ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:244

IgMリウマトイド因子が>100/IUmLの人、10年絶対発症リスクは最高で32%

 血漿IgMリウマトイド因子が>100 IU/mLの人は、同値が<25 IU/mLの人と比べて、関節リウマチの長期発症リスクが26倍であること、10年絶対発症リスク最高値は32%であることが明らかにされた。関節リウマチは人口の0.5~2%に発症する自己免疫疾患だが、臨床利用可能な長期リスクのインジケーターはなかった。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のSune F Nielsen氏らが約1万人のコペンハーゲン住民を28年間追跡した前向きコホート研究の結果、明らかにした。BMJ誌2012年10月13日号(オンライン版2012年9月6日号)掲載報告より。

ボラパクサール、心筋梗塞既往例で上乗せ効果、出血リスクは増大

 心筋梗塞の既往歴のある患者の2次予防において、標準的な抗血栓療法にボラパクサール(国内未承認)を追加する治療アプローチは、心血管死や虚血性イベントのリスクを抑制する一方で、中等度~重度の出血のリスクを増大させることが、米国・ハーバード大学医学部ブリガム&ウィメンズ病院のBenjamin M Scirica氏らが行ったTRA 2°P-TIMI 50試験のサブグループ解析で示された。プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗薬であるボラパクサールは、トロンビンによって誘導されるヒト血小板表面上のPAR-1の活性化に対し拮抗作用を発揮することで、血小板の活性化を阻害する新規の抗血小板薬。心筋梗塞の既往歴を有する安定期の患者の長期的な2次予防におけるボラパクサールの上乗せ効果は不明だという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。

自家造血幹細胞移植患者の血小板減少症、出血時に行う治療的輸血が有効

 自家造血幹細胞移植患者にみられる血小板減少症の治療では、従来の予防的血小板輸血よりも、出血発生時に行う治療的血小板輸血が有効なことが、ドイツ・Klinikum NurembergのHannes Wandt氏らの検討で示された。欧米では、血小板産生能低下に起因する重度の血小板減少症の標準治療は、毎朝の血小板数の測定値に基づくルーチンの予防的血小板輸血とされる。一方、治療的血小板輸血が新たな治療戦略として有望なことを示唆するパイロット試験の結果が知られているという。Lancet誌2012年10月13日号(オンライン版2012年8月7日号)掲載の報告。

フィブリン-3濃度、胸膜中皮腫の新たなバイオマーカーとして有効

 血漿中フィブリン-3濃度は、胸膜中皮腫のバイオマーカーとして有用であることが示された。胸膜中皮腫を早期に発見し個々の治療戦略を立てるため、新たなバイオマーカーが必要とされているが、米国・ニューヨーク大学Langone Medical CenterのHarvey I. Pass氏らが、血漿中と胸水中のフィブリン-3濃度を測定し、胸膜中皮腫の有無による違いなどについて調べ明らかにした。中皮腫のないアスベスト曝露者と胸膜中皮腫患者の識別が可能であったという。NEJM誌2012年10月11日号掲載より。

過体重・肥満の青少年にノンカロリー飲料宅配、体重減少への効果は?

 過体重で肥満の青少年(学校に通う9~10年生、15歳前後)に、ノンカロリー飲料の宅配を行い砂糖入り飲料の摂取量を減らす介入を行ったところ、1年時点では介入群のほうがBMIの増加が低く効果がみられたが、主要転帰とした2年時点では有意差はみられなかったことが報告された。ただし、ヒスパニック系の被験者では、試験開始2年時点でも介入効果が認められたという。米国・New Balance Foundation Obesity Prevention CenterのCara B. Ebbeling氏らが、200人超について行った試験で明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月11日号(オンライン版2012年9月21日号)で発表した。砂糖入り飲料の摂取は過剰な体重増加の原因になっている可能性がある。本研究では、ノンカロリー飲料提供が体重増加にどのような影響をもたらすかを調べた。

血中プロニューロテンシン値、生活習慣病発症・死亡リスクと関連

 血中プロニューロテンシンが、生活習慣病に関するバイオマーカーとして期待できるのか、スウェーデン・ランド大学のOlle Melander氏らが検討した結果、空腹時血中プロニューロテンシン値が、糖尿病、心血管疾患、乳がんの発症、および全死亡率、心血管死亡率と有意に関連することが示されたと報告した。主に中枢神経系や消化管で発現する13-アミノ酸ペプチドのニューロテンシンは、実験的試験で満腹感や乳がん細胞の増殖を制御することが知られるが、乳がんや心血管代謝疾患の発症における役割、有用性についてはほとんどわかっていなかった。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。

患者アウトカムの公表は医師を萎縮させる?

 患者アウトカムの公表(public reporting)は、ケアの質改善の重大なツールとなるが、一方で一部の人々からは、臨床医に高リスク患者を回避させることにつながるのではないかとの懸念がある。米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のKaren E. Joynt氏らは、メディケア患者のアウトカムについて、公表している州としていない州とを比較した。検討は、心筋梗塞患者の経皮的冠動脈介入(PCI)実施率と死亡率との関連で、その結果、公表している州のほうが実施率が低い傾向が認められたという。しかし、全急性心筋梗塞の死亡率の差は認められなかったと報告した。JAMA誌2012年10月10日号掲載報告より。

心臓手術における抗線溶薬アプロチニンは安全性に懸念が残る:メタ解析/BMJ

 心臓手術における抗線溶薬アプロチニンの使用について、カナダ・オタワ病院のBrian Hutton氏らはメタ解析の結果、断定的なことは言えないとしながらも、観察データを含めれば安全性に関して懸念が残ることが示唆されたと述べ、トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)やイプシロンアミノカプロン酸がより安全で効果的な選択肢であると結論づけた。アプロチニンは安全性の理由から2008年以降、市場供給が停止されていたが、最近、ヨーロッパとカナダで再上市されたという。BMJ誌2012年9月11日号より。

外傷性出血患者へのトラネキサム酸投与、重症度を問わず死亡リスクを減少

 外傷性出血患者の死亡および血栓イベントに関するトラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)投与の効果について検討した、国際多施設共同無作為化試験「CRASH-2」データ解析の結果、トラネキサム酸投与は重症度を問わず幅広い患者に、安全に投与可能であることが明らかにされた。英国・London School of Hygiene and Tropical MedicineのIan Roberts氏らによる報告で、BMJ誌2012年10月6日号(オンライン版2012年9月11日号)で発表した。

急性虚血性脳卒中の血栓除去術、Solitaireデバイスの有用性を確認:SWIFT試験

 神経障害を伴う急性虚血性脳卒中の治療では、Solitaire血流回復デバイスは従来のMerci血栓回収デバイスに比べ安全性および臨床転帰が実質的に良好なことが、米国カリフォルニア大学ロサンジェルス校のJeffrey L Saver氏らによる検討(SWIFT試験)で示された。欧米の虚血性脳卒中の治療ガイドラインでは、発症後4.5時間までは遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)、6時間までは動脈内線溶療法、8時間までは機械的血栓除去術が推奨されている。Solitaireは、主幹動脈閉塞による急性虚血性脳卒中における迅速な血流回復を目指して開発された、自己拡張型ステント式の血栓回収デバイスである。Lancet誌2012年10月6日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。

主幹動脈大血管閉塞脳卒中の血栓除去術、Trevoデバイスの有用性を確認:TREVO 2試験/Lancet

 主幹動脈大血管閉塞脳卒中に対する機械的血栓回収療法では、新たに開発されたTrevo血栓回収デバイスは従来のMerci血栓回収デバイスに比べ再開通率が優れることが、米国・エモリー大学医学部のRaul G Nogueira氏らの検討(TREVO 2試験)で示された。急性虚血性脳卒中の標準治療は遺伝子組み換え組織プラスミノーゲンアクチベータ(rt-PA)による血栓溶解療法だが、適応が発症早期に限定されたり、広範な血栓では再開通率が不良などの限界がある。機械的血栓回収療法は血栓溶解療法よりも再開通率が優れる可能性があるが、現行の機械的デバイスは再開通不成功率が最大20~40%に達するという。Lancet誌2012年10月6日号(オンライン版2012年8月26日号)掲載の報告。

心原性ショック合併の急性心筋梗塞、IABPでも死亡率減少できず

 心原性ショックを合併する急性心筋梗塞の患者に対し、大動脈内カウンターパルセイション(IABP)を行っても、30日死亡率はおよそ4割と、行わない場合と比べ有意な低下はみられなかったことが報告された。ドイツ・ライプチヒ大学心臓センターのHolger Thiele氏らが、約600例を対象とした多施設共同オープンラベル無作為化対照試験の結果、明らかにしたもので、NEJM誌2012年10月4日号で発表した。現行の国際臨床ガイドラインでは、心原性ショック合併の急性心筋梗塞に対し、IABPがクラスIの治療法に位置づけられている。だが、裏付けとなるエビデンスは患者登録データによるものが多く、無作為化試験に基づくものは少なかったという。

血行再建術を行わない急性冠症候群に対するプラスグレルvs.クロピドグレル

 血行再建術を行わない急性冠症候群に対する経口抗血小板薬プラスグレル(国内未承認)投与について、クロピドグレル(商品名:プラビックス)投与を比較した結果、主要エンドポイントの心血管死または心筋梗塞、脳卒中の発生の有意な低下は認められず、一方で重度出血や頭蓋内出血リスクも同程度であったことが報告された。米国・デューク大学医療センターのMatthew T. Roe氏らによる二重盲検無作為化試験「Targeted Platelet Inhibition to Clarify the Optimal Strategy to Medically Manage Acute Coronary Syndromes」(TRILOGY ACS)試験の結果、明らかにされた。NEJM誌2012年10月4日号(オンライン版2012年8月25日号)掲載報告より。

ビタミンD服用、上気道感染症の発症・重症度を抑制しない

 健常者が半年間、月1回10万IUのビタミンDを服用し続けても、上気道感染症の発症および重症度を抑制しなかったことが、ニュージーランド・オタゴ大学病理学部門のDavid R. Murdoch氏らによる無作為化比較試験の結果、示された。これまで観察研究で、血中25-ヒドロキシビタミンD(25-OHD)値と上気道感染症発生率との逆相関の関連が報告されていたが、ビタミンDサプリメントによる臨床試験の結果は確定的なものはなかった。JAMA誌2012年10月3日号掲載報告より。

βブロッカー投与と心血管イベントとの関連

 冠動脈疾患(CAD)のリスク因子のみ有する患者、心筋梗塞(MI)既往の患者、あるいはMI非既往・CAD既往の患者いずれにおいても、βブロッカーの投与は、心血管複合イベント(心血管死亡・非致死性MI・非致死性脳卒中)の有意な抑制を認めなかった。米国・ニューヨーク医科大学のSripal Bangalore氏らによる観察研究の結果で、これまで上記のような患者に対するベネフィットは明らかではなかった。JAMA誌2012年10月3日号の掲載報告より。

肥満が子どもの心血管疾患リスクを増強

 学齢児童では、体格指数(BMI)が標準値より高いと心血管疾患リスクのパラメータが有意に増悪することが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア保健科学科のClaire Friedemann氏らの検討で示された。体重増加は血圧や脂質プロフィールの異常のリスクを増大させ、子どもの心血管疾患リスクのパラメータの変動に影響を及ぼす可能性がある。子どもの体重とこれらのリスク・パラメータがどの程度関連するかを、BMIのカテゴリー別に系統的に評価した研究はこれまでなかったという。BMJ誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月25日号)掲載の報告。

プライマリ・ケア医の直感、子どもの重症リスクと関連

 両親の心配や子どもの様子を考慮したプライマリ・ケア医の直感的な対応が、子どもの病態の重症度の的確な判定に寄与していることが、英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア保健科学科のAnn Van den Bruel氏らの検討で示された。プライマリ・ケアを受診する子どもの200人に1人の割合で、「見過ごされやすい重篤な疾患」に遭遇する可能性があるとされる。プライマリ・ケアにおける子どもの診療では、「何かおかしい」という臨床医の直感力が診断価値をもつと考えられているが、直感の根拠や病歴、臨床検査への付加価値は明らかではないという。BMJ誌2012年9月29日号(2012年9月25日号)掲載の報告。

ニジェールの子どもの死亡率、MDG4達成を上回る勢いで低下

 西アフリカのニジェールでは、1998~2009年の5歳未満の子どもの死亡の年間低下率が5.1%に達し、ミレニアム開発目標4(MDG4)の達成に必要とされる4.3%を上回ったことが、米国・ジョンズ・ホプキンス・ブルームバーグ公衆衛生大学院のAgbessi Amouzou氏らが行った調査で明らかとなった。MDG4は、2015年までに5歳未満児の死亡率を1990年の水準の3分の1に削減することを目標とする。近年、ニジェールでは、近隣の他の西アフリカ諸国に比べ子どもの死亡率の大幅な低減が達成され、生存のための介入が積極的に進められているが、その実情はよくわかっていなかった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

妊婦、子どもの死亡率が高い国へのODA拠出が減少傾向に

 近年、妊婦、新生児、子どもの健康に対する政府開発援助(ODA)の拠出額は増加を続けてきたが、2010年に初めて減少に転じ、増加率も2008年以降は低下している実態が、英国・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のJustine Hsu氏らの調査で示された。2010年のG8ムスコカ・サミットでは、ミレニアム開発目標の乳幼児死亡率の削減(MDG4)および妊産婦死亡率の削減(MDG5A)の達成に向け、2010~2015年までに参加国が共同で50億ドルを出資することが約束された。また、最も必要性の高い国へのODAの集中的な拠出が求められているが、実情は不明であった。Lancet誌2012年9月29日号(オンライン版2012年9月20日号)掲載の報告。

コントロール不良の喘息患者にチオトロピウム投与で、肺機能、症状増悪リスクが改善/NEJM

 吸入グルココルチコイドと長時間作用性β刺激薬(LABA)で治療を行いながらもコントロール不良の喘息患者に対し、チオトロピウム(商品名:スピリーバ)を投与することで、肺機能が改善し、症状増悪リスクが約2割減少することが、オランダ・Groningen大学医療センターのHuib A.M. Kerstjens氏らによる検討で示された。喘息患者900人超について行った無作為化試験の結果で、NEJM誌2012年9月27日号(オンライン版2012年9月2日号)で発表した。