ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:281

住民ベースでの高感度定量法は、構造的心疾患や全死因死亡リスクの評価に役立つ?

住民ベースの試験で、新しい高感度定量法では従来の定量法において検出されなかった心筋トロポニンT(cTnT)値の検出率が高いこと、また検出されたcTnT値が高い人ほど左室肥大や左室収縮機能不全、ひいては全死因死亡リスクが大きいことが示された。米国テキサス大学サウスウエスタン医学センターのJames A. de Lemos氏が、ダラスの住民3,500人超を対象に行った「Dallas Heart Study」の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月8日号で発表した。これまで、cTnT値と構造的心疾患や心血管疾患イベントリスク増大との関連が強いことは知られており、それらのリスク評価に役立つ可能性が示されているが、一般住民ベースで用いられている標準定量法では、cTnT値を検出することがほとんどできず同値の活用が限られている。

地域ベースのCOPD予防・マネジメント介入で肺機能低下を抑制:中国

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙や空気汚染など複数の因子が重なって起きる慢性進行性の疾患であり、一つの因子への介入では十分な効果が得られない。これまで、早期ステージでの地域ベースの介入にはほとんど関心が示されていなかったが、中国・広州医科大学のYumin Zhou氏らグループが、COPDの早期予防とマネジメントを目的に、地域ベースの統合的介入がもたらす効果を評価するクラスター無作為化比較試験を行った。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年12月1日号)掲載より。

小児肥満でBMI値は重視しなくてもよいのか?

小児期のBMIと心血管リスク因子との関連を示す横断的研究はあるが、前向き研究はほとんど行われていない。BMIは、特に小児肥満(全身性肥満症、中心性肥満症)の尺度としては不十分であるとされるが、英国ブリストル大学MRC CAiTEセンターのDebbie A Lawlor氏ら研究グループは、その認識が小児肥満がもたらす真の有害性の過小評価につながっている可能性があるとして、肥満症の3つの測定指標であるBMI、腹囲、体脂肪量の、心血管リスク因子との関連の強さを比較し、BMIが他の2つより劣るのか検討した。BMJ誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月25日号)掲載より。

スタチンの肝機能異常の改善効果が明らかに:GREACE試験事後解析

スタチン治療は、軽度~中等度の肝機能異常患者に対して安全に施行可能で、検査値を改善し心血管疾患罹患率を低下させることが、ギリシャのテッサロニキ・アリストテレス大学Hippokration病院のVasilios G Athyros氏らによるGREACE試験の事後解析で明らかとなった。非アルコール性脂肪肝によると考えられる肝機能異常は、欧米人や日本人の約33%にみられると推定され、スタチンはこのような患者の肝機能や心血管イベントの改善に有効な可能性が示唆されている。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月24日号)掲載の報告。

カテーテルベースの腎除神経術、治療抵抗性高血圧の降圧に有用

治療抵抗性の高血圧患者に対するカテーテルベースの腎除神経術は実質的な降圧効果を示し、安全に施行可能なことが、オーストラリアBaker IDI心臓・糖尿病研究所(メルボルン)のMurray D Esler氏らが行った「Symplicity HTN-2」試験で示された。腎臓の交感神経系の活性化は本態性高血圧の主病因とされる。降圧薬が一般化する以前から、重症高血圧の治療として非選択的な交感神経除去術の有効性が示されていたが、近年の血管内カテーテル技術の進歩により、腎動脈内腔にラジオ波を当てることで腎動脈外膜に局在する腎神経を選択的に除神経することが可能になった。Lancet誌2010年12月4日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。

死亡率が最も低いのはBMI値20~25未満:白人成人146万人の解析

これまで、BMI値30.0以上の肥満と定義される人では、心血管疾患や脳卒中、その他特異的がんによる死亡率が増大することが立証されていたが、全死因死亡率との関連については明らかにされていなかった。そこで米国立がん研究所 疫学・遺伝学部門のAmy Berrington de Gonzalez氏ら研究グループは、19の前向き試験に参加した白人成人146万人のデータを集め解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。

リンパ節転移陰性の高リスク乳がんでも、ドセタキセル補助療法が優位

タキサン系抗がん剤のドセタキセル(商品名:タキソテール)を含むTACレジメン(ドセタキセル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)の有効性について、これまでリンパ節転移陽性乳がんについては明らかになっていたが、リンパ節転移陰性の高リスク乳がんの治療においても、フルオロウラシル(商品名:5-FUなど)を含む標準療法とされるFACレジメン(フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド)よりも高い奏効率が認められた。欧州で行われた「GEICAM 9805」試験からの報告で、スペイン・Hospital General Universitario Gregorio MaranonのMiguel Martin氏らが、追跡期間中央値77ヵ月時点の無病生存率、全生存率、毒性について解析した。NEJM誌2010年12月2日号掲載より。

低リスク前立腺がん患者には積極的経過観察が妥当、選択は個々人の意思で

65歳で前立腺がんの診断を受けた仮定的コホートで、選択した治療の違いによるQOL調整後の期待余命(Quality-adjusted life expectancy ;QALE)について検討した意思決定解析の結果、積極的経過観察を選択した患者群が、他の放射線治療や手術などを選択した患者群に比べアウトカムは良好で、積極的経過観察が妥当な治療戦略であることが示された。米国ハーバード大学医学部ダナファーバーがん研究所のJulia H. Hayes氏らの報告によるもので、「治療か積極的経過観察かの選択は個々人が中心的に担うもの」と結論している。JAMA誌2010年12月1日号掲載より。

ω-3脂肪酸、心房細動再発の減少効果確認できず

発作性・持続性心房細動既往歴のある患者に対し、オメガ(ω)-3脂肪酸を24週間投与しても、6ヵ月間の心房細動の再発リスクは減少しないことが示された。米国・ペンシルベニアのLankenau Institute for Medical Research循環器疾患部門のPeter R. Kowey氏らが、663人を対象に、無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年12月1日号(オンライン版11月15日号)で発表した。これまでに示唆されている、ω-3脂肪酸の心房細動に対する治療効果と安全性に関するデータは、小規模試験からの発表だったという。

文化の異なる国家間にみる飲酒パターンと虚血性心疾患リスクの違い

生活習慣が対照的な北アイルランドとフランス2ヵ国の50代男性の、飲酒パターンが虚血性心疾患に及ぼす影響を調査した結果、毎日決まって中等量(平均アルコール消費量32.8g、参考値:ビール中瓶20g http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html)の飲酒を習慣とするフランス男性の虚血性心疾患リスクは低く、一方、1日の平均アルコール消費量、飲酒者割合ともフランスより低かったものの不節制飲酒(毎週1日以上50g以上消費)が多くみられた北アイルランド・ベルファストに住む男性の同リスクは高いことが明らかにされた。フランス・トゥールーズ医科大学校疫学部門/INSERM U558のJean-Bernard Ruidavets氏らの報告による。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月23日号)掲載より。

不適切な気管支内挿管を検出する最適な方法は?

気管挿管は臨床家にとってルーチンの手技だが、経験によって手技のレベルは異なり、気管内チューブの置き違いから重大な合併症が起きる可能性がある。これまで、チューブの位置を評価する方法として、両胸への聴診法が推奨されてきたが、オーストリア・ウィーン医科大学総合病院のChristian Sitzwohl氏らのグループは、不適切な気管支内挿管を検出する最も感度と特異度が高い臨床的手法はどのようなものかを判定する、前向き無作為化盲検試験を行った。BMJ誌2010年11月27日号(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。

携帯電話のショートメールサービスのサポートで患者のアウトカムが改善

ケニアのHIV感染患者を対象とした無作為化試験で、患者に携帯電話のショートメールサービス(SMS)を使ったサポート介入を行ったところ、非介入群と比べ抗レトロウイルス治療(ART)のアドヒアランスおよびウイルス抑制の割合が改善されたことが報告された。ケニア・ナイロビ大学医療微生物学部門のRichard T Lester氏らが実施報告したもので、「医療資源が不十分な環境で、携帯電話は患者のアウトカムを改善する効果的なツールとなる可能性がある」と結論している。Lancet誌2010年11月27日(オンライン版2010年11月9日号)掲載より。

妊娠第1期のPPI投与、先天異常のリスク増大と有意な関連認められず

妊娠第1期の妊婦にプロトンポンプ阻害薬(PPI)を投与しても、産児の主要な先天異常リスクの増大とは有意な関連が認められなかったことが、大規模コホート試験の結果、明らかにされた。デンマークStatens Serum Institut疫学部門のBjorn Pasternak氏らがデンマークで1996~2008年に生まれた新生児約84万児を対象とした調査の結果による。妊娠中の胃食道逆流症状はよくみられるが、妊娠初期におけるPPI曝露と先天異常リスクに関するデータは限定的なものしかなかった。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。

減量達成後は、タンパク質多め、GI指数低めの食事が体重減少を維持

減量達成後の体重減少維持には、タンパク質が多め、グリセミック指数(GI)は低めの食事が、長続きする食事療法であり体重減少維持に結びつくことが、ヨーロッパ8ヵ国で行われた無作為化試験「Diogenes(Diet, Obesity, and Genes)」の結果、明らかになった。スクリーニングを受けた平均年齢41歳、平均BMI値34の1,209例のうち、938例に対しまず8週間の低エネルギー食(800kcal/日)介入が行われ、基線体重より8%以上の体重減少に達した773例を、5つの食事療法群に無作為化し26週間にわたり比較検討した結果による。NEJM誌2010年11月25日号掲載より。

果糖を多く含む飲料摂取で女性の痛風リスクが増大、1日1杯で1.74倍に

加糖炭酸飲料やオレンジジュースのような果糖(フルクトース)を多く含む飲料の摂取量が多いと、女性の痛風発症リスクが増大することが報告された。米国ボストン医科大学リウマチ・臨床疫学部門のHyon K. Choi氏らが、大規模前向きコホート試験「Nurses’ Health Study」の中から、8万人弱の女性について調べた結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号(オンライン版2010年11月10日号)で発表した。果糖を多く含む飲料摂取が尿酸値の増加につながることは知られていたが、痛風発症との関連についての前向き試験データはほとんどなかったという。

2型糖尿病患者、有酸素運動とレジスタンストレーニングの併用でHbA1c値が低下

2型糖尿病患者が、有酸素運動とウエイトトレーニングのようなレジスタンストレーニングの両方の運動を行うことで、HbA1c値が有意に低下することが無作為化対照試験で明らかになった。どちらか一方のみの運動では、HbA1c値の有意な低下は認められなかったという。米国ルイジアナ州立大学ペニントン・バイオメディカルリサーチセンターのTimothy S. Church氏らが、2型糖尿病患者262人を追跡し明らかにしたもので、JAMA誌2010年11月24日号で発表した。2型糖尿病患者に対する運動ガイドラインでは、有酸素運動とレジスタンストレーニングの両方を勧めているが、両運動を行うことによる効果を目的とする研究はこれまでほとんど行われていなかった。

O157による急性胃腸炎が、高血圧、腎障害、心血管リスクの増大と関連

大腸菌O157:H7に起因する急性胃腸炎の経験者は、高血圧、腎障害、心血管疾患のリスクが増大していることが、カナダ・ロンドン健康科学センターのWilliam F Clark氏らが行ったコホート試験で示された。アメリカでは年間、O157:H7感染症による消化管疾患が5~12万例にみられ、そのうち2,000例以上が入院し、約60例が死亡している。O157:H7が産生するShiga toxinは腎臓や血管を傷害し、溶血性尿毒症症候群(HUS)をきたす可能性がある。O157:H7曝露によるHUSの長期的な影響は、子どもではよく知られているが、症状がみられ比較的曝露量の少ない成人では不明であったという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月17日号)掲載の報告。

ピア・レビューワーのウェブ公開は、査読の質には影響しない

ピア・レビューワーに事前に、担当した査読報告(ピア・レビュー)内容がウェブ公開されることを知らせても、査読の質には影響しないことが、BMJのリサーチャーであるSusan van Rooyen氏らが行った無作為化試験で示された。開示性および透明性は、医学研究の中でも特に薬剤関連分野で高い関心を集める領域であり、秘密主義や説明責任の欠如が査読の大きな欠陥とされる。科学ジャーナルの多くはその点への対応に消極的だが、これまでの研究で、論文のレビューワーの身元が他のレビューワーや著者に知られても査読の質を損なわないことは示唆されているという。BMJ誌2010年11月20日号(オンライン版2010年11月16日号)掲載の報告。

腱症に対する注射療法のエビデンス

腱症に対するコルチコステロイド注射は、短期的には有効だが、中長期的には非コルチコステロイド注射のベネフィットが優る可能性があることが、オーストラリア・クイーンズランド大学のBrooke K Coombes氏らが行った系統的なレビューで示された。現在、エビデンスに基づく腱症の治療ガイドラインはほとんどないという。腱症は、angiofibroblastic hyperplasia(細胞過形成、血管新生、蛋白合成増進、基質破壊などがみられる)を特徴とし、炎症性疾患ではないためコルチコステロイド注射には疑問の声もあり、ラウロマクロゴール(一般名:ポリドカノール)、多血小板血漿、ボツリヌス毒素、プロテイナーゼなどの注射療法の施行機会が増えているという。Lancet誌2010年11月20日号(オンライン版2010年10月22日号)掲載の報告。