放射線科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:12

乳房温存術後の早期乳がん患者に対して加速乳房部分照射(APBI)は勧められるか?-RAPID試験の結果から(解説:岩瀬俊明氏)-1182

加速乳房部分照射(Accelerated Partial Breast Irradiation:APBI)とは、乳房温存術後の乳房内再発の約70%以上の症例が切除後の腫瘍床周囲から発生することから、全乳房照射(Whole Breast Irradiation:WBI)の代わりに腫瘍床のみに部分照射を行う方法である。メリットとしては1.線量を増加して短期間に照射を終えられる2.照射野を縮小することで有害事象を軽減できる3.短期間の治療により治療費を軽減できる(小線源治療を除く)

小児がんサバイバー、心臓放射線照射減少でCADリスク減/BMJ

 小児がんの成人サバイバーでは、心臓放射線照射への曝露の歴史的な減少により、冠動脈疾患のリスクの低減がもたらされたことが、米国・セントジュード小児研究病院のDaniel A. Mulrooney氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2020年1月15日号に掲載された。小児がんの成人サバイバーは過去の治療に関連した合併症を有し、心筋症、心臓不整脈、冠動脈や弁膜、心膜の疾患などの心血管疾患は、晩期の健康アウトカム負担の主要な寄与因子とされる。一方、心毒性を有する治療への曝露パターンは時代とともに変化しており、現在のがん治療プロトコールは治癒率の改善に重点を置きつつ、長期的な有害作用の最小化に注力しているという。

乳房温存手術後の同側再発の抑制に、加速乳房部分照射は有効か/Lancet

 乳房温存手術後の放射線療法において、温存乳房内再発(IBTR)の予防に関して、加速乳房部分照射(APBI)の全乳房照射(WBI)に対する非劣性が示された。ただし、APBIでは急性毒性の発現は少ないものの、中等度の晩期有害事象の増加と整容性不良が認められた。カナダ・マックマスター大学およびJuravinski Cancer CenterのTimothy J. Whelan氏らが、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドのがんセンター33施設で実施した多施設共同無作為化非劣性試験「RAPID試験」の結果を報告した。WBIは、整容性が良好で局所再発を低下させるものの、乳房温存手術後3~5週間にわたり1日1回照射が必要であることから、より簡便な方法として腫瘍床に1週間照射するAPBIが開発された。Lancet誌2019年12月14日号掲載の報告。

転移性脊髄圧迫への放射線療法、単回照射vs.分割照射/JAMA

 固形がん患者のがん転移に伴う脊柱管圧迫に対する放射線療法において、単回照射は5日間分割照射と比較し、主要評価項目である8週時の歩行に関して非劣性基準を満たさなかった。ただし、信頼区間の下限が非劣性マージンと重なっており、単回照射の臨床的重要性の解釈には留意すべき点もあることが示された。英国・Mount Vernon Cancer CentreのPeter J. Hoskin氏らが、多施設共同非劣性無作為化臨床試験「The single-fraction radiotherapy compared to multifraction radiotherapy trial:SCORAD試験」の結果を報告した。がんの骨転移等による脊髄圧迫は、可動性の維持や痛みの軽減のため放射線療法で管理されるが、これまで標準照射レジメンはなかった。JAMA誌2019年12月3日号掲載の報告。

高濃度乳房女性にはMRI検査の追加が有用/NEJM

 きわめて高濃度乳房でマンモグラフィ検査が正常の女性において、MRIスクリーニングの追加はマンモグラフィ検査単独と比較し、2年間のスクリーニング中の中間期がんの診断件数が有意に減少することが、オランダ・ユトレヒト大学のMarije F. Bakker氏らによる多施設共同無作為化比較試験「Dense Tissue and Early Breast Neoplasm Screening trial:DENSE試験」の結果、示された。高濃度乳房は乳がんのリスク因子であるが、マンモグラフィ検査によるがん検出には限界があり、高濃度乳房の女性における早期発見率の改善と中間期乳がん減少のためのMRI追加に関するデータが必要とされていた。NEJM誌2019年11月28日号掲載の報告。

局所進行NSCLCのCRT、10年でどこまでcure?(WJTOG0105)/ESMO2019

 WJTOG0105は、切除不能Stage III非小細胞肺がん(NSCLC)における、胸部放射線治療(TRT)の併用化学療法として、第3世代レジメン(イリノテカン+カルボプラチン、パクリタキセル+カルボプラチン)と第2世代レジメン(マイトマイシン+ビンデシン+シスプラチン)を比較した第III相試験である。この試験の結果、第3世代レジメンによるCRTは切除不能Stage III NSCLCの標準治療の1つとして確立された。しかし、CRTによる累積毒性と長期生存はまだ明らかになっていない。国立がん研究センター東病院の善家 義孝氏は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)において、わが国のStage III NSCLCにおけるCRTの生存と毒性の10年間追跡調査の結果を報告した。

低線量CT肺がんスクリーニング、毎年と隔年の比較/Eur J Cancer

 2011年、米国のNLST試験では、低線量CT(LDCT)スクリーニングによる前/現喫煙者における肺がん死亡率の低下が示された。また、イタリアのMulticentric Italian Lung Detection(MILD)試験では、長期のLDCTスクリーニングが、肺がん死亡率を39%減少させることを示している。イタリア・Istituto Nazionale Dei TumoriのPastorino氏らは、MILD試験をさらに毎年と隔年のスクリーニングに分け、スクリーニング強度が10年後の全死亡および肺がん特異的死亡にもたらす影響を評価した。European Journal of Cancer誌2019年9月号掲載の報告。

非難されても致し方がない偏った論文(解説:野間重孝氏)-1081

今回の論文評では少々極端な意見を申し述べると思うので、もし私の思い違い・読み違いだったとしたら、ご意見を賜りたくお願いしてから本題に入らせていただく。本研究は虚血性心筋障害が疑われる患者に対して高感度トロポニンT/Iが心筋梗塞の正確な診断に利用されうるだけでなく、その予後情報としても利用できることを示そうと行われた研究である。具体的には救急外来受診時すぐに採血された値とその後一定時間をおいてから採血された2回目の採血結果を比較し、初回値だけをみるのではなく、2回目の数値を採血の間隔とも統合してみることにより、より正確な診断のみでなく、その後の心血管イベントの発生リスクまでも予測できるとしたものである。

前立腺がんに対する重粒子線治療の有益性に関するエビデンス/Lancet Oncol

 前立腺がんに対する重粒子(炭素イオン)線治療の有益性に関するエビデンスが日本発で発信された。量子科学技術研究開発機構(NIRS)のOsama Mohamad氏らによる検討の結果、限局性前立腺がんに対する重粒子線治療は、光子線治療よりも2次がんリスクが低いと思われる所見が示されたという。これまでに、絶対数は少ないが光子線治療は手術を受けた患者よりも2次がんリスクが高いことが示されていた。重粒子線治療は、理論的には光子線治療よりも2次がんの誘発リスクは低いが、世界的にオファーが少なく、入手できるデータも1994年以降のものと限定的であり臨床研究が進んでいなかった。著者は「結果の裏付けには長期に追跡した前向き評価が必要であるが、今回示されたデータは、通常治療後の全生存期間(OS)が長期と予想される患者、反対に不良なアウトカムを有する患者に対し、広く重粒子線治療を適用することを支持するものである」と述べている。Lancet Oncology誌2019年5月号掲載の報告。

前立腺がんへの超寡分割照射vs.標準照射(解説:宮嶋哲氏)-1073

Scandinavian HYPO-RT-PC試験は転移のない前立腺がんを対象に、標準照射と比較し、超寡分割照射の非劣性を検討することを目的とした第III相無作為ランダム化比較臨床試験である。本試験はスウェーデンとデンマークの12施設において、2005年からの10年にわたって施行された。リンパ節転移ならびに遠隔転移のない75歳以下の中〜高リスク前立腺がん患者1,200例を対象に、原発巣である前立腺への放射線照射が無病生存率に寄与するのか検討を行っている。本試験では、標準照射群(591例)、または超寡分割照射群(589例)の2群にランダム化している。標準放射線照射群は連日照射を8週間施行し(78Gy/39Fr)、超寡分割照射群は2.5週7回の照射を施行するプロトコル(42.7Gy/7Fr)であった。