ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:306

米国で急性気道感染症への抗生物質投与率、過去10年間も継続的に減少

米国で、過去10年間の急性気道感染症への抗生物質投与率が低下してきていることがわかった。米国Vanderbilt大学のCarlos G. Grijalva氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。同投与率は、1990年代に減少傾向にあったが、その後も同傾向が続いていることが確認された。抗生物質耐性菌の感染症による死亡率が増加する中では朗報と言える。

四価HPVワクチン、市販後調査で失神と静脈血栓塞栓症が他種ワクチンより高率

米国で四価ヒトパピローマウイルス組換えワクチン(qHPV)の市販後調査で、ワクチン投与後の有害事象発生率について2年半の調査の結果、失神と静脈血栓塞栓症の発生率が、他のワクチン投与後と比べ高率であることが明らかになった。米国疾病予防対策センター(CDC)のBarbara A. Slade氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。米国食品医薬品局(FDA)は2006年6月にqHPVを承認、その後CDCの予防接種に関する委員会Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)では、女児の11~12歳に対する投与と、13~26歳の追加投与を勧告している。

進行がん患者への緩和ケア、QOLと患者の心的状態を改善

進行がん患者に対し、心理教育的な緩和ケアを提供することで、患者の生活の質(QOL)や心的状態を改善する効果があることが、無作為化試験の結果明らかになった。一方で、症状の程度や入院期間などに対する効果は、認められなかった。進行がん患者に対する、緩和ケアの効果について行った無作為化試験は珍しいという。米国Dartmouth Hitchcock Medical CenterのMarie Bakitas氏らが、300人超の進行がん患者を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。

診察時の小冊子活用で、小児呼吸器感染症の受診および抗生物質処方を抑制できる

小児期の呼吸器感染症は、ほとんどが受診の必要がなく、ましてや抗生物質によるベネフィットはほとんどないにもかかわらず、再受診を含む受療率は高いままで、抗生物質も頻繁に処方されている。英国の公的医療保険であるNHSでは、小児の急性の咳だけで5,140万ドル以上の医療費が費やされており、その大半が、開業医の診察によるもので、ガイドラインも整備されているが改善の兆しはなく問題視されている。そこで、英国カーディフ大学医学部プライマリ・ケア/公衆衛生学部門のNick A Francis氏らは、小児呼吸器感染症に関する小冊子をプライマリ・ケア医に提供し、診察時に使うようトレーニングをすることで、再受診率や抗生物質の処方率が減るのではないかと、クラスター無作為化試験を行い検討した。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年7月29日号)より。

公営介護施設vs. 民営介護施設、介護の質が高いのはどちらか?

ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)医学部レジデントのVikram R Comondore氏らは、ナーシングホームにおける介護の質を、営利施設(民営施設)と非営利施設(公営施設)とで比較した。同種の研究が行われた観察研究と無作為化試験のシステマティックレビューとメメタ解析によって行われたもの。カナダでは介護施設は52%が民営。ちなみに米国は3分の2が、イギリスでは約半数が民営で、ヨーロッパ全体では現在、施設の民営化が推進されているという。BMJ誌2009年8月15日号(オンライン版2009年8月4日号)より。

心房細動患者の脳卒中予防のための経皮的左心耳閉鎖術 vs. ワルファリン療法

非弁膜症性心房細動患者では、塞栓性発作は左心耳(LAA)血栓によると考えられている。米国メイヨー医科大学のDavid R Holmes氏らは、心房細動患者の脳卒中予防のために、LAAの経皮的閉鎖術の有効性と安全性を評価するため、ワルファリン療法との比較で無作為化非劣性試験を行った。Lancet誌2009年8月15日号より。

非糖尿病高血圧患者の血圧コントロールも、より厳しく130mmHg未満を目標に:Cardio-Sis

非糖尿病高血圧患者の理想的な降圧目標レベルはまだわかっていない。イタリアHospital S Maria della MisericordiaのPaolo Verdecchia氏らの研究グループは、目標とすべき収縮期血圧値が、一般的な目標値と比較してより厳しいほうが、それら患者にとって有益であるとの仮説を検証する非盲検無作為化試験Cardio-Sisを行った。Lancet誌2009年8月15日号より。

新型インフルエンザ、健康体でも重篤な呼吸不全のおそれがある

本論は、メキシコの国立呼吸器疾患研究所のRogelio Perez-Padilla氏らによる、NEJM誌オンライン版2009年6月29日に発表された論文。2009年3月後半、メキシコで多発した呼吸器疾患は、その後の調査で、新型のブタ由来インフルエンザA型(H1N1)ウイルス(S-OIV)によるものであることが判明した。本論は、メキシコ市にある国立第三次呼吸器疾患病院に肺炎で入院し、検査の結果、このいわゆる新型インフルエンザと診断された症例の臨床像および疫学的特性についての報告である。本誌ではNEJM誌2009年8月13日号で掲載された。

新型インフル、感染防止対策はまず若年層に集中するべき

本論は、米国NIHのGerardo Chowell氏らによる、NEJM誌オンライン版2009年6月29日に発表された論文。2009年春、メキシコから重症肺炎の集団発生が報告された同時期に、新型インフルエンザのウイルス株分離の報告がされたことを踏まえ、ウイルスがもたらす重症疾患のリスク因子に関する情報や、感染管理を見通す方法を得るため、メキシコ発の重症肺炎について解析を行ったもの。本誌では2009年8月13日号にて掲載された。

地中海式ダイエット食、認知症とは無関係? 認知機能低下は抑制する?

フランスUniversite Victor Segalen Bordeaux 2のCatherine Feart氏らは、地中海式ダイエット食を摂っている高齢者に、認知能力試験の1つ、ミニメンタル・ステート試験(MMSE)スコアの低下が認められたが、その他の認知能力試験の結果には、関連は見られなかったことを報告した。併せて、地中海式ダイエット食と認知症の発症リスクとには関連が認められなかったとも報告している。1,400人超のフランス人高齢者を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月12日号で発表した。

地中海式ダイエット食が、アルツハイマー型認知症リスクを低減する?

米国ニューヨークTaub Institute for Research in Alzheimer’s Disease and the Aging BrainのNikolaos Scarmeas氏らは、地中海式ダイエット食および運動は、いずれもアルツハイマー型認知症の発症リスクを有意に低減すると報告している。地中海式ダイエット食が少ない人と比べると、多い人は同リスクが約4割減少、また運動をよくする人はしない人に比べると、同リスクが約3割強減少するという。JAMA誌2009年8月12日号で発表した。

若年女性に対する子宮頸がんスクリーニングは有効か?

22~24歳の女性に子宮頸がんスクリーニングを実施しても、29歳までの発がんを抑制する効果はないが、より年齢の高い女性では発がんおよびがん死の大幅な低減効果が認められることが、イギリスLondon大学クイーンメアリー校医学部のPeter Sasieni氏らが実施した症例対照研究で判明した。子宮頸がんのスクリーニングはその便益と弊害のバランスをとるために注意深い解析を要する複雑なプロセスであり、無理のないコストで便益が得られることを社会に対して示すことが重要だという。イギリスでは20~24歳の女性のスクリーニングが国民レベルの議論の的となり、喫緊の重要課題とされている。BMJ誌2009年8月8日号掲載(オンライン版2009年7月28日号)の報告。

HPV 16の短期的持続感染は、数年後の子宮頸がん初期病変を強く予測する

登録時と1年後の遺伝子検査で2回とも発がん性のヒトパピローマウイルス(HPV)が検出(短期的持続感染)された女性は、数年後に子宮頸がんの初期病変としての子宮頸部上皮内がん(CIN)を発現する可能性が有意に高いことが、アメリカ国立がん研究所疫学・遺伝学部門のPhilip E Castle氏らがコスタリカで実施したコホート研究で判明した。発がん性HPVの持続感染は子宮頸部異常のリスクを増大させることがわかっており、スクリーニング法としてHPVの発がん性の遺伝子型に関するDNA検査の導入が進んでいる。HPV遺伝子検査は高い信頼性を持つが、従来の細胞診に比べ感受性は高いものの特異度が劣るという。BMJ誌2009年8月8日号掲載(オンライン版2009年7月28日号)の報告。

早期関節リウマチ、メトトレキサートとの併用薬としてTNF阻害薬が有効

 メトトレキサート(MTX)(商品名:リウマトレックスなど)単剤療法で良好な結果が得られなかった早期関節リウマチ(RA)患者においては、MTXへの追加併用薬として腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬が、従来の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)よりも高い有用性を示すことが、スウェーデンKarolinska大学病院リウマチクリニックのR F van Vollenhoven氏らが実施した無作為化試験(Swefot試験)の1年間の解析で明らかとなった。早期RAに対する新たな治療戦略は急速な進展をみせている。MTXとTNF阻害薬の併用療法はMTX単剤療法よりも高い効果を示すが、MTX単剤でも20~40%の症例で良好な臨床効果が得られるという。Lancet誌2009年8月8日号掲載の報告。

新型インフルエンザ感染妊婦は迅速に治療を

汎発性H1N1 2009インフルエンザウイルスに感染した妊婦は重症化しやすく、合併症をきたして入院に至る可能性が高いため、確定例のみならず可能性例を含め迅速に治療を開始すべきことが、アメリカ国立慢性疾患予防・健康増進センターのDenise J Jamieson氏らが実施した調査で明らかとなった。アメリカを含む世界規模で広範に発生した発熱性呼吸器感染症の原因として、汎発性H1N1 2009インフルエンザウイルスが同定された。症状は軽度~重度までさまざまだが、妊婦への影響に関する報告はほとんどないという。Lancet誌2009年8月8日号(オンライン版2009年7月29日号)掲載の報告。

経口第Xa因子阻害薬apixabanの有効性確認できず

本報告は、コペンハーゲン大学(デンマーク)Horsholm病院整形外科のMichael Rud Lassen氏らによって行われた、関節置換術後の血栓予防薬としての経口第Xa因子阻害薬apixabanの有効性と安全性を検討した第3相試験(ADVANCE-1)からの検討報告。apixabanは出血リスクが低く、経口薬なので使いやすく、効果的な血栓予防薬となるのではと期待され、試験は行われた。同様に第Xa因子を阻害する(ただしトロンビンもある程度阻害)低分子へパリン製剤エノキサパリン(商品名:クレキサン)との比較で行われた検討結果は、有効性の主要転帰を確認することはできなかったと報告された。NEJM誌2009年8月6日号掲載より。

高齢者のセルフネグレクトあるいは虐待は死亡率を有意に増大

セルフネグレクト(自己放任)や他者からの虐待が認められた高齢者は、死亡率が、そうでない人に比べ有意に増大するという。セルフネグレクトの場合には、1年以内の死亡率がおよそ6倍に増大していた。米国Rush大学のXinQi Dong氏らが、9,000人超の高齢者について、前向きに調査をして明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月5日号で発表した。高齢者のセルフネグレクトあるいは他者による虐待は大きな問題となっているが、死亡率との関連を調べた研究は珍しいという。

9.11テロ事件から5~6年、救急隊員や付近住人に喘息やPTSDの新たな発症が

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件では、ニューヨーク世界貿易センター(WTC)が崩壊したことが、救急隊員として活動した人や、WTC付近住人や同付近で働いている人などに、事件から5~6年後に、喘息や心的外傷後ストレス障害(posttraumatic stress disorder;PTSD)が新たに発症していることが明らかになった。2006~2007年の調査では、被験者の約1割が、新たに喘息の症状を訴えたという。またPTSDを訴える人の割合も、被験者の2割近くに上り、事件発生直後の2003~2004年より増加していた。報告は、米国疾病対策予防センター(CDC)のRobert M. Brackbill氏らが、約7万人を対象に行った調査の結果明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月5日号で発表した。