に分け、生後28 週時点で鶏卵アレルギーがあるかどうかを調べた。

妊婦への2価RSVワクチン、乳児の重症下気道感染を予防/NEJM

 妊婦への2価RSV融合前F蛋白ベース(RSVpreF)ワクチン投与は、乳児において診察を要する重症の呼吸器合胞体ウイルス(RSV)関連下気道感染症に対し予防効果があり、安全性への懸念は示されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のBeate Kampmann氏らが、約7,400例の妊婦とその出生児を対象に行った第III相二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。これまで、同ワクチンの妊婦への投与の効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年4月5日号掲載の報告。

BA.4/5対応2価ワクチン、初回接種での使用を申請/ファイザー

 ファイザーとビオンテックは4月11日付のプレスリリースにて、同社の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2価ワクチン「コミナティRTU筋注(起源株/オミクロン株BA.4-5)」について、生後6ヵ月~4歳における初回免疫と追加免疫、および5歳以上における初回免疫での使用を可能とするための承認事項の一部変更を厚生労働省に申請したことを発表した。  本剤は現在、国内において5歳以上の追加免疫での使用のみ承認されている。なお、米国においては、5歳以上の追加免疫での使用に加え、2022年12月8日に生後6ヵ月~4歳における初回免疫の3回目としての使用が、2023年3月15日には同年齢層における1回の追加免疫(初回免疫を1価ワクチンで3回接種完了した者が対象)が米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。

子どものメンタルヘルス問題、原因の一部は親の過干渉?

 米国では抑うつや不安などのメンタルヘルスの問題に苦しむ子どもが少なくない。そうした状況を生み出している原因の一部は、親の過干渉から子どもたちだけで遊ぶ機会が減っていることに求められることが、新たな研究で示唆された。米フロリダ・アトランティック大学心理学部教授のDavid Bjorklund氏らによるこの研究の詳細は、「The Journal of Pediatrics」に2月23日掲載された。  Bjorklund氏は、「子どもの自立性の低下と増大するメンタルヘルスの問題は、一般に、最近生じたものと考えられている。しかし、実際には、何十年も前から徐々に大きくなり続けている問題だ」と話す。同氏によると、こうした問題の萌芽は1960年代に見られ、1980年代に加速度的に大きくなったという。上空を旋回して子どもを常に監視し、何かあればすぐに飛んでくるヘリコプターに親を例えた「ヘリコプターペアレント」という言葉が生まれたのもこの頃である。

5歳未満のコロナワクチン、地域の流行状況と有効性のバランスを鑑みて(解説:田中希宇人氏/山口佳寿博氏)

生後6ヵ月~4歳児に対するファイザー製コロナワクチン「BNT162b2」3回接種の安全性と有効性がNEJM誌に示されたので、現状と照らし合わせて検討してみたい。現在日本では、6ヵ月~4歳児に対するコロナワクチンは、この論文で示されている12歳以上の1/10量であるBNT162b2ワクチン3μgを3週間間隔で2回、その後8週間以上空けて3回目接種が可能となっている(厚生労働省「生後6か月~4歳の子どもへの接種(乳幼児接種)についてのお知らせ」)。