ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:345

DESへのCOX2阻害薬追加で再狭窄抑制

服用による心筋梗塞リスク増加が懸念されている選択的COX2阻害薬だが、その1つcelecoxibは、薬剤溶出ステント(DES)留置前からの服用開始により6ヵ月間の経皮的冠血行再建術(PCI)再施行を減少させる可能性が示唆された。Lancet誌8月18日号にNational University of Seoul(韓国)のBon-Kwon Koo氏らが無作為化オープン試験の結果として報告した。抗血小板薬中止後の超遠隔期血栓がDESの最大問題となっている現在、この研究の臨床的価値はどのようなものだろうか──。

小細胞肺癌では予防的全脳照射を標準治療とすべき

小細胞肺癌は肺癌全体の13%を占める予後不良の疾患で、化学療法による長期生存は期待できない(2年生存率:1977年1.5%→2000年4.6%)。また共通して脳転移がみられるのが特徴で、診断時に少なくとも18%に脳転移があり2年間で80%近くに達する。 脳転移は予後不良を示す。維持化学療法では転移を防げず、発症後の全脳照射治療も有効ではない。しかし予防的全脳照射の有効性は多数のメタアナリシスによって示されている。そこで欧州癌研究治療機関(EORTC)の肺癌グループは、本治療を実行に移すため無作為化試験を行った。NEJM誌8月16日号の報告から。

睡眠時周期性四肢運動障害の遺伝子変異を確認

不穏下肢症候群(RLS)は、脚を動かしたいという抑えられない衝動を特徴とする一般的にみられる神経性障害である。RLSは睡眠を妨げる一因となり、そのためRLS患者の大部分で睡眠時周期性四肢運動障害を有すると同時に、同疾患の生理学的指標とされている。 deCODEジェネティクス社(アイスランド)のHreinn Stefansson氏らは、RLSの一因と言われてきた遺伝子配列変異体を捜すため、ゲノムワイド関連研究と2つの再現性研究を実施した。NEJM誌オンライン版7月18日号、本誌8月16日号より。

食習慣は大腸癌発病に加え再発にも深く関与

大腸癌発病と食事の因果関係については知られているが、患者の予後における食事の影響については明らかにされていない。アメリカ・ボストンのダナ・ファーバー癌研究所のJeffrey A. Meyerhardt氏らは、食パターンと大腸癌生存者の再発率および死亡率との関連に着目して、前向き観察研究を実施した。JAMA誌8月15日号の報告から。

HPV感染女性へのワクチン投与の有効性は皆無

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、HPV感染症と子宮頸部前癌および癌の発現を予防するために開発され、発癌性のHPVにすでに感染している女性に対してもワクチン接種を検討すべきとの説もある。米国立癌研究所のAllan Hildesheim氏らのグループは、子宮頸癌との関連が指摘されているHPV16と18の2タイプについて、既感染女性への予防接種がウイルス・クリアランス率を向上させるかどうか無作為化試験を実施した。報告はJAMA誌8月15日号に掲載された。

クラミジアの組織的スクリーニングは本当に費用効果に優れるか

イギリスでは2003年4月に、国の主導によるクラミジア(Chlamydia trachomatis)のスクリーニングプログラムが開始されたが、それ以前は組織的スクリーニングは行われていなかった。クラミジアの組織的スクリーニングは費用効果が優れるとする報告のほとんどが、感染症の評価には不適切な静的モデルを用いている。 イギリス・バーミンガム大学健康サービス管理センター健康経済学のTracy Roberts氏らは、家庭をベースとした地域住民におけるクラミジアの積極的な組織的スクリーニングの費用効果を、非組織的スクリーニング(組織的な勧奨は行わず受診は対象者の意志に委ねられる)との比較において評価する試験(ClaSSプロジェクト、http://www.chlamydia.ac.uk/index.htm)を実施、BMJ誌7月26日付オンライン版、8月11日付本誌で報告した。

乳癌の「2週間ルール」はまったく役に立っていない、直ちに見直しを

論文冒頭に、著者は記している。「当初の楽観的展望は短命に終わった」。 イギリスでは照会から専門医による診察までの順番待ちの期間が長く、その結果としての診断、治療の遅れが高い乳癌死亡率の理由の一端とされていた。そこで、1999年、乳癌が疑われる女性は一般医(GP)からの照会後2週間以内に専門医の診察を受けるという「2週間ルール」が導入された。しかし、科学的基礎に乏しいため当初からその効果を疑問視する声があった。 イギリス・ブリストル市Frenchay病院乳癌治療センターのShelley Potter氏らは、乳癌の2週間ルールが照会パターン、癌の診断、待ち時間に及ぼす長期的効果を評価した。BMJ誌7月13日付オンライン版、8月11日付本誌掲載の報告。

サプロプテリンのフェニルケトン尿症に対する有用性を確認

現在、フェニルケトン尿症における精神遅滞の予防法としては、早期の厳格な食事療法があるのみである。最近、新たな治療アプローチとして、テトラヒドロビオプテリン(BH4)あるいはその生物学的活性合成体であるサプロプテリン(6R-BH4)によるフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の活性化の増強が注目されている。 アメリカ・ボストン小児病院のHarvey L. Levy氏らは、フェニルケトン尿症におけるサプロプテリンの血中フェニルアラニン濃度低下作用について検討するために、プラセボ対照無作為化第III相試験を実施した。8月11日付Lancet誌掲載の報告から。

高齢AF患者に対してもワルファリンはアスピリンよりも有用:BAFTAスタディ

これまでのメタ解析では確認されなかった75歳以上の心房細動(AF)患者に対するワルファリンの有用性だが、Lancet誌8月11日号に掲載された BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation Treatment of the Aged)スタディの結果によれば、ワルファリンによる出血性合併症の増加は必ずしも脳塞栓症・脳梗塞の減少による有用性を相殺しないという。英国 University of BirminghamのJonathan Mant氏らが報告した。

重症血友病A男児への第VIII因子の有効な投与法

1960年代に行われた小規模試験の結果を受け、血友病性関節症の予防に第VIII因子の投与が有効であることが推奨され臨床家の間に広がった。その後 1980年代に、血漿由来の第VIII因子がヒト免疫不全や肝炎ウイルスに汚染されていることが判明し予防的治療は激減。1992年にアメリカで血友病患者への安全投与を見据えた組み換え型第VIII因子が承認されたが、投与の開始時期、投与量、期間については明らかになっていない。 コロラド大学保健科学センターのMarilyn J. Manco-Johnson氏らは、重症の血友病Aの男児を対象に無作為化試験を行い、有効な方法について検証した。NEJM誌8月9日号の報告から。

早期・持続的・重層的な非薬物的介入は有効なインフルエンザ対策となる

インフルエンザ・パンデミック(世界的大流行)への重要な対策の1つに、非薬物的介入がある。流行時期を遅らせ、全体の発病率やピークを低下させ、死亡者数を減らす可能性のほか、ワクチンや抗ウイルス剤の生産と供給に時間的余裕をもたらす可能性があるからだ。最適かつ適切な非薬物的介入は、医療サービスと発症地域の負担を減少させることになる。ミシガン大学医学部医学史センターのHoward Markel氏らは、最適かつ適切な非薬物的介入を明らかにするため、20世紀最悪と言われたいわゆる「スペイン風邪」流行時の、全米43都市における非薬物的介入の状況を調べた。JAMA誌8月8日号の報告から。

高齢男性の骨粗鬆症性骨折予防治療の費用対効果は?

60歳白人男性が残りの生涯で、骨粗鬆症が原因で骨折する可能性は29%に上るなど、高齢男性の骨粗鬆症性骨折は重大な健康問題と認識されている。カナダ骨粗鬆学会は70歳以上あるいは65歳以上の全男性で骨密度検査を行うべきと提唱しているが、米国予防医療対策委員会やカナダ予防医療対策委員会では勧告を行っていない。女性については65歳以上での骨密度検査と予防的治療の費用対効果が実証されているが、男性については明らかになっていないため。そこでミネアポリスのPark Nicollet Health Servicesリウマチ学のJohn T. Schousboe氏らは、男性について費用対効果を検証した。JAMA誌8月8日付け報告から。

WHIスタディに続き閉経後ホルモン補充療法の有用性を否定:WISDOM

閉経後女性に対するホルモン補充療法は心血管系イベントを、かつて考えられていたのとは逆に増加させることが、英、豪、ニュージーランド3国の共同研究であるWISDOMの結果、明らかになり、2004年に米国で報告されたWomen's Health Initiative(WHI)スタディの結果が再確認される形となった。BMJ誌のHPにて早期公開された(オンライン版7月11日号、本誌8月4日号掲載)。

性的禁欲だけで、高所得層のHIV感染を予防できるか

2005年にはAIDS関連の原因により毎日7,600人以上が死亡し、世界のHIV感染者数は約3,860万人に達している。新規感染率は1990年代末にピークを迎えたとの見方がある一方で、新たな感染拡大が懸念されるなか、これまでの治療偏重への反省から、最近では予防に関する研究が活発化している。 「性的禁欲のみによる予防プログラム」とは、HIV感染予防の手段として性的禁欲教育のみを実施し、コンドームの使用など、より安全な性交の奨励は行わない予防戦略。Kristen Underhill氏ら、オックスフォード大学Evidence-based Interventionセンターの研究グループは、高所得層は貧困などHIV感染の構造的なリスク因子に接する機会が少ないため、性的禁欲のみによる予防プログラムの効果を示すには最適の対象との仮説に基づいて体系的なレビューを行った。BMJ誌7月26日付オンライン版、8月4日付本誌掲載の報告から。

途上国の子宮頸癌予防に4%酢酸による頸部視診(VIA)が有効

子宮頸癌は多くの途上国で最も発症頻度が高い女性の癌である。細胞診によるスクリーニングの有用性は途上国でも確認されているが、サハラ以南のアフリカ、南アジアなど細胞診が困難な地域では代替法として3~5%酢酸を用いた頸部視診(VIA)が行われている。生涯に1度のVIAは費用効果に優れることが示唆されているが、実際の臨床プログラムにおける子宮頸癌の予防、死亡率の抑制効果は不明である。 Rengaswamy Sankaranarayanan氏ら、フランス・リヨン市の国際癌研究機関(IARC、http://www.iarc.fr/)の研究グループは、インドの高リスク集団を対象に4%酢酸によるVIAスクリーニングの効果を検討、8月4日付Lancet誌でその結果を報告した。

IFN beta-1bによる早期治療が多発性硬化症の進展を抑制

最初の神経学的症状[clinically isolated syndrome(最初のエピソードからなる症候群)]により多発性硬化症(MS)が強く示唆される症例に対するinterferon (IFN)beta-1b治療は、臨床的に診断確実なMS(CDMS)への進展を遅延させることが示されている。また、不可逆的な軸索損傷や身体障害をもたらすイベントを早期に抑制すれば、より優れた効果が期待できることも指摘されている。 一方、初回イベント発生後、早期のIFN beta-1b治療を遅延的治療と比較した対照比較試験はない。スイス・バーゼル大学病院のLudwig Kappos氏らは、早期治療の有用性を評価するBENEFIT試験の3年間のデータについて解析を行い、8月4日付Lancet誌上で報告した。

リウマチ性心疾患の二次予防高めるためにも心エコースクリーニングを

リウマチ性心疾患の有病率に関する疫学研究を見ると、疑いのある症例が見いだされると心エコーで確認するという臨床的スクリーニング法が用いられていることが明らかである。パリ・デカルト大学のEloi Marijon氏らは、調査対象すべての小児に対して心エコースクリーニングを施行すれば、リウマチ性心疾患の有病率は有意に高くなると仮説を立て両スクリーニングによる検出に違いがないかを検討した。背景には、公衆衛生の上で重要な意義を持つのではないかとの考えがあっての研究報告。NEJM誌8月2日号に掲載された。

子宮頸管短縮症へのプロゲステロン投与は自然早産リスクを低下する

早産を経験した女性へのプロゲステロン投与が、再発リスクを低下させることは過去の無作為化試験によって明らかにされている。妊娠中期スクリーニンググループ(Fetal Medicine Foundation Second Trimester Screening Group)のEduardo B. Fonseca氏らは今回、自然早産のリスクが極めて高い妊娠中期に子宮頸管短縮が見られる無症候例について、プロゲステロン投与がリスクを低下させるかどうかを検証した。報告はNEJM誌8月2日号に掲載された。