ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:264

バレット食道患者の食道腺がんリスク、サーベイランスの推定リスクよりはかなり低い

バレット食道は、食道腺がんの強力なリスク因子であるが、年間絶対リスクは推定されているよりもずっと低いことが明らかにされた。デンマークのAarhus大学病院胃腸外科部門のFrederik Hvid-Jensen氏らが、デンマーク国内の病理およびがん登録データによるコホート研究から報告したもので、現行のサーベイランス・ガイドラインで根拠とする推定リスクは0.5%だが、本調査の結果、絶対年間リスクは0.12%であったという。バレット食道患者における食道腺がん、高度異形成については、正確な住民ベースの研究が求められていた。Hvid-Jensen氏は、「現行の異形成を伴わないバレット食道患者に行われているサーベイランスの正当性に、疑問を投じるデータが得られた」と結論している。NEJM誌2011年10月13日号掲載報告より。

妊娠初期の葉酸摂取で、子どもの重度言語発達遅延リスクがおよそ半減

妊娠初期に葉酸を摂取することで、生まれた子どもの3歳時点における、重度言語発達遅延リスクが、およそ半減することが明らかにされた。ノルウェー国立保健院(Norwegian Institute of Public Health)のChristine Roth氏らが行った前向きコホート試験の結果、報告したもので、JAMA誌2011年10月12日号で発表した。これまでの研究結果から、妊娠中の葉酸摂取は、神経管欠損リスクを減少することなどが知られているが、生後の神経発生に関連する症状発症のリスクとの関連についての研究はほとんど行われていなかったという。

ビタミンE摂取、前立腺がんの長期発症リスクを1.17倍に増大

ビタミンE摂取は、前立腺がんの発症リスクを有意に増大することが、無作為化プラセボ対照試験「Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial」(SELECT)の結果、示された。米国・クリーブランドクリニックのEric A. Klein氏らの報告で、JAMA誌2011年10月12日号で発表した。SELECT試験の結果は2009年に、追跡期間中央値5.5年時点の解析結果が発表され、セレン摂取もビタミンE摂取も前立腺がん発症リスクを減少しないことが認められた。同時に、統計的に有意な増大ではなかったが、ビタミンE摂取群で前立腺がんリスクの増加傾向が懸念される結果が示されていた。今回、より長期の追跡データを分析した結果、ビタミンE群の前立腺がん発症リスクの有意な増加が明らかになったという。

麻酔記録と投与エラーを減らす新システムの有用性

麻酔薬に関する記録と投与エラーを減らすために開発された、マルチモードシステム「SAFERSleep」は、臨床でのエラー改善に有用なことが前向き非盲検無作為化臨床試験による評価の結果、報告された。記録の改善が主であったという。ニュージーランドのオークランド大学麻酔学部門のAlan F Merry氏らが、BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)で発表した。SAFERSleepは、ニュージーランド、英国のいくつかの病院で使用中で、特にオークランドの市立病院では2005年以来ほとんどの麻酔薬を対象として使用しているという。

喫煙は世界的な結核症例を増大し、死亡を増大する

喫煙は、将来的な結核症例数および死亡例を相当に増大することが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のSanjay Basu氏らが行った数理モデル解析の結果、報告された。現在、喫煙者は世界で約20%だが、その割合は多くの貧困国で上昇すると予測されている。喫煙が喫煙者自身の結核感染および死亡のリスク増大と結びついているが、これらリスクが集団へ及ぼす影響については明らかにされていなかった。BMJ誌2011年10月8日号(オンライン版2011年10月4日号)掲載報告より。

急性躁病の薬物療法、抗精神病薬が気分安定薬よりも高い効果

成人の急性躁病の薬物療法では、全般的に、抗精神病薬は気分安定薬に比べ有意に良好な効果をもたらすことが、イタリアVerona大学のAndrea Cipriani氏らの検討で示された。躁病は気分が過度に高揚した病態で、通常はうつ病エピソードを伴い、双極性障害の診断の根拠となる。急性躁病の薬物療法では、主に抗精神病薬や気分安定薬が用いられてきたが、これまでの有効性に関するメタ解析では相反する結果が得られているという。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月17日号)掲載の報告。

喫煙の冠動脈心疾患リスクへの影響、女性のほうが大きい

喫煙が冠動脈心疾患リスクの上昇に及ぼす影響は男性よりも女性で大きいことが、米国・ミネソタ大学のRachel R Huxley氏らの検討で示された。現在、世界の喫煙者数は11億人にのぼり、その5分の1が女性である。たばこを直接的原因とする死亡数は、毎年、500万人以上に達し、そのうち150万人が女性だという。この状況を放置すれば、2030年までにたばこで死亡する女性は250万にまで増加すると予想されている。喫煙は冠動脈心疾患のリスク因子だが、女性における喫煙の影響が男性と同じかは不明であった。Lancet誌2011年10月8日号(オンライン版2011年8月11日号)掲載の報告。

新生児単純ヘルペスウイルス感染症への経口アシクロビルによる抑制療法

病変が中枢神経系に及んだ新生児単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症に対して、経口アシクロビル(商品名:ゾビラックスほか)の6ヵ月間にわたる抑制療法が、神経発達アウトカムを改善することが報告された。新生児単純HSV感染症の生存例では、神経発達のアウトカム不良や皮膚病変の再発が、容認できないほど高頻度にみられることから、米国・アラバマ大学小児学部門のDavid W. Kimberlin氏らが、経口アシクロビルによる抑制療法のアウトカムへの効果を検討した。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。

HER陽性乳がんへのトラスツズマブ併用について新たなレジメン検討

HER陽性乳がんの補助療法として生存率改善が認められているトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)について、非アントラサイクリンベースレジメンへの併用の有効性と安全性が検討された。これまで、トラスツズマブのアントラサイクリンベースレジメンへの併用では心毒性が認められていた。試験・報告は、米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のDennis Slamon氏ら乳がん国際研究グループ(BCIRG)による。NEJM誌2011年10月6日号掲載報告より。

米国小児喘息治療指標CACの遵守率、入院中は高率、退院後は中程度

米国小児病院において用いられている小児喘息治療指標「Children’s Asthma Care 」(CAC)は、米国病院認定合同委員会(JCAHO)が入院中の小児に対する医療の質を評価する唯一の指標となっている。フェニックス小児病院のRustin B. Morse氏らは、CAC遵守率とアウトカムとの関連について評価を行った。CACは大きく入院中の指標(CAC-1、CAC-2)と退院後家庭で用いる指標(CAC-3)に分けられる。結果、CAC-1、CAC-2の遵守率は高率だが、CAC-3は中程度であることが明らかになった。しかしCAC-3と、退院後の救急室利用率や再入院率等に有意な関連は認められなかったという。JAMA誌2011年10月5日号掲載より。

リビング・ウィルが終末期医療費を抑制、院内死亡を低下、ホスピス利用を増大:米国

終末期の医療行為を特定のものに制限する事前指示書「リビング・ウィル」と米国終末期医療費、治療内容との関連を調べた結果、同費用が高い地域において同指示書があることは費用の有意な低下と関連していることが報告された。また、同費用が中程度~高い地域における院内死亡率の低下やホスピス利用の増大も認められたという。米国・ミシガン大学のLauren Hersch Nicholas氏らが、約3,300人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年10月5日号で発表した。

研究助成の決定、無作為性が十分ではなく申込者にコスト負荷

オーストラリアにおける保健・医療研究の助成金決定作業における無作為性と費用について検討した結果、無作為性は十分ではなく、申込者のコストがかさんでいる実態が報告された。オーストリア・クイーンズランド工科大学公衆衛生校&ヘルスバイオメディカル研究所のNicholas Graves氏らによる。研究助成に対する申し込みの成功率は世界的に低下しており、たとえば英国では2000年43%から2008年26%、オーストラリアでは2000年30%から2010年23%となっているという。Graves氏らは、本研究を行った目的について、申込不成功でキャリアへの打撃とさらなる参加コストを要することになる研究者に役立つ情報提供をすることだとしている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年9月27日号)掲載報告より。

チョコレート高摂取による心血管代謝障害の抑制効果が明らかに

チョコレートの摂取量と心血管代謝障害(cardiometabolic disorder)の発生リスクには実質的な関連が認められることが、英国・ケンブリッジ大学のAdriana Buitrago-Lopez氏らの検討で示された。WHOによれば2030年までに約2,360万人が心血管疾患で死亡するとされ、現在、世界の成人の約5分の1が、糖尿病や心血管疾患の増加をもたらすメタボリック症候群に罹患しているとの研究結果もある。近年、心血管代謝障害が世界的に増加しているが、その多くは予防可能と考えられており、ココアやチョコレートは降圧、抗炎症、抗動脈硬化、抗血栓作用を有することが示唆されている。BMJ誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月29日号)掲載の報告。

推奨量より少ない運動でも、平均寿命が延長

余暇時間における身体活動(leisure-time physical activity; LTPA)は、たとえそれが推奨運動量より少なくても、健康状態を改善し平均寿命の延長をもたらすことが、台湾・国立健康研究所のChi Pang Wen氏と国立体育大学のJackson Pui Man Wai氏らの調査で示された。LTPAが健康状態を改善することはよく知られており、アメリカ(2008年)やWHO(2010年)の身体活動ガイドラインでは平均150分/週以上のLTPAが推奨されている。アメリカの成人の3分の1がこの推奨運動量を実行しているのに対し、東アジア人(中国、日本、台湾)の達成率は5分の1以下にすぎないが、推奨量より少ない運動が平均寿命に及ぼす影響は明らかではないという。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月16日号)掲載の報告。

プライマリ・ケアにおける高血圧診断、ABPMが費用対効果に優れる

24時間自由行動下血圧測定(ABPM)は、診察室(CBPM)や家庭(HBPM)での血圧測定よりも費用対効果が優れ、高血圧の診断戦略として最も有用であることが、イギリス内科医師会(Royal College of Physicians)のKate Lovibond氏らによる調査で示された。従来、プライマリ・ケアにおける高血圧の診断はCBPMに基づいて行われるが、HBPMやABPMのほうが心血管アウトカムとよく相関し、ABPMはCBPMやHBPMに比べ高血圧の診断精度が高いことが示されている。Lancet誌2011年10月1日号(オンライン版2011年8月24日号)掲載の報告。

新生児敗血症への免疫グロブリン静注療法、転帰を改善せず

新生児敗血症に対する免疫グロブリン静注療法は、転帰に対する効果がないことが明らかにされた。国際新生児免疫療法試験(INIS)共同研究グループは、9ヵ国113施設で約3,500例の被験児を対象に行った結果による。新生児の主要な死因であり合併症をもたらす敗血症は、抗菌薬治療に加えた有効な治療が必要とされる。そうした患児に対して免疫グロブリン静注療法は全死因死亡を減らすことがメタ解析の結果、示されていた。しかし解析対象であった試験は小規模で、試験の質もバラバラであったことから、INIS共同研究グループが、国際化多施設共同二重盲検無作為化試験を行った。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。

旧社会主義国生まれの禁煙補助薬シチシンの有効性と安全性

1964年にブルガリアで発売され、40年以上にわたり旧社会主義国で商品名Tabexとして流通してきた禁煙補助薬シチシンについて、英国・ロンドン大学のRobert West氏らが、有効性と安全性に関する単施設無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った。一部の禁煙補助薬には寿命保持への費用対効果が認められるが、国によってはその治療コストが喫煙コストよりも非常に高くつく(たとえば中国では、8週間課程ニコチン補充療法230ドルに対しタバコ20本約73セント、15セントのものもあるという)。シチシンは、2004年にEU加入後も発売を続けるポーランドでは15ドル、またロシアではOTC薬として6ドルほどで入手でき、研究グループはその低コストに着目した。NEJM誌2011年9月29日号掲載報告より。

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率や必要検査数、男女間で格差

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率は、同年齢層でみるといずれも男性で高率であり、検診で1人の疾病を検出するための必要検査数(NNS)も性別によって異なることが明らかにされた。オーストリア胃腸・肝臓学会のMonika Ferlitsch氏らが、約4万4,000人について行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。

高齢者の頸動脈ステント留置術、施術者の経験がアウトカムに有意に影響

高齢者に対する頸動脈ステント留置術は、施術者の年間手術件数が少ないと、多い場合に比べ、30日死亡リスクが約2倍に増大することが明らかにされた。通算手術数が少ない施術者の同リスクは1.7倍であったという。米国・ミシガン大学ヘルスケアアウトカム・政策センターのBrahmajee K. Nallamothu氏らが、頸動脈ステント留置術を行った高齢者、約2万5,000人について行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。これまで、ステント術の有効性については臨床試験で検証がされているが、施術者の経験がアウトカムに及ぼす影響について臨床ベースで検討されていなかった。

大気汚染による心肺死亡率上昇、心筋梗塞リスク以外の影響が大きい

心筋梗塞のリスクは、典型的な交通関連の大気汚染物質である直径10μm未満の大気粒子(PM10)と二酸化窒素(NO2)への曝露によって一過性に上昇するものの、時間の経過とともに低下しており、大気汚染による心肺死亡率の上昇には他のメカニズムの影響が大きいことが、英国・ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討によって示唆された。いくつかの大気汚染物質については、日常的な高レベル状態が死亡率の上昇に関連することが示されている。大気汚染が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響に関するエビデンスは存在するが、曝露後数時間における短期的な影響を評価した研究はほとんどないという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月20日号)掲載の報告。