ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:288

HDL-C低値は、心血管疾患の治療ターゲットか?:JUPITER試験サブ解析

HDLコレステロール(HDL-C)値の測定は、初回心血管疾患のリスクの評価には有用だが、HDL-C値はスタチン治療でLDL-Cが著明に低下した患者の残存血管リスクの予測因子ではないことが、アメリカ・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M Ridker氏らが行ったJUPITER試験のサブ解析で明らかとなった。HDL-C値は心血管イベントの発症と逆相関を示す。スタチンは心血管疾患の治療薬として確立されているが、スタチン治療を行ってもなお残存する血管リスクはHDL-C値が低いことである程度説明でき、HDL-Cの不足は治療ターゲットとなる可能性が指摘されている。Lancet誌2010年7月31日号(オンライン版2010年7月22日号)掲載の報告。

一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その1)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、米国ワシントン大学のThomas D. Rea氏らは、「胸骨圧迫を重視させるべきとの戦略を後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した無作為化試験の結果を報告した。全体的な生存率改善に関しては両群で有意な差はみられなかったが、発作時の臨床症状別で解析した結果で、単独実施群の生存率の方が高い傾向がみられたという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。

一般市民による心肺蘇生は胸骨圧迫に集中させた方がよいか?(その2)

一般市民による心肺蘇生(CPR)について、スウェーデン・ストックホルム・プレホスピタルセンターのLeif Svensson氏らは、「心停止で倒れている人と遭遇した場合の一般市民によるCPRは、より簡単に学べ実行できる胸骨圧迫のみを実行すべきという仮説を、後押しする結果を得た」とする、胸骨圧迫単独実施と胸骨圧迫+人工呼吸実施との有効性を比較した前向き無作為化試験の結果を報告した。30日生存率について検討した結果、両群間で有意差が認められなかったという。NEJM誌2010年7月29日号掲載より。

34~37週未満での後期早産児、RDSなど呼吸性疾患リスク増大

妊娠34週~37週未満の後期早産では、新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome:RDS)などの呼吸器疾患発生リスクが、妊娠39~40週の満期出産に比べ有意に増大することが、米国内最新の大規模データで裏付けられた。この点に関するデータはこれまで、10年以上前の、米国外データによるものしかなかったが、米国イリノイ大学シカゴ校のJudith U. Hibbard氏らが、米国内約23万件の出産データを基にして調べ明らかにした。JAMA誌2010年7月28日号掲載より。

2型糖尿病治療薬rosiglitazone vs. ピオグリタゾン

65歳以上の2型糖尿病治療薬rosiglitazone服用者は、ピオグリタゾン(商品名:アクトス)服用者と比べて、脳卒中・心不全・全死亡リスクが増大、急性心筋梗塞も加えた複合イベントリスクも増大することが明らかにされた。米国食品医薬品局(FDA)のDavid J. Graham氏らが、約23万人の米国高齢者向け公的医療保険メディケア加入者について調べ報告したもので、JAMA誌2010年7月28日号(オンライン版2010年6月28日号)で発表された。これまでの研究でも、rosiglitazoneの服用が、重篤な心血管疾患イベントの発生リスク増大につながる可能性が示唆されていた。

首つりした人の多くは、その後1年以内に同じ方法で自殺に成功:未遂者約5万人の解析

首つり/絞首/窒息による自殺未遂歴のある者は、その後の自殺成功率がレファランス(服毒自殺未遂)の6倍以上にのぼり、87%が1年以内に目標を達成し、90%以上が未遂と同じ方法で死亡していることが、スウェーデン・カロリンスカ研究所臨床神経科学部のBo Runeson氏らが実施したコホート研究で判明した。自殺は主要な死亡原因であり、自殺のリスクがある者の評価法および治療法のいっそうの改善は一般臨床における最優先課題である。自殺未遂歴はその後の自殺既遂の強力なリスク因子であり、精神疾患と自殺企図が共存する場合は既遂リスクがさらに増大するという。BMJ氏2010年7月24日号(オンライン版2010年7月13日号)掲載の報告。

投身自殺名所への防止柵設置で自殺は減ったか? 既遂者約1万5,000人の解析

カナダ・トロント市の投身自殺名所の橋への自殺防止柵設置によって、その橋での自殺は解消されたものの、市全体の自殺率には変化がなかったことが、Sunnybrook Health Sciences Centre and Women’s College Hospital(トロント市)のMark Sinyor氏らの調査で明らかとなった。今回の結果と同様、これまでの調査でも防止柵設置後に全体の自殺率が低下したとの報告はない。一方、柵の設置がある程度自殺を予防しているのか、あるいは単に別の橋が代用されたり別の手段で自殺が試みられているのかははっきりしていないという。BMJ誌2010年7月24日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載の報告。

1型糖尿病妊婦に対するビタミンC/E投与は、子癇前症を予防しない

1型糖尿病の妊婦に対しサプリメントとしてビタミンCとビタミンEを投与する方法は、子癇前症のリスク低下には効果がないことが、イギリスRoyal Victoria病院(ベルファスト)のDavid R McCance氏らによる無作為化試験(DAPIT試験)で示された。子癇前症は、妊娠後期にみられる妊娠誘発性の高血圧と新規発症の蛋白尿で特徴付けられる多系統疾患であり、未経産、20歳未満、40歳以上、肥満、子癇前症の既往歴、多胎妊娠、慢性高血圧・腎疾患・自己免疫疾患・抗リン脂質症候群・糖尿病などの既存疾患がリスク因子となることが指摘されている。既存疾患のない妊婦に抗酸化物質を投与しても子癇前症は低下しないことがすでに報告されているが、糖尿病の妊婦に対するビタミン類の効果は不明だという。Lancet誌2010年7月24日号(オンライン版2010年6月26日号)掲載の報告。

飲用水に含まれるヒ素が死亡率を増大、バングラデシュの調査

長期にわたる飲用水を介したヒ素曝露が死亡率を増大させていることが、アメリカ・シカゴ大学のMaria Argos氏らがバングラデシュで実施したコホート研究(HEALS試験)で示された。バングラデシュ国民の350~770万人を含め、世界で数百万の人々が飲用水を介して慢性的にヒ素に曝露されている。しかし、これまでヒ素曝露と死亡率との関連について個人レベルのデータを用いてプロスペクティブに検討した調査はなかったという。Lancet誌2010年7月24日号(オンライン版2010年6月19日号)掲載の報告。

膝前十字靱帯断裂の急性期は、まずリハビリを

米国では毎年20万件以上の膝前十字靱帯(ACL)再建手術が行われ、直接医療費は約30億ドルに上ると推計されるが、ACL再建が他の治療に比べて優れているとのエビデンスは、質の高い無作為化試験によっても明らかにはなっていない。ACL断裂は、若年者の活動性に重大な損傷をもたらすため、特にスポーツ愛好者・選手は、スポーツ再開を望み断裂修復こそが最良であるとみなし手術を受けるが、治療の中心はあくまで保存療法(体系的リハビリテーション)である。ただし現状では必ずしもリハビリは行われていない。そこで、スウェーデンのランド大学臨床科学整形学部門のRichard B. Frobell氏らは、ACL断裂の至適な治療戦略に関する検討を行った。NEJM誌2010年7月22日号掲載より。

血糖センサー付インスリンポンプ、1型糖尿病患者の血糖コントロール有意に改善

近年、1型糖尿病患者向けにインスリン治療器具が様々に開発され、従来の注射療法に代わる、小型携帯型24時間自動注入可能なインスリンポンプ、さらには血糖センサー付インスリンポンプが登場した。本論は、米国ミネアポリスにあるPark Nicollet国際糖尿病センターのRichard M. Bergenstal氏ら「STAR 3」研究グループが、最新の血糖センサー付インスリンポンプについて、従来の注射療法との有効性を比較した1年にわたる多施設共同無作為化試験結果の報告で、小児、成人とも有意に血糖コントロールが改善し、目標血糖値達成割合も高かったという。これまでも、インスリンポンプが注射療法よりも有効であることは明らかにされていたが、小児については結果にバラつきがあった。NEJM誌2010年7月22日号(オンライン版2010年6月29日号)掲載より。

救急外来でのルーチンな強制HIVスクリーニングの効果は?

米国疾病管理予防センター(CDC)は、救急外来部門を含む医療機関での、ルーチン(無目標)強制迅速HIVスクリーニングを行うことを推奨している。このアプローチにより発見される診断未確定のHIV感染は0.1%に上るというが、これまで救急部門だけをみた場合の実施の有用性は明らかになっていない。そこで、デンバーヘルス医療センター救急部門Jason S. Haukoos氏らが救急部門のみを対象とする調査を行った。結果、若干だが識別できた患者が増えていたことが明らかになった。ただし病期は進行していたという。JAMA誌2010年7月21日号掲載より。

HIVワクチン接種者の4割で血清反応陽性

HIVワクチン接種者の血清反応陽性(VISP)頻度について調査が行われた。HIVワクチンは過去20年間で様々なアプローチ、ターゲット、投与タイプの製品開発が進められ、3万人以上に臨床試験が行われている。そのためHIV検査の解釈に混乱が生じている可能性があるとして行われた。米国シアトルにあるFred Hutchinsonがん研究センターHIV/AIDS戦略部門のCristine J. Cooper氏らによるもので、JAMA誌2010年7月21日号にて掲載されている。

究めたい専門があっても卒後1年目からキャリアを積める医師は約半数

志向する専門キャリアを卒後すぐに積み上げることは難しい状況にあることが、英国オックスフォード大学公衆衛生学部UKメディカルキャリア研究グループのMichael J Goldacre氏らの調査で明らかになった。1974~1996年の間に医師となった1万5千人超の、卒後10年間に選択してきた専門キャリアと最終的に目指す専門キャリアについてアンケート調査を行った結果、約4分の1の医師の10年時点の就業している専門が、卒後1~3年の選択キャリアとは異なっていた。調査対象期間に英国では、より高い専門性を短期で身につけることを目的とした卒後研修プログラムの改革が行われてきたが、改革プログラムの効果はみられなかったという。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月6日号)掲載より。

特発性頭蓋内圧亢進症への低エネルギー食介入、3ヵ月で有意に改善

特発性頭蓋内圧亢進症を有する女性への、食事療法(低エネルギー食)介入は、有意に頭蓋内圧を低下し、耳鳴りなどの症状、乳頭浮腫も改善することが、英国バーミンガム大学免疫・感染症スクール眼科教育部門のAlexandra J Sinclair氏らによる前向きコホート研究の結果、報告された。食事療法終了後も3ヵ月間、効果は持続していたことも確認された。BMJ誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月7日号)掲載より。

服薬量の自己調節+遠隔モニタリングで、良好な血圧コントロールを達成

高血圧患者自身による服薬量の自己調節と血圧の遠隔モニタリングにより、プライマリ・ケアにおいて良好な血圧コントロールが達成可能なことが、イギリスBirmingham大学プライマリ・ケア臨床科学部のRichard J McManus氏らが行った無作為化試験で示された。血圧のコントロールは心血管疾患の予防の要であるが、ライフスタイルへの介入や薬物療法の進歩にもかかわらず、現在の推奨治療で良好な血圧コントロールが得られる高血圧患者は約半数にすぎない。それゆえ、特に降圧治療の主たる現場であるプラマリ・ケアにおける新たな介入法の開発が必要とされており、患者自身による自己管理はその有望なアプローチだという。Lancet誌2010年7月17日号(オンライン版2010年7月8日号)掲載の報告。

肥満症治療薬lorcaserin、プラセボに比べ体重減少・維持改善が有意

選択的セロトニン2C受容体アゴニストである肥満症治療薬lorcaserin(国内未承認)の体重減少および維持改善効果は、プラセボに比べ有意であることが報告された。米国フロリダ病院&サンフォード-バーナム研究所のSteven R. Smith氏らが行った、2年にわたる98施設参加の多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験「BLOOM」の結果で、NEJM誌2010年7月15日号で発表された。

糖尿病性網膜症の進行を抑制する薬物療法

2型糖尿病患者の網膜症進行に対する薬物療法の効果を検討した結果、強化血糖コントロールと、抗高脂血症薬併用療法で進行率の低下が認められたことが報告された。一方、強化血圧コントロールによる効果は認められなかった。報告は、「ACCORD」試験被験者のサブグループ「ACCORD Eye」被験者データを解析した結果による。これまでのデータで、血糖、コレステロール、血圧という全身性因子が、糖尿病性網膜症の発症および進行に重要な影響を及ぼしている可能性が示唆されていたことを受けて行われた。NEJM誌2010年7月15日号(オンライン版2010年6月29日号)より。

小児がん5年生存児、診断後25年以降も早期死亡のリスクが高い

小児がん5年生存児は、一般集団と比べ早期死亡のリスクが高いが、長期において、特に一般集団での死亡が実質的に増え始める診断後25年以降についてはどうなのか。これまでの研究で、20年時点で、死亡リスクが高い疾患要因として、再発がんよりも二次原発がんや循環器系イベントによるものだったことが報告されている。英国バーミンガム大学のRaoul C. Reulen氏らは、それより長期の特異的死亡要因について大規模住民ベースによる調査を行った。JAMA誌2010年7月14日号掲載より。

テレケア介入で、がん患者の疼痛症状、うつ病を改善

症状監視自動モニタリングと連結した遠隔医療(テレケア)管理システムは、都市部の点在するがんケア施設の患者や、地方のがんケア施設で暮らす患者の、疼痛症状やうつ病を改善する効果があるという。米国インディアナポリス・Richard Roudebush退役軍人メディカルセンターのKurt Kroenke氏らが、無作為比較対照試験を行い明らかにした。疼痛症状とうつ病は、がん関連の最も一般的かつ治療可能な症状だが、認知されていなかったり、治療がされていなかったりする頻度も高い。Kroenke氏らは、テレケア管理システムに、そうした状況を改善する効果があるのか検討を行った。JAMA誌2010年7月14日号掲載より。