ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:285

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的頸動脈内膜剥離術、長期的な予後改善効果が明らかに

無症候性頸動脈狭窄症に対する即時的な頸動脈内膜剥離術(CEA)の施行は、遅延的にCEAを行う場合に比べその後10年間の脳卒中リスクを有意に抑制することが、イギリスJohn Radcliffe病院のAlison Halliday氏らが行った無作為化試験で示された。CEAは頸動脈の狭窄を除去するものの、脳卒中や死亡のリスクを引き起こす可能性もある。一方、直近の脳卒中症状やその他の神経学的症状がみられない無症候性の頸動脈狭窄症に対するCEAは脳卒中の発症を数年にわたり抑制することが示されているが、長期的な予後を検討した試験はないという。Lancet誌2010年9月25日号掲載の報告。

外科治療にも地域格差:WHO調査

世界の手術室の数は地域によって大きな差があり、手術室の約2割に、外科治療の医療資源の指標であるパルス酸素濃度計が装備されていないことが、アメリカ・ハーバード大学公衆衛生大学院のLuke M Funk氏らが行ったWHOの調査で明らかとなった。外科治療を要する疾患は疾病負担の多くを占め、低く見積もっても世界全体の障害調整生存年(disability-adjusted life years)の11%が手術の対象となる疾患に帰せられるという。しかし、外科治療の供給を保証する医療資源は、特に低所得国で不十分なのが現状である。Lancet誌2010年9月25日号(オンライン版2010年7月1日号)掲載の報告。

経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)、全死因死亡率が有意に減少

大動脈弁置換術が適応とされない、重度大動脈弁狭窄症および合併症を有する患者に対する、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の、従来標準治療との転帰を比較した多施設共同無作為化比較試験「PARTNER」の結果、TAVI群の方が重大な脳卒中、重大な血管イベントの高率の発生にもかかわらず、全死因死亡率、複合エンドポイント(全死因死亡率・再入院率)が有意に低かったことが、NEJMオンライン版2010年9月22日号で発表された。報告は、米国コロンビア大学メディカルセンターのMartin B. Leon氏らによる。TAVIは、2002年に第1例が行われて以降、ハイリスクの大動脈弁狭窄症患者に対し、低侵襲医療をもたらす治療として注目されている。

下肢表在性静脈血栓症にフォンダパリヌクスが有効

深部静脈血栓症や肺動脈塞栓症を併発していない、急性の症候性下肢表在性静脈血栓症患者への、抗凝固薬治療の有効性と安全性は確立していない。フランスINSERMのHerve Decousus氏ら研究グループは、フォンダパリヌクス(商品名:アリクストラ)の有効性と安全性について、約3,000例を対象とするプラセボ対照無作為化二重盲検試験「CALISTO」を行った。結果、1日1回2.5mg、45日間投与の有効性および安全性が認められたと報告している。NEJM誌2010年9月23日号より。

外来で心血管イベントハイリスク患者を見抜くには?:REACH試験

外来で様々な初期徴候を示す安定したアテローム血栓症患者のうち、心血管イベント発生リスクは、糖尿病があると約1.4倍、前年に虚血イベントがあった場合には約1.7倍に増大することが明らかにされた。多血管病(polyvascular disease)がある場合には、同リスクは約2倍になるという。米国VA Boston Healthcare SystemのDeepak L. Bhatt氏らが、臨床所見からハイリスク群を特定する簡便な方法について検討するため行った、約4万5,000人を4年間追跡した「Reduction of Atherothrombosis for Continued Health」(REACH)試験の結果、明らかにされたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。

心不全患者への自己管理カウンセリング、死亡率や入院率の低下につながらず

心不全患者に対し、服薬や塩分摂取制限などに関する自己管理について、カウンセリング・プログラムを強化しても、死亡率や入院率の低下にはつながらないことが報告された。米国ラッシュ大学メディカルセンター(シカゴ)予防医療部門のLynda H. Powell氏らが、約900人の患者を対象に行った無作為化比較対照試験「HART」(Heart Failure Adherence and Retention Trial)で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月22/29日号で発表した。

前立腺がんのルーチンスクリーニングは支持できない:メタ解析から

前立腺がんスクリーニングは、診療ガイドラインで推奨されているが、スクリーニングが全体としての死亡率や、患者にとって最も重要なアウトカムである疾患特異的な死亡率を改善するかどうか、さらにスクリーニングの有益性ががんの過剰検出や過剰診療が招く有害およびコストを上回るかどうかについては明らかにされていない。米国フロリダ大学泌尿器・前立腺センターのMia Djulbegovic氏らの研究グループは、前立腺がんスクリーニングの有益性と有害さのエビデンスを検討するため、これまでに発表されている前立腺がんスクリーニングに関する無作為化試験のシステマティックレビューとメタ解析を試みた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。

60歳時のPSA値で、前立腺がん死亡・転移の生涯リスクが予測できる

60歳時の前立腺特異抗原(PSA)値から、転移と前立腺がん死の生涯リスクが予測できるとの報告が、米国Sloan-Kettering記念がんセンター(ニューヨーク)のAndrew J Vickers氏らにより発表された。また、その際のPSA値が中央値(≦1 ng/mL)以下の場合、前立腺がんが潜んでいる可能性はあるものの、生命を脅かすようなことはないとも述べ、「それら男性はさらなるスクリーニングは免除されるべきで、それよりもPSA値がより高い群に照準を合わせるべき」と結論づけている。PSAスクリーニングは、前立腺がんの早期発見のため広く行われるようになっているが、過剰診断を招いていることが無作為化試験で示されたり、70歳男性の40%近くが前立腺がんを有していると推定されており、研究グループは「前立腺がんの有無ではなく、症状を引き起こすのか生命を縮めるのかが重要」として、検査値とその後の臨床転帰との関連を調べた。BMJ誌2010年9月18日号(オンライン版2010年9月14日号)より。

妊娠中の体重増加、子の出生時体重増加に関連:妊婦51万人と子116万児の解析

妊娠中の妊婦体重の増加が、遺伝素因とは無関係に子どもの出生時体重を増加させることが、アメリカ・ボストン小児病院のDavid S Ludwig氏らが行ったコホート試験で示された。近年、生活習慣病の胎生期起源に関する研究が盛んに行われ、妊娠中の低栄養状態や低出生時体重が、子どもが成人期に達した際の糖尿病や心血管疾患のリスクを増大させるとの仮説を支持する有力なエビデンスが存在する。一方、妊娠中の過度の体重増加が子どもの出生時体重や後年の肥満リスクを増大させることが観測されているが、これは遺伝素因など他の交絡因子が原因の可能性もあるという。Lancet誌2010年9月18日(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。

女性への教育の増加により、子どもの死亡率が改善

過去40年間に女性の教育期間が著しく増加し、多くの国では男性を凌駕しており、子どもの死亡率の低下に大きく寄与している可能性があることが、アメリカ・ワシントン大学(シアトル)のEmmanuela Gakidou氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。教育は、経済発展において根本的な役割を担い、健康にも強い影響を及ぼすことが示されており、母親の教育レベルと子どもの死亡率の関連を強く示唆する報告もある。これまでに、一定期間の教育の影響を評価した研究はあるものの、低所得国において性別、年齢別に、経時的に行われた検討はないという。Lancet誌2010年9月18日号掲載の報告。

禁煙法施行で小児喘息入院が著明に減少:スコットランド

スコットランドでは2006年3月に禁煙法が施行され、公共の場における喫煙が全面的に禁止された。これまでの研究では、施行後、パブで働く従業員における呼吸器症状が減少したとの報告がなされている。本論は、英国グラスゴー大学公衆衛生部門のDaniel Mackay氏らによる、職場などに限定することなく受動喫煙曝露のなくなった集団において呼吸器疾患が減少したかどうかを調査した初の報告で、小児喘息による入院率減少を評価した結果、関連が認められたと報告している。NEJM誌2010年9月16日号より。

重症ARDS患者への筋弛緩薬早期投与、90日生存率を改善

急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で人工呼吸器を装着した患者に対する、新しい筋弛緩薬である神経筋遮断薬cisatracurium besylateの早期投与が、臨床転帰を改善したことが、フランスUniversite de la Mediterranee Aix-MarseilleのLaurent Papazian氏ら「ACURASYS」研究グループにより報告された。神経筋遮断薬投与は酸素化を改善し、人工呼吸器によって誘発された肺損傷を改善する可能性の一方、筋力低下を招く可能性が懸念されていたが、Papazian氏らによる多施設共同プラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果、筋力低下を招くことなく90日生存率が改善したことが認められたという。NEJM誌2010年9月16日号より。

MCATスコアが低いほど、医師資格試験は初回不合格の確率大

米国で医学部を卒業しながら医師資格試験に初回受験で不合格である確率は、「MCAT(Medical College Admission Test)スコアが低い」「白人に比べ非白人の方が」「学費の借金が5万ドル以上ある」で、増大する傾向があるという。米国ワシントン大学のDorothy A. Andriole氏らが、医学部に入学した10万人弱について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。

研修医時代の自己犠牲の思い出が、メーカーからの金品受理を寛容に

医師の、医薬品・医療機器業界からの金品受理に対する許容度は、研修医時代に費やした自己犠牲を思い出すと増大するという。この傾向は、自己犠牲について思い出させた上で、それが金品受理の根拠になるとの合理的理由を提示すると、さらに強まるという。米国Carnegie Mellon大学のSunita Sah氏らが、米国レジデント医約300人について行った無作為化比較対照試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月15日号で発表した。

経口ビスホスホネート製剤と食道がんリスクとの関係

 骨粗鬆症の予防や治療に用いられる経口ビスホスホネート製剤を服用する患者には、消化不良、吐き気、腹痛、びらん性食道炎、さらに食道潰瘍といった副作用が一般にみられることは報告されている。さらに最近の症例報告では、食道がんリスクの増加が示唆されている。英国オックスフォード大学のJane Green氏らのグループは、「経口ビスホスホネート製剤服用者において食道がん(胃・大腸ではない)リスクは増加する」との仮説検証を目的に、UK General Practice Research Databaseを用いたコホート内ケース・コントロール解析を行った。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年9月1日号)より。

葉物野菜を摂るほど2型糖尿病リスクは有意に低下

世界の糖尿病有病率は現在、6.4%と推定されており、なかでも新規2型糖尿病患者はこの20年間で激増しているという。糖尿病において食事は、重要かつ潜在的に修正可能なリスク因子とされ、これまで炭水化物や食物繊維の役割に関する研究はされてきたが、果物や野菜の摂取量と2型糖尿病発症率との因果関係は十分には解明されていなかった。そこで、英国レスター大学のPatrice Carter氏らの研究グループは、システマティックレビューとメタ解析を行い両者の因果関係について検討した。BMJ誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月19日号)より。

心拍数は慢性心不全の治療ターゲットか?:SHIFT試験

心拍数高値は心不全のリスク因子であり、ivabradineによる選択的な心拍数低下療法は心血管アウトカムを改善することが、ドイツUniversitatsklinikum des SaarlandesのMichael Bohm氏らによる無作為化試験(SHIFT試験)で判明した。心拍数の上昇は心血管リスクの強力なマーカーとされる。SHIFT試験では、すでにivabradine投与による心拍数の低下が、症候性心不全患者における不良な臨床予後を低減することが示されており、これは心拍数がリスクのマーカーのみならずリスク因子でもあることを示唆するという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。

洞結節抑制薬ivabradine、心拍数低下により心不全の予後を改善:SHIFT試験

 選択的洞結節抑制薬ivabradineの心拍数低下効果により、心不全の臨床予後が有意に改善されることが、スウェーデン・Gothenburg大学のKarl Swedberg氏らが実施した無作為化試験(SHIFT試験)で明らかとなった。この20年で、既存の心不全治療法の効果は確立されているが、依然として予後は極めて不良なことから、新たな治療法の開発が最重要課題とされている。SHIFT試験では安静時心拍数の上昇は心不全における不良な予後のリスク因子であることが示されており、ivabradineは洞結節のIf電流を特異的に阻害することで心拍数を低下させ、β遮断薬とは異なり収縮能が低下した患者でも心筋収縮や心臓内伝導に影響を与えないという。Lancet誌2010年9月11日号(オンライン版2010年8月29日号)掲載の報告。

大腸手術時のゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジの感染予防効果

埋め込み型局所用抗菌薬ゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジについて術後感染予防の効果は認められないとの報告が、米国デューク大学臨床研究所のElliott Bennett-Guerrero氏らによる第3相臨床試験の大規模多施設共同試験の結果、報告された。術後感染予防を目的とした抗菌薬全身投与はルーチンになっているが、大腸手術後の感染症罹患率もかかる医療コストも高いままである。ゲンタマイシン・コラーゲン・スポンジの外科的埋め込みは世界54ヵ国で承認されており、1985年以降、100万例以上の患者が埋め込みを受けているという。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年8月4日号)より。

結核菌とリファンピシン耐性菌が短時間で検出可能に?

スイス・ジュネーブにあるInnovative New Diagnostics基金のCatharina C. Boehme氏らは、ヒト型結核菌(MTB)感染とリファンピシン(RIF)耐性の有無を同時に検出する自動分子検査機器「Xpert MTB/RIF」の性能について検証した結果、「未処理の喀痰からでも、最短で2時間以内に感度の高い検出結果が得られる」ことを報告した。NEJM誌2010年9月9日号(オンライン版2010年9月1日号)掲載より。世界的な結核の制圧は、特に薬剤耐性菌株の出現と、HIV感染患者において喀痰塗抹検査では時間がかかる上、診断精度も低いことによって進んでいない。結核による死亡率を低下させ、伝播を防ぐには一刻も早い検出が必須だが、感度の高い検出法は複雑でインフラ整備も必要なため、普及と効果の享受には限界があるとされている。