医療一般|page:43

日本発の論文数は横ばい、博士課程への進学者は微増/文科省

 文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の科学技術予測・政策基盤調査研究センターが毎年発行している『科学技術指標2024』が公開された。  この指標は、わが国の科学技術活動を客観的・定量的データに基づき、体系的に把握するための基礎資料であり、科学技術活動を「研究開発費」、「研究開発人材」、「高等教育と科学技術人材」、「研究開発のアウトプット」、「科学技術とイノベーション」の5つのカテゴリーに分類、約160の指標で状況を表している。  2024年版の主要な指標では、産学官を合わせた研究開発費、研究者数は主要国(日米独仏英中韓の7ヵ国)中第3位、論文数(分数カウント法)は世界第5位だった。注目度の高い論文を見るとTOP10%・TOP1%補正論文数で第13位・第12位であり、いずれについても昨年と同順位だった。また、博士課程入学者数は長期的に減少していたが、2023年度に対前年度比4.4%増加した。

加糖飲料とうつ病リスク〜前向きコホート研究

 加糖飲料とうつ病リスクの遺伝的素因との関連性は、いまだ明らかとなっていない。中国・天津医科大学のYanchun Chen氏らは、加糖飲料、人工甘味飲料、天然ジュースとうつ病との関連を調査し、これらの関連が遺伝的素因により変化するかを評価した。General Psychiatry誌2024年7月17日号の報告。  ベースライン時のうつ病でない39〜72歳の一般集団18万599人を英国バイオバンクのデータより抽出した。加糖飲料、人工甘味飲料、天然ジュースの摂取量は、2009〜12年の24時間思い出し法(24-hour dietary recall)より収集した。うつ病の多遺伝子リスクスコアを推定し、低リスク(最低三分位)、中リスク(中間三分位)、高リスク(最高三分位)に分類した。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、Cox比例ハザードモデルおよびsubstitutionモデルを用いた。

母親の1型糖尿病は子どもの1型糖尿病罹患に対して保護的に働く

 母親が妊娠以前から1型糖尿病(T1DM)である場合にその子どもがT1DMを発症する確率は、父親がT1DMである場合に比べて相対的に低い可能性のあることが分かった。これは遺伝的な理由によるものではなく、胎児が子宮内で母親のT1DMの環境に曝露されることにより生じる違いと考えられるという。英カーディフ大学のLowri Allen氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表する。  T1DMは、免疫系が膵臓のインスリン産生細胞を標的として攻撃する自己免疫疾患で、それらの細胞が破壊されてしまうと、生存のためのインスリン療法が必須となる。Allen氏によると、「T1DMの家族歴がある人は、自己免疫疾患を発症する確率が8~15倍高い」という。また同氏は、「これまでの研究では、T1DMの場合、母親ではなく父親が罹患しているケースで、子どもの罹患リスクが高くなることが示されている。われわれはこのような関係をより詳しく理解したかった」と研究背景を述べている。

診断のための標的ボトックス注射が片頭痛のトリガー部位を特定する可能性

 診断のための標的ボトックス注射は片頭痛のトリガー部位の特定に、高い陽性適中率を示すという研究結果が、「Plastic and Reconstructive Surgery」5月号に掲載された。  マギル大学保健センター(カナダ)のHassan ElHawary氏らは、片頭痛のトリガー部位を特定するためにボトックス注射を受け、その後に罹患末梢神経の神経減圧術を受けた患者40人について感度解析を実施し、ボトックスの診断能について検討した。  解析の結果、ボトックス注射が成功した患者(注射後に片頭痛指数のスコアが50%以上改善した患者と定義)は、神経減圧術後の片頭痛の強度、頻度、片頭痛指数の平均減少率が有意に高かった。片頭痛の診断法としてのボトックス注射の使用は、感度解析で感度が56.7%、特異度が80.0%であった。陽性適中率は89.5%、陰性適中率は38.1%であった。

自己免疫疾患を有するがん患者、ICIによるirAEリスクは?

 自己免疫疾患を有するがん患者では、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与によって免疫関連有害事象(irAE)が発現する割合は高いものの、これらは軽度で管理可能であり、がんへの反応性には影響がなかったことを、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMaria A. Lopez-Olivo氏らが明らかにした。European Journal of Cancer誌2024年8月号掲載の報告。  自己免疫疾患を有するがん患者は、ICIのランダム化比較試験から除外されていることが多い。そこで研究グループは、自己免疫疾患の既往があり、ICIを投与されたがん患者を含む観察試験と非対照試験のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施し、irAEの新規発現、自己免疫疾患の再燃、irAEによる入院・死亡などを調査した。

尋常性乾癬へのグセルクマブ、投与間隔を16週ごとに延長可能か

 インターロイキン(IL)-23のp19サブユニットに結合し、IL-23の活性を阻害するグセルクマブを用いた尋常性乾癬の維持療法について、16週ごと投与は8週ごと投与に対して非劣性であることが、ドイツ・フライブルク大学のKilian Eyerich氏らによる海外第IIIb相二重盲検無作為化比較試験「GUIDE試験」で示された。慢性の炎症性皮膚疾患である乾癬には、個別化治療およびde-escalation治療戦略に関するアンメットニーズが存在する。試験結果を踏まえて著者は、「今回の試験は、2回の連続した診察時(20週時および28週時)に皮膚症状が完全に消失した患者において、グセルクマブの投与間隔を延長しても疾患活動性をコントロール可能であるとのエビデンスを示した初の無作為化比較試験となった」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2024年7月31日号掲載の報告。

日本における低気圧誘発性頭痛に関する性差

 片頭痛は、女性に多い疾患である。低気圧は、頭痛発症の因子であるが、性別により違いがあるかは確認されていない。慶應義塾大学のTakuma Fujimoto氏らは、低気圧誘発性頭痛の性差について、調査を行った。BMC Research Notes誌2024年7月23日号の報告。  対象は、調査会社(マクロミル)のWebパネルよりランダムに抽出された20〜49歳の慢性片頭痛および緊張型頭痛患者。対象患者は、Webベースの自己記入式アンケートに回答した。目標変数をHeadache Impact Test-6(HIT-6)の高スコア(56以上)または低気圧誘発性頭痛とし、ロジスティック回帰分析を行った。  主な結果は以下のとおり。

高齢者への低用量アスピリン、中止すると…?

 心血管疾患(CVD)を有さない高齢者において、低用量アスピリンはCVDリスクを低下させず、全死亡や大出血のリスクを上昇させたことが報告されているが1,2)、すでに多くの高齢者に低用量アスピリンが投与されている。そこで、オーストラリア・モナシュ大学のZhen Zhou氏らは、アスピリン中止の安全性を明らかにすることを目的として、CVDを有さない高齢者において、低用量アスピリン中止がCVDリスクに与える影響を検討した。その結果、低用量アスピリン中止はCVDリスクを上昇させず、大出血リスクを低下させることが示された。本研究結果は、BMC Medicine誌2024年7月29日号に掲載された。

マクロライドとキノロンを組み合わせたmacrolones、耐性菌に有望か

 2方向から同時に細菌を攻撃する抗菌薬が、薬剤耐性菌と闘うための解決策になるかもしれない。互いに異なる標的に作用する2種類の抗菌薬を組み合わせたmacrolonesと呼ばれる合成抗菌薬が、細菌のタンパク質合成の阻害とDNA複製の阻害という2つの異なる方法で細菌の細胞機能を破壊することが示された。米イリノイ大学シカゴ校(UIC)生物分子科学および薬学分野のAlexander Mankin氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Chemical Biology」に7月22日掲載された。  Macrolonesは、広く使われている2種類の抗菌薬であるマクロライド系抗菌薬とフルオロキノロン系抗菌薬を組み合わせたものである。エリスロマイシンのようなマクロライド系抗菌薬は、細菌の細胞内にあるリボソームでのタンパク質合成を阻害し、シプロフロキサシンのようなフルオロキノロン系抗菌薬は、細菌がDNAを複製する際に必要とする酵素(DNAジャイレース、トポイソメラーゼIV)を標的にする。

血液検査で多様な疾患の発症を予測可能か

 たった一滴の血液により何十もの疾患の発症を予測できるかもしれない。新たな研究で、血液中のタンパク質の「シグネチャー」を分析することで、血液がん、神経変性疾患、肺疾患、心不全を含む67種類の疾患を予測できる可能性が示された。英ロンドン大学クイーン・メアリー校、プレシジョンヘルスケア大学研究所のJulia Carrasco-Zanini氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Medicine」に7月22日掲載された。  この研究は、UKバイオバンク製薬プロテオミクスプロジェクト(UK Biobank Pharma Proteomics Project;UKB-PPP)からランダムに選び出した4万1,931人の2,923種類に及ぶ血漿タンパク質のデータを用いたもの。Carrasco-Zanini氏らは、これらの血漿タンパク質のデータを対象者の電子カルテと関連付け、10年間での218種類の疾患の発症を予測する予測モデルを作成した。その上で、基本的な臨床情報のみを用いたモデル、あるいは基本的な臨床情報に37種類の臨床アッセイデータを組み合わせたモデルとこのモデルの疾患予測能を比較した。

肺がん患者、肥満でICIの効果が減少する可能性

 がんと肥満を併存している患者は正常体重の患者に比べて予後が不良であるとされているが、一部のデータでは体格指数(BMI)が高い場合のほうが、治療後の全生存率がより良好であるとの報告もあり、これは「肥満パラドックス」とされている。大阪公立大学・井原 康貴氏らは、進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象に、BMIが免疫療法または化学療法後の全生存率(OS率)に関連するかを調査した。JAMA Network Open誌2024年8月1日号掲載の報告。  研究チームは2015年12月1日~2023年1月31日、日本の急性期病院のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施した。参加者は新規診断を受けた成人の進行NSCLC患者であり、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療または従来の化学療法を受けた。分子標的薬(TKI)治療や化学放射線療法を受けた患者は除外された。主要評価項目はOS率、解析は初回治療後3年の追跡期間を対象とした。BMI 18.5未満を低体重、18.5~24.9を標準体重、25.0~29.9を過体重、30以上を肥満と定義した。

コーヒー5杯/日以上で脳梗塞リスクが高まる!?

 大規模な国際症例対照研究であるINTERSTROKE研究で、コーヒー、紅茶、緑茶などの摂取量と脳卒中の関連を検討したところ、コーヒーを多量摂取(1日5杯以上)する人は脳卒中全体と脳梗塞のリスクが高く、逆に緑茶を摂取する人ではこれらのリスクが低かったという。カナダ・McMaster University and Hamilton Health SciencesのAndrew Smyth氏らがInternational Journal of Cancer誌オンライン版2024年6月18日号で報告した。

境界性パーソナリティ障害、思春期〜成人期の経過

 境界性パーソナリティ障害(BPD)の治療において、思春期以降の中長期にわたる臨床的および機能的経過に関する研究は、不十分である。デンマーク・Mental Health ServicesのMie Sedoc Jorgensen氏らは、思春期BPD患者における診断から5年後の精神病理学的および機能的状態についての検討を行った。Comprehensive Psychiatry誌2024年7月号の報告。  対象は、思春期BPDに対するメンタライゼーション・ベースド・セラピーによるグループ介入と通常治療を比較したランダム化臨床試験(RCT)に登録された患者。5年後のフォローアップ調査時に、Schedules for Clinical Assessment in Neuropsychiatry(Scan)およびStructured Clinical Interview for DSM-5 Personality Disorders(SCID-5-PD)を含む半構造化面接評価を行った。自己報告ツールを用いて、注意欠如多動症(ADHD)、アルコール、薬物、タバコの使用、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、複雑性PTSD、一般機能の評価を行った。

ビタミンDが2型糖尿病患者の心不全リスクを抑制

 2型糖尿病患者における血清25-ヒドロキシビタミンD(25[OH]D)と心不全リスクとの関連性を調査した結果、血清25(OH)D値が高いほど心不全リスクが低くなるという関連があり、メンデルランダム化(MR)解析では潜在的な因果関係が示唆されたことを、中国・Huazhong University of Science and TechnologyのXue Chen氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年7月23日号掲載の報告。  2型糖尿病患者は心不全の発症リスクが高く、またビタミンDの不足/欠乏を呈しやすいことが報告されているが、2型糖尿病患者における25(OH)Dと心不全リスクとの関連性に関するエビデンスはほとんどない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者における血清25(OH)Dと心不全リスクとの関連性を前向きに評価し、さらに潜在的な因果関係を検討するために、観察研究およびMR解析を実施した。

お腹や腕の脂肪は神経変性疾患リスクと関連

 お腹や腕の周りの脂肪が増えたという人は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患の発症リスクが高い可能性のあることが、四川大学(中国)のHuan Song氏らによる研究で示唆された。一方で、筋力が強い人では筋力が弱い人と比べて神経変性疾患のリスクが低い可能性のあることも示された。この研究結果は、「Neurology」に7月24日掲載された。  Song氏らは今回、UKバイオバンクの参加者41万2,691人(登録時の平均年齢56.0歳、女性55.1%)の健康上および身体上の特徴を平均で9.1年追跡したデータを分析した。参加者は研究登録時に、ウエストやヒップのほか、握力や骨密度、脂肪量、除脂肪体重などの測定を受けていた。

HIV感染症完治と見られる7例目の症例が報告される

 あるドイツ人男性が、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症が完治した7人目の患者となったと、シャリテ・ベルリン医科大学(ドイツ)のOlaf Penack氏らが報告した。報告書の中で「次のベルリンの患者(next Berlin patient)」と表記されているこの60歳の男性は、2015年10月に急性骨髄性白血病の治療のため幹細胞移植を受けていた。彼は2018年9月、エイズを引き起こすウイルスであるHIVを抑制するために必要な抗レトロウイルス薬の服用を中止したが、それ以来、約6年間にわたってHIVが検出されていないという。この症例については、同医科大学のChristian Gaebler氏が、第25回国際エイズ会議(AIDS 2024、7月22~26日、ドイツ・ミュンヘン)で報告予定。

うつや不安に対するウォーキング効果〜メタ解析

 ウォーキングから得られるメンタルヘルスのベネフィットに関する総括的な情報は、十分ではない。中国・香港中文大学のZijun Xu氏らは、さまざまなウォーキングパターンがうつや不安症状に及ぼす影響を評価したランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビュー、およびメタ解析を実施した。JMIR Public Health and Surveillance誌2024年7月23日号の報告。  2022年4月5日、各種データベース(MEDLINE、CENTRAL、Embase、PsycINFO、AMED、CINAHL、Web of Science)より検索を行った。研究のスクリーニングおよびデータ抽出は、2人の独立した著者により実施した。ランダム効果メタ解析を用いて、データを統合した。フォレストプロットの95%信頼区間(CI)による標準化平均差(SDM)を算出した。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias toolを用いた。

MASLD患者の飲酒は肝線維化リスクが高い

過体重、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常とアルコール摂取はどちらも脂肪性肝疾患(SLD)の原因となるが、肝線維化に対するそれらの影響は不明である。今回、スペイン・バレンシア大学のINCLIVA Health Research Instituteに所属するDavid Marti-Aguado氏らは、代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)患者においてアルコール摂取量が中程度の場合、代謝リスク因子との相加効果を超え、肝線維化進展リスクが指数関数的に増加したことを示唆し、MASLD and increased alcohol intake(MetALD)患者と同程度に病気の進行リスクが高まることを明らかにした。Journal of Hepatology誌オンライン版2024年7月4日号掲載の報告。

がん患者の予後がコンサルトに与える影響~アンケート結果/日本腫瘍循環器学会

 診療科横断的な治療アプローチの好例として、腫瘍循環器学が挙げられる。がん治療には、治療を遂行する腫瘍医、がん治療による心不全などの副作用に対応する他科の医師、この両者の連携が欠かせない。しかし、両者の“がん患者を救う”という目的は同じであっても、患者の予後を考えた際にどこまで対応するのが適切であるか、については意見が分かれるところである。実際に、がん患者の予後に対する両者の意識を明らかにした報告はなく、がん患者に対し“インターベンション治療などの積極的治療をどこまで行うべきなのか”、“どのタイミングで相談し合うか”などについて、現場ではお互いに頭を悩ませている可能性がある。

5~17歳の10人に1人がADHD/米国調査結果

 米国疾病予防管理センター(CDC)下の組織である国立衛生統計センター(NCHS)は、2024年3月に米国における注意欠如・多動症(ADHD)に関する調査結果を発表した。この報告書によると、2020~22年にADHDと診断された5~17歳の子供の割合(有病率)は11.3%だったという。  その他の主な結果は以下のとおり。 ・5~17歳では、男児(14.5%)のほうが女児(8.0%)より有病率が高く、この傾向は5~11歳と12~17歳の年齢別においても一貫していた。 ・5~11歳の有病率(8.6%)よりも、12~17歳の有病率(14.3%)のほうが高かった。 ・有病率は、すべての人種において、5~11歳よりも12~17歳のほうが高かった。