ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:255

携帯電話の使用、神経膠腫の発生に影響せず

アメリカでは現在、携帯電話の使用率がほぼ100%に達しているが、関連が指摘されている神経膠腫のリスク増大は認めないことが、アメリカ国立がん研究所のM P Little氏らの検討で示された。国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は最近、2つの疫学試験[interphone試験(2010年)、スウェーデン試験(2011年)]で報告された相対的なリスクに基づいて、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの関連について再評価を行い、発がん促進の可能性のある携帯電話のマイクロ波放射の分類を行った。その一方で、1990年半ば以降、脳腫瘍の発生率の傾向は携帯電話の使用増加を反映しておらず、一般にこの状況は現在も続いているという。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載の報告。

子宮頸がん検診の予後改善効果を確認

子宮頸がんの治癒率は、症状の発現で病変がみつかった女性よりも、検診で発見された女性のほうが高く、検診によって予後が改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のBengt Andrae氏らの調査で示された。通常、検診で発見された子宮頸がん女性は、外来で発見された場合に比べ生存期間が長いが、検診プログラムはリードタイム・バイアス(lead time bias、早期に発見されたため生存期間が長くみえ、生存率も高くみえるバイアス)によってそのベネフィットの評価が歪められるという。そこで、同氏らは浸潤性子宮頸がんの治癒率を指標に、検診プログラムの有用性について検討した。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載の報告。

dutasteride、低リスク前立腺がんへの積極的治療の必要性を低減

5α還元酵素阻害薬であるdutasterideは、積極的観察(active surveillance)を受けている低リスク前立腺がん男性において、積極的治療(aggressive treatment)の必要性を低減し、良好な補助的効果をもたらす可能性があることが、カナダ・トロント大学プリンセス・マーガレット病院のNeil E Fleshner氏らが実施したREDEEM試験で示された。局所前立腺がんは進行が遅く、疾患関連死のリスクが低い場合でも過剰な治療が行われることが多いとの指摘がある。dutasterideは5α還元酵素のタイプ1と2の双方を阻害する唯一の5α還元酵素阻害薬で、北米では症候性の良性前立腺過形成の治療薬として承認されている。局所前立腺がん患者の血清ジヒドロテストステロンを90%以上低下させ、一部の患者では病変の縮小も確認されているという。Lancet誌2012年3月24日号(オンライン版2012年1月24日号)掲載の報告。

ニュージーランドでも、入院の最大原因は感染性疾患

先進国ニュージーランドでも、入院の最大の原因は感染性疾患であり、感染症罹患リスクには明確な人種的、社会的な隔差が存在することが、ニュージーランド・オタゴ大学のMichael G Baker氏らの調査で示された。重篤な感染性疾患の疾病負担は先進国では低下傾向にあるが、ニュージーランドでは総発生率を検討した全国調査はほとんどないという。Lancet誌2012年3月24日号(オンライン版2012年2月20日号)掲載の報告。

急性虚血性脳卒中に対するtenecteplase対アルテプラーゼ

 急性虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法として、tenecteplase(遺伝子組み換え型変異体組織プラスミノーゲン活性因子)は、現在唯一の標準療法であるアルテプラーゼ(商品名:アクチバシン、グルトパ)よりも再灌流および臨床アウトカムが有意に優れることが無作為化試験の結果、報告された。本報告は、英国・ジョン・ハンター病院のMark Parsons氏らが、アルテプラーゼ標準療法と、2つの用量群でのtenecteplase療法とを比較検討したフェイズ2Bの無作為化オープンラベル単盲検試験の結果で、NEJM誌2012年3月22日号で発表された。

急性骨髄性白血病の遺伝子プロファイリング

急性骨髄性白血病(AML)患者について、その体細胞変異の遺伝子プロファイリングがリスク層別化に有用であり、予後および治療を決定することができる可能性があることが報告された。米国・Sloan-Kettering記念がんセンターJay P. Patel氏らが、60歳未満のAML患者398例の遺伝子プロファイリングについて検証した結果による。最近の研究成果として、体細胞突然変異に予後因子としての価値があることが示されていたが、AML治療における評価は、第3相試験では系統的になされていなかった。NEJM誌2012年3月22日号(オンライン版2012年3月14日号)掲載報告より。

高齢者は聴力低下の自覚に乏しい、スクリーニングには“ささやき検査”が有効

高齢者の聴力スクリーニングでは、単一の質問ではなく10項目からなる質問票のほうが、また2フィート先からささやいた文字や数などを答える「ささやき検査」が有効であるとの報告が、JAMA誌2012年3月21日号で発表された。米国・ミネソタ大学のJames T. Pacala氏らが、高齢者の聴覚障害について行われた1,700超の研究結果を再調査し明らかにした。高齢者の聴力の低下は、自覚がないまま進行することも少なくないという。米国の2005~2006年のNational Health and Nutrition Examination Surveyによると、70歳以上のうち、聴力低下が認められる人の割合は63%で、そのなかでも中程度から重度の聴覚障害は27%に上ることがわかっている。

生体腎移植、自家骨髄間葉系幹細胞で拒絶反応発生率を低下、アウトカムも良好

生体腎移植の際に、抗体導入療法として、抗IL-2受容体抗体の代わりに自家骨髄間葉系幹細胞を使うと、術後の拒絶反応率が低下し、腎機能回復も早いことが報告された。中国・厦門(アモイ)大学のJianming Tan氏らが、約160人の生体腎移植患者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月21日号で発表した。

無作為化臨床試験での非盲検評価のバイアス効果は?

バイナリアウトカムの無作為化試験で多用される非盲検評価は、推定治療効果に大幅なバイアス効果をもたらしており、オッズ比評価で約36%過大に評価していることが明らかにされた。ノルディック・コクラン・センター(デンマーク)のAsbjorn Hrobjartsson氏らが、同じバイナリアウトカムの盲検と非盲検の試験の評価についてシステマティックレビューを行った結果による。非盲検評価についてはバイアスを疑うことが賢明だとされているが、その影響については明らかではなかった。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年2月27日号)掲載報告より。

英国NHSで導入された簡易院内死亡率指数SHMIの特徴

英国・シェフィールド大学のMichael J Campbell氏らは、透明性、再現性、可視化に優れた、英国内全病院の入院データから導き出した簡易院内死亡率指数(summary hospital mortality index:SHMI)を開発した。これまでにも院内標準死亡率指数(hospital standardised mortality ratio:HSMR)など死亡率指数はいくつかあったが、SHMIはそれらと違い全入院・死亡データおよび退院30日以内データに基づくもので、2011年10月からNHS(英国保健サービス)の病院評価指標として採用されているという。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載報告より。

小児の熱傷面積62%以上で死亡リスクが増大

小児の重度熱傷では、受傷面積が大きくなるほど不良な予後のリスクが増大し、熱傷面積が全体表面積の62%を超えると死亡のリスクが有意に上昇することが、米国・テキサス大学医学部シュライナー小児病院のRobert Kraft氏らの検討で示された。1998年、Ryanらは熱傷患者の予後予測モデルを開発し、不良な予後の予測因子として熱傷面積が全体表面積の40%に及ぶ場合を提唱した。しかし、その後の10年で熱傷治療は大きな発展を遂げ、生存および予後はさらに改善されたという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。

地域の精神保健サービス、自殺率を低減

イングランドとウェールズでは1997~2006年までの10年間で、精神保健サービスの提供によって自殺率が有意に低下したことが、英国・マンチェスター大学のDavid While氏らの調査で示された。自殺による死亡者の多くは、死亡時に気分障害などの精神疾患を有していたり、アルコールや薬物を過剰に摂取するなどしており、精神保健サービスは自殺リスクの抑制において重要な役割を担うことが示唆されている。しかし、自殺予防における精神保健サービス提供の有効性を検証した研究は少ないという。Lancet誌2012年3月17日号(オンライン版2012年2月2日号)掲載の報告。

卵円孔開存を有する原因不明の脳卒中、閉鎖術は薬物療法単独を上回らない

卵円孔開存症がみられる原因不明の脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)に対する、経皮的デバイスを用いた閉鎖術は、再発予防のベネフィットとしては、薬物療法単独を上回らなかったことが示された。米国・University Hospitals Case Medical Center(クリーブランド)のAnthony J. Furlan氏らが、約900例を対象とした多施設共同無作為化オープンラベル試験の結果、報告した。原因不明の脳卒中患者では、一般的に卵円孔開存の出現率が高く、多くの場合、経皮的デバイスを用いた閉鎖術が推奨される。しかし、この介入が脳卒中の再発リスクを減らすかどうかは明らかではなかった。NEJM誌2012年3月15日号より。

55~69歳のPSAスクリーニング、前立腺がん死亡は減らすが全死因死亡には影響なし

PSA検査に基づくスクリーニングは前立腺がん死亡に効果があるのか、ないのか。相反する試験結果が示される中、オランダ・エラスムス大学医療センターのFritz H. Schroder氏ら欧州8ヵ国が参加する前立腺がんスクリーニング欧州無作為化試験(ERSPC)の共同研究グループが、2年間の追跡データを追加した11年間の前立腺がん死亡についての追跡調査結果を発表した。以前に同グループが示した知見を強化するものであったと報告し、「PSAスクリーニングは前立腺がん死亡を有意に減少する。しかし、全死因死亡に対する影響は認められなかった」と結論している。NEJM誌2012年3月15日号掲載報告より。

O104:H4へのアジスロマイシン投与、排菌期間を短縮

腸管凝集性志賀毒素産生大腸菌(STEC O104:H4)の感染者に対し、アジスロマイシン(商品名:ジスロマック)を投与することで、排菌期間を短縮できることが示された。ドイツ・Schleswig-Holstein大学病院のMartin Nitschke氏らが、65人の感染者について行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。STEC感染への抗菌薬治療は、溶血性尿毒症症候群(HUS)発症リスクを増大する可能性があるとして、あまり行われていないが、一方で、腸管凝集性大腸菌への抗菌薬投与は広く行われている。

医療コストが高い病院ほど、死亡率、再入院率、心イベント発生率は良好

カナダ・オンタリオ州の病院を対象とした調査の結果、医療コストが高い病院のほうが低い病院に比べ、急性心筋梗塞やうっ血性心不全、股関節部骨折などの30日死亡率が低いなど、治療アウトカムが良好であることが明らかにされた。カナダ・Institute for Clinical Evaluative SciencesのTherese A. Stukel氏らが、約39万人の入院患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。いわゆる国民皆保険下において、医療サービスの選択と集中が、よりよい患者アウトカムをもたらすのかを検討したもので、これまで明らかではなかった。

子宮頸がん検出の最善のスクリーニングは?

子宮頸がん検出を目的としたスクリーニングテストについて、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査は細胞診よりも有益なのか、オランダ・Erasmus MC大学メディカルセンターのInge M C M de Kok氏らによるシミュレーション研究が行われた。費用対効果に着目して、女性の生涯での適切なスクリーニング回数についても検証された。病変部検出にHPV検査は細胞診よりも感受性が高いが特異度は低い。HPVスクリーニングについての既存の報告では、費用対効果の結果は千差万別で、de Kokらは、オランダモデルを各種条件が異なる欧州各国と適合させて検討した。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年3月5日号)掲載報告より。

統合失調症への集団アートセラピー、臨床的効果認められず

統合失調症の症状は薬物療法によって軽減されるが、多くの患者はメンタル面の回復や社会復帰を果たせずにいる。そうした統合失調症患者への補助療法として行われている集団アートセラピーの臨床的な効果について、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMike J Crawford氏らによる多施設での介入無作為化試験による検証が行われた。これまで、同療法のベネフィットについての検討はほとんど行われていなかった。BMJ誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月28日号)掲載報告より。

Y染色体ハプログループIの男性、冠動脈疾患リスクが有意に高い

Y染色体ハプログループIの男性は、他のY染色体系統の男性に比べ冠動脈疾患リスクが50%以上高いことが、オーストラリア・バララト大学のFadi J Charchar氏らの検討で示された。冠動脈疾患の発生率や有病率には性差がみられ、男性は女性に比べて頻度が高い。Y染色体の主要部分(男性特異的領域:MSY)は父親から息子へと完全なかたちで伝えられるが、Y染色体が心血管系(心血管死や血圧など)や血中コレステロール濃度に影響を及ぼすことを示すデータが報告されているという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年2月9日号)掲載の報告。

両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。