ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:21

1週間の低ナトリウム食、降圧薬と同程度の降圧効果/JAMA

 50~75歳の中高年において、低ナトリウム(Na)食(1日のNaが計約500mg)の1週間摂取は高Na食の1週間摂取と比較して血圧を有意に低下させ、その低下は高血圧症の有無や降圧薬の使用とは関係ないことが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのDeepak K. Gupta氏らによる「CARDIA-SSBP試験」の結果で明らかになった。推奨Na摂取量については、食事によるNa摂取に対する血圧反応の個人差が一部で議論されている。また、降圧薬服用者における食事によるNa摂取の血圧への影響は、これまで十分に研究されていなかった。JAMA誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。

大腸がんの新しい非侵襲的検査、便潜血より良好な検出感度/JAMA

 マルチターゲット便中RNA(mt-sRNA)検査(ColoSense)は、大腸がんおよび進行腺腫の検出感度が高く、従来の免疫便潜血検査(FIT)と比較し感度を有意に改善することが認められた。また、大腸内視鏡検査で病変が認められない特異度は、既存の非侵襲的な分子スクリーニング検査と同等であった。米国・ワシントン大学のErica K. Barnell氏らが、医療機器クラスIIIとしての承認申請を行うために、平均的リスクの45歳以上を対象に実施された盲検化第III相試験「CRC-PREVENT試験」の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。

石灰化大動脈弁狭窄症に、非侵襲的超音波療法は可能か/Lancet

 石灰化大動脈弁狭窄症は、一般に外科的または経カテーテル的な大動脈弁置換術(AVR)による治療が行われているが、重度の合併症や限られた余命のために適応とならない患者が多く、代替治療として非侵襲的治療法の可能性が示唆されている。フランス・パリ・シテ大学のEmmanuel Messas氏らは、大動脈弁の弁尖を修復する超音波パルスを照射する革新的な技術である非侵襲的超音波療法(NIUT)の評価を行い、安全かつ実行可能であることを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月13日号で報告された。

原発性胆汁性胆管炎の2次治療、elafibranorが有効か/NEJM

 標準治療で十分な効果が得られなかった原発性胆汁性胆管炎の治療において、経口投与のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)α、δの二重作動薬であるelafibranorはプラセボと比較して、生化学的治療反応が有意に優れ、ALP値の正常化の割合も高いことが、米国・Liver Institute NorthwestのKris V. Kowdley氏らが実施したELATIVE試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2023年11月13日号に掲載された。  ELATIVE試験は、14ヵ国82施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年9月~2022年6月の期間に患者を登録した(フランスのGENFITおよびIpsenの助成を受けた)。

片頭痛の前駆症状/予兆期、ubrogepantは有効か?/Lancet

 片頭痛の前駆症状/予兆(prodrome)期におけるubrogepant 100mgの服用は、プラセボと比較して中等度/重度の片頭痛発作を減少させ、忍容性は良好であった。米国・メイヨー・クリニックのDavid W. Dodick氏らが、米国内の研究センターおよび頭痛クリニック75施設で行われた多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー第III相試験「PRODROME試験」の結果を報告した。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体アゴニストのubrogepantは、片頭痛の急性期治療薬として承認されているが、片頭痛発作の最も早い段階である前駆症状/予兆が出現した際に服用した場合の有効性については不明であった。Lancet誌オンライン版2023年11月15日号掲載の報告。

無症候性心房細動の脳卒中予防、アピキサバンvs.アスピリン/NEJM

 無症候性の心房細動患者への経口抗凝固療法について、アピキサバンはアスピリンと比較し、脳卒中または全身性塞栓症を減少するが大出血が増加したことを、カナダ・マクマスター大学のJeff S. Healey氏らが、欧米16ヵ国247施設で実施された無作為化二重盲検比較試験「Apixaban for the Reduction of Thrombo-Embolism in Patients with Device-Detected Subclinical Atrial Fibrillation trial:ARTESIA試験」の結果で報告した。無症候性心房細動は、持続時間が短く無症状であり、通常はペースメーカーまたは除細動器による長期的な連続モニタリングによってのみ検出可能である。また、脳卒中のリスクを2.5倍増加するが、経口抗凝固療法による治療効果は不明であった。NEJM誌オンライン版2023年11月12日号掲載の報告。

抗狭心症薬非服用の安定狭心症、PCIは有効か?/NEJM

 抗狭心症薬による治療をほぼ受けていない、またはまったく受けていない、客観的虚血を認める安定狭心症の患者において、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)はプラセボ処置と比較して、狭心症症状スコアを有意に改善し、狭心症関連の健康状態を良好とすることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのChristopher A. Rajkumar氏らが、301例を対象に行った二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。PCIは、安定狭心症の症状軽減を目的に施行される頻度が高いが、抗狭心症薬治療を受けていない患者への有効性については明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。

コロナ入院患者へのビタミンC投与、有効性認められず/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのビタミンC投与は、心肺支持療法離脱日数や生存退院を改善する可能性は低い。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのNeill K. J. Adhikari氏らの研究グループ「The LOVIT-COVID Investigators」が、2件の前向き調和型無作為化比較試験の結果を報告した。JAMA誌2023年11月14日号掲載の報告。  ビタミンCがCOVD-19患者のアウトカムを改善するかどうかを評価した2件の試験は、2020年7月23日~2022年7月15日に、世界4大陸で、集中治療室(ICU)で心肺支持療法を受けている重症患者(90ヵ所で登録)と非重症患者(40ヵ所で登録)を対象に行われた。被験者は無作為に2群に割り付けられ、一方にはビタミンCを、もう一方にはプラセボを6時間ごとに96時間(最大16回)静脈投与した。

セマグルチド、非糖尿病の肥満患者でも心血管アウトカム改善/NEJM

 心血管疾患既往で過体重または肥満だが糖尿病既往のない患者において、セマグルチド皮下投与はプラセボと比較し、平均追跡期間39.8ヵ月における心血管死・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中の複合エンドポイントの発生率を有意に減少した。米国・ケース・ウェスタン・リザーブ大学Cleveland Clinic Lerner College of MedicineのA Michael Lincoff氏らが、41ヵ国804施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照優越性試験「SELECT試験」の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬のセマグルチドは、糖尿病患者において有害心血管イベントのリスクを減らすことが示されているが、糖尿病既往のない過体重または肥満患者において、心血管リスク減少が可能か否かについては明らかにされていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月11日号掲載の報告。

早期アルツハイマー病へのgantenerumab、2件の第III相試験結果/NEJM

 早期アルツハイマー病患者において、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体のgantenerumabは116週時点のアミロイド負荷をプラセボより減少させたものの、臨床症状の悪化を抑制しなかった。米国・ワシントン大学のRandall J. Bateman氏らGantenerumab Study Groupが、30ヵ国288施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較第III相試験「GRADUATE I試験」および「GRADUATE II試験」(それぞれ15ヵ国156施設、18ヵ国152施設)の結果を報告した。アミロイドβ(Aβ)を標的とするモノクローナル抗体は、早期アルツハイマー病患者の認知機能や身体機能の低下を遅らせる可能性がある。gantenerumabは、Aβの凝集体に対して高い親和性を有しており、皮下投与のアルツハイマー病治療薬として開発が進められていた。NEJM誌2023年11月16日号掲載の報告。

sparsentan、IgA腎症の蛋白尿を長期に低減/Lancet

 免疫グロブリンA(IgA)腎症の治療において、非免疫抑制性・単分子・エンドセリン受容体とアンジオテンシン受容体二重拮抗薬であるsparsentanはイルベサルタンと比較して、36週時に達成された蛋白尿の有意な減少を110週後も持続し、腎機能の維持に有効であることが、米国・オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターのBrad H. Rovin氏らが実施した「PROTECT試験」の2年間の追跡調査で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年11月3日号で報告された。  PROTECT試験は、18ヵ国134施設が参加した二重盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2018年12月~2021年5月に患者の登録を行った(Travere Therapeuticsの助成を受けた)。

帯状疱疹生ワクチン、接種10年後の効果は?/BMJ

 50歳以上の帯状疱疹に対する生ワクチン接種は有効であり、その効果は接種から1年間が最も高く、その後は時間の経過とともに大幅に減少するが、10年以降にもある程度の効果が残存することが、米国・Kaiser Permanente Vaccine Study CenterのNicola P. Klein氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年11月8日号に掲載された。  研究グループは、接種後10年以上が経過した帯状疱疹の生ワクチンの有効性を評価する目的で、電子健康記録(EHR)を用いた実臨床コホート研究を行った(Merck Sharp and Dohme LLCの助成を受けた)。

CKD治療、ダパグリフロジンにzibotentan併用の有用性/Lancet

 現行の推奨治療を受けている慢性腎臓病(CKD)患者において、エンドセリンA受容体拮抗薬(ERA)zibotentanとSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの併用治療は、許容可能な忍容性と安全性プロファイルを示し、アルブミン尿を減少させ、CKDの進行を抑制する選択肢となることが示された。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らが「ZENITH-CKD試験」の結果を報告した。先行研究で、SGLT2阻害薬およびERAは、CKD患者においてアルブミン尿を減少させ、糸球体濾過量(GFR)低下を抑制することが報告されていた。今回、研究グループはzibotentan+ダパグリフロジンの有効性と安全性を評価した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

プライマリケアでの女性の尿路感染症への抗菌薬処方、介入で有意に減少/BMJ

 プライマリケアにおけるマルチモーダル(複数の方法による)介入が、女性の単純性尿路感染症(UTI)に対する第二選択の抗菌薬処方率および全抗菌薬処方率を有意に減少したことが、ドイツ・ブレーメン大学のGuido Schmiemann氏らが、同国5地域の一般診療所を対象に行った並行群間クラスター無作為化試験の結果で報告した。ドイツの総合診療医(GP)向け等のガイドラインでは、受診機会の多い女性のUTI治療について、抗菌薬投与の回避が望ましい軽症~中等症UTIでは対症療法を優先し、第一選択の抗菌薬も推奨薬が明確に示されている。この明確な推奨にもかかわらず、フルオロキノロンなどの第二選択の抗菌薬が依然としてよく用いられ(地域の一般処方率38~54%)、抗菌薬以外の治療をGPが選択することはまれだという。教育プログラムや処方のフィードバックなどの介入が不適切処方を減少することは示されているが、ガイドラインを推奨する介入プログラムについては、これまで検討されていなかった。BMJ誌2023年11月2日号掲載の報告。

巣状分節性糸球体硬化症のeGFR変化、sparsentan vs.イルベサルタン/NEJM

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)患者において、エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは、イルベサルタンと比較し尿蛋白の減少が大きかったにもかかわらず、108週時の推算糸球体濾過量(eGFR)スロープ(eGFR変化率の年率換算)に有意差は認められなかった。米国・ミネソタ大学のMichelle N. Rheault氏らが、多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「DUPLEX試験」の結果を報告した。FSGSの治療にはアンメットニーズが存在する。sparsentanは、8週間の第II相試験ではFSGS患者の尿蛋白を減少させたが、FSGSに対する長期投与の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

頻脈を伴う敗血症性ショック、ランジオロールは無益/JAMA

 頻脈を伴う敗血症性ショックでノルアドレナリンによる治療を24時間以上受けている患者において、ランジオロール点滴静注は標準治療と比較し、無作為化後14日間のSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアで評価される臓器不全のアウトカムを改善しなかった。英国・University Hospitals Birmingham NHS Foundation TrustのTony Whitehouse氏らが、医師主導の多施設共同無作為化非盲検並行群間比較試験「Study into the Reversal of Septic Shock with Landiolol:STRESS-L試験」の結果を報告した。敗血症性ショックは、アドレナリン作動性ストレスにより心臓、免疫、炎症、代謝経路に影響を与える。

進行胸膜中皮腫、化学療法+ペムブロリズマブでOS延長/Lancet

 進行性胸膜中皮腫患者の治療において、標準治療的化学療法のプラチナ+ペメトレキセドへのペムブロリズマブの上乗せは、忍容性は良好で、全生存(OS)を有意に改善した。カナダ・Cross Cancer InstituteのQuincy Chu氏らが、カナダ、イタリア、フランスの51病院で、440例を対象に行われた第III相の国際非盲検無作為化試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は「本レジメンは、未治療の進行性胸膜中皮腫に対する新たな治療選択肢である」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

乳がん放射線療法の有効性、1980年代以前vs.以降/Lancet

 放射線治療は1980年代以降、よりターゲットを絞れるようになり、安全性と有効性が改善されている。英国・オックスフォード大学のCarolyn Taylor氏らEarly Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)は、1980年代以前と以後に行われた乳がん患者に対する局所リンパ節放射線療法の無作為化試験における有効性を評価し、1980年代以降に行われた試験では、乳がんの死亡率および全死因死亡率が有意に低下していたが、1980年代以前の試験では有意な低下はみられなかったことを示した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

HER2陽性転移のある乳がんの1次治療、pyrotinib併用でPFS改善/BMJ

 未治療のHER2陽性転移のある乳がんの治療において、pyrotinib(不可逆汎HERチロシンキナーゼ阻害薬)+トラスツズマブ+ドセタキセルは、プラセボ+トラスツズマブ+ドセタキセルと比較して、無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、毒性は管理可能であることが、中国医学科学院北京協和医学院癌研究所のFei Ma氏らが実施した「PHILA試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2023年10月31日号で報告された。   PHILA試験は、中国の40施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年5月~2022年1月に患者のスクリーニングを行った(中国・Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。

急性感染症での安全性、CFPM vs.TAZ/PIPC/JAMA

 先行研究でセフェピム(CFPM)は神経機能障害を、タゾバクタム・ピペラシリン(TAZ/PIPC)は急性腎障害を引き起こす可能性が指摘されている。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのEdward T. Qian氏らは「ACORN試験」において、急性感染症で入院した成人患者を対象に、これら2つの抗菌薬が神経機能障害または急性腎障害のリスクに及ぼす影響を評価し、タゾバクタム・ピペラシリンは急性腎障害および死亡のリスクを増加させなかったが、神経機能障害のリスクはセフェピムのほうが高かったことを報告した。研究の成果は、JAMA誌2023年10月24・31日の合併号に掲載された。