ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:334

禁煙成功率が2倍以上に、喫煙者に対する「肺年齢」の告知

喫煙者にスパイロメトリー検査に基づく「肺年齢」を伝えると、禁煙率が有意に改善されることが、英国Limes Surgery(ハートフォードシャー州ホデスドン)の一般医(GP)Gary Parkes氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。喫煙者の1/4が罹患するとされる慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界的な死因の第4位を占める。英国には150万人のCOPD患者がいると推計されるが、その半数は診断されておらず、発症から診断までの期間は平均20年に及ぶという。BMJ誌2008年3月15日号(オンライン版2008年3月6日号)掲載の報告。

「BMI」だけで心血管系リスクの予測は可能:NHEFS

心血管系リスクの評価にあたり「肥満」を評価項目にすれば、必ずしも「コレステロール値」を測定しなくとも心血管系リスクの予測ができる可能性が出てきた。採血のためだけに医療機関を訪れる必要が減るのであれば、患者サイドにとっては朗報だろう。Lancet誌2008年3月15日号でBrigham & Women’s Hospital(米国)のThomas A Gaziano氏らが報告した。

副鼻腔炎に抗生物質の使用を正当化する臨床徴候、症状はない

副鼻腔炎はウイルス感染と細菌感染の鑑別が困難なため、プライマリ・ケア医は急性副鼻腔炎に対し抗生物質を過剰に処方しがちだという。スイスBasel大学病院臨床疫学研究所のJim Young氏らは、副鼻腔炎には、抗生物質が有効な症例を同定しうる一般的な徴候や症状はないことを確認、Lancet誌2008年3月15日号で報告した。米国では、受診理由の第3位が上部気道感染症で、その約1/3を急性副鼻腔炎が占め、さらにその80%が抗生物質を処方されている。ヨーロッパでもプライマリ・ケアにおける抗生物質処方の72~92%が急性副鼻腔炎とされる。

I期肺癌の早期再発はDNAメチル化が関与

非小細胞肺癌(NSCLC)は、最適で早期の外科的治療にもかかわらず、多くの患者が再発性のNSCLCで死亡している。ジョンズ・ホプキンス病院(米国メリーランド州ボルティモア)のMalcolm V. Brock氏らは、遺伝子のメチル化が腫瘍再発に関与しているのではないかと調査し、遺伝子のプロモーター領域のメチル化が関与していることを突き止めた。NEJM誌2008年3月13日号より。

術中麻酔覚醒の防止と麻酔使用量抑制にBISが優位とは限らない

術中覚醒は、患者に長期的・潜在的・心理的影響を与えかねない重篤な合併症である。これを防ぐために、患者の脳波を処理して得られるバイスペクトラル・インデックス(BIS)が開発され、BIS値を60以下に維持すると術中覚醒の発生率が低下することが報告された。ワシントン医科大学麻酔科のMichael S. Avidan氏らは、このBISに基づくプロトコルと、呼気終末麻酔ガス(ETAG)の濃度測定に基づくプロトコルのどちらが優位かを確認する臨床試験を実施。結果がNEJM誌2008年3月13日号にて掲載されている。

院外心停止、新しい心肺蘇生法で生存退院率3倍に

公衆衛生上の重大な問題となっている院外心停止について、救命率を高めるには脳・冠血流量の確保を最優先すべきとの知見が普及しつつある。米国アリゾナ州スコッツデールにあるメイヨー・クリニック救急医療部門のBentley J. Bobrow氏らは、院外心停止患者の生存率が、従来の救急医療(EMS)プロトコルに代わる中断最小化心肺蘇生法(MICR)を用いることで改善するかどうかについて、前向き研究を行った。JAMA誌2008年3月12日号より。

MRSA院内感染率は全入院患者のスクリーニングでも低下しない

メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)による院内感染を減らすため、医療政策担当者らが、入院する患者全員にユニバーサル・スクリーニング実施を要求していることに対して、スイスのジュネーブ病院・医科大学のStephan Harbarth氏らが、外科患者のMRSA院内感染初期の検出戦略効果を評価する大規模な研究を行い、「ユニバーサル・スクリーニングを行ってもMRSA手術部位感染率やMRSA院内獲得率は有意に変化しない」とスクリーニングに疑問を提示している。JAMA誌2008年3月12日号より。

若年者のSSRI使用を制限しても自殺行動に影響しない

英国では、2003年に18歳未満への選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の投与を禁忌としたが、この規制措置によって若年者の自殺行動に変化は見られないことが、Bristol 大学社会医学のBenedict W Wheeler氏らの調査で明らかとなった。規制当局は規制の理由をSSRIが自殺行動のリスクを増大させる可能性があるためとしているが、抗うつ薬の処方数の低下でうつ病が治療されず自殺死亡率が増加しているとする他国の試験もある。BMJ誌2008年3月8日号(オンライン版2008年2月14日号)掲載の報告。

若年男性の自殺率が著明に低下、排気ガス浄化装置付き自動車の普及も寄与か?

最近10年で、イングランド/ウェールズにおける若年男性の自殺率が著明に低下したことが、BMJ誌2008年3月8日号(オンライン版2008年2月14日号)に掲載された英国Bristol大学社会医学のLucy Biddle氏らが行った研究で明らかとなった。20世紀末の自殺の疫学において最も衝撃的な特徴のひとつが、最先進工業国における若年男性の自殺率の増加とされる。イングランド/ウェールズでは、1950年から1998年にかけて45歳以上の男性および全年齢の女性では自殺率が低下したのに対し、45歳未満の男性では倍増していた。

末期COPDに対する肺移植、片肺よりも両肺移植で生存期間が延長

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の末期例に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうが生存期間が長いことが、パリ第7大学Bichat病院肺移植部のGabriel Thabut氏らの研究で明らかとなった。2006年のInternational Society for Heart and Lung Transplantationの国際登録に関する報告では、1995年1月~2005年6月に実施された肺移植のうち46%がCOPDの治療として行われているが、片肺と両肺移植のいずれがより有効かは不明であった。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。

貧困家庭に対する資金援助プログラムが子どもの健康、成長、発達を改善

多くの国の政府が、健康、栄養、教育への介入による貧困家庭の環境改善を目的に、条件付き資金援助(conditional cash transfer; CCT)を実施している。米国California大学バークレー校公衆衛生学のLia C Fernald氏らは、メキシコで実施されたCCTプログラムOportunidadesの効果を評価、Lancet誌2008年3月8日号でその有効性を報告した。現在、世界には、成長、認知、社会情緒の発達が十分でない5歳以下の子どもが、2億人以上存在するという。

麻薬メトカチノン常用者に特徴的なパーキンソン様症候群はマンガンの作用

東ヨーロッパとロシアでは、違法合成麻薬メトカチノン(エフェドロン、ロシアでは通称cat等で知られる)の静注常用者に特徴的な錐体外路症候群が観察されている。ラトビアにあるリガ・ストラディン大学のAinars Stepens氏らのグループは、平均(±SD)6.7(±5.1)年にわたってメトカチノンを常用、錐体外路症状を呈していたラトビア成人23例について調査を行った。対象者が用いていたメトカチノンは、エフェドリンまたは偽エフェドリンの過マンガン酸カリウム酸化作用を用いて、家内製造されたものだった。NEJM誌2008年3月6日号より。

ワルファリンへの反応の違い、遺伝子異型と強く関連

血栓症の抗凝固療法でワルファリン(国内商品名:ワーファリンなど)を服用している患者の反応は、ワルファリン代謝酵素であるチトクロームP-450 2C9(CYP2C9)の遺伝異型と、ワルファリンの薬理学的標的のカギであるビタミンKエポキシド・レダクターゼ(VKORC1)の遺伝異型によって異なることが知られているが、これら異型の初回抗凝固療法で果たす役割についてはわかっていなかった。米国・ヴァンダービルト大学医学部のUte I. Schwarz氏らが報告。NEJM誌2008年3月6日号より。

合剤によるホルモン補充療法は介入中止後試験でもリスクがベネフィットを上回った

Women’s Health Initiative(WHI)試験は、米国国立衛生研究所(NIH)による閉経後女性(50~79歳、16,608人)を対象としたホルモン補充療法の大規模臨床試験。心臓疾患、股関節骨折、乳癌リスク増大を予防することを期待されたが2002年7月、健康リスクがベネフィットを上回ったため、平均追跡期間5.6年で中止となった。本論は、介入中止後3年(平均2.4)時の追跡調査の結果。JAMA誌2008年3月5日号より。

非ポリープ型も大腸癌の罹患率は高い

結腸直腸癌(大腸癌)は米国における癌死亡原因の第2位を占める。米国ではこれまで、大腸癌はポリープ型腫瘍が時間とともに移行したものと考えられ、予防ではその発見と除去に集中してきた。そのため日本では指摘されていた非ポリープ型(平坦型と陥没型)腫瘍(NP-CRNs)の重要性を指摘するデータも限られていたが、米国カリフォルニア州のパロアルト病院のRoy M. Soetikno氏らが、米国でも非ポリープ型からの癌罹患率は高いとの調査結果を報告した。JAMA誌2008年3月5日号より。

糖尿病患者教育プログラムの有用性が無作為化試験で証明される

「DESMONDプログラム」と名付けられた1回の糖尿病集団教育により、1年後の血糖値改善傾向、体重や喫煙習慣が有意に減少し、病態への漠然たる不安やうつ症状も軽減され得ることが英国における無作為化研究の結果明らかになり、BMJ誌HPにて早期公開された(2008年2月14日付、本誌には2008年3月1日号に収載)。筆頭筆者は University of LeicesterのMelanie J Davies氏。

小児科研修医の投薬ミスが6倍以上に:うつ病、燃え尽き症候群調査から判明

 小児科研修医の2割がうつ病を、7割以上が燃え尽き症候群(burnout)に罹患し、うつ病研修医は投薬ミスの頻度が約6倍も高いことが、米国Harvard大学医学部付属小児病院(ボストン)のAmy M Fahrenkopf氏らの研究により明らかとなった。米国では毎年4万4,000~9万8,000人の患者が医療過誤で死亡し、薬物有害事象のうち予防可能な事例は40万件にのぼるが、これには睡眠不足や過重労働など医療従事者の労働条件の実質的な関与が指摘されていた。BMJ誌2008年3月1日号(オンライン版2008年2月7日号)掲載の報告。

高齢者に対する複合的介入が、安全で自立的な生活を可能にする

高齢者は、身体機能の低下によって自立性が失われることで、入院や介護施設での長期的なケアが必要となり、早期の死亡につながる。英国Bristol大学社会医学科のAndrew D Beswick氏らは、高齢者に対する身体的、機能的、社会的、心理学的な因子を考慮した複合的介入により安全で自立的な生活が可能となることを明らかにした。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。