ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:156

RAS阻害薬によるクレアチニン値増加、30%未満でもリスク/BMJ

 RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)服用開始後のクレアチニン値の上昇は、ガイドラインで閾値とされる増大幅が30%未満であっても、末期腎不全や心筋梗塞などの心・腎臓有害イベントや死亡リスクが漸増する関連があることが明らかにされた。クレアチニン値10%未満との比較で、10~19%の増加で死亡リスクは約1.2倍に、20~29%の増加で約1.4倍に増大することが示されたという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のMorten Schmidt氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌2017年3月9日号掲載の報告。

妊婦の肥満、子の脳性麻痺と関連?/JAMA

 母親の過体重や肥満は、早産、新生児仮死関連合併症、先天奇形のリスクを増加させ、これらの病態が新生児の脳性麻痺と関連することが知られているが、母親の過体重、肥満の重症度と子の脳性麻痺の直接的な関連やそのメカニズムは不明とされる。この問題を解明するために、米国・ミシガン大学/スウェーデン・カロリンスカ研究所のEduardo Villamor氏ら研究グループは、地域住民をベースとするレトロスペクティブなコホート研究を実施した。研究の成果は、JAMA誌2017年3月7日号に掲載された。

ネズミ由来の小児喘息に総合的有害生物管理は有効か/JAMA

 米国では、ネズミのまん延が、都市近郊の低所得層居住区に特有の問題となっており、ネズミに感作した喘息児がネズミ由来アレルゲンに曝露すると、感作あるいは曝露がない患児に比べ喘息症状の発現頻度が高いとの報告がある。また、専門家が行う総合的有害生物管理(integrated pest management:IPM)による介入は、ネズミ由来アレルゲン濃度を低下させることが知られている。そこで、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のElizabeth C Matsui氏ら研究グループは、有害生物管理教育へのIPMの併用による喘息症状の抑制効果を検証する無作為化臨床試験(MAAIT試験)を行った。研究の成果は、JAMA誌2017年3月6日号に掲載された。

大腿骨頚部骨折の再手術率は固定法で異なるか? /Lancet

 大腿骨頚部骨折の手術後に再手術となることが多いが、これは骨折部の固定法に関連しているのか。カナダ・マックマスター大学のMohit Bhandari氏らFAITH研究チームが、国際多施設共同無作為化試験にて、再手術のリスクとしてsliding hip screw法 vs.cancellous screws法の比較検討と、その他キーとなるアウトカムについて調べた。その結果、固定法の違いに有意差はなかったが、喫煙・転位または基部骨折の患者群ではsliding hip screw法を用いるほうがよい可能性が示されたという。Lancet誌オンライン版2017年3月2日号掲載の報告。

小児クローン病の合併症予測モデル、治療選択肢も示唆/Lancet

 新規発症クローン病小児患者の合併症(狭窄や穿孔)リスクの予測モデルが、米国・エモリー大学のSubra Kugathasan氏らによって示された。小児および成人クローン病患者において狭窄や穿孔といった合併症を罹患する頻度は高く、医療コスト増の要因にもなっている。これまでに確証されたモデルはなく、合併症リスクへの有効な治療も知られていなかったが、今回のモデル開発で、抗TNFα治療の選択肢が有効であることも示されている。Lancet誌オンライン版2017年3月1日号掲載の報告。

看護師主導のケアモデルがインスリン導入を促進/BMJ

 看護師主導の新たなケアモデル「Stepping Upモデル」により、プライマリケアにおけるインスリン導入率が増加し、精神的安定が維持されHbA1cが改善することが示された。オーストラリア・メルボルン大学のJohn Furler氏らが、2型糖尿病患者のインスリン導入標準化と血糖コントロール改善のため、Stepping Upモデルの有効性を通常ケアと比較した無作為化試験の結果、報告した。2型糖尿病において早期に血糖コントロール目標を達成し維持することは、長期予後を改善するが、プライマリケアにおいては段階的な治療の強化、とくにインスリン導入に対する障壁があり、介入には限界があった。BMJ誌2017年3月8日号掲載の報告。

冠動脈疾患に、ヘテロ接合体LPL遺伝子変異が関与/JAMA

 リポ蛋白リパーゼ(LPL)遺伝子の稀有な機能障害性変異(ヘテロ接合体)は、トリグリセライド高値および冠動脈疾患(CAD)と有意に関連していることが、米国・マサチューセッツ総合病院のAmit V Khera氏らによる横断的研究の結果、明らかとなった。LPLの活性は、トリグリセライドが豊富なリポ蛋白が血中で代謝される際の律速段階に寄与する。そのためLPL遺伝子の機能障害性変異は、終生にわたり酵素活性不足をもたらし、ヒトの疾患に関与する可能性が推察されるが、両者の関連はこれまで確認されていなかった。著者は、「今後、ヘテロ接合体によるLPL欠損症がCADの原因となる機序があるかどうかをさらに検証する必要がある」とまとめている。JAMA誌オンライン版2017年3月7日号掲載の報告。

水疱性類天疱瘡へのドキシサイクリン vs.標準治療/Lancet

 水疱性類天疱瘡へのドキシサイクリン投与は、標準治療のプレドニゾロン投与と比べ、短期間での水疱コントロール効果について非劣性であることが示された。さらに安全性については、プレドニゾロン投与に比べ重篤な有害事象リスクが有意に低かった。英国・ノッティンガム大学のHywel C Williams氏らが、253例を対象に行った非劣性無作為化比較試験の結果、明らかにし、Lancet誌オンライン版2017年3月6日号で発表した。

米国の心臓病・脳卒中・糖尿病死の5割が食事に問題/JAMA

 ナトリウムや多価不飽和脂肪酸、ナッツ類、砂糖入り飲料、赤身肉などの不適切量摂取が、心臓病や2型糖尿病といった心血管代謝疾患による死因の約45%を占めることが、米国成人を対象に行った大規模試験の国民健康・栄養調査(NHANES)の結果、明らかにされた。米国・タフツ大学のRenata Micha氏らによる検討で、JAMA誌2017年3月7日号で発表した。米国の個人レベルでの食事因子と特異的心臓病などとの関連については、これまで十分な検討は行われていなかった。

小児がんサバイバー、放射線治療減少で新生物リスク低下/JAMA

 1990年代に診断を受けた小児がんサバイバーの初回診断後15年時の悪性腫瘍のリスクは、上昇してはいるものの、1970年代に診断されたサバイバーに比べると低くなっており、その主な要因は放射線治療の照射線量の減少であることが、米国・ミネソタ大学のLucie M Turcotte氏らの調査で明らかとなった。同氏らは、「現在も続けられている長期の治療毒性の軽減に向けた取り組みが、サバイバーの新生物罹患リスクの低減をもたらしている」と指摘する。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。

妊娠中の潜在性甲状腺疾患治療は児のIQを改善するか/NEJM

 妊娠8~20週の妊婦の潜在性甲状腺機能低下症または低サイロキシン血症に、甲状腺ホルモン補充療法を行っても、児の5歳までの認知アウトカムは改善しないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのBrian M Casey氏らの検討で示された。妊娠中の潜在性甲状腺疾患は、児のIQが正常値より低いなどの有害なアウトカムに関連する可能性が指摘されている。レボチロキシンは、3歳児の認知機能を改善しないとのエビデンス(CATS試験)があるにもかかわらず、欧米のいくつかのガイドラインではいまだに推奨されているという。NEJM誌2017年3月2日号掲載の報告。

脳卒中後の慢性期失語、集中的言語療法が有効/Lancet

 70歳以下の脳卒中患者の慢性期失語症の治療において、3週間の集中的言語療法は、言語コミュニケーション能力を改善することが、ドイツ・ミュンスター大学のCaterina Breitenstein氏らが行ったFCET2EC試験で示された。失語症の治療ガイドラインでは、脳卒中発症後6ヵ月以降も症状が持続する場合は集中的言語療法が推奨されているが、治療効果を検証した無作為化対照比較試験は少ないという。Lancet誌オンライン版2017年2月27日号掲載の報告。

肥満と関連の強い11のがん種/BMJ

 肥満は、消化器系や女性のホルモン関連悪性腫瘍など11のがん種の発生およびがん死と強い関連があることが、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMaria Kyrgiou氏らの包括的な検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年2月28日号に掲載された。肥満といくつかのがん種の因果関係が、多くのメタ解析で示されているが、これらの関連を過大に評価する固有バイアスの影響が懸念されるという。このバイアスを回避するアプローチとして、近年、多くのメタ解析の全体に共通する主題のエビデンスを系統的に評価する包括的レビュー(umbrella review)が行われている。

抗IL-31抗体、アトピー性皮膚炎のかゆみに有効/NEJM

 抗インターロイキン(IL)-31受容体Aヒト化モノクローナル抗体nemolizumab(CIM331)は、月1回の皮下投与により中等症~重症アトピー性皮膚炎患者のそう痒を有意に改善することが示された。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学のThomas Ruzicka氏らが、nemolizumabの有効性と安全性を評価した第II相国際共同試験(XCIMA試験)の結果、報告した。IL-31は、アトピー性皮膚炎とそう痒の病理学的機序に重要な役割を果たしている可能性があり、第I相試験ではnemolizumab単回皮下投与により、中等症~重症アトピー性皮膚炎患者のそう痒が軽減され、睡眠障害やステロイド外用剤併用の減少がもたらされることも示唆されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「アトピー性皮膚炎のかゆみに対し、IL-31受容体Aを標的とした治療が有効であることが示された」とまとめている。NEJM誌2017年3月2日号掲載の報告。

糖尿病の若年発症は合併症リスクを高める/JAMA

 小児期や思春期に糖尿病と診断された10代ならびに若年成人患者は、糖尿病合併症および併存症の有病率が高く、とくに1型と比較して2型糖尿病患者で高値であることが示された。米国・コロラド公衆衛生大学院のDana Dabelea氏らが、小児・思春期糖尿病患者を対象とした観察研究の結果を報告した。著者は、「若年糖尿病患者では、早期から合併症発症に関するモニタリングを行うことが重要である」とまとめている。小児や思春期の1型および2型糖尿病有病率は世界的にも増加しているが、直近の若年糖尿病患者で合併症や併存症に関与する因子や有病率は不明であった。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。

前糖尿病へのリラグルチド、糖尿病発症リスクを低減/Lancet

 前糖尿病状態の人に対し、食事療法と運動療法に併用しリラグルチド3.0mg/日を投与することで、糖尿病発症リスクが低下し、体重減少を維持する健康ベネフィットがある可能性が示された。アイルランド・ユニバーシティ・カレッジ・ダブリンのCarel W le Roux氏らが、約2,300例を対象に3年間にわたって行った無作為化比較試験の結果、示されたもので、Lancet誌オンライン版2017年2月22日号で発表した。

抗血栓薬で硬膜下血腫リスク増大/JAMA

 抗血栓薬服用が硬膜下血腫リスクを増大することが、デンマーク・オーデンセ大学病院のDavid Gaist氏らによる、硬膜下血腫患者約1万例とその適合対照40万例を対象としたケースコントロール試験で明らかになった。なかでも、ビタミンK拮抗薬(VKA)の服用により、硬膜下血腫発症リスクは約3.7倍と大幅な増加が認められたという。また、2000~15年にかけて抗血栓薬服用率が2倍以上に増加し、一般集団における硬膜下血腫罹患率も約1.7倍に増加したことも明らかにされた。JAMA誌2017年2月28日号掲載の報告。

ペムブロリズマブ、進行性尿路上皮がんの2次治療でOS延長/NEJM

 進行性尿路上皮がんの2次治療において、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は化学療法に比べ全生存(OS)期間を延長し、治療関連有害事象も少ないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のJoaquim Bellmunt氏らが実施したKEYNOTE-045試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2017年2月17日号に掲載された。本症の標準的1次治療はプラチナ製剤ベースの化学療法であるが、国際的に承認された標準的な2次治療はなく、2次治療のOS期間中央値は6~7ヵ月にすぎない。ペムブロリズマブはPD-1のヒト型モノクローナルIgG4κアイソタイプ抗体であり、第Ib相試験(KEYNOTE-012試験)および第II相試験(KEYNOTE-052試験)で本症への腫瘍縮小効果が確認されている。

系統的レビューでの臨床試験登録の影響/BMJ

 臨床試験登録は、文献の系統的レビューにおいて、無作為化臨床試験(RCT)の検索の重要な情報源であり、新たなRCTの情報を追加し、レビューの価値を高めることが、フランス・パリ第5大学(パリ・デカルト大学)のMarie Baudard氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2017年2月17日号に掲載された。系統的レビューの主要な課題は、出版状況にかかわらず、すべての関連RCTを同定することである。臨床試験登録の検索は、現在、系統的レビューに不可欠のツールとされるが、検索情報の詳細が記されていないレビューが多く、臨床試験登録検索の影響を定量的に検討した研究はないという。

高齢の閾値下うつ病、協働ケアで改善/JAMA

 高齢の閾値下うつ病患者の治療において、協働ケア(collaborative care)は通常ケアに比べ、うつ症状を短期的に改善する可能性があることが、英国・ヨーク大学Simon Gilbody氏らが行ったCASPER試験で示された。英国では、閾値下うつ病の1次治療における抗うつ薬の有効性のエビデンスはほとんどないため推奨されておらず、心理療法は高強度の治療形態として、より重度の病態の治療として留保されるのが一般的だという。協働ケアは、メタ解析で閾値を満たすうつ病への効果が示されている。JAMA誌2017年2月21日号掲載の報告。