医療一般|page:3

乳がん発見のためのWGSを用いたctDNAアッセイ

 乳がんにおいて、全ゲノムシークエンス(WGS)を用いた循環腫瘍DNA(ctDNA)アッセイにより、ベースライン時および追跡調査時の検出が改善され、臨床的な再発診断までの期間(リードタイム)が長くなることが、英国・The Institute of Cancer ResearchのIsaac Garcia-Murillas氏らによる後ろ向き研究で示唆された。Annals of Oncology誌オンライン版2025年2月4日号に掲載。

拡大中のコロナ変異株LP.8.1のウイルス学的特性/東大医科研

 2025年2月現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のJN.1の子孫株であるXEC株による感染拡大が主流となっており、さらに同じくJN.1系統のKP.3.1.1株の子孫株であるLP.8.1株が急速に流行を拡大している。東京大学医科学研究所システムウイルス学分野の佐藤 佳氏が主宰する研究コンソーシアム「G2P-Japan(The Genotype to Phenotype Japan)」は、LP.8.1の流行動態や免疫抵抗性等のウイルス学的特性について調査結果を発表した。LP.8.1は世界各地で流行拡大しつつあり、2025年2月5日に世界保健機関(WHO)により「監視下の変異株(VUM:currently circulating variants under monitoring)」に分類された。本結果はThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2025年2月10日号に掲載された。

出血リスクを比較、NOACs vs.アスピリン~9試験のメタ解析

 新規経口抗凝固薬(NOAC)とアスピリンは広く用いられているが、出血リスクの比較に関するデータは限られている。そこで、カナダ・マクマスター大学のMichael Ke Wang氏らの研究グループは、NOACとアスピリンを比較した無作為化比較試験(RCT)について、システマティックレビューおよびメタ解析を実施し、出血リスクを評価した。その結果、アピキサバンとダビガトランはアスピリンと比較して出血リスクを上昇させなかったが、リバーロキサバンは上昇させる可能性が示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2025年2月11日号に掲載された。

アテゾリズマブ、胞巣状軟部肉腫に適応追加/中外

 中外製薬株は、2025年2月20日、アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)について、切除不能な胞巣状軟部肉腫に対する適応追加承認を取得したと発表。  今回の承認は、切除不能な胞巣状軟部肉腫に対するアテゾリズマブの有効性および安全性を評価した国内第II相臨床試験であるALBERT試験、および米国国立がん研究所主導の海外第II相臨床試験の成績に基づいている。

医薬品供給不足の現在とその原因は複雑/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、「医薬品供給等の最近の状況」をテーマに、メディア懇談会を2月19日に開催した。懇談会では、一般のマスメディアを対象に現在問題となっている医薬品の安定供給の滞りの原因と経過、そして、今後の政府への要望などを説明した。  はじめに松本氏が挨拶し、「2020年夏頃より医薬品供給などに問題が生じてきたが、4年経過しても解決していない。後発医薬品だけではない、全体的な問題であり、その解消に向けて医師会も政府などに要望してきた。複合的な問題であるが、早く解消され、安心・安全な医薬品がきちんと医師、患者さんに届くことを望む」と語った。

統合失調症の陰性症状に対する抗精神病薬+スルフォラファンの有用性

 統合失調症の陰性症状に対する確立された治療法はほとんどなく、多くの患者では、陽性症状軽減後も陰性症状が持続している。酸化ストレス、炎症、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)に関わるエピジェネティックな変化は、統合失調症の病態生理と関連していると考えられている。中国・中南大学湘雅二医院のJing Huang氏らは、統合失調症の陰性症状軽減に対する抗酸化作用を有するHDAC阻害薬であるスルフォラファンの有効性を評価するため、24週間の二重盲検プラセボ対照試験を実施した。The Journal of Clinical Psychiatry誌2025年1月20日号の報告。

日本の乳がん統計、患者特性・病理・治療の最新データ

 2022年にNCD(National Clinical Database)乳がん登録に登録された日本国内1,339施設の乳がん症例10万2,453例の人口学的・臨床病理学的特徴を、兵庫医科大学の永橋 昌幸氏らがBreast Cancer誌2025年3月号に報告した。  日本乳癌学会では1975年に乳がん登録制度(Breast Cancer Registry)を開始し、2012年からはNCD乳がん登録のプラットフォームへ移管された。NCDに参加する医療機関で新たに乳がんと診断された患者は、乳房手術の有無にかかわらず登録対象となっており、2012~21年の10年間で累計89万2,021例が登録されている。

睡眠時無呼吸症候群の鑑別で見落としがちな症状とは?

 帝人ファーマは『家族となおそう睡眠時無呼吸』と題し、1月27日にメディア発表会を行った。今回、内村 直尚氏(久留米大学 学長)が『睡眠時無呼吸症候群とそのリスク』について、平井 啓氏(大阪大学大学院人間科学研究科/Cobe-Tech株式会社)が『睡眠医療のための行動経済学』について解説した。  まず、内村氏は睡眠障害について、国際分類第3版に基づく診断分類を示した。 不眠症 睡眠関連呼吸症候群 中枢性過眠症 概日リズム睡眠覚醒症候群 睡眠時随伴症群 睡眠時運動障害群 その他の睡眠障害 身体疾患及び神経疾患に関する睡眠障害

関節リウマチ発症リスクのある者は特徴的な腸内細菌叢を有する

 関節リウマチ(RA)発症リスクのある者は、特徴的な腸内細菌叢を有するという研究結果が「Annals of the Rheumatic Diseases」に11月8日掲載された。  RA患者やそのリスクを有する者は、健康な者と比べて異なる腸内細菌叢を有することが知られているが、RAに進行する患者の腸内細菌叢の詳細な状態は明らかになっていない。英リーズ大学のChristopher M. Rooney氏らは、RA発症リスクを有する者を対象に、RAを発症した者と発症しなかった者に分け、腸内細菌叢の構造や機能、経時的な変化を比較した。RA発症リスクを、抗環状シトルリン化ペプチド(CCP)抗体が陽性で、新たな筋骨格症状が存在し、かつ臨床的な滑膜炎がないものと定義し、このリスクを有する124人の被験者を特定した(うち30人がRAに進行)。また、19人には15カ月にわたり5つの時点で経時的なサンプリングを行った(うち5人がRAに進行)。

急性期病院におけるBPSDの有病率〜メタ解析

 認知症の行動・心理症状(BPSD)は、急性期病院における治療を複雑にする可能性があり、このようなケースにおけるBPSDに関するエビデンスは多様である。タイ・Prince of Songkla UniversityのKanthee Anantapong氏らは、急性期病院におけるBPSDの有病率を特定し、関連するリスク因子、治療法、アウトカムを評価した。Age and Ageing誌2025年1月6日号の報告。  2024年 3月5日までに公表された急性期病院入院中の認知症高齢者におけるBPSDの有病率に関する研究をCochrane Library、MEDLINE、PsycINFOより検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。研究のスクリーニング、選択、データ抽出には、独立した二重レビュープロセスを用いた。12項目のBPSDに関するデータは、Neuropsychiatric Inventory Questionnaire(NPI)およびアルツハイマー病行動病理学尺度(BEHAVE-AD)に基づき抽出した。リスク因子、治療、アウトカムをレビューした。メタ解析を用いて、結果を統合した。

HER2+早期乳がん、TILが20%以上ならde-escalation可能か

 第III相ShortHER試験の長期追跡データを用いて、HER2+の早期乳がん患者における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と予後との関連性を評価した結果、TILが高値であるほど遠隔無病生存期間(DDFS)および全生存期間(OS)が良好で、TIL量が20%以上の場合はde-escalationの術後補助療法であっても過剰なリスクは認められなかったことを、イタリア・パドヴァ大学のMaria Vittoria Dieci氏らが明らかにした。JAMA Oncology誌オンライン版2025年2月13日号掲載の報告。

日本人PD-L1低発現の切除不能NSCLC、治験不適格患者へのICI+化学療法の有用性は?

 PD-L1低発現の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)+化学療法の有用性は臨床試験ですでに検証されている。しかし、実臨床では臨床試験への登録が不適格となる患者も多く存在する。そこで、研究グループはPD-L1低発現の切除不能NSCLC患者を臨床試験への登録の適否で分類し、ICI+化学療法の有用性を検討した。その結果、臨床試験への登録が不適格の集団は、適格の集団よりも全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が短かったものの、ICI+化学療法が化学療法単独よりも有用であることが示唆された。ただし、PS2以上、扁平上皮がんではICI+化学療法によるOSの改善はみられなかった。本研究結果は、畑 妙氏(京都府立医科大学大学院 呼吸器内科学)らにより、Lung Cancer誌2025年2月号で報告された。

コロナ関連の小児急性脳症、他のウイルス関連脳症よりも重篤に/東京女子医大

 インフルエンザなどウイルス感染症に伴う小児の急性脳症は、欧米と比べて日本で多いことが知られている。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症においても、小児に重篤な急性脳症を引き起こすことがわかってきた。東京女子医科大学附属八千代医療センターの高梨 潤一氏、東京都医学総合研究所の葛西 真梨子氏らの研究チームは、BA.1/BA.2系統流行期およびBA.5系統流行期において、新型コロナ関連脳症とそれ以外のウイルス関連脳症の臨床的違いを明らかにするために全国調査を行った。

日本人は35歳を過ぎると男女ともにBMIが増加傾向に/慶大

 年を重ね中高年になると、私たちの体型はどのように変化していくのであろう。この疑問に慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの植村 直紀氏らの研究グループは、全国健康保険協会(協会けんぽ)の2015~2020年度の加入者データから身長と体重、BMIの推移を解析した。その結果、男女ともにすべての年齢層でBMIが増加していたことが明らかになった。この結果は、International Journal of Obesity誌オンライン版2024年12月18日号に掲載された。  主な結果は以下のとおり。

日本の大学生の血圧、コロナ禍後に上昇

 日本の大学生における血圧の5年ごとの調査で、コロナ禍後の2023年に血圧が上昇していたことが、慶應義塾大学の安達 京華氏らの研究でわかった。一方、喫煙・飲酒習慣や睡眠不足、精神的ストレス、ファストフードやスナック菓子の摂取は減少、運動習慣は増加しており、血圧上昇の原因は特定されなかった。Hypertension Research誌2025年2月号に掲載。  高血圧は中高年だけでなく、若年者においても心血管疾患のリスクを高める。コロナ禍では世界中で血圧の上昇傾向が観察されたが、若年成人については十分な評価がなされていない。本研究では、コロナ禍の前後を含む2003~23年の20年間、5年ごとに大学生(10万6,691人)の血圧を調査した。

統合失調症に対するアリピプラゾール併用による糖脂質代謝への影響〜メタ解析

 アリピプラゾール補助療法は、統合失調症の精神症状および代謝障害の改善に潜在的な影響を及ぼすことが現在の研究で示唆されている。しかし、これらの研究は不足しており、糖脂質代謝指標に関する詳細な分析が不十分である。中国・Yulin City Veterans' HospitalのTianbao Wei氏らは、アリピプラゾール補助療法が精神症状および糖脂質代謝に及ぼす影響を評価するため、ランダム化比較試験(RCT)のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年1月10日号の報告。

イサツキシマブ、未治療の多発性骨髄腫に適応追加/サノフィ

 サノフィは、イサツキシマブ(商品名:サークリサ点滴静注)について、未治療の多発性骨髄腫患者を対象としてボルテゾミブ・レナリドミド・デキサメタゾン併用療法(BLd)に本剤を追加する新たな併用療法(IsaBLd)の承認を2025年2月20日に取得したと発表した。今回の承認により、再発/難治性の多発性骨髄腫に加え、未治療の多発性骨髄腫に対する新たな選択肢となる。  本剤は、CD38受容体の特異的エピトープを標的とするモノクローナル抗体製剤で、日本では2020年8月に発売され、現在4種類の治療レジメンで承認されている(再発又は難治性の多発性骨髄腫における、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法と、単剤療法、カルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法、デキサメタゾン併用療法)。

フロスの使用に脳梗塞の予防効果?

 デンタルフロス(以下、フロス)の使用は、口腔衛生の維持だけでなく、脳の健康維持にも役立つようだ。米サウスカロライナ大学医学部神経学分野のSouvik Sen氏らによる新たな研究で、フロスを週に1回以上使う人では、使わない人に比べて脳梗塞(虚血性脳卒中)リスクが有意に低いことが示された。この研究結果は、米国脳卒中学会(ASA)の国際脳卒中学会議(ISC 2025、2月5〜7日、米ロサンゼルス)で発表され、要旨が「Stroke」に1月30日掲載された。  この研究では、アテローム性動脈硬化リスクに関する集団ベースの前向き研究であるARIC研究のデータを用いて、フロスの使用と脳梗塞(血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症、ラクナ梗塞)および心房細動(AF)との関連が検討された。対象者は、ARIC研究参加者から抽出した、脳梗塞の既往がない6,278人(うち6,108人にはAFの既往もなし)とした。対象者の65%(脳梗塞の既往がないコホート4,092人、AFの既往がないコホート4,050人)がフロスを使用していた。

重度の感染症による入院歴は心不全リスクを高める

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やインフルエンザなどの感染症による入院は、心臓病リスクを高める可能性があるようだ。重度の感染症で入院した経験のある人が後年に心不全(HF)を発症するリスクは、入院歴がない人と比べて2倍以上高いことが新たな研究で示された。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて米メイヨー・クリニックのRyan Demmer氏らが実施したこの研究の詳細は、「Journal of the American Heart Association」に1月30日掲載された。  この研究では、1987年から2018年まで最大31年間にわたる追跡調査を受けたARIC研究参加者のデータを分析して、感染症関連の入院(infection-related hospitalization;IRH)とHFとの関係を評価した。ARIC研究は、アテローム性動脈硬化リスクに関する集団ベースの前向き研究で、1987〜1989年に45〜64歳の成人を登録して開始された。本研究では、研究開始時にHFを有していた人などを除外した1万4,468人(試験開始時の平均年齢54歳、女性55%)が対象とされた。対象者は、2012年までは毎年、それ以降は2年に1回のペースで追跡調査を受けていた。左室駆出率(LVEF)が得られた患者については、LVEFが正常範囲(50%以上)に保たれたHF(HFpEF)患者と、LVEFが低下(50%未満)したHF(HFrEF)患者に2分して検討した。

冷水浸漬はある程度の効果をもたらす可能性あり

 激しい運動後の回復方法として冷水シャワーやアイスバスが流行しているが、実際に効果はあるのだろうか? 新たなエビデンスレビューで、その流行を裏付ける科学的根拠のあることが示された。南オーストラリア大学でヘルス・アンド・ヒューマンパフォーマンスを研究するTara Cain氏らによるレビューから、冷水浸漬(cold-water immersion)により、ストレスが軽減し、睡眠の質が改善し、QOLが向上する可能性のあることが示された。ただし、その効果は長続きしないことが多かったという。この研究の詳細は、「PLOS One」に1月29日掲載された。