ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:266

中高生の最適な眼鏡作成に、自己調整型の油圧式視力検査用眼鏡が有用:中国

中高生の眼鏡を作成する際に行う視力検査について、従来法と、屈折矯正を自己調整で行う方法との比較検討が行われた。中国・広東省汕頭共同国際視力センターのMingzhi Zhang氏らが、中国南部の地方都市在住の12~18歳648例を対象に断面研究にて行った。結果、自己調整法のほうが従来法よりも視力結果は悪かったが、鋭敏さに優れ、眼鏡をかけても視力が十分に得られないという頻度が少なかった。Zhang氏は「自己調整型の視力検査用眼鏡は、訓練を十分に受けていない検査要員や高価な視力測定器、点眼による毛様体筋麻痺といった必要条件を減らすことが可能である」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。

先天性心疾患の退院前スクリーニング検査に、パルスオキシメトリーが有用

パルスオキシメトリーは、先天性心疾患の退院前スクリーニング検査として安全に施行可能で、既存の検査に新たな価値を付与する可能性があることが、英国・バーミンガム大学のAndrew K Ewer氏らが実施したPulseOx試験で示された。現在、先天性心疾患のスクリーニングは出生前超音波検査や出生後臨床検査によって行われているが、生命を脅かすような重度の病態は検出されないことが多いという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年8月5日号)掲載の報告。

術後タモキシフェン5年投与、ER陽性乳がんの再発・死亡リスクを長期に低減

タモキシフェン(TAM、商品名:ノルバデックスなど)を用いた5年間の術後補助内分泌療法は、エストロゲン受容体(ER)陽性の早期乳がん患者の10年再発および15年乳がん死のリスクを有意に低下させることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group (EBCTCG)の検討で示された。術後TAM 5年投与の臨床試験の無作為割り付け後の追跡期間が10年を超えるようになり、乳がん死や他の死因による死亡に及ぼす効果、さらにホルモン受容体が弱陽性の患者に対する効果の評価が可能な状況が整いつつあるという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年7月29日号)掲載の報告。

急性冠症候群発症患者への虚血性イベント再発予防としてのapixaban

急性冠症候群発症患者に対する経口抗凝固薬である直接作用型第Xa因子阻害薬apixabanの虚血性イベント予防効果について、虚血性イベント再発の有意な低下をもたらすことなく重大出血イベントの増大が認められたことが報告された。米国・デューク大学医療センターJohn H. Alexander氏らAPPRAISE-2研究グループによる、第III相国際多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果による。同グループが従前に行った試験では、用量依存で重大出血イベント増大および虚血性イベント低下の傾向が認められた。そこから効果の可能性が期待された投与量1日2回5mgについてプラセボ対照試験を行った。NEJM誌2011年8月25日号(オンライン版2011年7月24日号)掲載報告より。

COPD患者への増悪予防としてのアジスロマイシン

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者への増悪予防を目的としたアジスロマイシン(AZM)投与は、急性増悪の頻度を減らしQOLを改善することが、プラセボ対照無作為化試験の結果、報告された。米国・コロラド大学デンバー健康科学センターのRichard K. Albert氏らCOPD Clinical Research Networkが、増悪リスクの高い特定の患者1,557例を対象に、標準治療に加えアジスロマイシン250mg/日を1年間投与した結果による。ただし、被験者の一部で聴覚障害が認められたという。NEJM誌2011年8月25日号掲載報告より。

慢性疾患患者、入院やICU入室で薬物療法の中断1.18倍~1.86倍にわたる:カナダ

慢性疾患で服薬中の患者について、入院やICU入室によってそれら薬物療法の、意図的ではないものの中断が起きる可能性が高いことが明らかにされた。そのリスクはICU入室後のほうが、より高いことも示された。カナダ・St Michael's HospitalのChaim M. Bell氏らが報告したもので、JAMA誌2011年8月24日号で発表した。

電子カルテの自由記述から導出した患者安全指標、従来ツールより良好:米国

電子カルテシステム導入が進む中、その自由記述欄から自然言語処理にて導き出した患者安全指標の精度に関する検討が、米国・Tennessee Valley Healthcare SystemのHarvey J. Murff氏らにより行われた。術後合併症を特定するかどうかについて、現状ツールである退院コーディング情報をベースとした指標と比べた結果、感度では優れ、特異度は若干劣ったものの90%以上と非常に高い値が示されたという。電子カルテデータを活用した患者安全特定の方法は、現状では診療データコード(ICD)に依存している。研究グループは、それよりも自由記述から導き出した指標のほうが、高い検出力を示すのではないかと仮定し検討を行った。JAMA誌2011年8月24日号掲載報告より。

比較検討試験、直接比較と間接比較にみられる一貫性のなさ

効果を競い合うヘルスケア介入の比較検討をめぐって、直接的な比較と間接的な比較の結果の一致状況について、英国・イースト・アングリア大学ノーウィッチメディカルスクールのFujian Song氏らが調査した。結果、同氏らが以前に行った調査で認められた以上に、有意な不一致が広く認められる可能性があることが明らかになったという。介入比較の無作為化試験実施は不十分で、今後もその状況は好転しそうになく、また直接的な比較の代替として間接的な比較試験が増えている。そうした状況を踏まえてSong氏らは本調査を行った。BMJ誌オンライン版2011年8月16日号より。

新しく開発された静脈血栓塞栓症リスク予測モデルQThrombosis

英国・ノッティンガム大学のJulia Hippisley-Cox氏らは、高リスクの静脈血栓塞栓症患者が特定可能な新しいリスク予測モデルQThrombosisを開発したことを報告した。同モデルのアルゴリズム変数は患者もよく知る、また一般開業医がルーチンに記録している簡易な臨床指標から成る。Hippisley-Cox氏は「アルゴリズムは一般診療所の臨床コンピュータシステムに組み込むことができ、入院や薬物療法開始以前に、患者が静脈血栓塞栓症リスク増大の可能性があるかを判断できるだろう」と結論している。BMJ誌2011年8月20日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載報告より。

プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供

ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

心血管イベントリスクの予測、冠動脈カルシウムスコアが高感度CRPよりも有用

心臓CTで検出される冠動脈カルシウム(CAC)スコアが、高感度C反応性蛋白(CRP)値と比べて、スタチン治療のベネフィットが最大あるいは最小と予想される人を特定するのに有用であることが報告された。米国・ジョンズ・ホプキンスCiccarone心臓病予防センターのMichael J Blaha氏らが、多人種アテローム性動脈硬化症試験(MESA)から、JUPITER試験適格条件を満たした被験者950例を対象とした住民ベースコホート試験の結果による。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。

米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。

術中覚醒予防モニタリングでのBIS使用、優越性立証されず

術中覚醒予防のモニタリングについて、前向き無作為化試験の結果、脳波から派生するバイスペクトラル・インデックス(BIS)を組み込んだプロトコルは、呼気終末麻酔薬濃度(ETAC)を組み込んだ標準的モニタリングプロトコルよりも優れていることは立証されなかったとの報告がNEJM誌2011年8月18日号に掲載された。米国・ワシントン大学医学部麻酔学科のMichael S. Avidan氏らによる。「予想に反して、BIS群よりもETAC群のほうが覚醒した患者は少なかった」と結論している。予期せず起こる術中覚醒は、全身麻酔が得られないか維持されない場合に起こり、そうした患者における覚醒発生率は1%近く、米国では毎年推定2~4万人が術中覚醒を経験している。また術中覚醒患者の約70%がPTSDになる可能性があるという。

若年時の無症候性顕微鏡的血尿、長期的な末期腎不全リスクを増大

若い時に持続性単独の無症候性顕微鏡的血尿が認められた人は、末期腎不全(ESRD)に至るリスクが有意に増大することが、イスラエルで行われたコホート研究から報告された。ただしその発生率および絶対リスクは非常に低いままではあった。報告は、同国シバメディカルセンターのAsaf Vivante氏らが約22年間の長期にわたるリスクを追跡したもので、JAMA誌2011年8月17日号で発表された。これまで、同リスクに関する長期アウトカムを検証したデータは有効なものがほとんどなかった。

甲状腺がん患者における放射性ヨウ素使用、病院特性が大きな理由

米国・ミシガン大学のMegan R. Haymart氏らは、臨床現場における甲状腺がん患者の全摘後の放射性ヨウ素使用の傾向について調査を行った。甲状腺全摘後の放射性ヨウ素使用については確定しておらず、使用の期間や重症度と使用との関連性などが明らかになっていない。術後使用の議論は熱いが無作為化試験は行われておらず、そのためガイドラインでは医師の裁量とされており、臨床現場は使用の支持派と反対派に二分されている。Haymart氏らは、最近の臨床での使用パターンを調べ、病院間で使用程度の格差があるか、あるとしたらどのような因子が関連しているのかを調査した。JAMA誌2011年8月17日号掲載より。

バルセロナ市の通勤・通学自転車シェアシステム「ビシング」、死亡低下しCO2減少

世界各国の主要都市で、主に交通渋滞緩和を目的に導入が進んでいる、公共の自転車共有システムについて、スペイン・環境疫学研究センターのDavid Rojas-Rueda氏らは、同国バルセロナ市で2007年3月に導入された「Bicing(ビシング)」(http://www.cycle-info.bpaj.or.jp/japanese/report/jpg/h20_8/h20_8_1top.html)と呼ばれる同システムの、健康に及ぼすベネフィットとリスクについて調査を行った。その結果、「交通事故や大気汚染などのリスクよりも、ベネフィット(死亡減、CO2減)が大きく、また二酸化炭素排出量を減らすなど公衆衛生上の改善効果も期待できる」と報告している。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年8月4日号)掲載報告より。

国民への心血管疾患予防プログラム、適度の達成で年間医療費3,000万ポンド削減可能

英国・バーミンガム大学医療経済学教室のPelham Barton氏らは、「国民への心血管疾患予防を目的としたリスク因子低減の各種プログラムは、適度でも達成さえすれば国民の健康増進とともに、医療制度財源の正味のコスト削減にも結びつく」ことを、イングランドとウェールズ全住民を対象としたモデル研究の結果、報告した。英国での心血管疾患死亡は年間15万人以上、罹患者は500万人以上、医療コストは年間300億ポンド以上に上るという。BMJ誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月28日号)掲載報告より。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー、PMOによるエクソン読み飛ばし誘導療法が有望

AVI-4658(phosphorodiamidate morpholino oligomer:PMO)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対し安全に投与可能で、ジストロフィン蛋白の正常化をもたらすことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのSebahattin Cirak氏らの検討で示された。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、約3,500人に1人の頻度で男児にのみ発生する進行性の重度な神経筋疾患で、X染色体短腕のジストロフィン遺伝子の読み取り枠(open reading frame)のずれに起因するジストロフィン産生の障害が原因とされる。AVI-4658はエクソン51のスキッピング(読み飛ばし)を誘導するPMOで、動物やヒトにおいてジストロフィン蛋白を回復させることが確認されている。Lancet誌2011年8月13日号(オンライン版2011年7月25日号)掲載の報告。

葉酸摂取量が、MTHFR遺伝子変異によるホモシステイン濃度増加に影響

脳卒中の予防におけるホモシステイン低下療法は、葉酸摂取量が多い地域ではベネフィットがないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMichael V Holmes氏らの検討で確認された。MTHFR(メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素)遺伝子の677C→T変異は血清ホモシステイン濃度の増加や脳卒中リスクの上昇と関連を示す。その影響は低葉酸食を摂取する地域で高いことが報告されているが、葉酸の効果と小規模試験バイアスを区別するのは難しいとされる。無作為化試験のメタ解析では、ホモシステイン低下療法による冠動脈心疾患や脳卒中の抑制効果は確認されていないが、これらの試験は一般に葉酸摂取量の多い集団を対象にしているという。Lancet誌2011年8月13日号(オンライン版2011年8月1日号)掲載の報告。

linaclotideが慢性便秘症状を有意に改善:2つの無作為化試験の結果より

 米国で新規開発された便秘型過敏性腸症候群および慢性便秘の経口治療薬である、C型グアニリル酸シクラーゼ受容体作動薬のlinaclotideについて、有効性と安全性を検討した2つの無作為化試験の結果が報告された。米国・ベス・イスラエル医療センターのAnthony J. Lembo氏らが、約1,300人の慢性便秘患者について行ったもので、NEJM誌2011年8月11日号で発表した。  研究グループは、慢性便秘患者1,276人について、12週間にわたり、2つの多施設協同無作為化プラセボ対照二重盲検試験(試験303と試験01)を行った。研究グループは被験者を無作為に3群に分け、linaclotide 145μg/日、linaclotide 290μg/日、プラセボを、それぞれ1日1回、12週にわたり投与した。