ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:347

進行結腸・直腸癌に対するCAIROレジメン投与、同時or逐次どちらが有用か?

進行結腸・直腸癌に対する化学療法の至適レジメンについては、first-line治療のみならずsecond-line、third-line治療をも視野に入れ、最も有効な薬剤の組み合わせとその効果的な投与法の探索が進められている。進行結腸・直腸癌に対する標準的治療薬であるフルオロウラシル(5-FU)に、塩酸イリノテカン(CPT-11)およびオキサリプラチン(L-OHP)を併用するアプローチは生存期間の延長など臨床的ベネフィットをもたらすことが示されている。 オランダ・ラドボウド大学ナイメーヘン医療センターのMiriam Koopman氏らは、5-FUの代わりに経口フッ化ピリミジン薬であるカペシタビン(CAP)を用い、CPT-11、L-OHPの3剤の組み合わせ(CAIRO)に関する2つの投与法の有用性を評価する無作為化第III相試験を実施した。7月14日付Lancet誌に掲載された報告から。

食品への葉酸補強義務化で神経管欠損症が減少

1998年、さまざまな穀類製品に葉酸の補強が義務付けられたカナダでは、歴史的に神経管欠損症の有病率が、西部よりも東部で高い傾向を有するという。カナダ・ケベック州ラバル大学Philippe De Wals氏らの研究グループは、葉酸補強が義務付けられた前後の神経管欠損症有病率の変化について調査を行い、葉酸補強の効果を検証した。本報告はNEJM誌7月12日号に掲載された。

HCV患者へのペグインターフェロンα-2a+リバビリン16週投与の効果

C型肝炎ウイルス(HCV)遺伝子型が2型または3型に感染した患者に対し24週間、ペグインターフェロンとリバビリンを投与すると、約80%の患者でウイルス学的反応率が持続する。では投与期間を16週とした場合でも、この効果が持続するのだろうか。その効果を判定する大規模無作為化多国籍非劣性試験が、ACCELERATE研究グループによって行われた。NEJM誌7月12日号の報告から。

小児の反復性UTIに抗菌薬予防投与は効果なし

小児の反復性尿路感染(UTI)の危険因子と、抗菌薬の予防投与の有益性に関する十分な証拠は得られていない。そのためアメリカ・ペンシルベニア大学のPatrick H. Conway氏らのグループは、小児科プライマリ・ケア・コホートで反復性UTIの危険因子を同定すること、また抗菌薬の予防投与と反復性UTIとの関連性を評価すること、さらに反復性UTIに見られる耐性の危険因子を同定することを目的にtime-to-event解析を行った。本研究報告はJAMA誌7月11日号に掲載された。

小児癌生存者は有害事象リスクの負荷に応じた医学的監視が必要

小児癌患者の生存率は、治療に付随する多発性の晩期障害を伴いながらも改善をみている。しかし、小児癌生存者に関する研究の大半は、1つの晩期障害にだけ着目されていた。そこでオランダ・Emma Children's Hospital/Academic Medical CenterのMaud M. Geenen氏らの研究グループは、生存者の大規模かつ長期的な医学的追跡調査を行い、小児癌治療後のすべての健康予後悪化のリスクを評価することを試みた。JAMA誌6月27日号の報告から。

液状化細胞診(LBC)は子宮頸癌の検出に有用か:非無作為化プロスペクティブ試験の結果

数十年にわたり、子宮頸癌および前癌病変のスクリーニングには子宮頸部のスメアによるマニュアル式の検査が行われてきたが、多くの国ではコンピュータを用いた液状化細胞診(liquid based cytology:LBC)へ移行しつつある。LBCはヒトパピローマウイルス(HPV)を検出でき、診断の迅速化、自動化によるコストの削減が可能とされるが、従来法よりも正確度(accuracy)が優れることを示すエビデンスは十分ではない。 オーストラリア・シドニー大学環境衛生学部のElizabeth Davey氏らは、子宮頸癌の指標としての子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の診断の正確度について、従来法とLBCを比較するためのプロスペクティブな検討を行った。BMJ誌6月29日付オンライン版、7月7日付本誌掲載の報告から。

液状化細胞診(LBC)は子宮頸癌の検出に有用か:大規模無作為化試験の結果

液状化細胞診(liquid based cytology:LBC)は子宮頸癌のスクリーニング法として広く用いられている。しかし、その診断の正確度(accuracy)を検証した研究のほとんどが非無作為化試験あるいは1人の女性に2つの検査を実施して比較するものであり、無作為化試験は小規模な研究が1つあるのみだという。 イタリア・トリノ市の癌予防センター腫瘍疫学のGuglielmo Ronco氏らは、子宮頸癌のスクリーニングにおける従来法とLBCの正確度を比較する大規模な無作為化試験を実施した。BMJ誌5月21日付オンライン版、7月7日付本誌に掲載された報告。

メタ解析で明らかになったHIV/AIDSにおける発癌リスク

HIV治療の進歩により、HIV感染後の生命予後は以前に比べだいぶ長くなった。そこで近年、関心の高まりを見せているのが、「発癌リスク」などHIVの長期感染に伴う合併症の問題だ。元来、免疫低下が直接関係する癌としてHIV感染者やAIDS患者で指摘されてきたのは、カポジ肉腫、非ホジキン性リンパ腫、子宮癌の3種のみだが、臓器移植後の免疫低下患者では、広範囲の癌種の発症増加が報告されている。 このような中、7月7日付Lancet誌で報告されたオーストラリアにあるニュー・サウス・ウェールズ大学のGrulich氏らの研究では、HIV/AIDSを対象にしたコホート試験と、臓器移植のレシピアントを対象にしたコホート試験とをメタ解析した結果、臓器移植レシピアント群だけでなくHIV/AIDS群においても、免疫低下が主因と考えられる多種の感染症由来の癌発症リスクが増大していることが明らかにされた。

従来療法に劣らぬ効果が報告された新・抗HIV療法

HIV感染症の治療は、抗HIV薬の多剤併用療法(HAART)の導入により劇的な進歩を遂げた。しかし、初回の抗HIV療法に失敗した感染者に対して、いかにウイルスを抑制し、その効果を長期間持続させていくかはいまだに大きな課題となっている。そのような中で開発された新規プロテアーゼ阻害薬(PI)のdarunavir(DRV:日本では申請中)について、 7月7日付のLancet誌に興味深い報告が発表された。ブラジル・サンパウロのCentro de Referência e Treinamento DST/AIDSのMadruga氏らが行った第III相無作為臨床試験「TITAN」の結果、darunavirとリトナビルの配合剤(DRV/r)が、現在繁用されているPI配合剤のロピナビル・リトナビル配合剤(LPV/r)に劣らぬ抗ウイルス効果を示すことが明らかにされたのだ。

意外にも着床前遺伝子検査は高齢女性の体外受精成功率を低下

体外受精(IVF)を受けた母体年齢の高い女性の妊娠率は、強い期待にもかかわらず低いという現実がある。一方で、流産の可能性が極めて高い異数性を対象に行われる卵割段階の胚への着床前遺伝子検査が、これら女性のIVFの成功率を高める可能性が示唆されている。 オランダ・アムステルダム大学生殖医療センターのSebastiaan Mastenbroek氏らのグループは、着床前遺伝子検査を行ったIVF群と行わなかったIVF群の妊娠率等の比較調査を行い、その可能性について検証した。NEJM誌7月5日号掲載(7月4日オンライン版で初公開)の報告から。

飛行中の旅客機内でも急性高山病は起きる?

 急性高山病は気圧の低い高地を旅行した際、順応性が弱い一部の人に出現する。この「気圧の低い高地」の条件は飛行中の旅客機でも生じるが、乗客に高山病が出現するかどうかは明らかではない。  ボーイング・メディカル社のJ. Michael Muhm氏らは、飛行中の旅客機と同様の環境を用意し、不快感がどのようなメカニズムで、どの程度の頻度で現れるのかを調査した。NEJM誌7月5日号掲載の報告から。  Muhm氏らは、海抜650、4,000、6,000、7,000、8,000フィート(各198、1,219、1,829、2,134、2,438m)相当における飛行中の旅客機と同様の気圧低下が動脈血酸素飽和度、急性高山病、不快の発生に及ぼす影響を判定するため、成人ボランティアを対象に、20時間の模擬飛行試験を実施した。測定には自覚症状質問表(Environmental Symptoms Questionnaire IV)への回答が用いられ、前向き単盲検対照低圧室研究として実施された。

内リンパ嚢腫瘍の聴覚障害発生メカニズム

内リンパ嚢腫瘍(ELSTs)はフォン・ヒッペル‐リンダウ病(網膜小脳血管腫症:VHL)と関連しており、不可逆性の感音難聴(SNHL)や前庭障害の原因になると言われている。しかしその基本的なメカニズムは依然として不明であり、治療の最適なタイミングもわかっていない。アメリカ国立衛生研究所(NIH)のJohn A. Butman氏らのグループは ELSTs と関連する聴覚前庭障害の発生メカニズムを明らかにするため、1990年5月から2006年12月にかけてNIHでVHL患者とELSTs患者を対象に、前向き連続評価を実施。判明した発生メカニズムについて、JAMA誌7月4日号に報告された。

毎日少量のチョコレート摂取で血圧が低下

ココアを含む食品の日常的な摂取が、心血管系の死亡率低下に寄与することは観察研究で明らかにされている。またココアの高用量摂取が、2週間ほどの短期介入でも血管内皮機能を高め、ココア・ポリフェノールの作用で血圧を低下させることが示唆されてもいる。しかし習慣的なココア摂取が血圧に及ぼす臨床的効果とそのメカニズムは不明だ。そこで、ドイツ・ケルン大学のDirk Taubert氏らは、ポリフェノールの豊富なチョコレートを低用量摂取した場合の、血圧変化について判定した。JAMA誌7月4日号に掲載。

「出来高制」の医療報酬制度は医師のモチベーション低下につながらない

近年、臨床現場における医療の質の向上を図るために、医師や看護師などの医療提供者に対し、「出来高制」の報酬制度を取り入れるなど、報酬面での動機付け(Financial Incentives)を利用することに関心が高まっている。しかし一方で、このような報酬制度の採用による悪影響はないのだろうか。マンチェスター大学のR. McDonald氏らは、初期医療を行う英国の一般診療所において、このような報酬制度の導入が、医師や看護師の提供する医療の質とともに、診療の自主性、内面的なモチベーションにどのような影響を及ぼすかを検討した結果、「医師の内面的なモチベーションに悪影響は見られなかった」と報告した。BMJ誌5月17日付オンライン版、本誌6月30日号より。

英国の電子カルテ普及など国民医療保健サービスIT化の課題

2002年以降、英国の国民医療保健サービス(NHS)は、電子カルテの普及を基盤とする大規模なIT化推進プログラムに取り組んでいる。NHSのIT化は現在どこまで進行しているのか。2003年以来、同IT化プログラムの推進状況とその成果について調査を続けているロンドン・Imperial 大学のJ. Hendy氏らは、急性期病院トラストの管理職がIT化プログラムの導入に関してどのような危惧を抱いているかについての最新調査結果を、BMJ誌5月17日付オンライン版(本誌では6月30日号)に報告した。その中で迅速なプログラム開発と、現場への情報提供の必要性を指摘している。

自家細胞注入法は女性の腹圧性尿失禁の標準的治療法となるか

尿失禁のうち、急迫性尿失禁は排尿筋の過活動によって起き、腹圧性尿失禁は尿道括約筋複合体の機能障害を原因とする。女性の尿失禁の8割近くが腹圧性あるいは混合性であることから、尿道括約筋複合体(尿道、横紋筋性括約筋)を治療ターゲットとしたアプローチは有望と考えられている。 前臨床試験では、自家筋芽細胞の経尿道的注入により横紋筋性括約筋の再生が促進され、線維芽細胞は尿道粘膜下層の再建に有効なことが示されている。オーストリア・インスブルック医科大学泌尿器科のStrasser氏らは、腹圧性尿失禁に対する経尿道的超音波ガイド下自家筋芽細胞/線維芽細胞注入法と従来の内視鏡的コラーゲン注入法の有効性と認容性を比較する無作為化試験を実施、その結果を6月30日付Lancet誌上で報告した。

HPVワクチンの子宮頸癌予防効果を確認、PATRICIA studyの中間解析から

子宮頸癌の主要な原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)感染が注目を集め、その対策としてHPVワクチンの予防投与への期待が高まっている。子宮頸癌の発症率が高いアフリカ、南アジア、南米の途上国における普及が急がれる一方で、先進国では女児への予防投与によって若者の性道徳が乱れるのではないかとの懸念の声が上がるなど、一般市民レベルの議論もさかんだ。 発癌性を有するHPVは15のタイプが確認されており、そのうちHPV16およびHPV18が子宮頸癌の70%以上に関連することが国際的な調査で示されている。フィンランド・ヘルシンキ大学産婦人科のPaavonen氏らは、子宮頸癌の予防法としてのHPV16/18 L1ウイルス様粒子ワクチン投与の有用性を評価するための国際的な無作為化第III相試験(PATRICIA study)を実施しており、6月30日付Lancet誌上でその中間解析の結果を報告した。

30年間にわたる超早産児の脳性麻痺出現率の変化

超早産児においては極めて高率で脳性麻痺(CP)が見られることは報告されてきたが、公表されているCP有病率は、出生年代が異なるさまざまな臨床現場からの報告で、その点での比較に限界が指摘されていた。カナダ・アルバータ大学のCharlene M. T. Robertson氏らは、30年間にわたる超早産児のCP有病率の変化を、域内人口動態および在胎月齢に着目して評価を試みた。JAMA誌6月27日号に掲載。