ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:204

ステント留置vs.内膜切除:ICSS試験の長期結果/Lancet

 アテローム硬化性頸動脈狭窄の治療において、頸動脈ステント留置術と頸動脈内膜切除術の長期的な脳卒中の予防効果は同等で、長期的な身体機能にも差はないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLeo H Bonati氏らInternational Carotid Stenting Study(ICSS)の研究グループによる検討で明らかとなり、Lancet誌オンライン版2014年10月14日号で報告された。同研究グループはこれまでに、脳卒中の予防では手技に関連するリスクと長期的効果のバランスは内膜切除術のほうが良好だが、この差はステント留置術で後遺障害を伴わない軽度脳卒中が過度に多いことに起因し、長期的な身体機能の低下がステント留置術で多いとはいえず、これはとくに高齢者で顕著なことを明らかにしている。2010年、本試験の120日以内の安全性に関する中間解析の結果が報告されており、今回は最長10年に及ぶ長期的な有効性解析の結果が示された。

手指運動併用でRA患者の機能改善/Lancet

 手指の関節リウマチ(RA)の治療において、標準的な薬物療法に手指の運動プログラムを併用すると、標準治療単独に比べ手指機能が有意に改善され、費用効果も良好であることが、英国・オックスフォード大学のSarah E Lamb氏らが行ったSARAH試験で示された。疾患修飾性の生物学的製剤などによる薬物療法レジメンは、手指RAの疾患活動性を大きく改善し関節破壊を最小のものとするが、これに相応の機能やQOLの改善が得られるとは限らないという。個々の患者に合わせた手指の運動が、機能のさらなる改善効果をもたらす可能性が指摘されているが、これを支持するエビデンスはこれまでなかった。Lancet誌オンライン版2014年10月10日号掲載の報告。

新たな鳥インフルエンザワクチン Anhuiの免疫原性/JAMA

 米国・ワシントン大学医学部のRobert B. Belshe氏らは無作為化試験にて、最新の鳥インフルエンザA(H5N1)ウイルス株であるA/Anhui/01/2005(安徽株)を抗原株とした不活化インフルエンザワクチンの免疫原性と安全性を評価した。被験者は、米国FDAが新型インフルエンザのパンデミックワクチンとして承認している、A/Vietnam/1203/2004(ベトナム株)ワクチン(90μg、アジュバント非添加、2回接種)を1年前に接種した人であった。また同ワクチン未接種者に対する安徽株ワクチン(MF59アジュバント添加・非添加)の評価を行った。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。

CTL019、再発・不応性ALLに有効/NEJM

 CD19を標的とするキメラ抗原受容体を導入したT細胞(CTL019、以前はCART19と呼ばれた)は、再発・不応性の急性リンパ性白血病(ALL)に対し完全寛解率90%、最長で2年の寛解維持をもたらしたとの研究結果が、米国・フィラデルフィア小児病院のShannon L Maude氏らにより、NEJM誌2014年10月16日号で報告された。再発ALLの治療は、積極的なアプローチが可能な場合であっても困難であり、遺伝子操作を加えたT細胞療法は新たな治療戦略とされる。CTL019は、従来治療の限界を克服し、不応例にも寛解導入をもたらす可能性があることが示されている。

バンコのMIC上昇、死亡リスクと関連せず/JAMA

 黄色ブドウ球菌(S aureus)血流感染(SAB)患者では、バンコマイシン(VCM)の最小発育阻止濃度(MIC)の高値例と低値例で死亡リスクに差はないことが、米国・ネブラスカ大学医療センターのAndre C. Kalil氏らの検討で示された。50歳以上の黄色ブドウ球菌感染患者に対しVCMは第一選択の治療薬とされるが、近年、VCMのMICが上昇傾向にあることが複数の研究で明らかにされている(MIC creepと呼ばれる)。また、3件のメタ解析では、VCMのMIC上昇は不良な転帰と関連する可能性が示唆されているが、死亡との関連や、MIC高値の場合はVCMを回避すべきかなどの問いへの解答は明確ではないという。JAMA誌2014年10月15日号掲載の報告。

スタチン試験、企業バイアスなし/BMJ

 スタチン試験への「資金提供企業のスポンサーバイアス」を調べたが、資金提供がされていない試験との比較で、スタチンによるLDLコレステロール(LDL-C)低下効果の差はみられなかった。効果の違いは用量の差によるもので、高用量であること低下値が大きかった。英国・London School of Economics and Political ScienceのHuseyin Naci氏らが、システマティックレビューとネットワークメタ解析で、スタチンのLDL-C低下効果を検討した無作為化試験183件を評価し報告した。BMJ誌オンライン版2014年10月3日号掲載の報告より。

思春期の脳性麻痺患者のQOLは低くない/Lancet

 思春期の脳性麻痺患者は、一般集団の青少年と比べ、「友人・知人による社会的支援」の1分野の生活の質(QOL)においてのみスコアが低かった。また、子供時代や思春期の痛みが、多くの分野の思春期QOL低下と関連していた。英国・ニューカッスル大学のAllan Colver氏らが、欧州の脳性麻痺患者登録名簿を基に行った縦断的分析と横断的分析の結果、報告した。これまでの研究結果から、QOLの自己申告ができる脳性麻痺の子供は障害のない子供と比べ、QOLの程度は同等であることが示されていた。Colver氏らは、思春期患者の傾向については報告されていなかったことから、本検討を行ったという。Lancet誌オンライン版2014年10月7日号掲載の報告より。

肺葉切除の長期転帰、胸腔鏡下は開胸と同等/BMJ

 肺がん患者の肺葉切除術について、胸腔鏡下手術vs. 開胸手術の長期生存を検討した結果、全生存、がん特異的生存および無増悪生存のいずれも同等であったことが報告された。米国・ウェイル・コーネル・メディカル大学のSubroto Paul氏らが、肺葉切除術を受けた6,008例について傾向スコア適合分析を行い明らかにした。胸腔鏡下肺葉切除術は開胸肺葉切除術よりも、術後合併症が少ないことは知られている。しかし長期アウトカムへの影響については不明であった。今回の結果を踏まえて著者は、「胸腔鏡下手術は、肺葉切除後のアウトカムを損なうことがないようだ」とまとめている。BMJ誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。

H7N9ワクチン、安全性と効果/JAMA

 鳥インフルエンザA/上海/2/13(H7N9)ワクチンの安全性と免疫原性について、MF59アジュバント有無の4つの抗原用量を比較した第II相多施設共同二重盲検無作為化試験の結果が発表された。米国・エモリー大学医学部のMark J. Mulligan氏らによる検討の結果、最小用量3.75μg+MF59アジュバントの2回接種(0、21日)群において、42日時点の抗体陽転率は59%であったことが報告された。鳥インフルエンザH7N9は、2013年に中国で確認された新型の鳥インフルエンザウイルスで、家禽には問題なかったが、ヒトでは重症肺炎を引き起こし、同国では入院率67%、死亡率33%に達した。WHOには2014年6月27日時点で、検査確認症例450例のうち165例の死亡(36.6%)が報告されているという。JAMA誌2014年10月8日号掲載の報告より。

ヘテロ型家族性高Chol血症、PCSK9阻害薬追加で改善/Lancet

 ヘテロ型家族性高コレステロール血症(FH)の治療において、PCSK9阻害薬エボロクマブ(AMG 145)の追加により、LDLコレステロール(LDL-C)が迅速かつ大幅に低減することが、南アフリカ共和国・Witwatersrand大学のFrederick J Raal氏らが行ったRUTHERFORD-2試験で示された。本症はLDL-Cの代謝に関与する主要蛋白をコードする遺伝子の変異に起因し、細胞内へのLDL-C取り込み低下、血漿LDL-C濃度上昇、若年性心血管疾患の発症を特徴とする。強化スタチン治療、エゼチミブ併用の有無にかかわらず、多くの患者がLDL-Cの推奨目標値に到達しないという。エボロクマブを含むPCSK9阻害薬の第I/II相試験では、既存のコレステロール低下薬との併用でさらに55~60%の低下効果が確認されていた。Lancet誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。

子宮移植による生児出産、世界初の成功例/Lancet

 先天的に無子宮の35歳の女性に、61歳の女性の子宮を移植し生児出産に成功したとの報告が、Lancet誌オンライン版2014年10月5日号に掲載された。報告を行ったのはスウェーデン・イェーテボリ大学のMats Brannstrom氏らのチームで、子宮移植後の生児出産としては初めての成功例だという。子宮移植は、無子宮または非機能性子宮に起因する絶対的な不妊の第一選の治療法で、これまでに世界で11件のヒト子宮移植が試みられている。

ビタミンD欠乏患者への高用量VD3、効果みられず/JAMA

 ICU入室のビタミンD欠乏(20ng/mL以下)重病患者に対し、高用量ビタミンD3の投与はプラセボと比較して、入院期間、院内死亡率または6ヵ月死亡率を低減しなかったことが明らかにされた。オーストリア・グラーツ医科大学のKarin Amrein氏らが無作為化試験「VITdAL-ICU」の結果、報告した。12ng/mL以下の重度ビタミンD欠乏患者では、院内死亡率の低下がみられたが、この所見については、さらなる検討を要するものではないと著者は結論している。重病患者のビタミンD値低下は死亡率、罹患率増大に結び付くが、因果関係があるのかについては明らかにされていなかった。JAMA誌2014年10月15日号掲載の報告より。

ROS1陽性NSCLCへのクリゾチニブ、奏効率72%/NEJM

 ROS1遺伝子再構成陽性の進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対し、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害薬クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)の投与は、奏効率は72%、期間中央値は17.6ヵ月であった。米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのAlice T. Shaw氏らが、患者50例について行った試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「クリゾチニブは、ROS1遺伝子再構成陽性NSCLCに対し、顕著な奏効を示した」とまとめている。また、本検討で新たに2種を含む7種のクリゾチニブが奏効する遺伝子サブグループが判明した。NEJM誌オンライン版2014年9月27日号掲載の報告より。

1型糖尿病へのインスリン、長時間型 vs. 中時間型/BMJ

 成人1型糖尿病向けには、長時間作用型(持効型溶解)インスリンが中時間作用型(中間型)インスリンに比べ、血糖コントロール効果が高く、重度低血糖症といった有害事象も少なく、有効性、安全性に優れることが示された。ただし、HbA1c値の差はわずかであった。カナダのセント・マイケルズ病院Andrea C. Tricco氏らが、39件の試験について行ったシステマティック・レビューとネットワーク・メタ解析の結果、報告した。結果を踏まえて著者は「患者および担当医は、インスリン製剤の選択を、好み、コストそして入手のしやすさで見直すべきであろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。

若年者の大動脈弁置換、機械弁より生体弁/JAMA

 50~69歳の若年者大動脈弁置換における弁の選択は、生体弁のほうが機械弁よりも妥当(reasonable)な選択肢であることが明らかにされた。米国・マウントサイナイ医療センターのYuting P. Chiang氏らが、患者4,253例について後ろ向きコホート分析を行った結果、15年生存および脳卒中について両群間で有意差は認められなかった。生体弁患者のほうが再手術を受ける可能性が大きかったが、大出血を起こす可能性は低かったという。若年者大動脈弁置換における弁の選択は、長期生存や重大疾患の発生について明らかになっておらず、論争の的となっていた。JAMA誌2014年10月1日号掲載の報告より。

糖尿病患者への意思決定支援ツールの効果/BMJ

 患者指向の治療意思決定支援(デシジョンエイド)の有用性について、相当量を投じても同ツールの使用で期待される患者のエンパワメント改善には結び付かないことが、オランダ・フローニンゲン大学医療センターのPetra Denig氏らによる、プラグマティック無作為化試験の結果、明らかにされた。原因として、大半の患者が、同ツールを完全には使いこなしていないことが判明したという。デシジョンエイドは、治療管理における患者と医師の意思疎通を助け、患者指向型の治療ゴール設定を促進することが可能とされる。本検討では複数の疾患を抱える糖尿病患者についての有用性を検討した。BMJ誌オンライン版2014年9月25日号掲載の報告より。

ICUでの栄養療法、静脈と経腸は同等/NEJM

 ICU入室の重症患者への早期栄養療法について、経静脈ルート(静脈栄養法)と経腸ルート(経腸栄養法)を比較した結果、30日全死亡率などのアウトカムは同等であることが示された。低血糖症と嘔吐の発生については、静脈栄養療法群で有意に低率だった。英国・Intensive Care National Audit and Research Centre(ICNARC)のSheila E. Harvey氏らが、ICU患者2,400例について行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。同早期栄養療法については、いずれのルートが最も効果的かについて明らかとなっていなかった。NEJM誌オンライン版2014年10月1日号掲載の報告より。

ホモ型家族性高Chol血症、PCSK9阻害薬で改善/Lancet

 新規開発中のコレステロール低下薬エボロクマブ(AMG 145)について、ホモ接合型家族性高コレステロール血症でスタチン療法などの継続的な脂質低下療法を受けている患者に投与することで、LDLコレステロール(LDL-C)値が約3割低下することが示された。南アフリカ共和国・Witwatersrand大学のFrederick J Raal氏らが第III相無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、報告した。エボロクマブは、LDL-Cの能力を低下する前駆蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を阻害する。Lancet誌オンライン版2014年10月2日号掲載の報告。

急性呼吸促迫症候群へのスタチンの効果/NEJM

 急性呼吸促迫症候群(ARDS)の治療において、シンバスタチンは臨床転帰の改善をもたらさないことが、英国・クイーンズ大学ベルファストのDaniel F McAuley氏らIrish Critical Care Trials Groupが行ったHARP-2試験で示された。ARDSでは、肺胞障害を引き起こすコントロール不良な炎症性反応が認められ、豊富なタンパク質を含む肺浮腫液の肺胞腔内への滲出により呼吸不全を来す。スタチンは、HMG-CoA還元酵素を阻害することで、ARDSの発症に関与する複数の機序を修飾することが示され、動物実験やin vitro試験、さらにヒトの第II相試験においてARDSの治療に有効である可能性が示唆されている。NEJM誌2014年9月30日号掲載の報告。

慢性膝痛に鍼・レーザー鍼治療は有効か/JAMA

 50歳以上の中等度~重度の慢性膝痛患者に対する鍼治療やレーザー鍼治療は、疼痛の緩和や身体機能の改善に有効ではないことが、オーストラリア・メルボルン大学のRana S. Hinman氏らの検討で示された。慢性膝痛はプライマリケア医を受診する高齢者に最も高頻度にみられる疼痛であり、典型的には骨関節炎に起因し身体機能を低下させる。鍼治療は慢性膝痛の最も一般的に用いられる代替治療で、使用機会は増加傾向にあるという。従来の鍼だけでなく、経穴への非侵襲的な低出力レーザー鍼治療の有用性を示すエビデンスがある。JAMA誌2014年10月1日号掲載の報告。