ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:301

ICU収容の人工呼吸器装着患者、毎日の胸部X線検査は本当に必要か?

集中治療室(ICU)に収容され人工呼吸器を装着されている患者に対する胸部X線検査は、病態により必要に応じて施行しても治療の質や安全性を損なうことはないため、従来のように毎日ルーチンに行う必要はないことが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のGilles Hejblum氏らが実施したクラスター無作為化試験で判明した。米国放射線医学会(ACR)は、人工呼吸器装着患者には毎日のルーチン検査として胸部X線を施行し、必要に応じてさらなる検査を行うよう勧告しているが、患者の病態に応じて施行すれば十分との意見もあるという。ルーチン検査には、危機的病態における誤診を発見して対処できる、検査の可否を判断する必要がないという利点があるが、不要な放射線被曝やコストの面では必要に応じた検査のほうが有利と言える。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月5日号)掲載の報告。

糖尿病は、食事/運動療法により長期にわたり予防しうる:DPPアウトカム試験

食事/運動療法による生活習慣の改善やメトホルミン(商品名:メルビン、グリコランなど)投与による糖尿病の予防効果は、10年が経過しても維持されることが、「糖尿病予防プログラム(DPP)(http://www.bsc.gwu.edu/dpp/index.htmlvdoc)」の長期フォローアップ(DPPアウトカム試験;DPPOS)の結果から明らかとなった。DPP無作為化試験の2.8年のデータでは、糖尿病発症リスクの高い成人において、強化ライフスタイル介入(7%の減量と週150分以上の中等度~高度の身体活動の達成とその維持)により糖尿病発症リスクがプラセボに比べ58%低下し、メトホルミンの投与では31%低下することが報告されている。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月29日号)掲載の報告。

2009新型インフル、治療の実態:アメリカの4~6月の入院患者

本論は、アメリカの「2009パンデミックインフルエンザA(H1N1)ウイルス入院医療調査チーム」からの報告で、米国で2009年4月1日~6月5日にかけて新型インフルに感染し入院治療を受けた患者(生後21日~86歳)の臨床上の特性について解説したものである。NEJM誌2009年11月12日号(オンライン版2009年10月8日号)に掲載された。

2009新型インフル治療実態:オーストラリア、ニュージーランドの6~8月のICU

「オーストラリアとニュージーランドの集中治療(ANZIC)インフルエンザ研究班」は、両国における2009年冬季(6~8月)の、新型インフル(2009H1N1ウイルス)感染患者に対する集中治療体制および稼働状況に関する情報を収集・分析し発表した。研究班は、新型インフルのパンデミック宣言後の初の冬季シーズンをこれから迎えようとしている北半球の、類似の医療提供体制を有する先進諸国への情報提供と本論を位置付けている。報告は、NEJM誌2009年11月12日号(オンライン版2009年10月8日号)で掲載された。

スタチンの長期服用者、胆石による胆嚢摘出術リスクがおよそ4割減

スタチンの長期服用者は、胆石による胆嚢摘出術リスクが、およそ4割減少するようだ。スタチンによって肝臓コレステロール生合成が低下し、そのため、コレステロール胆石の発症リスクが減ると考えられてはいたが、この点に関するヒトを対象にした試験はほとんどなかった。スイスBasel大学臨床薬理・毒性学のMichael Bodmer氏らが、大規模ケース・コントロール試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月11日号で発表した。

血管疾患リスクの脂質評価、総コレステロールとHDL-C、またはアポリポ蛋白のどちらかで十分

血管疾患リスクに関する脂質評価は、現行より簡素化し、「総コレステロール値と高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値」、または「アポリポ蛋白AIおよびB」の、どちらかを調べることで十分であることが報告された。測定時に空腹状態であることや、トリグリセリド(TG)値は必要ないという。英国・ケンブリッジ大学のJohn Danesh氏らの研究グループ「The Emerging Risk Factors Collaboration」が、メタ解析を行って明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月11日号で発表した。

救急部門へのCanadian C-Spine Rule導入で、頚椎画像診断率13%減少

救急外来での効率・効果的な頚椎損傷画像診断のためにカナダで考案された「Canadian C-Spine Rule」について、実際の導入効果を評価する前向き無作為化試験が、カナダ・オタワ大学救急部門のIan G Stiell氏らにより行われた。導入前後では、画像診断の実施率が13%減少するなど、この戦略が有効であることが示されたという。BMJ誌2009年11月7日号(オンライン版10月29日号)掲載より。

禁煙補助薬バレニクリンと自殺リスク増大に関するコホート研究

バレニクリン(商品名:チャンピックス)は効果的な経口禁煙補助薬であるが、自殺行動、自殺リスクを増加させる可能性があるとの懸念が広がっている。バレニクリンが普及しだして以降、喫煙者における自殺リスクが高まっているとの報告が相次いでいるためだ。そこでイギリス・ブリストル大学社会医療部門のD Gunnell氏らの研究グループは、バレニクリンが、bupropionやニコチン置換療法など他の療法と比較して、自殺行動、自殺リスクの増加と関連があるのかを目的とした大規模な無作為化コホート研究を行った。BMJ誌2009年11月7日号(オンライン版10月1日号)掲載より。

炎症性腸疾患に対するチオプリン投与、リンパ増殖性疾患のリスクが増大

炎症性腸疾患の患者に対するチオプリン系薬剤の投与は、リンパ増殖性疾患のリスクを増大させることが、フランスParis第6大学(Pierre et Marie Curie)Saint-Antoine病院消化器病学の Laurent Beaugerie氏らが実施したコホート研究(CESAME試験)で明らかとなった。Crohn病や潰瘍性大腸炎は原因不明の慢性炎症性消化管疾患であり、寛解を維持するための免疫抑制療法としてアザチオプリンやその代謝産物である6-メルカプトリンが推奨されている。免疫抑制療法としてチオプリンを投与された臓器移植患者では、Epstein-Barr(EB)ウイルスとの関連でリンパ増殖性疾患の発症リスクが増大することが知られている。Lancet誌2009年11月7日号(オンライン版2009年10月19日号)掲載の報告。

新規GLP-1アナログ製剤liraglutide、肥満者の体重が減少、糖尿病前症の抑制効果も

新たなグルカゴン様ペプチド1(GLP-1)アナログ製剤であるliraglutideは、肥満者の体重を減少させて肥満関連リスク因子を改善し、糖尿病前症を低減することが、デンマークCopenhagen大学生命科学部のArne Astrup氏らNN8022-1807 Study Groupが実施した無作為化試験で明らかとなった。ヨーロッパでは過去20年間で肥満者が3倍に増え、成人の約半数が過体重だという。liraglutideはヒトGLP-1と97%の構造的相同性を持つアナログ製剤で、半減期が約13時間と長いため1日1回皮下注で治療が可能。用量依存性に体重を減少させ、HbA1cの低減作用を持ち、膵β細胞機能および収縮期血圧を改善することが確認されており、2型糖尿病と肥満の治療薬として期待されている。Lancet誌2009年11月7日(オンライン版2009年10月23日号)掲載の報告。

高リスクのHPV-16陽性外陰上皮内腫瘍、ワクチン接種で完全寛解47%

ヒトパピローマウイルス(HPV)-16陽性・グレード3の外陰上皮内腫瘍患者に対する、ワクチン接種の臨床的有効性が報告された。オランダ・Leiden大学病院婦人科部門のGemma G. Kenter氏らが行ったphase 2の試験報告による。外陰上皮内腫瘍は、HPVに起因する慢性疾患で、特にハイリスク型のHPV-16によるものが多い。自然退縮は1.5%未満で、術後再発率も高いことが知られている。NEJM誌2009年11月5日号より。

冠動脈バイパス術(CABG)、on-pump対off-pump:ROOBY Study Group

冠動脈バイパス術(CABG)は、体外循環下で施行されてきたが(on-pump CABG)、体外循環を用いないCABG(off-pump CABG)による、人工心肺関連の合併症を減少させる可能性が期待されている。本論は、米国ノースポート退役軍人医療センターのA. Laurie Shroyer氏らの研究グループ(ROOBY Study Group)が行った、約2,200例を対象に両手技を比較検討する無作為化試験からの報告。NEJM誌2009年11月5日号より。

カリフォルニア、新型インフルの入院・死亡リスクは1歳未満が最大

米国カリフォルニア州の調査によると、新型(A/H1N1)インフルエンザで入院または死亡した割合は、年齢別では1歳未満の乳幼児が最大で、10万人中11.9人に上ることが報告された。入院または死亡した人の年齢中央値は27歳(範囲:1~92歳)と、通常のインフルエンザに比べて低年齢の傾向であることも確認された。米国カリフォルニア州公衆衛生局のJanice K. Louie氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年11月4日号で発表している。

医療従事者のインフルエンザ予防、サージカルマスクはN95マスクと効果同等

 医療従事者のインフルエンザ予防に、サージカルマスク装着が、N95マスクを装着した場合と同等の効果があることが、カナダMcMaster大学のMark Loeb氏らによる、看護師400人超を対象とした無作為化試験で明らかにされた。サージカルマスクとN95マスクを比較してのインフルエンザ予防効果に関するデータは、ほとんどなかった。一方でN95マスクは、入手が不可能な国もあるうえ、インフルエンザ流行時期には入手困難になる場合が少なくない。JAMA誌2009年11月4日号(オンライン版2009年10月1日号)からの報告。

それでも低調、パンデミック宣言後の香港市民の新型インフルワクチン接種意欲

香港の医療従事者を対象とした調査(5月)で、新型インフルのワクチン接種希望者が半数以下にとどまることが報告されている(2009/10/02配信:http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=10240)。低調の背景には過去の季節性インフルワクチンの“歴史”が大きく影響しており、ワクチンの効果や安全性に対する疑念があった。では一般市民の意識はどうなのか。香港大学のJoseph T F Lau氏らが、接種費用およびワクチン効果に関する5つの仮説を用意し、接種意図について約300人に電話インタビューを行った。これまでの接種動向を見ると、2006~2007年シーズンの季節性インフルワクチン接種率は、高齢者35%、妊婦4%、2歳未満児9%、持病がある人23%、健常者15%と低調だったという。BMJ誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月27日号)より。

腎移植後のEPO製剤投与、ヘモグロビン濃度125g/L超で死亡率が上昇

腎移植後に貧血を呈する患者は40%近くに達し、重症貧血患者の約20%はエリスロポエチン(EPO)製剤の投与を受けている。しかし最近のデータは、EPO製剤投与が一定の条件下で死亡率を増加させる可能性があることを示唆していた。オーストリア・ウィーン医科大学のGeorg Heinze氏らの研究グループは、EPO製剤の安全かつ死亡率上昇を招かないヘモグロビン濃度の最適範囲を調べるため、後向きコホート研究を実施した。BMJ誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月23日号)より。

中枢神経系リンパ腫、高用量メトトレキサート+シタラビン併用療法が有用

原発性中枢神経系リンパ腫の治療として、高用量メトトレキサート(商品名:メソトレキセート)に高用量シタラビン(同:キロサイド、サイトサール)を併用する方法は、高用量メトトレキサート単剤に比べ予後良好で、有害事象も許容できることが、イタリアSan Raffaele科学研究所腫瘍科リンパ性悪性疾患部のAndres J M Ferreri氏らInternational Extranodal Lymphoma Study Group (IELSG)による無作為化試験で明らかとなった。中枢神経系リンパ腫はまれな疾患であるため無作為化試験の実施が難しく、治療法についても議論が多く無作為化試験を行うにも全体的な戦略や主要エンドポイントに関するコンセンサスが得られにくい状況だという。現時点で、新規診断例に最も頻用されているは高用量メトトレキサート+全脳照射である。Lancet誌2009年10月31日号(オンライン版2009年9月20日号)掲載の報告。

早期glatiramer acetate治療、多発性硬化症の臨床的進行を抑制:PreCISe試験

glatiramer acetateによる早期治療は、多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)が疑われる最初の臨床症状(clinically isolated syndrome; CIS)とMRI上で活動性の脳病変が検出されている患者が、臨床的に確実なMS(clinically definite MS; CDMS)へ移行するのを遅延させることが、イタリアSan Raffaele科学研究所生命・健康大学実験神経学のG Comi氏ら実施した無作為化試験(PreCISe試験)で示された。MSは軸索の損傷および消失を伴う中枢神経系の炎症性脱髄性疾患で、軸索損傷の範囲は炎症の程度と密接に関連しており、罹患期間や臨床的カテゴリー分類が重要とされる。glatiramer acetateは、欧米ではすでに再発・寛解を繰り返すMS(relapsing-remitting MS; RRMS)における再発回数の減少効果について承認を得ており、1日1回皮下注法による再発率、MRI上の活動性病変数、疾病負担の低減効果が確認されているという。Lancet誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月7日号)掲載の報告。

小児尿路感染症の再発予防目的での抗菌薬投与は有効?

オーストラリア・シドニー大学公衆衛生校のJonathan C. Craig氏らが、オーストラリアの4つの施設で、低用量の経口抗菌薬を持続的に投与することで、再発の可能性のある小児の尿路感染症を予防できるかどうか検討した結果について、「発生数の減少と関連」と報告した。これまでも同手技は広く行われていたが、有効性に関する十分なプラセボ対照試験は行われていなかった。NEJM誌2009年10月29日号より。

2型糖尿病患者の複合インスリン療法は、1日2回タイプより超速効型、持効型が有効

経口糖尿薬での血糖コントロールが最適とならない場合のインスリン複合療法として、どのタイプのインスリン療法が有効なのか。英国オックスフォード大学Rury R. Holman氏らTreating to Target in Type 2 Diabetes(4-T)研究グループは、3タイプのインスリン療法(1日2回の二相性アナログ製剤、食前1日3回の超速効型、基礎インスリンとしての1日1回の持効型)について約700人を対象に、非盲検多施設共同無作為化試験を行った。これまで、どのタイプのインスリン療法が有効かについてエビデンスはほとんどなかった。本試験の結果、3年時点の有効性は、二相性に比べて超速効型、持効型でのコントロールが良好であり、持効型では低血糖の発生頻度がより低く、体重増加はより小さかったことが報告されている。NEJM誌2009年10月29日号(オンライン版2009年10月22日号)掲載より。