ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:326

冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBは無効

総ホモシステイン濃度と心血管疾患とのリスクの関連性は観察研究によって報告されている。血漿総ホモシステイン濃度は、葉酸+ビタミンB12の内服によって低下させることができるが、Haukeland大学病院心臓疾患部門(ノルウェー)のMarta Ebbing氏らは、冠状動脈疾患もしくは大動脈弁狭窄症患者の2次予防として、葉酸+ビタミンB12の服用効果と、葉酸+ビタミンB6の服薬効果を、無作為化試験で比較評価した。JAMA誌2008年8月20日号より。

イラク、アフガン従軍兵のアルコール問題

ベトナム戦争や湾岸戦争時も報告された、兵士の除隊後の高率なアルコール依存症発症等については、現戦争のイラク戦争やアフガニスタン侵攻に関しても報告されているが、兵役と重篤なアルコール依存症発症との関連リスクについてより詳細な調査を行っていた、米国国防総省ナバル・ヘルス・リサーチセンター(サンディエゴ州)のIsabel G. Jacobson氏らによって、「予備・州兵とより若い軍人でリスクが高い」と報告された。JAMA誌2008年8月13日号より。

スコットランドの超過死亡率は薬物常用による

 スコットランドの死亡率がイングランドとウェールズよりも高いことは早くから知られていた。特に、1981年の超過死亡率は12%だったが、2001年には15%になるなど、死亡率の格差は開いている。その原因の一つとしてこれまで、就職率や車の所有率、階級構成などの低さが指摘されてきた。しかし、このところスコットランドとイングランド、ウェールズとの貧富の差はかつての半分以下に縮まっている。この反比例の関係は「スコットランド効果」と呼ばれており、説得力のある説明はなされていなかった。この「スコットランド効果」の原因を調べるため、グラスゴー大学のMichael Bloor氏らのグループは、薬物使用状況と有病率に着目し、「DORIS」と命名されたコホート研究の二次解析を行った。BMJ誌2008年7月22日号より。

女性の心血管イベント予防には片頭痛情報とFraminghamリスクスコアを

ジグザクラインや光の点滅を見たりする前兆を伴う片頭痛は、心筋梗塞を含む虚血性の脳卒中や狭心症など血管性イベントのリスク増加と関連しているとされるが、生物学的メカニズムは明らかではない。その関連について、Framinghamリスクスコアに基づく血管リスクの状態による変化(女性対象)を調べていたブリガム&ウィメンズ病院(米国・ボストン)予防医学部門のTobias Kurth氏らは、「血管リスクの状態によって関連は異なる。片頭痛と血管リスクの情報は、心血管イベントの将来予測に寄与するようだ」と報告した。BMJ誌2008年8月7日号掲載より。

テルミサルタン+ラミプリル併用で腎機能はむしろ低下:ONTARGET試験

血管リスクの高い集団の腎機能に及ぼすテルミサルタンの効果はラミプリルと同等であり、両薬剤を併用した場合は単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下することが、ONTARGET試験の参加者を対象とした解析で明らかとなった。アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬は蛋白尿を抑制することが確認されており、併用による腎機能の改善効果が期待されていた。ドイツLudwig Maximilians大学Schwabing総合病院のJohannes F E Mann氏が、Lancet誌2008年8月16日号で報告した。

チロフィバンの入院前投与はPCI後のSTEMIの臨床転帰を改善するか:On-TIME 2

血小板糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬チロフィバンの入院前高用量急速静注投与により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対するPCI施行後の臨床転帰が改善することが、ヨーロッパで行われたプラセボ対照無作為化試験(On-TIME 2)で明らかとなった。PCIが適用となる急性のSTEMIでは、抗血小板療法の最も効果的な強度およびタイミングが重要とされ、さまざまな治療アプローチの評価が進められている。オランダIsala Klinieken循環器科のArnoud W J van't Hof氏らによる報告で、Lancet誌2008年8月16日号に掲載された。

tiboloneで骨折と乳癌リスクは低下するが脳卒中リスクが増大

合成ホルモン剤tiboloneには、エストロゲンやプロゲステロン、アンドロゲンと同様の効果があり、骨量減少を予防できるが、骨折や乳癌、心血管疾患に対する作用は不明である。この点について米国カリフォルニア大学のSteven R. Cummings氏らは、閉経後の高齢女性を対象にした大規模な無作為化試験の結果、「tiboloneは骨折と乳癌の発症リスクを低下させるが、脳卒中リスクを増大させる」と警告した。NEJM誌2008年8月14日号より。

安定冠動脈疾患患者へのPCI追加によるQOL改善効力は3年

慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。

うつ病やPTSDが深刻なネパールの元少年兵

戦争や武力紛争で、戦闘への参加を強いられた少年兵経験者には、特別の精神保健的な介入が必要とされるが、徴兵されなかった一般の少年との精神保健面の違いに関する研究は十分ではない。エモリー大学(米国・ジョージア州アトランタ市)のBrandon A. Kohrt氏らはネパールにおける調査の結果、「元少年兵の精神保健面の問題は、徴兵されなかった少年に比べて、より重症である」と報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。

心的外傷を負ったインドネシアの小児に対する精神保健介入

武力紛争に巻き込まれた中・低所得層の児童に対する、精神保健面の介入の有効性は明らかではない。貧困と不安定な政治状況では、対処は困難である。宗教紛争で住民に多数の犠牲者が出たインドネシア・ポソ県で活動するオランダのNGO「Health Net TPO」のWietse A. Tol氏らは、紛争で心的外傷を負った小児のために、学校ベースの介入を試み、その成果を報告した。JAMA誌2008年8月13日号より。

実際の認知症の有病率はもっと高い?

DSM-IVの認知症判定規準は実際の有病率を過小評価する可能性があり、特にこの緊急の公衆衛生学的問題に対する認識が低い地域でその傾向が強いことが、低~中所得国で実施された横断的研究で明らかとなった。認知症有病率は開発途上地域のほうが先進地域よりも低いとされてきたが、世界的な高齢化が急速に進むなか、65歳以上の高齢者の2/3が暮らす低~中所得国では認知症の急増が懸念されている。キューバHavana医科大学のJuan J Llibre Rodriguez氏が、Lancet誌2008年8月9日号(オンライン版2008年7月25日号)で報告した。

熱性けいれん児の長期的死亡率の実態とは

熱性けいれんをきたした小児では、長期的な死亡率は上昇しないが複合型熱性けいれん発症後は一時的に死亡率が上がることが、デンマークで実施された長期にわたる大規模なコホート研究で明らかとなった。熱性けいれんは5歳未満の小児の2~5%にみられる。神経学的な疾患が基盤にあるてんかん児では発症頻度が高いとされるが、死亡率などの詳細はほとんど知られていないという。Aarhus大学公衆衛生研究所総合診療科のMogens Vestergaard氏が、Lancet誌2008年8月9日号で報告した。

慢性リンパ性白血病とモノクローナルB細胞リンパ球増加症の関係

慢性リンパ性白血病(CLL)の診断には、血中CLL表現型細胞数が1立方mm当たり5,000個以上必要であり、CLL表現型細胞が少なく無症候性の患者は、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(MBL)とされる。MBLとCLLの関係を調べた、英国・リーズ教育病院のAndy C. Rawstron氏らは、「CLL表現型MBLとリンパ球増加症の患者で、治療を必要とするCLLの発現率は年間1.1%」と報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。

広範囲薬剤耐性結核には包括的治療が有効

すべての抗菌剤が効かないとされる広範囲薬剤耐性結核(XDR-TB)は、資源に乏しく結核に悩まされている国など世界45ヵ国で報告されている。そのうちの一つ、ペルーにおける広範囲薬剤耐性結核患者に対する外来治療による管理と転帰を調査した米国・ハーバード大学医学部のCarole D. Mitnick氏らは、4~7剤併用と包括的な外来治療が有効であることを報告した。NEJM誌2008年8月7日号より。

閉経後女性へのホルモン治療は経皮剤で

閉経後女性へのホルモン治療は胆嚢疾患(胆石症、胆嚢炎、胆嚢切除術)のリスクを増大することが、無作為化試験や観察研究によって明らかになっている。オックスフォード大学疫学部門のBette Liu氏らは、ホルモン剤には経皮剤と経口剤のタイプがあり、肝臓で初回通過代謝する経口剤よりも通過しない経皮剤のほうが、疾患リスクを減らすことができるのではないかと、両者の比較を行った。BMJ誌2008年7月10日号より。

体重超過への「間違った安心感」が蔓延している:イギリス

体重に関する自己認識と、医療従事者が用いる定義は対応しないことが多い。その問題に関して10年ほど前までは、摂食障害へのリスクから若い女性について重点が置かれていたが、現在は体重超過・肥満の人々の間に関心が向けられるようになっている。これらの人々は体重超過であるとの認識ができていないと指摘されているからだが、ロンドン大学疫学公衆衛生部門、癌研究英国健康行動調査センターのF Johnson氏らの調査によって、「体重増の認識はあるが体重増への問題認識が薄れている」ことが明らかにされた。BMJ誌2008年7月10日号掲載より。