ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:282

低用量アスピリン、大腸がんリスクを長期に抑制

低用量アスピリン(75~300mg/日)の5年以上の服用により、大腸がんの発症率および死亡率が長期的に有意に低下することが、イギリス・オックスフォード大学臨床神経学のPeter M Rothwell氏らの検討で明らかとなった。高用量アスピリン(≧500mg/日)は大腸がんの発症率を長期的に抑制することが示されているが、出血リスクが高いため予防に用いるには問題がある。一方、低用量アスピリンの長期的な大腸がんの抑制効果は明確ではないという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。

低用量のEPA-DHA摂取、心筋梗塞患者のイベント抑制に効果は認められず

心筋梗塞後で最新の降圧療法、抗血栓療法、脂質補正療法を受けている患者に、海産物由来のn-3系脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、また植物由来のα-リノレン酸(ALA)の低用量摂取を行っても、主要心血管イベント発生率が有意には低下しなかったことが報告された。オランダWageningen大学栄養学部門のDaan Kromhout氏らAlpha Omega試験グループが行った多施設共同二重盲検プラセボ対照臨床試験による。これまで行われた前向きコホート試験や無作為化対照試験により、n-3系脂肪酸には心血管疾患に対して保護作用があるとのエビデンスが得られていた。NEJM誌2010年11月18日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載より。

HIV感染者への腎移植、課題は優れた免疫抑制薬の開発

欧米の末期腎不全(ESRD)患者の約1%はHIV感染者であるなど、HIV感染者にESRDが増加しており、そうした患者にも腎移植が期待されるようになっている。しかし、HIV感染者への腎移植や免疫抑制のアウトカムについては十分には明らかになっていない。そこで米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校のPeter G. Stock氏らの研究グループが、腎移植を希望するHIV感染者を対象に、安全性と有効性について多施設共同の前向き非無作為化試験を行った。NEJM誌2010年11月18日号掲載より。

心筋血流イメージングを受けた人の約3割が複数放射線検査で累積線量は100mSv超

心筋血流イメージング(MPI)を受けた患者1,000人超について調べたところ、累積的に受けている放射線検査回数の中央値が15回に上ることが明らかになった。そのうち4回は高線量の検査であったという。米国コロンビア大学医療センター循環器部門のAndrew J. Einstein氏らが報告したもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表した。MPIは1回の放射線量が最も高い検査である。これまでの調査で、米国民の多くがMPIなど放射線検査を繰り返し受けていることは明らかになっているが、その実態については明らかになっていなかった。

心停止入院患者へのAED使用、生存率を改善せずむしろ15%低下

心停止を起こした入院患者に対する自動体外式除細動器(AED)の使用は、退院時生存率の改善にはつながらず、むしろ同生存率が約15%低下するという。米国Saint Luke’s Mid America Heart InstituteのPaul S. Chan氏らが、院内心停止をした約1万2,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月17日号(オンライン版2010年11月15日号)で発表された。これまでに、院外心停止に対するAEDの使用が生存率を改善することは報告されていたが、院内心停止へのAED使用に関する研究は、単一医療機関におけるものに限られており、その効果が普遍性のあるものかは明らかになっていなかった。

ビタミンEは脳卒中を予防するか?:約12万人のメタ解析

ビタミンEの摂取により、虚血性脳卒中のリスクは10%低下するが、出血性脳卒中のリスクはむしろ22%増大することが、米国ブリガム&ウィメンズ病院のMarkus Schurks氏らが行ったメタ解析で明らかにされた。ビタミンEは、観察研究で冠動脈心疾患の予防効果が示唆されているが、無作為化対照比較試験では冠動脈リスクの抑制効果は示されず、サブグループ解析では出血性脳卒中のリスクを増大させる可能性が報告されている。また、メタ解析では高用量のビタミンEが全死因死亡率を増大させる可能性が示され、高い関心を呼んでいるという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月4日号)掲載の報告。

突然の激しい頭痛で、くも膜下出血を推定するための新たな3つのルール

 突然の激しい頭痛では、臨床的な背景因子を考慮した3つのルールのいずれかを用いれば、くも膜下出血の有無の推定が可能であり、不必要な検査も抑制できることが、カナダ・オタワ大学救急医療部のJeffrey J Perry氏らが行ったコホート研究で示された。突然の激しい頭痛がみられる救急患者では、初発時に神経学的な障害がない場合でもくも膜下出血発症の可能性があり、この可能性を除外するにはCT所見が陰性であっても従来から腰椎穿刺が行われている。また突然の頭痛のほとんどが良性で治療は不要だが、十分な検討が行われていないため不必要な放射線曝露や腰椎穿刺後頭痛が行われているという。BMJ誌2010年11月13日号(オンライン版2010年10月28日号)掲載の報告。

強化LDL-C低下療法の心血管イベント抑制効果:約17万例のメタ解析

スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は安全に施行可能で、1.0mmol/L(38.7mg/dL)低下で重篤な血管イベントの年間発生率を5分の1以下にまで抑制することが、Cholesterol Treatment Trialists’(CTT)共同研究グループによるメタ解析で明らかとなった。標準的スタチン療法によるLDL-C低下療法は、広範な心血管疾患において閉塞性血管イベントのリスクを低減することが示されている。また、観察研究ではコレステロール値が低いほど冠動脈疾患のリスクが低下することも示されており、LDL-Cをさらに低下させることで、より大きなリスクの低下が得られる可能性が示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版11月9日号)掲載の報告。

心筋梗塞既往例に対する強化LDL-C低下療法の有効性と安全性:約1万2,000例の解析

心筋梗塞の既往歴を有する患者に対する高用量スタチンによる強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は、通常用量に比べLDL-Cを低下させ、重篤な血管イベントも抑制することが、Study of the Effectiveness of Additional Reductions in Cholesterol and Homocysteine (SEARCH)共同研究グループが行った無作為化試験で示された。スタチン療法の大規模な無作為化対照比較試験では、LDL-C値が平均未満の患者でもLDL-C低下療法による閉塞性血管イベントのリスク低下がみられ、リスクの低下度はLDL-C低下の程度と相関することが示されている。この知見から、LDL-C低下療法をより強化すれば、さらに大きなベネフィットがもたらされることが示唆されていた。Lancet誌2010年11月13日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載の報告。

冠動脈疾患に対するクロピドグレルのオメプラゾール投与の有無による効果

抗血小板療法としてアスピリン+クロピドグレル(商品名:プラビックス)を受けている患者への、プロトンポンプ阻害薬(PPI)であるオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾンほか)投与は、上部消化管出血を減らすことが明らかにされた。米国ボストン退役軍人ヘルスケアシステムのDeepak L. Bhatt氏らCOGENT研究グループによる。抗血小板療法を受けている患者の消化管合併症は重大な問題となっている。PPIがそのようなリスクを減じるのではないかとされていたが、これまで無作為化試験は行われていなかった。またクロピドグレルを用いた抗血小板併用療法を受けている患者へのPPI投与については、クロピドグレルの効果を減弱するのではないかとの懸念もあり、本試験ではその点の検討も行われた。NEJM誌2010年11月11日号(オンライン版2010年10月6日号)掲載より。

免疫性血小板減少症へのromiplostim治療、治療失敗および摘脾を低下

免疫性血小板減少症に対する治療薬として米国で上市されているromiplostimの、標準治療との比較による、有効性と安全性に関する52週の非盲検無作為化試験の結果が、NEJM誌2010年11月11日号で発表された。試験・報告は米国マサチューセッツ総合病院のDavid J. Kuter氏らによる。romiplostimは、血小板産生に関与するトロンボポエチン受容体に結合し作用を発揮する。これまでの試験で、有害事象がほとんどなく、成人患者に対する持続的投与で最大5年間、血小板増加作用があることが認められていた。

10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。

プライマリ・ケアで、高血圧の検出率が高い地域は冠動脈疾患死亡率が低い

プライマリ・ケアで高血圧の検出率が高い地域では、冠動脈疾患(CHD)死亡率が低いことが、英国Leicester大学保健科学部門のLouis S. Levene氏らの調査で明らかになった。英国内各地域でプライマリ・ケアを担う152ヵ所のプライマリ・ケア・トラスト(PCT)を対象に住民ベースの調査を行い明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表された。英国では2000年に、「2010年までに75歳未満のCHD死亡率を5分の2に引き下げる」との目標を立て、すでに実現したのだが、PCT間のCHD死亡率に格差があるという。調査は、格差の要因を見つけることを目的に行われた。

便潜血検査による大腸がん検診継続受診の効果とは?

英国政府から、国民医療保険サービス(NHS)に便潜血検査による大腸がん検診を導入することの意義を検証するよう依頼を受けたダンディー大学外科部門のR J C Steele氏らは、初回検診(prevalence screening)と継続検診(incidence screening)の受診率および効果について検証した。検診で用いられる便潜血検査では、1回目と2回目以降では陽性率、陽性適中率が低下するが、一方で、検診を定期的に繰り返し受けることの効果については明らかになっていなかった。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月27日号)掲載より。

大腸がん予防には5つの推奨生活習慣を遵守すること

運動、腹囲、喫煙、飲酒、食生活という5つの生活習慣に関する推奨勧告を遵守すると、大腸がんリスクを相当に減らせる可能性があることが、デンマークがん協会がん疫学研究所のHelene Kirkegaard氏らにより報告された。デンマークの中高年約5万5千人を対象とした前向きコホート試験の結果によるもので、約10年間で大腸がんになった678人のうち、5つの生活習慣を遵守すれば予防できたと思われた人は23%を占めていたという。BMJ誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月26日号)掲載より。

薬物よりも勝るアルコールの有害事象…英国での多軸分析の結果

アルコール、タバコ、ヘロインなどの薬物乱用がもたらす有害な作用を、使用者自身と使用者以外に及ぼす害の判定基準で評価したところ、総合的にアルコールが最も有害で、特に使用者以外への有害度が著明に高いことが、イギリスImperial College London神経精神薬理学のDavid J Nutt氏らによる研究で明らかとなった。薬物乱用に起因する有害作用の適正な評価は、健康、規制、社会的ケアに関する施策の立案者に有益な情報をもたらすが、薬物の有害作用は多岐にわたるためこの作業は容易でない。そこで、薬物固有の身体的な有害作用から社会に及ぼす害や医療コストまでを、複数の判定基準で評価するアプローチが積極的に進められているという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年11月1日号)掲載の報告。

院外心停止、胸骨圧迫のみの心肺蘇生法の有効性がメタ解析で示された

成人の院外心停止例に対する処置では、その場に居合わせた者への救急医療係員による指導は、胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的な心肺蘇生法(CPR)よりも、胸骨圧迫のみによるCPRに焦点を絞るべきであることが、オーストリア・ウイーン医科大学のMichael Hupfl氏らによるメタ解析で示された。これまでの検討でも、標準的なCPRよりも胸骨圧迫のみを行うCPRの方が、予後が良好な可能性が指摘されているが、有意な予後改善効果を示すエビデンスは確立されていないという。Lancet誌2010年11月6日号(オンライン版2010年10月15日号)掲載の報告。

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫に、エベロリムスが治療選択肢の可能性

結節性硬化症に伴う上衣下巨細胞星状細胞腫の治療として、哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)阻害薬であるエベロリムス(商品名:免疫抑制薬としてサーティカン、抗悪性腫瘍薬としてアフィニトール)の経口投与療法が、標準療法である手術療法(脳神経外科的切除)に代わる治療選択肢となり得ることが示唆された。米国シンシナティ小児医療センターのDarcy A. Krueger氏らによる、前向きオープンラベル試験による。上衣下巨細胞星状細胞腫の手術療法では、周術期のリスクを伴うこと、また深部腫瘍の切除が困難で再発の要因ともなることから、有効な治療法が模索されている。NEJM誌2010年11月4日号掲載の報告より。

入院、転倒外傷は、虚弱高齢者をさらに弱らせる

高齢者のうち、特に虚弱であったり、内科疾患や外傷(いわゆるイベント)が、新規障害の発生や既存障害の悪化を大きく増大する可能性があることが、エール大学医学部内科部門のThomas M Gill氏らによる長期追跡試験の結果、報告された。これまで、イベントの障害度移行への影響については明らかになっていなかった。JAMA誌2010年11月3日号掲載より。

患者医療情報システムを活用した入院中転倒予防教育キット、転倒リスクを有意に減少

 患者医療情報システムを活用し、患者のリスクに見合った転倒予防教育キットを提供することで、入院中の転倒リスクが有意に減少することが報告された。米国ボストンを拠点とする病院経営共同体Partners HealthCare SystemのPatricia C. Dykes氏らが、1万人超の入院患者を対象に行った、多施設共同無作為化対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月3日号で発表した。入院中には、環境の変化や疾患・治療の影響などで、転倒リスクが増大することは知られている。一方で、医療情報技術を用いた転倒予防キットは、これが初めてのものだという。