ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:267

非糖尿病性腎症患者、ガイドライン推奨値の減塩維持が蛋白尿減少と降圧の鍵

ACE阻害薬最大量で治療中の非糖尿病性腎症患者には、ガイドライン推奨レベルの減塩食を持続して摂らせることが、蛋白尿減少と降圧に、より効果的であることが52例を対象とする無作為化試験の結果、示された。試験は、オランダ・フローニンゲン大学医療センター腎臓病学部門のMaartje C J Slagman氏らが、同患者への追加療法として、減塩食の効果とARB追加の効果とを比較したもので、両者の直接的な比較は初めて。Slagman氏は、「この結果は、より有効な腎保護治療を行うために、医療者と患者が一致協力して、ガイドラインレベルの減塩維持に取り組むべきことを裏付けるものである」と結論している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。

ピロリ菌の除菌治療、4剤併用/連続治療は3剤標準治療よりも不良

ラテンアメリカのピロリ菌(Helicobacter pylori)感染患者の除菌治療では、標準的な3剤の14日間投与が、4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも良好なことが、アメリカFred Hutchinsonがんセンター(シアトル市)のE Robert Greenberg氏らの検討で示された。ヨーロッパ、アジア、北米では、ピロリ菌に対するプロトンポンプ阻害薬+アモキシシリン+クラリスロマイシンによる標準治療は、これにニトロイミダゾールを加えた4剤の5日間併用治療や10日間連続治療よりも除菌効果が有意に低いことが報告されている。4剤レジメンは、3剤レジメンよりも抗生物質の用量が少ないため、医療資源が乏しい環境での除菌計画に適すると考えられる。ラテンアメリカはピロリ菌関連の疾病負担が大きい地域だが、除菌戦略に関する試験は少ないという。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。

全身性強皮症に対するHSCTの有用性を無作為化試験で確認

全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家造血幹細胞移植(HSCT)は、標準治療に比べ2年間にわたって皮膚病変および肺障害を有意に改善することが、アメリカ・ノースウェスタン大学Feinberg医学校のRichard K Burt氏らの検討で示された。全身性強皮症は、病初期にはびまん性の血管障害を呈し、その後免疫系の活性化に伴って組織の線維化が進む慢性疾患である。HSCTは、非無作為化試験において、全身性強皮症の皮膚症状や肺機能を改善するものの治療関連死の発生率が高いことが示されている。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。

特発性乳児高カルシウム血症、トリガーとなる遺伝子変異を特定

特発性乳児高カルシウム血症発症の分子的基盤を調査していたドイツ・ミュンスター大学小児病院のKarl P. Schlingmann氏らは、遺伝的危険因子としてCYP24A1変異を見いだしたことを報告した。報告によればCYP24A1変異が起因となり、ビタミンDの感受性を亢進し、特発性乳児高カルシウム血症発症の特徴である重症高カルシウム血症を発症。このため同因子を有する乳児は一見健康でも、ビタミンDの予防的投与によって疾患を発症し得る可能性があるという。乳児へのビタミンD投与は最も古く最も有効な、くる病の予防法であり、北米では事実上くる病根絶に結びついた。しかし1950年代に、ビタミンD強化ミルク製品を飲んだ英国の乳児で特発性乳児高カルシウム血症の発症が増大し、以来、ビタミンDの毒性作用、推奨すべき至適投与量についての議論が続いている。NEJM誌2011年8月4日号(オンライン版2011年6月15日号)掲載報告より。

年1回の低線量CTによる肺がんスクリーニング、死亡率を低下:NLST

年1回の低線量CTによる肺がんスクリーニングが、肺がんによる死亡率を低下することが、米国内33施設5万3,000人超を対象に行われた大規模な無作為化試験「NLST」の結果、報告された。進行が早く不均一という肺がんの性質がスクリーニング効果の妨げとなり、これまで可能性が示された高リスク群への胸部X線および喀痰細胞診による集団検診も、無作為化試験で死亡率低下が示されなかった。しかし、低線量CTの登場で状況は一変、観察的研究で胸部X線よりも多くの初期がんを含む小結節や肺がんを検出することが示されていた。NEJM誌2011年8月4日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。

性暴力を受けた女性、精神的・身体的障害の発症リスク増大

親密なパートナーなどからによる性暴力を経験した人は、精神的障害や身体的障害の発症リスクが増大することが明らかにされた。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学精神医学校のSusan Rees氏らが、オーストラリア在住の女性4,500人弱を対象にした横断研究の結果を分析し明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。

SRI抵抗性の慢性PTSD退役軍人に対するリスペリドンの有効性

セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)抵抗性の、兵役に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)が慢性的な退役軍人に対し、第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)リスペリドン(商品名:リスパダールほか)を投与しても、全般的症状やうつ症状などに改善は認められなかったことが報告された。米国・コネチカット州退役軍人ヘルスケアシステムのJohn H. Krystal氏らが、SRI抵抗性PTSDの300人弱の退役軍人について無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。米国FDAがPTSD治療薬として認可しているのはSRIのみだが、SRIの有効性は女性よりも男性で、また急性PTSDよりも慢性PTSDでそれぞれ劣ることが知られ、退役軍人に対する臨床ではSRI抵抗性には第二世代抗精神病薬が一般に用いられるようになっているという。本試験は、その有効性をプラセボと比較検証した初の大規模試験。

頭痛発症後6時間以内の多断面CT検査、クモ膜下出血を高感度に検出

第3世代の多断面CT検査は、頭痛発症後6時間以内に施行すれば100%の感度でクモ膜下出血を同定可能なことが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らの検討で示された。突発性の激しい頭痛は、初発時に神経学的な異常がみられない場合でもクモ膜下出血が疑われる。従来から、CT検査で異常がなくてもクモ膜下出血を除外するために腰椎穿刺が行われるが、逆に、ほとんどの突発性頭痛は良性で自然治癒的(self limiting)であるため詳細な検査は非効率とされ、これが不要な腰椎穿刺の施行につながる場合も多いという。BMJ誌2011年7月30日号(オンライン版2011年7月18日号)掲載の報告。

強化血糖降下療法は2型糖尿病の全死因死亡、心血管死を改善しない

2型糖尿病患者に対する強化血糖降下療法は、全死因死亡および心血管死を改善せず、そのベネフィットは限定的であることが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のRemy Boussageon氏らの検討で明らかとなった。強化血糖降下療法は、2型糖尿病の治療や長期的な心血管合併症、腎機能障害、視覚機能障害の予防を目的に広く行われているが、臨床的な有用性は必ずしも明確ではないという。BMJ誌7月30日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載の報告。

1型糖尿病に対するアバタセプト、膵β細胞の機能低下速度を抑制

早期の1型糖尿病患者に対し、関節リウマチ治療薬アバタセプト(商品名:オレンシア)を投与すると、膵β細胞の機能低下の速度が遅くなることが、米国・Joslin糖尿病センター(ボストン市)のTihamer Orban氏らの検討で示された。1型糖尿病の免疫病原性には膵β細胞を標的とするT細胞性の自己免疫反応が関与しており、T細胞の十分な活性化には、抗原提示細胞(APC)表面の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子上の抗原とT細胞受容体の相互作用に加え、APC上のCD80、CD86とT細胞上のCD28の相互作用という共刺激シグナルが必須である。アバタセプト(CTLA4-免疫グロブリン融合蛋白)は、この共刺激シグナルを遮断してT細胞の活性化を阻害するため、膵β細胞の機能低下を抑制して1型糖尿病の進展を遅延させる可能性があるという。Lancet誌2011年7月30日号(オンライン版2011年6月28日号)掲載の報告。

インドでのロタウイルス自然感染防御効果の研究からわかったこと

ロタウイルス自然感染の防御効果について、ロタウイルス感染死者数が世界で最も多いと報告されているインドでコホート研究を行ったインド・キリスト教医科大学のBeryl P. Gladstone氏ら研究グループは、「アジアやアフリカで、ロタウイルスのワクチン効果が、なぜ予想よりも低いかを説明し得るか」について知見を得られたことを、NEJM誌2011年7月28日号で発表した。「インドでは早期感染、再発頻度が高く、ウイルスが多様であり、結果として、その他地域で報告されているよりも防御効果を低くしている」という。ロタウイルスの防御効果については、メキシコの出生コホート研究で、2度の連続自然感染により、その後に感染しても中等度~重度の下痢症状を完全に防御できるという報告が寄せられていた。Gladstone氏らは、その報告を踏まえて、インド(経口ワクチン効果が一般的に期待されるより低い)の出生コホートについて調査を行った。

糖尿病性腎症に対するbardoxolone methyl、52週時点でも腎機能改善確認

糖尿病性腎症の治療薬として新規開発中のbardoxolone methylについて、長期効果と用量反応が検証された第2相二重盲検無作為プラセボ対照試験の結果、検討されたいずれの用量群でも、主要アウトカムである24週時点の腎機能の有意な改善が認められ、副次アウトカムである52週時点でも有意な改善が持続していたことが報告された。米国・Renal Associates(テキサス州、サンアントニオ)のPablo E. Pergola氏ら治験研究グループが、NEJM誌2011年7月28日号(オンライン版2011年6月24日号)で発表した。bardoxolone methylは、糖尿病性腎症の慢性炎症および酸化ストレスに着目し開発された経口抗酸化炎症調節薬。試験の結果を踏まえ研究グループは「bardoxolone methylは治療薬として有望である可能性が示された」と結論している。

超低出生体重児の慢性疾患罹患率、14歳時で正常出生体重児の約3倍

超低出生体重児の14歳時の慢性疾患罹患率は、正常出生体重児群と比べて2.8倍にのぼることが明らかにされた。一方で喘息や肥満については、両群に有意な差は認められなかったという。米国・クリーブランドにあるケース・ウェスタン・リザーブ大学のMaureen Hack氏らが、出生時体重1kg未満の超低出生体重児と正常出生体重児の8~14歳の慢性疾患罹患率の変化について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月27日号で発表した。なお超低出生体重児の、8~14歳の慢性疾患および喘息の罹患率の変化は認められなかったが、肥満の罹患率は増大していたことも報告されている。

早期浸潤性乳がん患者の免疫化学染色法によるSLNまたは骨髄転移検出の意義

早期浸潤性乳がん患者で、センチネルリンパ節(SLN)への転移が認められた人では全生存率は低下しなかったが、骨髄へ微小転移が認められた人は全生存率の低下(補正前ハザード比1.94)が認められたことが明らかにされた。しかし、多変量解析において両部位とも転移検出と生存率とに統計的に有意な関連は認められなかったことも報告された。米国Cedars-Sinai Medical CenterのArmando E. Giuliano氏らが、乳房温存療法とSLN生検を受けた患者5,210人を中央値6.3年間追跡した前向き観察試験の結果で、結論において「両検査の結果は臨床的根拠とならない」とまとめている。JAMA誌2011年7月27日号掲載報告より。

二次予防としての低用量アスピリンの服用中断は非致死的心筋梗塞を有意に増大

心血管イベント歴のある人は、低用量アスピリンを飲み続けないと、非致死的心筋梗塞のリスクが高まることが明らかにされた。スペイン薬剤疫学研究センターのLuis A Garcia Rodriguez氏らが行った、英国プライマリ・ケアベースの症例対照研究の結果による。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月19日号)掲載報告より。

術前心エコー検査、術後生存改善や入院期間短縮と関連せず

大手術時に懸念される周術期心臓合併症を回避するために、ガイドラインで推奨されている術前心エコー検査について、住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果、術後生存や入院期間を改善していないことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのDuminda N Wijeysundera氏らが、40歳以上の中~高リスクの選択的非心臓手術患者を対象に行った試験で報告した。周術期心臓合併症は、選択的非心臓手術例の2%以上で発生、術後死亡の約3分の1を占めると報告されており、術前リスク層別化として心エコーが推奨されている。BMJ誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載報告より。

特発性後腹膜線維症の寛解維持はステロイド療法が第一選択

特発性後腹膜線維症に対する寛解維持療法として、プレドニゾン(ステロイド療法として)とタモキシフェン(免疫療法として)の有効性を比較したオープンラベル無作為化試験の結果、プレドニゾンのほうが再発予防効果においてより有効であることが明らかにされた。イタリア・パルマ大学病院のAugusto Vaglio氏らが行った試験の結果で、「プレドニゾンを、新規の特発性後腹膜線維症患者への第一選択薬と考えるべきであろう」と結論した。特発性後腹膜線維症は、腹部大動脈や腸骨動脈周囲の線維炎症性組織の存在によって特徴づけられ、尿管にも病変が及ぶ場合が多い稀な疾患である。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年7月5日号)掲載報告より。

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alumワクチン療法の可能性

1型糖尿病患者に対する免疫療法としてのGAD-alum(水酸化アルミニウム配合グルタミン酸脱炭酸酵素)ワクチン療法について、無作為化二重盲検試験の結果、治療目標としたインスリン分泌の低下を抑制しなかったことが報告された。カナダ・トロント大学小児疾患病院のDiane K Wherrett氏らによる。GADは、1型糖尿病の自己免疫反応の主要なターゲットであり、非肥満性の自己免疫性糖尿病モデルのマウス実験では、糖尿病を予防する可能性が示されていた。Lancet誌2011年7月23日号(オンライン版2011年6月27日号)掲載報告より。

中東からの帰還兵に多い呼吸器障害の原因とは

1990年代に配備され最近帰国したイラク、アフガニスタンからの帰還兵では、呼吸器症状の報告が一般的になっているという。米国、英国、オーストラリアで行われた疫学的研究では、他地域配備と比べて中東配備兵での呼吸器障害の発生率増大が報告され、2009年の報告ではイラク内陸部への配備との関連が示されたが、配備中に吸入性傷害を負ったことは明らかになったものの病理学的な検証はなされていない。そこで米国・Meharry医科大学のMatthew S. King氏らは、帰還後に労作時呼吸困難で運動耐容能が低下した80例について症例記述研究を行った。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。

Framinghamリスク分類を有意に改善するのは内頸動脈壁の最大内膜中膜厚のみ

頸動脈壁内膜中膜厚が心血管アウトカムの予測因子として有用かについて、Framinghamリスクスコアと関連させながら詳細に検討(総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚の別に考慮)した結果、総頸動脈壁内膜中膜厚、内頸動脈壁内膜中膜厚ともに心血管アウトカムを予測したが、Framinghamリスクスコアのリスク分類能を改善するには、内頸動脈壁内膜中膜厚のみ有用であることが、米国・タフツ医療センター放射線部門のJoseph F. Polak氏らにより報告された。同氏らは、頸動脈壁内膜中膜厚をFraminghamリスクスコアに加えることで、同リスク分類が改善されるのではないかと言われてきた仮説を検証した結果による。NEJM誌2011年7月21日号掲載報告より。