ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:315

冠動脈性心疾患、もっと日常診療での予防に重点を

急性心筋梗塞、虚血性心疾患という冠動脈性心疾患(CHD)を低減するには、日常診療においてより強制力のある指導が必要であり、予防に重点を置くべきことが、ヨーロッパで3回にわたって実施された聞き取り調査(EUROASPIRE I、II、III)で判明した。1回および2回目の調査では、CHD患者においては心血管疾患の修正可能なリスク因子の頻度が高いことが示されている。イギリスImperial College London国立心肺研究所のKornelia Kotseva氏らが、Lancet誌2009年3月14日号で報告した。

オゾン長期曝露は呼吸系の死亡リスクを増大する

オゾンは大気汚染物質の1種であり、有害な健康アウトカムに関与していることが多くのスタディで示唆されている。しかし、大気汚染関連の死亡率とオゾンへの長期曝露との関連を断定できるデータはいまだ得られていない。カリフォルニア大学公衆衛生校環境健康科学部門のMichael Jerrett氏らは、過去のスタディの示唆をもとに、心肺系が原因の死亡リスク、特に呼吸器系が原因の死亡の、オゾン曝露の潜在的な寄与について調査を行った。NEJM誌2009年3月12日号より。

不整脈原性右室心筋症の新しい診断検査法

不整脈や突然死との関連が深い不整脈原性右室心筋症(ARVC)の新しい診断検査法について、ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカルセンター病理学部門のAngeliki Asimaki氏らが、免疫組織化学的分析法を検討した。ARVCは臨床症状が極めて多様な一方、遺伝的浸透度が低く、また通常の心内膜筋生検標本ではARVCの構造変化の関係から病理学的所見による診断を得ることは難しい。Asimaki氏らは、心筋の細胞質蛋白であるデスモソーム蛋白の一つプラコグロビン(別名:γ-カテニン)の分布が、ARVC患者の稀な1型であるNaxos病やカルバハル症候群の患者で激減していたことや、デスモソーム蛋白遺伝子と一般的なARVCとの関連を検討するスタディでプラコグロビン減少を見いだしていたことをもとに本試験を行った。NEJM誌2009年3月12日号より。

08~09シーズンのインフルエンザA型におけるタミフル耐性は98.5%:アメリカ

2008~09シーズン中に検査を行ったインフルエンザA(H1N1)ウイルスのうち、オセルタミビル(商品名:タミフル)耐性株が98.5%を占めたことが、CDC(米国疾病対策センター)のNila J. Dharan氏らワーキンググループの調べで明らかになった。同耐性株は、2007~2008シーズンから世界的に増加してきている。JAMA誌2009年3月11日号(オンライン版2009年3月2日号)より。

対テロにも有効? 天然痘ワクチン「LC16m8」

第3世代弱毒化組織培養の天然痘ワクチン「LC16m8」は、未接種成人で特に有効性が高いことが、慶應大学医学部熱帯医学寄生虫学の齋藤智也氏らによって報告された。既摂取成人でもおよそ6割で、有効な追加免疫反応が認められた同報告は、JAMA誌2009年3月11日号で発表されている。天然痘による生物テロへの危機感から、天然痘ワクチンの必要性が再考されているものの、第1世代の同ワクチンなどでは、有害事象の発症率が高く、有効なワクチンが模索されている。

女性でも、安静時心拍数が冠動脈イベントの予測因子になることを確認

安静時心拍数が冠動脈イベントの予測因子となることは、男性では知られているが、女性ではその関連性が明らかにされていなかった。そこでジョージ・ワシントン大学のJudith Hsia氏らが、全米の40施設で前向きコホート研究WHI(Women's Health Initiative)を実施。男性同様、独立予測因子になることが確認された。BMJ誌2009年3月7日号(オンライン版2009年2月3日号)より。

在宅認知症高齢者への家族による虐待は52%:イギリス

在宅認知症高齢者に対する家族による虐待の実態について、ロンドン大学メンタルヘルス部門のClaudia Cooper氏らが調査を行ったところ、約半数が身体的・心理的な虐待を行っていることが明らかになった。虐待の度合いが重視すべきケースは約3割強に上ることも報告されている。イギリスおよびアメリカでは高齢者虐待が政策上の優先課題とされており、英国では虐待対策の法整備の改訂が検討されているところだという。BMJ誌2009年3月7日号(オンライン版2009年1月22日号)より。

直腸癌患者に対し術前放射線療法を施行したほうがアウトカムを改善する

直腸癌患者に対する、術前あるいは術後放射線療法は再発リスクを減らすが、どちらに行うのがアウトカムの改善に寄与するか。英国聖ジェームズの大学病院のDavid Sebag-Montefiore氏らによる多施設共同無作為化試験の結果、手術前に行うことで再発リスクが減り無病生存が改善することが報告された。Lancet誌2009年3月7日号より。

メタボの人は特に食塩摂取は控えめに

メタボリックシンドロームの基盤にインスリン抵抗性があることから、メタボの人は塩分摂取に対して特異な感受性があるのではないか。これまで検討されていなかった、塩分摂取と血圧との関連を立証するために、米国チューレイン大学医学部&チューレイン高血圧腎センターのJing Chen氏らが、中国北部農村地帯の住民を対象に大規模な食事摂取スタディを行った。Lancet誌2009年3月7日号(オンライン版2009年2月16日号)より。

抗IL-5モノクローナル抗体・mepolizumabは喘息症状の増悪に有効か

喘息症状の増悪は、罹病率や死亡率の増大ばかりか保健医療資源の大量消費を伴うため、それを防ぐことが依然として治療の重要な目的となっている。一方で、気道の好酸球性炎症が増悪リスクであるとのエビデンスが得られている。これに対しグレンフィールド病院(英国・レスター)のPranabashis Haldar氏らが、抗IL-5モノクローナル抗体・mepolizumabの増悪抑制効果について臨床試験を実施。結果がNEJM誌2009年3月5日号に掲載された。

重度冠動脈疾患の標準治療はCABG:SYNTAX試験

重度の冠動脈疾患に対しては冠動脈バイパス術(CABG)が標準治療とされてきたが、近年は急速に、薬剤溶出ステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)の施行が増えている。果たしてPCIが標準治療と成り得るのか。冠動脈3枝病変または左冠動脈主幹部病変(またはその両方)を有する患者を対象に、PCIとCABGを比較したSYNTAX試験の結果報告が、NEJM誌2009年3月5日号(オンライン版2009年2月18日号)にて発表された。

成人へのインフルエンザワクチンはTIVが効果的

インフルエンザ予防接種を毎年受けている成人にとっては、三価不活化インフルエンザワクチン(TIV)が鼻腔内投与型のインフルエンザ弱毒生ワクチン(LAIV)より、予防効果が高いようだ。米国Armed Forces Health Surveillance CenterのZhong Wang氏らが、米国軍人100万人超を対象に行った調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年3月4日号(オンライン版2009年3月2日号)で発表した。

急性冠症候群発症後、クロピドグレルにPPI併用は有害事象を有意に増加

 急性冠症候群(ACS)患者でクロピドグレル(商品名:プラビックス)を服用している患者について、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用した人は、クロピドグレルのみを服用している人に比べ、死亡とACSによる再入院がおよそ1.25倍に増えることがわかった。米国Denver VA Medical CenterのP. Michael Ho氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年3月4日号で発表されている。

看護師と医師のどちらが内視鏡検査に向いているか?

イギリスやアメリカでは、看護師による消化管内視鏡検査が、専門団体の承認を得て一般的に行われている。これまで1センターを対象とする研究で、安全で効果的であり、患者にも容認される手技であることが示されている。しかし、看護師がこうした役割を担うことについて、臨床面と費用対効果の面から、厳密かつ大規模な評価は行われていなかった。そこで英国スウォンジー大学のJohn Williams氏らの研究グループは、上部・下部消化管の内視鏡検査について、医師と看護師の臨床的な有効性を比較することを目的に、6病院で無作為化試験を実施した。BMJ誌2009年2月28日号(オンライン版2009年2月10日号)より。

HDLコレステロールは動脈硬化を予防するのか?

HDLコレステロール(HDL-C)を増やすことが虚血性心疾患を予防する、とのエビデンスについてはなお論争が続いている。システマティックレビューの一部解析(2001年までに公表されたスタチン治療に焦点を当てた無作為化試験の解析)では、HDL-Cと患者アウトカムの相対リスク減とに有意な関連を見いだすことはできなかったが、McMaster大学(カナダ)臨床疫学・生物統計学部門のMatthias Briel氏らは、スタチンに限らずすべての脂質異常症の治療薬に関連した無作為化試験を対象に、HDL-C値と、全死亡、虚血性心疾患死および同イベント(虚血性心疾患死と非致死的心筋梗塞)との関連について、最新の系統的なシステマティックレビューとメタ回帰解析を行った。BMJ誌2009年2月28日号(オンライン版2009年2月16日号)より。

新世代抗うつ薬を比較

 新世代抗うつ薬12種類の有効性と受容性について、ベローナ大学(イタリア)Andrea Cipriani氏らが、複数の無作為化試験結果のメタ解析を行った(別名:混合治療比較メタ解析、ネットワークメタ解析)。ここ20年で登場したうつ病の新薬は構造やメカニズムが似通っており、またいわゆるジェネリック薬も多く、どれほど違いがあるのかが不明とされていた。解析結果は、Lancet誌2009年2月28日号(オンライン版2009年1月29日号)に掲載された。

個人をターゲットとした心房細動を予測するリスクスコアの開発:Framingham Heart Study

フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)が開発した、個人レベルの心房細動の絶対危険度を予測するためのリスクスコア、およびフレームワークづくりに関する試験報告が、Lancet誌2009年2月28日号に掲載された。これまで、加齢、糖尿病、高血圧、肥満、心血管疾患といった心房細動リスクの共通因子は明らかにされていたが、個々人の絶対危険度を予測するための多発リスク因子の評価ツールはなかった。

減量効果に最も優れている食事療法とは?

肥満治療として減量効果に最も優れているダイエット食とは? 米国ハーバード公衆衛生大学院栄養学のFrank M. Sacks氏らは、これまでタンパク質、脂質、あるいは炭水化物それぞれの栄養素に着目したダイエット食の研究報告がなされているが、その減量効果は確立しておらず、また研究期間が1年を超えて行われているものがないとして、どの栄養素を重視した食事が効果的か、介入期間2年にわたる無作為化試験を行った。その結果、栄養素は関係なく、低カロリー食であることが肝心との報告を寄せている。NEJM誌2009年2月26日号掲載より。