ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:4

出産女性へのトラネキサム酸予防投与、出血リスクを軽減/Lancet

 出産する女性へのトラネキサム酸の予防投与はプラセボと比較して、生命を脅かす出血リスクを軽減することが認められ、血栓症のリスクを高めるというエビデンスは確認されなかった。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のKatharine Ker氏らAnti-fibrinolytics Trialists Collaborators Obstetric Groupが、無作為化比較試験のシステマティックレビューと個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析の結果で示した。トラネキサム酸は、臨床的に産後出血と診断された女性に推奨される治療薬であるが、出血を予防可能かについては不明であった。著者は、「出産するすべての女性にトラネキサム酸の使用を推奨するわけではないが、死亡リスクの高い女性では産後出血の診断前にトラネキサム酸の使用を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌2024年10月26日号掲載の報告。

無症候性重症AS、早期TAVR vs.経過観察/NEJM

 無症候性の重症大動脈弁狭窄症(AS)患者に対するバルーン拡張型弁を用いた経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の早期施行は、経過観察と比較して複合イベント(全死因死亡、脳卒中または心血管系疾患による予定外の入院)の抑制において優れることが示された。米国・Morristown Medical CenterのPhilippe Genereux氏らEARLY TAVR Trial Investigatorsが、米国とカナダの75施設で実施した無作為化非盲検比較試験「Evaluation of TAVR Compared to Surveillance for Patients with Asymptomatic Severe Aortic Stenosis trial:EARLY TAVR試験」の結果を報告した。無症候性の重症ASで左室駆出率(LVEF)が保たれている患者の場合、現行ガイドラインでは6~12ヵ月ごとの定期的な検査が推奨されている。これらの患者において、TAVRによる早期介入がアウトカムを改善するかを検討した無作為化試験のデータは不足していた。NEJM誌オンライン版2024年10月28日号掲載の報告。

CKDへのエンパグリフロジン、中止後も心腎保護効果が持続/NEJM

 疾患進行リスクのある幅広い慢性腎臓病(CKD)患者において、SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、投与中止後も最長12ヵ月間、追加的な心腎ベネフィットをもたらし続けることが、英国・オックスフォード大学のWilliam G. Herrington氏らEMPA-KIDNEY Collaborative Groupによる「EMPA-KIDNEY試験」の試験後追跡評価において示された。EMPA-KIDNEY試験では、エンパグリフロジンが疾患進行リスクのある幅広いCKD患者に良好な心腎効果をもたらすことが示されていた。今回の試験後追跡評価(post-trial follow-up)では、試験薬中止後のエンパグリフロジンの効果がどのように進展するかが評価された。NEJM誌オンライン版2024年10月25日号掲載の報告。

肥満の膝OA患者へのセマグルチド、疼痛を改善/NEJM

 肥満(BMI値≧30)かつ中等度~重度の疼痛を伴う変形性膝関節症(OA)を有する患者において、週1回のセマグルチド皮下投与はプラセボと比較して、体重および膝OA関連の疼痛を有意に減少したことが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のHenning Bliddal氏らSTEP 9 Study Groupが二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。体重の減少は疼痛などの膝OAの症状を緩和することが示されているが、肥満者のGLP-1受容体作動薬の効果は十分には研究されていなかった。NEJM誌2024年10月31日号掲載の報告。

若年透析患者の腎移植アクセス、施設スタッフ数と関連/JAMA

 米国では、透析施設によって患者対スタッフ比(看護師またはソーシャルワーカー1人当たりの患者数)が大きく異なり、この施設間の差が高齢患者のアウトカムに影響を及ぼすことが知られている。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAlexandra C. Bicki氏らは今回、青少年および若年成人の透析患者について調査し、患者対スタッフ比が低い施設と比較して高い施設は腎移植待機リスト登録率および腎移植率が低く、とくに22歳未満の患者で顕著であることを明らかにした。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月23日号で報告された。

高リスク網膜芽細胞腫の術後CEV療法、3サイクルvs.6サイクル/JAMA

 片眼性の病理学的高リスク網膜芽細胞腫の術後補助療法において、6サイクルの化学療法(CEV:カルボプラチン+エトポシド+ビンクリスチン)に対して3サイクルのCEV療法は5年無病生存率が非劣性であり、6サイクルのほうが有害事象の頻度が高く、QOLスコアの低下が大きいことが、中国・中山大学のHuijing Ye氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月21日号に掲載された。  本研究は、病理学的高リスク網膜芽細胞腫患者に対する術後CEV療法の有効性に関して、6サイクルに対する3サイクルの非劣性の検証を目的とする非盲検無作為化試験であり、2013年8月~2024年3月に中国の2つの主要な眼治療施設で患者を登録した( Sun Yat-Sen University Clinical Research 5010 Programなどの助成を受けた)。

GLP-1受容体作動薬、内視鏡検査の誤嚥リスクに影響するか/BMJ

 2型糖尿病患者に上部消化管内視鏡検査を行う際、検査前のSGLT-2阻害薬と比較してGLP-1受容体作動薬の使用では、肺吸引のリスクは上昇しないものの、内視鏡検査中止のリスクが高いことが、米国・ハーバード大学医学大学院のWajd Alkabbani氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年10月22日号に掲載された。  研究グループは、2型糖尿病患者の上部消化管内視鏡検査において、検査前のGLP-1受容体作動薬投与は、SGLT-2阻害薬投与に比べ肺吸引や検査中止のリスクを上昇させるかを評価する目的で、コホート研究を行った(ハーバード大学医学大学院薬剤疫学・薬剤経済学科などの助成を受けた)。

オピオイド使用障害、治療中止リスクが低い薬剤は?/JAMA

 オピオイド使用障害(OUD)に対するオピオイド作動薬治療(OAT)のレジメンに関する国際的なガイドラインでは、競合する治療選択肢の有効性の比較に関するエビデンスが限られているため、依然として意見が分かれているという。カナダ・サイモンフレーザー大学のBohdan Nosyk氏らは、メサドンと比較してブプレノルフィン/ナロキソンは、治療中止のリスクが高く、死亡率は両群で同程度であることを示した。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2024年10月17日号で報告された。  研究グループは、OUDの治療におけるブプレノルフィン/ナロキソンとメサドンの有用性を比較評価する目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(米国国立薬物乱用研究所[NIDA]などの助成を受けた)。

60歳以上へのRSVワクチン、承認後初のシーズンの有効性/Lancet

 RSウイルス(RSV)ワクチン承認後最初のシーズンである2023~24年の米国において、同ワクチンの接種は、60歳以上のRSV関連入院および救急外来受診の予防に有効であったことが示された。米国疾病予防管理センターのAmanda B. Payne氏らが報告した。2023年に初めて使用が推奨されたRSVワクチンは、臨床試験で下気道疾患に有効であることが確認されているが、実臨床での有効性に関するデータは限られていた。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。  研究グループは、米国8州の電子カルテに基づくネットワーク(Virtual SARS-CoV-2, Influenza, and Other respiratory viruses Network:VISION)において、2023年10月1日~2024年3月31日にRSV検査を受けた60歳以上の成人におけるRSV様疾患による入院および救急外来受診に関して、検査陰性デザインを用いた解析を実施した。

異常降雨が全死亡リスクと関連、心血管・呼吸器疾患死亡も/BMJ

 日降雨量の強度はさまざまな健康に影響を及ぼしており、異常降雨は全死因死亡、心血管系疾患および呼吸器系疾患による死亡の相対リスク上昇と関連していた。また、その関連は、地域の気候や都市インフラによって異なっていた。ドイツ・German Research Center for Environmental HealthのCheng He氏らが、日降雨量(強度、期間、頻度)の特性と死亡との関連について解析し、報告した。気候変動により、短期的な降雨現象の頻度と深刻さが増している。降雨に関連する健康リスクに関する研究は、主に感染症と暴風雨に焦点を当てており、心血管系や呼吸器系の健康への影響、降雨強度の変化がこれらの状態にどのような影響を与えるかなど、より広範な影響は知られていなかった。BMJ誌2024年10月9日号掲載の報告。

新規3剤配合降圧薬GMRx2、2剤併用より有効/Lancet

 テルミサルタン、アムロジピン、インダパミドの新規3剤配合降圧薬GMRx2は、2剤併用薬と比較して臨床的に意義のある降圧をもたらし、忍容性も良好であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnthony Rodgers氏らが、オーストラリア、チェコ、ニュージーランド、ポーランド、スリランカ、英国および米国の83施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「GMRx2は血圧管理の新たな治療選択肢であり、臨床診療における血圧コントロールの大きな改善をもたらす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。

2型DM男性へのメトホルミン、子の先天奇形と関連なし/BMJ

 父親の精子形成期におけるメトホルミンの使用は、子の臓器特異的奇形を含む先天奇形とは関連しないことが、ノルウェーおよび台湾の一般住民を対象とした全国規模のコホート研究において示された。国立台湾大学のLin-Chieh Meng氏らが報告した。先行研究では、父親のメトホルミン使用と子の先天奇形のリスクとの関連が示されていた。著者は、「今回の研究の結果、メトホルミンは子供をもうける予定のある2型糖尿病男性において、血糖管理のための最初の経口薬として適切であると考えられる」とまとめている。BMJ誌2024年10月16日号掲載の報告。

低~中リスク限局性前立腺がん、体幹部定位放射線治療は有効か/NEJM

 低~中リスクの限局性前立腺がん患者の放射線治療において、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法と比較して、5分割の体幹部定位放射線治療(SBRT)は、生化学的再発または臨床的再発に関して非劣性であり、有効な治療選択肢となる可能性があることが、英国・Royal Marsden HospitalのNicholas van As氏らが実施した「PACE-B試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年10月17日号に掲載された。  PACE-B試験は、限局性前立腺がん患者において、生化学的再発または臨床的再発に関して、従来の分割照射法または中程度の寡分割照射法に対するSBRTの非劣性の検証を目的とする第III相非盲検無作為化対照比較非劣性試験であり、2012年8月~2018年1月に3ヵ国(英国、アイルランド、カナダ)の38施設で患者を登録した(Accurayの助成を受けた)。

再発・転移子宮頸がん、化学療法+cadonilimabがPFS・OS改善/Lancet

 持続性、再発または転移を有する子宮頸がんの1次治療において、標準治療の化学療法単独と比較して、化学療法にPD-1とCTLA-4のシグナル伝達経路を同時に遮断する二重特異性抗体cadonilimabを追加すると、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)を有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・復旦大学上海がんセンターのXiaohua Wu氏らが実施した「COMPASSION-16試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年10月26日号で報告された。

新規2型DM、短期強化インスリン後リナグリプチン+メトホルミンが有用/BMJ

 新たに2型糖尿病と診断されたHbA1c値8.5%以上の患者において、短期強化インスリン療法(SIIT)後に経口療法(とくにリナグリプチンとメトホルミンの併用)を用いるという強力かつ簡便な戦略は、持続的な血糖コントロールをもたらし、β細胞機能を改善することが示された。中国・中山大学第一付属病院のLiehua Liu氏らが、中国の15施設で実施した無作為化非盲検比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「この治療戦略は、2型糖尿病の臨床管理における意思決定に有望な方向性を示すものである」とまとめている。BMJ誌2024年10月15日号掲載の報告。

局所進行子宮頸がん、導入化学療法+CRTがPFS・OS改善/Lancet

 局所進行子宮頸がん患者において、短期間導入化学療法後に化学放射線療法(CRT)を行うことで、CRTのみの場合と比較して無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)が有意に延長したことが、ブラジル、インド、イタリア、メキシコおよび英国の32施設で実施された無作為化第III相試験「INTERLACE試験」で示された。英国・University College Hospital NHS TrustのMary McCormack氏らINTERLACE investigatorsが報告した。局所進行子宮頸がんの標準治療はCRTであるが、再発する患者が依然として多く、転移がんにより死に至る。結果を踏まえて著者は、「この短期間導入化学療法レジメンと7日以内のCRTを現在の標準治療と考えるべきである」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。

早期乳がんの遠隔転移再発率、1990年代からどのくらい低下した?/Lancet

 英国・Early Breast Cancer Trialists' Collaborative Group(EBCTCG)は同グループのデータベースを用いた統合解析を行い、エストロゲン受容体(ER)陽性およびER陰性乳がんの遠隔転移再発率が、1990年代に比べ2000年以降に診断された女性では約5分の1低下していることを報告した。この改善は、本研究に参加する低リスクの女性患者の割合が高くなったことと、補助療法の進歩により説明される。ER陽性乳がんの遠隔再発の長期リスクは、依然として存在するものの前回の報告よりも約10分の1低下した。ER陽性早期乳がん女性の遠隔転移再発率は診断後20年以上にわたって一定の割合で持続するが、ER陰性乳がんに関するデータはこれまでほとんどなかった。Lancet誌2024年10月12日号掲載の報告。

慢性疾患患者のインフルワクチン接種率、電子メールで改善/JAMA

 デンマークにおける全国規模登録ベースの無作為化臨床試験において、慢性疾患を有する青年~中年患者のインフルエンザワクチン接種率は、電子メールを用いたナッジにより有意に上昇することが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学のNiklas Dyrby Johansen氏らが、「Nationwide Utilization of Danish Government Electronic Letter System for Increasing Influenza Vaccine Uptake Among Adults With Chronic Disease trial:NUDGE-FLU-CHRONIC試験」の結果を報告した。世界的にガイドラインで強く推奨されているにもかかわらず、慢性疾患を有する若年~中年患者のインフルエンザワクチン接種率は依然として十分とは言えない状況(suboptimal)で、接種率向上のための効果的で柔軟性のある戦略が求められている。本試験の結果を受けて著者は、「費用対効果の高い電子メール戦略は、簡便で柔軟性があり、公衆衛生に大きな影響を与える可能性があることが示された」と述べている。JAMA誌オンライン版10月11日号掲載の報告。

人工呼吸器離脱のための最適なスクリーニング頻度と手法は?/JAMA

 侵襲的人工呼吸器を24時間以上装着した重症成人患者において、自発呼吸トライアル(SBT)のスクリーニングの頻度(1日1回vs.より頻回)および手法(pressure support[PS]SBT vs.TピースSBT)は、抜管成功までの期間に影響を及ぼさないことが示された。一方で、プロトコール化された頻回なスクリーニング+PS SBTは、初回の抜管成功までの期間を延長するという予期せぬ統計学的に有意な交互作用が確認されたという。カナダ・トロント大学のKaren E. A. Burns氏らCanadian Critical Care Trials Groupが無作為化試験の結果を報告した。人工呼吸器から離脱するためのSBTの最適なスクリーニング頻度と手法は、明らかになっていなかった。JAMA誌オンライン版2024年10月9日号掲載の報告。

ホジキンリンパ腫、ニボルマブ+AVD療法がPFS延長/NEJM

 III期またはIV期の進行古典的ホジキンリンパ腫を有する思春期および成人患者において、ニボルマブとドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用投与(N+AVD)は、ブレンツキシマブ ベドチンとドキソルビシン、ビンブラスチン、ダカルバジンの併用投与(BV+AVD)と比較して無増悪生存期間(PFS)を延長し、良好な副作用プロファイルを示したことが、米国・シティ・オブ・ホープ総合がんセンターのAlex F. Herrera氏らによる検討で示された。進行古典的ホジキンリンパ腫の治療にブレンツキシマブ ベドチンを組み入れることで、成人および小児患者の転帰は改善することが知られている。しかしながら、ブレンツキシマブ ベドチンは、成人の治療において毒性を増加させ、投与を受けた小児患者の半数以上に地固め放射線療法が行われており、再発が依然として課題となっている。ホジキンリンパ腫では、未治療患者を含めた予備的試験などでPD-1の阻害が有効であることが示されており、研究グループはN+AVDの有効性と安全性を評価する試験を行った。NEJM誌2024年10月17日号掲載の報告。