ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:273

胃食道逆流症への腹腔鏡下逆流防止術、esomeprazole投与と5年寛解率は同等

胃食道逆流症(GERD)に対する、腹腔鏡下逆流防止術(laparoscopic antireflux surgery;LARS)とプロトンポンプ阻害薬esomeprazole投与による治療について、5年寛解率は同等であることが示された。フランス・Nantes大学のJean-Paul Galmiche氏らが行った国際多施設共同無作為化試験「LOTUS」の結果によるもので、JAMA誌2011年5月18日号で発表された。GERDは慢性・再発性の疾患で日常生活に支障を来す。治療としては、長期薬物療法もしくは手術療法の2つのオプションがあるが、LOTUS試験は、いずれが至適であるかを目的に行われた。

甲状腺自己抗体を発現する妊婦へのレボチロキシン投与、流産/早産リスクを低減

甲状腺自己抗体の発現がみられる妊婦では、流産および早産のリスクが有意に高く、甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンNa、チラーヂン)はこれらのリスクを50%以上も低下させることが、イギリス・ロンドン大学クイーン・メアリー校のShakila Thangaratinam氏らの検討で示唆された。妊娠可能年齢の女性で相対的に発現頻度が高いとされる甲状腺自己抗体は、妊娠の有害転帰を招く可能性があるという。一方、レボチロキシンは妊娠の転帰を改善する可能性が示唆されている。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月9日号)掲載の報告。

COPDの標準治療へのβ遮断薬追加の有用性が明らかに

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療において、β遮断薬を標準的な段階的吸入薬治療に追加すると、全死因死亡、急性増悪、入院のリスクが改善されることが、イギリス・Dundee大学のPhilip M Short氏らの検討で示された。β遮断薬は、心血管疾患に対する明確なベネフィットが確立されているが、COPDを併発する患者では、気管支攣縮の誘導や吸入β2刺激薬の気管支拡張作用の阻害を理由に使用されていない。一方、β遮断薬がCOPD患者の死亡や増悪を抑制する可能性を示唆する報告があるが、標準的なCOPD治療薬との併用効果を検討した研究はないという。BMJ誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月10日号)掲載の報告。

デング熱媒介蚊コントロール戦略、幼虫よりも成虫標的のほうが費用対効果に優れる

都市部におけるデング熱の媒介蚊(ベクター)コントロール戦略では、高い駆除効果を有する殺虫剤の年6回散布による成虫コントロールが、費用対効果に優れる介入と考えられることが、米国・エール大学のPaula Mendes Luz氏らの検討で示された。世界で推定25億人がデング熱罹患リスクにさらされ、とくに医療資源に制約のある国で罹患率が高い。毎年約5,000万人が感染し、ベクターと人口の密度上昇により特に都市部で増加している。デング熱コントロールは、主にベクターの幼虫あるいは成虫を標的とした殺虫剤散布に依存するが、殺虫剤抵抗性の進化によりコントロール・プログラムが失敗に終わる可能性があるという。Lancet誌2011年5月14日号(オンライン版2011年5月3日号)掲載の報告。

脳動脈瘤へのヒドロゲル被覆コイル塞栓術、プラチナコイルに比べ再発率を抑制

脳動脈瘤に対するヒドロゲル被覆コイルを用いた血管内塞栓術は、瘤破裂の明らかな抑制効果や長期的な臨床アウトカムの改善効果はもたらさないものの、脳動脈瘤再発(フォローアップ画像検査で不完全な瘤塞栓)を有意に抑制することが、英国・エディンバラ大学のPhilip M White氏らが行ったHELPS試験で示された。血管内コイル塞栓術は開頭手術によるクリッピング術に比べ予後良好で低侵襲だが、残存瘤や再発、再治療率が高いとされる。被覆コイルは、再発率や再治療率の低減を目的に開発されたが、従来のベアプラチナコイルに比べ高価で、その安全性や有効性に関する強固なエビデンスが確立されないまま8~9年間、臨床使用されてきたという。Lancet誌2011年5月14日号掲載の報告。

女性の重大健康問題、骨盤臓器脱には、メッシュキット修復術か膣壁形成術か

骨盤臓器脱の修復法として近年急速に広がった、標準化されたトロカールガイド下ポリプロピレン製メッシュキットを用いた経膣的修復術について、従来の膣壁形成術と比較検討した結果、短期的な治療成功率は高かったが、手術合併症および術後の有害事象発生率も高いことが明らかにされた。スウェーデン・Danderyd病院産婦人科のDaniel Altman氏らによる多施設共同並行群無作為化試験による。骨盤臓器脱は女性を悩ます健康問題の一つとして世界的に重大視されるようになっている。米国では年間30万件以上の前膣壁形成術が行われているが再発リスクが40%以上に上り、革新的な術式への関心が高まっていた。そのような中で急速に広がったのが、従来の手法とは全く異なる、メッシュキットで膣壁を吊り上げるという術式だが、これまで無作為化試験による両者のアウトカム検討のデータがなかったという。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。

転移性膵臓がんに対するFOLFIRINOXレジメンvs. ゲムシタビン

転移性膵臓がんに対する第一選択治療としての併用化学療法レジメンFOLFIRINOXの有効性と安全性について、ゲムシタビン単剤療法と比較した初の検討結果が示された。フランス・ナンシー大学腫瘍学部門のThierry Conroy氏らによる。FOLFIRINOXは、オキサリプラチン+イリノテカン+フルオロウラシル+ロイコボリンの4剤併用のレジメンで、ゲムシタビン併用レジメンの検討で示唆された細胞傷害性を参考に編み出された。全身状態良好な進行性膵臓がんを対象とした第1相、第2相試験で有効であることを試験成績が示され、第2-3相試験として転移性膵臓がんに対する第一選択治療としてのゲムシタビンとの比較検討が行われた。NEJM誌2011年5月12日号掲載より。

安定狭心症患者へのPCI前と退院時の至適薬物治療実施率、COURAGE試験発表後も微増にとどまる

COURAGE試験では、安定狭心症患者に対する、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施前の至適薬物治療(OMT)の妥当性を示したが、同試験発表前後のPCI前・退院時のOMT実施率を比べた結果、微増にとどまっていたことが明らかになった。米国・コーネル大学Weill Cornell医学校のWilliam B. Borden氏らが、47万人弱の安定冠動脈疾患患者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年5月11日号で発表した。

浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法後の生存率の予測モデルを開発

米国Nuvera Biosciences社のChristos Hatzis氏らは、浸潤性乳がん患者へのタキサン系+アントラサイクリン系ベース化学療法に対する反応性を、遺伝子発現様式で予測するモデルを開発した。同モデルとエストロゲン受容体(ER)の陽性・陰性を組み合わせることで、生存率について8~9割の確率で予測することができたという。JAMA誌2011年5月11日号で発表した。

高齢患者におけるレボチロキシン用量と骨折リスクとの関連

甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンナトリウム、チラーヂン)で治療中の高齢患者は、以前に使用経験のある患者よりも骨折リスクが高く、高~中用量群の患者は低用量群に比べてリスクが上昇していることが、カナダ・トロント大学のMarci R Turner氏らの調査で示された。甲状腺機能低下症で長期にレボチロキシン投与中の高齢患者の中には、過剰治療の状態にある者がおり、これらの患者は医原性の甲状腺機能亢進症を来す可能性があるという。また、高用量のレボチロキシンや無症候性甲状腺機能亢進症によって骨密度が低下し、転倒や骨折のリスクが上昇することが示唆されている。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載の報告。

医学論文の適格基準は、プロトコールを正しく反映しない

医学誌で公表された論文の多くは、患者を選定する適格基準(eligibility criteria)が、プロトコールで事前に規定された被験者集団の正確な定義を反映していないことが、ドイツ・フライブルグ大学医療センターのAnette Blumle氏らの調査で示された。これまでに、結果の記載に欠落がある無作為化試験の報告や、試験方法(無作為化の仕方など)に関する重要情報を欠く論文もあることが指摘されている。一方、被験者の正確な情報は、その試験結果が適用可能な同様の病態の患者を知りたいと考える読者にとって重要だが、試験参加者を選択する適格基準の記載状況についてはあまり知られていないという。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月5日号)掲載の報告。

急性虫垂炎に対する抗生物質治療 vs. 切除術

単純性急性虫垂炎の治療におけるアモキシシリン+クラブラン酸による抗生物質治療の効果は、緊急虫垂切除術よりも劣っており、現在でもgold standardは虫垂切除術であることが、フランス・アントワーヌ・ベクレール病院のCorinne Vons氏らの検討で明らかとなった。急性虫垂炎は、急性の腹痛で入院した患者の中で手術を要する頻度が最も高い疾患だという。4つの無作為化試験をはじめいくつかの検討で、単純性急性虫垂炎は抗生物質治療で治癒が可能であり、1次治療となる可能性もあることが示唆されている。Lancet誌2011年5月7日号掲載の報告。

膵体尾部切除術後のステープル創閉鎖、膵液瘻の予防効果を改善せず:DISPACT試験

膵体尾部切除術後の創閉鎖にステープルを用いても、縫合糸による閉鎖に比べて膵液瘻の発生率は減少しないことが、ドイツ・ハイデルベルク大学のMarkus K Diener氏らの検討で明らかとなった。膵体尾部切除術後の膵液瘻の形成は、主な術後合併症の原因となっており(13~64%)、腹腔内膿瘍、創感染、敗血症、吸収不良、出血などの、さらなる合併症を引き起こすことが、系統的レビューによって示されている。手術手技や施術医の技能が膵液瘻のリスク因子とされ、切除や残存膵閉鎖の手技によって瘻孔形成に差があることが報告されているが、最適な膵断端閉鎖法は確立されていないという。Lancet誌2011年4月30日号(オンライン版2011年4月27日号)掲載の報告。

非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者に対するPCI vs. CABG

 韓国・峨山病院心臓研究所のSeung-Jung Park氏らによる、非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者を対象とした無作為化試験の結果、シロリムス溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の重大心臓・脳血管イベント発生に関して、冠動脈バイパス術(CABG)に対する非劣性が証明されたとの報告が発表された。ただし「設定した非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできないものである」と補足している。本試験「PRECOMBAT」は、非保護左冠動脈主幹部狭窄症へのPCIが徐々に増えているが、CABGも治療の選択肢とみなされるのではないかとして行われた。NEJM誌2011年5月5日号(オンライン版2011年4月4日)掲載より。

かかりつけ医下の患者における、LTRAの喘息治療第一選択薬、追加薬としての有効性

ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)の有効性について、臨床実態の反映を企図したプラグマティックな無作為化試験の結果が報告された。英国・アバディーン大学プライマリ・ケアセンターのDavid Price氏らが、「これまでほとんどの喘息治療の試験は、“理想的な条件下にある特定の患者”を対象に行われてきた」として、英国医療技術評価プログラム(U.K. Health Technology Assessment Programme)からの委託を受け行ったもの。第一選択薬試験と追加薬試験の2つを並行で多施設共同にて行い、2年間の結果がNEJM誌2011年5月5日号に掲載された。

STEMI患者、エビデンス治療の導入率増加に伴い死亡率低下

1996~2007年にかけて、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するエビデンスに基づく治療の導入率が上がるに従い、院内死亡率や30日・1年死亡率が低下していたことが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院循環器部門のTomas Jernberg氏らが、同期間にSTEMIの診断を受け治療・転帰などを追跡された「RIKS-HIA」研究登録患者6万人超について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。エビデンスベースやガイドライン推奨の新しい治療の実施状況や実生活レベルへの回復生存との関連についての情報は限られている。

小児てんかん患者のアドヒアランスは42%、最初の1ヵ月でパターン化

新たに診断を受けた小児てんかん患者の、抗てんかん薬服用指示に対する遵守の程度(アドヒアランス)について、「重度早期非アドヒアランス」など5パターンが同定できたこと、パターン化は家庭の社会経済的状態と有意に相関していることが明らかになった。米国・シンシナティ小児病院のAvani C. Modi氏らが、124人の新規てんかん児について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。成人てんかん患者における発作や治療の厳格さ、抗てんかん薬の安全な服用、非アドヒアランスがもたらす疾患への影響などを明らかにするため、小児における非アドヒアランスの割合やパターン、予測因子の同定が急がれているが、これまで研究は進んでいなかった。

妊娠高血圧腎症の検出モデルの検出能は中等度

イギリス・キングス・カレッジ・ロンドンのRobyn A North氏らによって開発された臨床的リスク因子に基づく妊娠高血圧腎症の検出モデルの検出能は中等度であり、今後、さらなる検討が必要なことが、同氏が行った検証試験で示された。妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に高血圧に蛋白尿を伴って発症し、母体のみならず胎児にも重大な影響を及ぼす多臓器合併症であり、炎症性反応および血管内皮機能障害による子宮胎盤循環障害で特徴づけられる。多くの臨床的なリスク因子が確認されているが、複合的なリスク因子を有する未経産婦における発症リスクはほとんど知られておらず、健康な未経産婦のリスクを正確に評価する方法は確立されていないという。BMJ誌2011年4月23日号(オンライン版2011年4月7日号)掲載の報告。

3年ごとの前立腺がん検診、前立腺がん死を抑制せず:スウェーデンの20年追跡調査

3年ごとに4回の前立腺がん検診を行い、20年に及ぶ長期のフォローアップを実施した結果、検診群の前立腺がん死亡率は対照群と差がないことが、スウェーデンKarolinska研究所のGabriel Sandblom氏らの調査で明らかとなった。北欧では、最近、前立腺がん治療においては待機療法(watchful waiting)よりも根治的前立腺全摘除術の予後が良好なことが示され、特に前立腺特異抗原(PSA)検査による早期発見に関する議論が活発化している。早期発見を目的とする検診の短期的なベネフィットについては、前立腺がん死の抑制効果が示唆される一方で、過剰診断や過剰治療のリスクが増大するなど、これを疑問視する知見が得られているが、長期的なフォローアップを行った試験はないという。BMJ誌2011年4月23日号(オンライン版2011年3月31日号)掲載の報告。

医療監視下違法薬物注射施設は薬物使用者の多い地域に:バンクーバー市の調査

注射薬物使用者(injecting drug user:IDU)が、事前に入手した非合法薬物を持参して医療従事者の監視下に注射する施設(supervised injecting facilities:SIF)の開設が世界的に進んでいるが、このような施設は薬物使用者が多く居住する地域に設置するほうが高い死亡抑制効果が期待できることが、カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学のBrandon D L Marshall氏らがバンクーバー市で行った調査で示された。IDUの主な死因は偶発的な薬物過量摂取であり、北米における若年死の主な原因ともなっている。1990年代に過量摂取による高い死亡率が確認されたバンクーバー市は、2003年、北米で初のSIFを開設。薬物使用の助長を懸念する声もある中、SIFは現在、世界に65施設以上が存在し、薬物使用の害を抑制する種々の戦略の一翼を担っているという。Lancet誌2011年4月23日号(オンライン版2011年4月18日号)掲載の報告。