ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:274

中国で報告された原因不明のSFTSは新種ウイルスによるものと発表

2009年3月後半から7月中旬にかけて中国中部の湖北省や河南省の農村地帯からの報告に端を発した新興感染症の原因を調査していたXue-Jie Yu氏ら中国疾患管理予防センター(CDC)の調査グループは、「SFTSブニヤウイルス」と命名した新種のフレボウイルスが同定されたことを報告した。同報告患者には、原因不明の血小板減少を伴う重度の発熱症候群(SFTS)がみられ、発生初期の致死率が30%と非常に高いことが特徴だった。同年6月に、その臨床症状からAnaplasma phagocytophilum感染が原因ではないかとして血液サンプル調査が行われたが、病原体は検出されず、代わりに未知なるウイルスがみつかっていた。2010年3月以降になると、同様の病状を呈する報告例が中国中部から北東部の入院患者からも報告され、サーベイランスを強化し、6省で原因の特定と疫学的特性の調査を行った結果、今回の報告に至っている。NEJM誌2011年4月21日号(オンライン版2011年3月16日号)掲載より。

重症びまん性外傷性脳損傷に対する早期減圧開頭術の有効性は?

重症びまん性外傷性脳損傷で治療抵抗性頭蓋内圧亢進を伴う成人患者に対し、早期に両前頭側頭頭頂骨減圧開頭術を行うことは、頭蓋内圧の低下およびICU入室期間を短縮するが、転帰はより不良であることが示された。これまで同治療戦略の有効性については不明であったが、オーストラリア・アルフレッド病院集中治療部のD. James Cooper氏らが多施設共同無作為化試験「DECRA」の結果、明らかにした。NEJM誌2011年4月21日号(オンライン版2011年3月25日号)掲載より。

CKDの進行予測モデル、eGFR、アルブミン尿に血清Caや血清リン値などの追加で精度向上

ステージ3~5の慢性腎臓病(CKD)の進行予測モデルとして、従来の推定糸球体濾過量(eGFR)やアルブミン尿に加え、血清カルシウム(Ca)、血清リン、血清重炭酸塩、血清アルブミン値を追加することで、精度が向上することが示された。米国・ボストンにあるタフツ医療センターのNavdeep Tangri氏らが、CKD患者8,000人超について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月20日号(オンライン版2011年4月11日号)で発表した。

CKDの死亡・末期腎不全リスク、クレアチニンにシスタチンCとACRの追加で予測能向上

慢性腎臓病(CKD)患者の死亡・末期腎不全リスクの予測について、クレアチニン値にシスタチンCと尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)の測定値を加えることで、より精度が向上することが明らかになった。米国・サンフランシスコ退役軍人医療センターのCarmen A. Peralta氏らが、2万6,000人超を対象に行った前向きコホート試験「REGARDS」から明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月20日号(オンライン版2011年4月11日号)で発表した。

末期がん患者に対する化学療法、医療従事者の考え方の違いとは? オランダの調査

末期がん患者に対する化学療法では、医師はこれを継続することで良好な健康状態を維持しようとするのに対し、看護師は継続に疑念を示し、余命の有効活用を優先する傾向があることが、オランダ・アムステルダム大学のHilde M Buiting氏らの調査で示された。がん治療の進歩により有効な治療法が増え、末期がん患者に対する化学療法薬投与の決定は繊細で複雑なプロセスとなっているが、最近の調査では末期がん患者への化学療法施行は増加し、「がん治療の積極傾向(a trend towards the aggressiveness in cancer care)」と呼ばれる状況にある。医療従事者は患者の利益となる治療を提供する義務があるが、患者の自律性に重きが置かれる社会では患者利益は先験的に明らかなわけではなく、化学療法の利益と負担に関する医療従事者の考え方もほとんど知られていないという。BMJ誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月4日号)掲載の報告。

妊婦へのベタメタゾン投与、早産児の呼吸器障害を低減せず:ブラジルの調査

妊娠期間34~36週の妊婦に対する出産前のコルチコステロイド投与は、新生児の呼吸器障害の発生を抑制しないことが、ブラジルInstituto de Medicina Integral Professor Fernando FigueiraのAna Maria Feitosa Porto氏らの調査で示された。妊娠後期の早産児は呼吸器障害の頻度が満期出産児に比べて高く、酸素吸入や換気補助、集中治療のための入院を要するリスクが高い。そこで、特に妊娠期間34週以前の新生児肺の成熟促進を目的に、妊婦に対する出産前コルチコステロイド投与が行われてきたが、妊娠期間34~36週の早産児でも、特に一過性多呼吸の発生リスクが高いという。BMJ誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月12日号)掲載の報告。

プライマリ・ケアにおける肥満に有効な薬物療法のエビデンス:CONQUER試験

診察室ベースのライフスタイル介入にphentermine+トピラマート療法を併用するアプローチは、プライマリ・ケア医が施行し得る肥満に有用な治療法となる可能性があることが、アメリカ・デューク大学医療センターのKishore M Gadde氏らの検討で示された。肥満は寿命を短縮し、心血管疾患やがんなどによる死亡率を上昇させるとともに、2型糖尿病の約90%が過体重に起因し、肥満者における高血圧の頻度は正常体重者の5~6倍に達するとされる。中枢性ノルエピネフリン放出薬であるphentermineはアメリカでは抗肥満薬として広く用いられ、抗てんかん薬トピラマートは単剤で2型糖尿病や高血圧を有する肥満者に対する体重減少効果が確認されているが、用量依存性に神経精神関連の有害事象がみられるという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月11日号)掲載の報告。

高所得国の死産予防で優先すべきリスク因子が明らかに

高所得国の死産予防では、効果的な介入を優先すべき修正可能なリスク因子として妊婦の過体重/肥満、高齢出産、妊娠時の喫煙などが重要なことが、オーストラリアMater Medical Research InstituteのVicki Flenady氏らの調査で明らかにされた。高所得国では、1940年代以降、死産数が著明に減少したが、最近20年間はほとんど改善されていないことが示されている。死産のリスク因子の研究は増加しているものの、予防において優先すべき因子の同定には困難な問題も残るという。Lancet誌2011年4月16日号(オンライン版2011年4月14日号)掲載の報告。

急性期病院におけるMRSA伝播・感染の減少に「MRSA bundle」プログラムが寄与

米国・ピッツバーグ退役軍人病院は2001年より、同地方当局およびCDCとともに、米国の退役軍人病院およびその他で懸念が高まっていたMRSA施設感染を排除するため「MRSA bundle」プログラムに取り組み始めた。パイロット試験としての本取り組みは、4年間で外科病棟のMRSA感染を60%に、ICUは同75%に減少させた。その成功を踏まえ、2007年10月より全米の急性期退役軍人病院にプログラムは順次導入された。本論は、導入が完遂した2010年6月までの間の導入効果をまとめたもので、ピッツバーグ退役軍人病院MRSAプログラム事務局のRajiv Jain氏らが報告した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。

ICUにおける耐性菌伝播を減らすには?

 MRSAとバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)は、医療施設における感染症の主要な要因であり、これら細菌に起因する感染症は通常、患者の粘膜や皮膚などへの保菌(colonization)後に発症がみられ、保菌は医療従事者の手指や汚染媒介物などを介した患者から患者への間接的な伝播や、保菌医療従事者からのダイレクトな伝播によって発生することが知られる。米国・メイヨークリニックのW. Charles Huskins氏らICUにおける耐性菌伝播を減らす戦略研究グループは、MRSA、VREの伝播リスクが最も大きいICUにおいては、積極的監視培養やバリア・プリコーション(ガウン、手袋着用による)の徹底により、ICUにおけるMRSA、VREの保菌・感染発生率を低下すると仮定し、それら介入効果を検討する無作為化試験を実施した。NEJM誌2011年4月14日号掲載より。

HPVワクチン接種スケジュール、0・3・9ヵ月または0・6・12ヵ月でも

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチン接種について、3回の接種を標準スケジュールの初回接種0・2・6ヵ月ばかりでなく、0・3・9ヵ月や0・6・12ヵ月で行っても、効果は非劣性であることが確認された。米国・ワシントン州シアトルのPATHに所属するKathleen M. Neuzil氏らが行った無作為化非劣性試験によるもので、JAMA誌2011年4月13日号で発表した。

肺結核患者へは、4種固定用量合剤が個別投与よりも好ましい

新たに肺結核の診断を受けた患者に対する、リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトールを含む固定用量合剤(FDC)の投与と、各薬剤の個別投与とを比較するオープンラベル非劣性無作為化試験「Study C」が、WHOのChristian Lienhardt氏ら研究グループにより、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの9ヵ国11ヵ所で行われた。FDCは薬剤耐性の出現を防ぐ方法として提唱されたものだが、これまで有効性や安全性の評価に関する無作為化試験はほとんど行われていなかった。JAMA誌2011年4月13日号掲載より。

乳幼児の急性細気管支炎、アドレナリン単剤の有効性示すエビデンス

2歳以下の乳幼児の急性細気管支炎に救急部外来で対処する場合、第1日の入院リスクを最も低減する治療法はアドレナリン(エピネフリン)単剤であることが、カナダAlberta大学小児科のLisa Hartling氏らの検討で示された。急性細気管支炎の治療法は世界中で大きなばらつきがみられ、それぞれの事情に基づいて異なる気管支拡張薬やステロイド薬が使用されている。系統的なレビューがいくつか実施されているが、個々の治療選択肢に関する信頼性の高いエビデンスはいまだに確立されていないという。BMJ誌2011年4月9日号(オンライン版2011年4月6日号)掲載の報告。

スタチンによる血管疾患の1次予防の費用対効果:オランダの調査

プライマリ・ケアにおける血管疾患の1次予防としてのスタチン治療は、低リスク集団では費用対効果がよくないことが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのJP Greving氏らの検討で示された。スタチンは、心血管疾患のない集団における心血管/脳血管イベントのリスクを低減することが示されているが、スタチン治療の絶対的なベネフィットを規定するのは、個々のリスク因子よりもむしろ全体としての血管疾患イベントのリスクと考えられている。また、日常診療におけるスタチン服用のアドヒアランスは十分とは言えず、これが費用対効果を損なっている可能性もあるという。BMJ誌2011年4月9日号(オンライン版2011年3月30日号)掲載の報告。

移植患者へのサイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチン接種でウイルス血症が減少

腎/肝移植患者では、サイトメガロウイルス糖蛋白Bワクチンの接種で誘導された液性免疫によってウイルス血症が減少することが、イギリス・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのPaul D Griffiths氏らの検討で示された。サイトメガロウイルスによるウイルス血症がみられる同種移植患者では、ガンシクロビル(商品名:デノシン)あるいはそのプロドラッグであるバルガンシクロビル(同:バリキサ)の投与によりウイルスに起因する肝炎、肺炎、胃腸炎、網膜炎などの末梢臓器障害の予防が可能である。末梢臓器障害の発現はウイルス量と関連し、ウイルス量は既存の自然免疫の影響を受けるが、ワクチンで誘導された免疫にも同様の作用を認めるかは不明だという。Lancet誌2011年4月9日号掲載の報告。

2つの新世代薬剤溶出性ステントの臨床転帰は2年後も同等:RESOLUTE All Comers試験

新世代の薬剤溶出性ステントであるzotarolimus溶出ステント(Resolute)とエベロリムス溶出ステント(Xience V)の安全性と有効性は、2年後もその同等性が維持されていることが、ドイツ・Isar心臓センターのSigmund Silber氏らが進めているRESOLUTE All Comers試験で明らかとなった。本試験は、冠動脈病変を有する患者におけるzotarolimus溶出ステントのエベロリムス溶出ステントに対する非劣性を検証するプロスペクティブな無作為化試験。すでに、フォローアップ期間1年におけるステント関連の標的病変不全発生の同等性が確かめられている。Lancet誌2011年4月9日号(オンライン版2011年4月3日号)掲載の報告。

青年期のBMI高値は糖尿病、冠動脈心疾患の有意な予測因子

青年期のBMI高値は、中年となった現在の値が標準とみなされる範囲の値であっても、中年期の肥満関連の疾患の予測因子となるなど、これまで明確にされていなかった青年期から成人期のBMI値と若年成人期の肥満関連の疾患との関連が明らかにされた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院内分泌学・糖尿病・高血圧部門のAmir Tirosh氏らが、イスラエル軍医療部隊の定期健診センターを通じて得られたデータを前向きに調査した「MELANY試験」の結果による。NEJM誌2011年4月7日号掲載報告より。

急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカム

急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカムの追跡調査結果が、カナダ・トロント大学のMargaret S. Herridge氏らにより報告された。これまでの長期追跡調査は2年が最長で、患者本人へのインタビューや評価に基づく総合的・長期データ(肺機能、身体機能、健康関連のQOL、医療・介護サービス利用、費用)は集約されていなかった。報告は1998~2001年の間に登録された「TORONTO ARDS」追跡調査からの結果で、被験者は重度の肺障害を有するものの合併症はほとんどない比較的若い患者であった。NEJM誌2011年4月7日号掲載より。

1日100mg以上のオピオイド処方、過剰摂取による死亡リスクを4.5~12倍に増大

オピオイドの処方量と過剰摂取による死亡リスクとには関連があり、1日100mg以上処方した場合は、1日1~20mg未満処方した場合と比べて、過剰摂取による死亡リスクが4.5~12倍に増大することが明らかになった。投与の指示(「定期的に服用」と「必要に応じて服用」)と死亡リスクに関しては、差は認められなかったという。米国・ミシガン大学のAmy S. B. Bohnert氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月6日号で発表した。米国ではここ10年ほどの処方オピオイドの過剰摂取による死亡が増大しており(1999~2007年で124%)、処方パターンと死亡リスクとの関連の可能性が指摘されていた。

子宮摘出歴のある閉経後女性、エストロゲン投与中止後のアウトカム

子宮摘出歴のある閉経後女性で、エストロゲンを服用(5.9年)し、その後服用を中止した人の追跡10.7年時点における冠動脈心疾患や深部静脈血栓症(DVT)、股関節骨折の年間発生リスク増大との関連は、いずれも認められないことが明らかにされた。米国・Fred Hutchinsonがん研究センターのAndrea Z. LaCroix氏らが、被験者1万人超を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験で、予定より早期にエストロゲン投与を中止した人についての、その後のアウトカムを追跡した結果による。JAMA誌2011年4月6日号で発表した。