ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:246

英国の自殺率上昇、景気後退が影響

 最近の英国の自殺率の上昇は、2008年に始まった財政危機に関連することが、英国・リバプール大学のBen Barr氏らの調査でわかった。英国の自殺率は長期的に低下していたが、2008年に上昇に転じた。2008~2010年の景気後退の影響が示唆されていたが、これを検証する研究は行われていなかった。BMJ誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月14日号)掲載の報告。

HIV患者の抗レトロウイルス療法、プライマリ・ケア看護師への移行は可能か?

 HIV患者に対する抗レトロウイルス療法(ART)の導入や再処方を医師に代わって看護師が行うアプローチは安全に遂行可能であり、健康アウトカムやケアの質を改善することが、南アフリカ・ケープタウン大学肺臓研究所のLara Fairall氏らが実施したSTRETCH試験で示された。南アフリカにおけるART普及の主な障壁は治療医の不足であり、ART導入の遅れによりART待機患者の死亡率が上昇することが知られている。ARTの医師から他の医療職への職務移行の可能性に期待が寄せられているが、その有効性に関するエビデンスは十分でないという。Lancet誌2012年9月8日号(オンライン版2012年8月15日号)掲載の報告。

障害児は暴力を受けるリスクが高い?:約1万8,000人のメタ解析

 障害児は非障害児に比べ暴力の犠牲になる可能性が高いことが、英国・リバプール・ジョン・ムーアズ大学のLisa Jones氏らの調査で示唆された。ただし、このメタ解析では各試験結果に顕著な異質性を認めたため結果の妥当性には疑問が残るという。中等度~重度の障害を持つ子どもは世界で9,300万人を下らず、障害児は非障害児に比べ暴力の犠牲となるリスクが高いという。効果的な予防プログラム開発の初期段階として、信頼性の高い評価基準の策定が必須とされる。Lancet誌2012年9月8日号(オンライン版2012年7月12日号)掲載の報告。

小児期の吸入グルココルチコイド服薬と発育との関連/NEJM

 思春期前の小児における吸入グルココルチコイドの使用は、服薬開始後数年間の発育を低下し、大人になった時の身長は低くなるが、発育の低下は進行も累積もしないことが明らかにされた。米国・ニューメキシコ大学のH. William Kelly氏ら小児喘息マネジメントプログラム(CAMP)研究グループが、「服薬開始後1~4年の発育の低下が、成人でも発育を低下するとは考えられない」として、同プログラム参加者を対象に調査した結果で、NEJM誌2012年9月6日号(オンライン版2012年9月3日号)にて発表した。

CT検出の肺動脈拡張、COPDの重度増悪と関連

 CTによって検出される肺動脈拡張(PA:A比>1)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)重度増悪のリスク因子であることが、米国・アラバマ大学バーミングハム校のJ. Michael Wells氏らによる多施設共同観察試験の結果、明らかにされた。COPDの増悪は、肺機能の急激な低下および死亡と関連し、それらイベントリスクのある、とくに入院を要するような患者を同定することは重要とされる。急性増悪の予測として重度肺高血圧症があるが、これは進行したCOPDの重大な合併症である。一方で、肺血管の異常はCOPD早期に発生する。そこで研究グループは、CTで検出した肺血管疾患とCOPDの重度増悪との関連について検討した。NEJM誌2012年9月6日号(オンライン版2012年9月3日号)掲載報告より。

心筋梗塞後のクロピドグレルの効果は、糖尿病合併の有無で違いがあるか?

 心筋梗塞発症後のクロピドグレル(商品名:プラビックス)服用について、糖尿病がある人は、ない人に比べ、全死亡リスクや心血管死リスクへの有効性が低下することが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学のCharlotte Andersson氏らが、心筋梗塞発症患者約6万人について追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2012年9月5日号で発表した。糖尿病患者は、クロピドグレルを服用しているにもかかわらず、薬力学試験において高い血小板反応性が認められている。臨床試験においては、糖尿病患者へのクロピドグレル服用効果が非糖尿病患者と同等であるか否かについて、明らかな結果は出ていなかったという。

CMRは心電図より無症候性心筋梗塞を高率に検出する

 高齢者で心血管核磁気共鳴画像法(CMR)により無症候性心筋梗塞が検出された人は、症候性心筋梗塞患者よりも死亡率が約1.5倍高いことが明らかにされた。一方で心電図(ECG)により無症候性心筋梗塞が検出された人では、死亡率の増大が認められなかった。米国国立衛生研究所(NIH)のErik B. Schelbert氏らが、約900人について行った地域ベースのコホート試験から報告したもので、JAMA誌2012年9月5日号で発表した。無症候性心筋梗塞の検出は予後予測にとって重要だが、ECGでは同検出能に限界があるとされていた。

ロタウイルスワクチン接種、小児の胃腸炎による入院予防に効果

 ロタウイルスワクチン(商品名:ロタリックス、ロタテック)接種は、ロタウイルス胃腸炎小児の入院の予防に有効なことが、ベルギー・アントワープ大学のTessa Braeckman氏らの検討で示された。ロタウイルスは世界的に、小児の重篤な急性胃腸炎の最大の原因であり、高所得国では死亡例はまれだが、WHOはすべての国がロタウイルスワクチンを導入するよう勧告している。低・中所得国ではワクチンのルーチン接種の有効性が示されているが、高所得国におけるエビデンスは少なく、ベルギーはEUで最初のルーチン接種導入国だという。BMJ誌2012年9月1日号(オンライン版2012年8月8日号)掲載の報告。

プロゲスチン単独避妊薬は静脈血栓塞栓症リスクを増大させない

 プロゲスチンのみを含有する経口避妊薬は、女性の静脈血栓塞栓症のリスクを増大させないことが、米国・Lahey Clinic(マサチューセッツ州、バーリントン)のSimon Mantha氏らの検討で示された。ホルモン系避妊薬による静脈血栓塞栓イベントのリスクは、エストロゲンの量およびプロゲスチンの剤型の影響を受ける。静脈血栓塞栓症の発症リスクが高い女性(産後、遺伝性血栓性素因、静脈血栓塞栓症の既往など)は、プロゲスチン単独による避妊が好ましいとされるが、プロゲスチン単独避妊薬と血栓の関連を評価したデータはわずかだという。BMJ誌2012年9月1日号(オンライン版2012年8月7日号)掲載の報告。

変形性関節症の関連遺伝子座を同定:arcOGEN試験

 変形性関節症と強い関連を示す5つの遺伝子座の存在が、英国・Wellcome Trust Sanger InstituteのEleftheria Zeggini氏らarcOGEN Consortium and arcOGEN Collaboratorsの検討で明らかとなった。変形性関節症は世界的に最も高頻度にみられる関節炎で、高齢者における痛みや身体障害の主要原因であり、その医療経済的な負担は肥満の増加や加齢に比例して増大する。変形性関節症には強力な遺伝要因がみられるが、以前に行われた遺伝子解析はサンプル数が少なく、表現型の不均一性のためその限界が指摘されていた。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年7月3日号)掲載の報告。

心筋梗塞のリスクはCKDが糖尿病よりも高い、約127万人のコホート試験

 心筋梗塞による入院のリスクは、心筋梗塞の既往歴がある場合に最も高いが、既往歴がない場合はCKDが糖尿病よりも高リスクであることが、カナダ・Alberta大学のMarcello Tonelli氏らAlberta Kidney Disease Network(AKDN)の検討で示された。糖尿病の冠動脈イベントのリスクは心筋梗塞の既往歴に匹敵すると考えられている。慢性腎臓病(CKD)も冠動脈イベントのリスクが高い(とくに蛋白尿がみられる場合)とされるが、CKDによる冠動脈イベントのリスク等価性を糖尿病と比較した試験はなかったという。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年6月19日号)掲載の報告。

中程度リスクの冠動脈性心疾患リスク予測、冠動脈カルシウムの追加で予測能改善

 中程度リスクの人に対する冠動脈性心疾患などの予測モデルについて、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウム値などを加えることで予測能が改善することが示された。米国・Wake Forest University School of MedicineのJoseph Yeboah氏らが、1,300人超を約8年追跡して明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月22・29日号で発表した。これまで、フラミンガム・リスクスコアに冠動脈カルシウムや冠動脈性心疾患の家族歴などを追加した場合の冠動脈性心疾患の予測能改善については、単一コホートで直接比較した研究はなかったという。

CABGの静脈グラフトにおける内視鏡的採取、切開採取と長期アウトカムは同等

 冠動脈バイパス術(CABG)の静脈グラフトについて、内視鏡的採取と切開採取では、長期死亡率は同等であることが示された。米国・デューク大学メディカルセンターのJudson B. Williams氏らが、CABGを受けた23万人超を対象とした観察研究で明らかにしたもので、JAMA誌2012年8月1日号で発表した。静脈グラフトの内視鏡的採取は1990年代半ばから使われているが、その安全性については、近年、疑問が持ち上がっていたという。

交代勤務で血管イベントが増加、200万人以上の国際的メタ解析

 交代勤務制の労働形態により、血管イベントが有意に増加することが、カナダ・ウェスタン大学のManav V Vyas氏らの検討で示された。交代勤務は、一般に規則的な日中勤務(おおよそ9~17時の時間帯)以外の勤務時間での雇用と定義され、高血圧、メタボリック症候群、脂質異常症、糖尿病のリスクを増大させることが知られている。さらに、概日リズムの乱れにより血管イベントを起こしやすいとの指摘があるが、相反するデータもあるという。BMJ誌2012年8月25日号(オンライン版2012年7月26日号)掲載の報告。

精神的苦痛で死亡リスクが20%上昇、重症例では約2倍に

 うつ、不安などの精神的苦痛が重症化するほど死亡リスクが増大し、通常は治療の対象とはならない軽度の精神的苦痛でも、がん死以外の死亡リスクが有意に上昇することが、英国・Murray Royal病院のTom C Russ氏らの検討で明らかとなった。精神的な苦痛として一般的に取り上げられることが多いうつや不安が、さまざまな原因による死亡と関連することを示唆するエビデンスがある。しかし、これまでに行われた試験は、リスクの閾値を確定するには統計学的に十分な検出力がなく、信頼性は低いという。BMJ誌2012年8月25日号(オンライン版2012年7月31日号)掲載の報告。

肺移植、喫煙ドナー肺はレシピエントの予後を改善するか?

 喫煙ドナー肺の移植を受けた患者の移植後3年間の生存率は、非喫煙ドナー肺の移植を受けた患者に比べ不良だが、非喫煙ドナー肺の提供を待ち続けるよりは良好なことが、英国・バーミンガム大学病院のRobert S Bonser氏らの検討で示された。肺移植の臓器選択基準では、当初、ガス交換機能がほぼ完全な若いドナー肺のみが適応とされたが、移植治療の進歩に伴い基準が見直され、喫煙歴のあるドナー肺の移植も行われている。喫煙ドナー肺はレシピエントの生存に有害な影響を及ぼすことが懸念されるが、喫煙ドナーを除外するとドナー数が減り、移植を待つ患者の生命を脅かす可能性があるため、喫煙ドナー肺のリスクの正確な評価が求められている。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版5月29日号)掲載の報告。

t-PA療法後の早期アスピリン静注追加は急性虚血性脳卒中の予後を改善するか?

 アルテプラーゼ(商品名:グルトパ、アクチバシン)静注療法を施行された急性虚血性脳卒中患者に対し、再閉塞予防の目的で早期にアスピリン静注を行うアプローチは有効ではないことが、オランダ・アムステルダム大学のSanne M Zinkstok氏らが行ったARTIS試験で示された。欧米ではt-PAであるアルテプラーゼによる血栓溶解療法は、急性虚血性脳卒中に対する唯一の承認された治療法である。アルテプラーゼによる再疎通の達成後に、患者の14~34%が血小板の活性化によると考えられる再閉塞を来すが、早期に抗血小板療法を行えば再閉塞のリスクが低減し、予後も改善する可能性があるという。Lancet誌2012年8月25日号(オンライン版2012年6月28日号)掲載の報告。

細胞診で確定されない甲状腺結節、遺伝子発現分類法が評価を改善

 診断的手術によってその大半が良性と判明するものの通常の細胞診では確定されない良性の甲状腺結節について、167個の遺伝子の表現型を尺度とした新しい診断法である遺伝子発現分類法を術前検査に用いることで、診断的手術をより多く回避するよう示唆されることが、米国・ハーバードメディカルスクール/ブリガム&ウィメンズ病院のErik K. Alexander氏らによる大規模前向き検証試験の結果、明らかにされた。穿刺吸引によって評価される甲状腺結節の約15~30%は、良性なのか悪性なのかが判然とせず診断的手術となることが多い。遺伝子発現分類法は、術前リスク評価を改善することが有望視されていた。NEJM誌2012年8月23日号(オンライン版2012年6月25日号)掲載報告より。

肥満者の2型糖尿病発症予防には肥満外科手術が有効

 2型糖尿病の発症予防について、肥満者においては肥満外科手術が通常ケアと比べて顕著に有効とみなされることが、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLena M.S. Carlsson氏らが「Swedish Obese Subjects(SOS)study」の長期追跡データを解析し報告した。減量は2型糖尿病に対し防御的に作用するが、行動変容だけで減量を維持し続けることは難しい。肥満外科手術は、2型糖尿病発症リスクが最も高い重度肥満者において、減量を維持可能な現在唯一の治療法で、多くの試験で糖尿病を軽減することが報告されている。しかし長期追跡と対照群を必要ため、予防効果について報告した試験はほとんどなかったという。NEJM誌2012年8月23日号掲載報告より。