日本発エビデンス|page:69

ギラン・バレー症候群の治療に新たな光-千葉大の研究-

 ギラン・バレー症候群は、手足のしびれ・麻痺を急速に生じる末梢神経の病気で、先進国で最も多い急性四肢麻痺の原因だ。日本でも年間約1,400人が発症する。しかし、25年以上にわたり、有効性を示すギラン・バレー症候群の新たな治療法の報告はなく、難病とされてきた。  今回、千葉大学医学部附属病院 神経内科教授の桑原 聡氏らの研究グループは、ギラン・バレー症候群の患者への臨床試験を行い、薬剤「エクリズマブ」の有効性を世界で初めて示した(Lancet Neurology誌オンライン版2018年4月20日号に掲載)。ギラン・バレー症候群の治療については、1992年に免疫グロブリン療法の有効性がオランダから報告されて以来の進展で、日本から新規治療の可能性を示すことができたのは、今回が初。

日本の初年度レジデント、長時間労働とうつ病との関連

 日本のレジデントは、メンタルヘルスの問題を抱えている人が少なくない。これまでの研究では、長時間労働がうつ病などのストレス反応の原因である可能性が報告されている。また、労働時間が80時間/週以上と80時間/週未満のレジデントを比較した研究も報告されている。しかし、多くのレジデントは、臨床研修、トレーニング、自己学習などのため、実質的には100時間/週以上の超長時間労働に至っている。このような超長時間労働に関する報告は、これまでほとんど行われていなかった。筑波大学の小川 良子氏らは、初年度レジデントの労働環境とストレスの程度を評価し、とくに超長時間労働群における長時間労働とうつ病との関連を調査した。BMC medical education誌2018年3月27日号の報告。

糖尿病網膜症の日本人患者への強化スタチン療法:EMPATHY試験

 冠動脈疾患の既往歴のない、糖尿病網膜症合併高コレステロール血症患者に対するスタチン単独によるLDL-C低下療法は、通常治療と強化治療とで心血管イベントまたは心血管関連死に有意差は認められなかった。慶應義塾大学の伊藤 裕氏らが、EMPATHY試験の結果を報告した。著者は、「今回の結果は当初の予想より両群におけるLDL-Cの差が少なかった(36ヵ月時で27.7mg/dL)ため」との見解を示したうえで、「高リスク患者に対するtreat-to-target治療におけるLDL-C<70mg/dL達成のベネフィットについては、さらなる研究が必要である」とまとめている。Diabetes Care誌オンライン版2018年4月6日号掲載の報告。

日本人統合失調症患者に対する個別作業療法の多施設ランダム化比較試験

 個別作業療法(IOT:individualized occupational therapy)プログラムは、急性期統合失調症入院患者の積極的な治療参加を促進し、認知機能やその他のアウトカムを改善するために開発された心理社会的プログラムである。このプログラムは、動機付け面接、自己モニタリング、個別訪問、手工芸活動、個別心理教育、退院計画で構成されている。信州大学のTakeshi Shimada氏らは、日本の精神科病院に最近入院した統合失調症患者のアウトカムに対する、集団作業療法(GOT:group occupational therapy)プログラムにIOTを追加した際の効果について、多施設オープンラベル盲検エンドポイントランダム化比較試験を実施し、検討を行った。PLOS ONE誌2018年4月5日号の報告。

ROCK阻害薬と培養細胞の注入で、角膜内皮細胞が再生/NEJM

 フックス角膜内皮変性症などの角膜内皮障害は、角膜の含水量に異常を来し、水疱性角膜症として角膜の混濁と視力低下を引き起こす。京都府立医科大学の木下 茂氏らは、水疱性角膜症患者において、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害薬とともに、培養したヒト角膜内皮細胞(CEC)を前房内に注入することにより、24週間後にCEC密度が増加し、視力が改善したことを明らかにした。NEJM誌2018年3月15日号掲載の報告。

日本人若年者のピロリ除菌療法、第1選択は?

 若年者のHelicobacter pylori(以下、ピロリ菌)感染に対する除菌治療は、胃がん予防に有効である。今回、JAPAN GAST Study Groupが、プロトンポンプ阻害薬ベースのトリプル療法(PACおよびPAM)について若年者での有効性を多施設無作為化比較試験で検討したところ、PAMによる除菌率がPACより有意に高いことが示された。研究グループは「抗菌薬感受性試験が実施できない場合、PAMが若年者のピロリ菌除菌の第1選択となりうる」としている。Journal of Infection and Chemotherapy誌オンライン版2018年3月28日号に掲載。

心房細動の認知率が低い県は?全国5万人の調査

 心房細動は最も一般的な心原性脳塞栓症の原因であることから、心原性脳塞栓症の予防には心房細動の認知度を知ることが重要である。今回、聖マリアンナ医科大学の秋山 久尚氏らは、日本全国における心房細動の認知レベルについて大規模インターネット調査を実施。5万人以上から回答が得られ、心房細動をよく知っている人の割合は3.8%と非常に低く、また、年齢、性別、地域による認知度の違いがみられた。秋山氏らは「年齢や性別による認知度の違いを考慮し、認知度が低い都道府県を優先する啓発活動が将来的に心原性脳塞栓症の予防に重要」としている。Geriatrics & gerontology international誌オンライン版2018年3月30日号に掲載。

高齢・心房細動合併、日本人の拡張期心不全患者(JASPER)/日本循環器学会

 本邦における拡張期心不全(HFpEF)入院患者の現状、長期アウトカムなどは明らかになっていない。2018年3月23〜25日に大阪で開催された、第82回日本循環器学会学術集会で、北海道大学 安斉 俊久氏が、「本邦における拡張期心不全の実態に関する多施設共同調査研究」JASPER試験(JApanese heart failure Syndrome with Preserved Ejection fRaction Study)の結果を初めて発表した。

血清尿酸値上昇は高LDL-C/高TG血症リスク~日本人コホート研究

 高い血清尿酸(SUA)値は脂質異常症と関連するが、高尿酸血症がLDLコレステロールを増加させるかどうかは不明である。今回、コロラド大学の桑原 政成氏らが行った日本人のコホート研究により、SUA値の上昇が高LDLコレステロールおよび高トリグリセライド血症の発症リスクを増加させたことが初めて報告された。著者らは「この結果は心血管疾患におけるSUAの役割を解明するかもしれない」としている。International Journal of Cardiology誌オンライン版2018年3月13日号に掲載。

CVD-REAL2試験、SGLT2阻害薬で心血管リスク低下

 アジア太平洋、中東、北米の6ヵ国の40万例超の2型糖尿病患者を対象としたCVD-REAL試験の新たな解析(CVD-REAL2)により、SGLT2阻害薬投与患者は他の血糖降下薬と比べて、患者特性にかかわらず心血管イベントリスクが低いことが示された。本結果は第67回米国心臓病学会年次学術集会(ACC2018)で発表され、Journal of the American College of Cardiology誌オンライン版2018年3月7日号にも掲載された。

日本人肺がんにおける免疫関連有害事象とニボルマブの効果/JAMA Oncol

 メラノーマにおける免疫関連有害事象(irAE)とPD-1阻害薬の有効性の相関については報告されてるが、非小細胞肺がん(NSCLC)においては明らかになっていない。この研究は、近畿大学を含む複数の機関の診療録データを基に、再発・進行NSCLCにおける、ニボルマブの有効性とirAEの有無の関係を評価した多施設後ろ向き観察研究である。リードタイムバイアスを最小限にするためにランドマーク解析を用いて、関連性を検討している。近畿大学 原谷浩司氏らにより、JAMA Oncology誌2018年Vol.4で報告された。

脳卒中再発予防に望ましいLDL-C値は? J-STARS事後解析

 脳卒中の再発を予防するために望ましいLDLコレステロール値を調べるために、J-STARS研究(Japan Statin Treatment Against Recurrent Stroke、脳血管疾患の再発に対するスタチンの予防効果に関する研究、多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験)の事後解析が実施された。その結果、スタチン使用について調整後、無作為化後のLDLコレステロールが80~100mg/dLの群で、脳卒中および一過性虚血発作の複合リスクが低いことが示された。Stroke誌オンライン版2018年3月6日号に掲載。

きわめて高いHDL-Cは心血管死リスク? EPOCH-JAPAN

 心血管疾患(CVD)に対するvery highやextremely highレベルの HDLコレステロール(HDL-C)の影響は十分にわかっていない。最近のいくつかの研究では、extremely highレベルのHDL-CのCVDイベントへの悪影響が報告されているが、原因別CVD死亡率との間に有意な関連はみられておらず、またアジア人集団では研究されていない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の統合データベース共同研究であるEPOCH-JAPANにおける大規模なプール解析により、extremely highレベルの HDL-Cがアテローム性CVDによる死亡率に悪影響を及ぼすことを示した。Journal of clinical lipidology誌オンライン版2018年2月8日号に掲載。

低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。

マイボーム腺機能不全や眼表面摩擦関連疾患でドライアイが重症化

 マイボーム腺機能不全(MGD)や眼表面摩擦関連疾患(FRD)は、ドライアイの重症度にどのような影響を及ぼしているのか。慶應義塾大学のChi Hoang Viet Vu氏らDry Eye Cross-Sectional Study in Japan Study Groupは、約450例を対象とした横断観察研究において、MGD、FRDまたはその両方が存在すると、ドライアイの状態やサブタイプに関係なく涙液層破壊時間(TBUT)が有意に短縮していることを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2018年2月16日号掲載の報告。

分子標的治療薬の新たな薬剤耐性メカニズム発見/LC-SCRUM-Japan

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)の研究所(所長: 間野博行)ゲノム生物学研究分野、中奥敬史研究員、河野隆志分野長、東病院(院長:大津 敦)呼吸器内科、後藤功一科長らは2018年2月14日、京都大学、東京大学、理化学研究所、英国クリック研究所と共同で、分子標的治療薬バンデタニブによって治療されたRET融合遺伝子陽性の肺がん患者のがん試料の機能ゲノム解析を行い、新しい薬剤耐性メカニズムを発見したと発表。研究結果は米国学術雑誌Nature Communicationsに2月12日付けで発表された。