ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:301

低用量アスピリン、糖尿病患者の心血管イベント1次予防効果はメタ解析でもやはり不明

糖尿病患者の主要な心血管イベントの1次予防に、ほとんどのガイドラインで、低用量アスピリンの投与が推奨されている。しかし一方では、その効果については論争の的ともなっている。イタリアのConsorzio Mario Negri SudのGiorgia De Berardis氏らのグループは、最新の無作為化試験を含むメタ解析を行った結果、明白な利点は証明されなかったことを報告した。BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月6日号)掲載より。

多彩な冠疾患のリスクマーカー、その強みと弱み

冠疾患との関連が指摘されるリスクマーカーは心理社会的、行動的、生物学的など多様である一方、それぞれが現にガイドラインに含まれている。そうした中で、これまでのシステマティックレビューは、1つのリスクマーカー、1つの研究デザインに焦点を合わせた「縦」の比較検討がされてきたが、異なるタイプのリスクマーカー、異なる固有の限界や不足を有する異なる研究デザインを組み込んでの「水平」比較が必要ではないかとの指摘が高まった。ロンドン大学衛生熱帯医学校のHannah Kuper氏らは、この「水平」比較に取り組み、BMJ誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月5日号)で結果を発表した。

高用量ARBが、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者の臨床転帰を改善:HEAAL試験

 高用量のロサルタン(商品名:ニューロタン)は低用量に比べ、ACE阻害薬に不耐容の心不全患者において心不全による入院率および死亡率を有意に低減させることが、アメリカTufts大学医学部Tufts医療センターのMarvin A Konstam氏らが実施した無作為化試験(HEAAL試験)により明らかとなった。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)は、ACE阻害薬併用の有無にかかわらず心不全患者の合併症発生率や死亡率を低減し、左室駆出率(LVEF)を改善することが示されているが、これらの臨床試験は1種類の用量の評価にすぎないため、種々の用量のレジメンのうちの至適用量や相対的なリスク/ベネフィットのプロフィールの指針とはならないという。心不全患者に対するARB治療では、高血圧治療に使用される通常用量よりも高用量のほうが臨床転帰は改善される可能性が指摘されていた。Lancet誌2009年11月28日号(オンライン版2009年11月17日号)掲載の報告。

認知症は失明よりも身体障害の重大な要因:低~中所得国の高齢者

 認知症は、低~中所得国の高齢者の身体障害に寄与する最大の要因であることが、イギリスKing’s College London精神研究所精神保健センターのRenata M Sousa氏らによる地域住民ベースの調査で明らかとなった。2004年の世界疾病負担(Global Burden of Disease)の推計では、身体障害を伴う生存年(YLD)は全世界で7億5,100万年であり、その68%は非伝染性の慢性疾患によるものだが、この慢性疾患に起因する身体障害の負担の84%は低~中所得国で発生している。しかし、特に低~中所得国の高齢者の身体障害について検討した調査はほとんどないという。Lancet誌2009年11月28日号掲載の報告。

自己免疫性膵炎と関連する特異的抗体が同定、しかし……

自己免疫性膵炎は、臓器機能障害に至る炎症の進行が特徴とされるが、疾患の原因はわかっていない。自己免疫由来が示唆されているものの、これまで証明はされておらず、この病態の病因についてはほとんどわかっていなかったが、イタリア・ヴェローナ大学のLuca Frulloni氏らの研究グループがその一端に迫ることができたようだ。NEJM誌2009年11月26日号より。

スタチン併用療法ではniacinがエゼチミブを凌駕

スタチン単独療法患者の脂質プロファイルを改善する併用療法としては、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールを高める併用療法と、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させる併用療法の2つがある。ウオルター・リード米軍医療センターのAllen J. Taylor氏らの研究グループは、それぞれの併用療法の臨床効果を比較した有効性比較試験ARBITER-6 HALTSの結果について発表した。NEJM誌2009年11月26日号(オンライン版2009年11月16日号)より。

二次救命処置の薬剤静脈内投与、アウトカムは非投与と同等

二次救命処置(ACLS)における薬剤の静脈内投与に関して、投与を行わなかった場合と退院時生存率などが同等であることがわかったという。ノルウェー・オスロ大学病院実験医学研究所のTheresa M. Olasveengen氏らが、無作為化対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2009年11月25日号で発表した。現行のACLSガイドラインには、薬剤の静脈内投与が盛り込まれているものの、投与によるアウトカム改善に関するエビデンスは不明だった。

慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者、転倒リスク約1.5倍

 慢性筋骨格痛が2ヵ所以上ある高齢者は、転倒リスクがおよそ1.5倍に増大するようだ。米国ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター総合内科・プライマリ・ケア部門のSuzanne G. Leveille氏らによる試験で明らかになった。高齢者の慢性痛と転倒リスクについての研究結果はこれまでほとんど見られていない。JAMA誌2009年11月25日号掲載より。

歩行速度が遅い高齢者の死亡リスクは1.5倍、心血管死亡リスクは3倍

歩行速度は高齢者の歩行と運動機能を表す、単純で信頼性の高い物差しとされる。また歩行速度の低下は、死亡を含む有害イベントと関連していることが明らかになっている。フランス国立保健医学研究所(INSERM)のJulien Dumurgier氏らの研究グループは、高齢者における歩行速度の低下と死亡リスクとの関連、また全死因および主な死因との関連を調べた。BMJ誌2009年11月21日号(オンライン版2009年11月10日号)掲載より。

イギリスの直近20年のダウン症児出生数の傾向

高年齢出産はダウン症児が産まれるリスクが高いが、イギリスでは2001年のUK National Screening Committeeの全妊婦に対する出産前スクリーニング受診の勧告などで、現在は1990年代初期に比べると出産前スクリーニングの利用が増えており、2007~2010年の勧告では、出産前スクリーニングにより陽性率3%未満、検出率は75%になるだろうとしていた。そこでロンドン大学クイーン・メアリー校のJoan K Morris氏らは、その実際を明らかにするため、イギリスNational Down Syndrome Cytogenetic Registerを解析しダウン症児数と出産前診断の傾向を解析した。BMJ誌2009年11月21日号(オンライン版2009年10月26日号)掲載より。

血圧上昇は予防可能な若年死の主要リスク因子、中国の場合

中国の一般人口においては、血圧の上昇が、予防可能な若年死の主要リスク因子であることが、アメリカTulane大学保健医療・熱帯医学科のJiang He氏らが実施したコホート研究で明らかとなった。2000年の調査では世界の高血圧罹患者数は9億7,200万人(世界人口の26.4%)で、2025年にはこれが60%増加して15億6,000万人に達すると予測される。しかも、この数値には心血管疾患リスクを増大させることがわかっている高血圧前症は含まれず、いくつかの国の調査では成人の30%以上が高血圧前症とされる。中国では、高血圧に起因する死亡の実態はよくわかっていないという。Lancet誌2009年11月21日号(オンライン版2009年10月6日号)掲載の報告。

成人喘息、遺伝子型の違いでLABA+ICSの効果に差はない:LARGE試験

成人の中等度喘息の治療では、β2アドレナリン受容体遺伝子型の違いによって長時間作用型β2刺激薬(LABA)と吸入コルチコステロイド(ICS)の併用療法の効果に差はないことが、Harvard大学医学部Brigham and Women’s病院のMichael E Wechsler氏ら国立心肺血液研究所(NHLBI)喘息臨床研究ネットワークの検討で明らかとなった。β2アドレナリン受容体の16番目のアミノ酸の遺伝子型がアルギニンのホモ接合体(B16 Arg/Arg)の喘息患者は、グリシンのホモ接合体(B16 Gly/Gly)の患者に比べLABA+ICS併用療法の効果が劣ることが報告されていた。Lancet誌2009年11月21日号掲載の報告。

食人習慣で蔓延したクールー病、生き残った患者で獲得されていたプリオン病耐性因子

 南太平洋の島国パプアニューギニアの高地の、極めて限定された地域で見られる致死的流行性のプリオン病としてクールー病(現地語で「震える」の意味)がある。いわゆる狂牛病と同じく病因は伝染性タンパク質で、石器時代から続く同部族内の死者の脳を食べる風習が感染ルートであることが解明されている。事実、クールー病の出現率は食人習慣の中断以来、着実に低下した。なお、食人習慣は儀礼的な意味があり女性と子どもにのみ課せられてきたもので、疾病発症もほとんどが成人女性と男女の子どもで見られていた。本論は、英国ロンドン大学校のSimon Mead氏らの研究グループによる、過去の食人葬参加者を含む3,000例以上を対象とした、プリオン遺伝子および臨床評価と系統学的評価の報告。NEJM誌2009年11月19日号より。

2型糖尿病・CKD患者への貧血治療薬darbepoetin alfa投与はリスクが上回る

貧血症が、2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)患者の心血管および腎臓イベントの、リスク増加と関連することは知られているが、貧血治療薬darbepoetin alfaの、これら患者の臨床転帰に対する効果は十分検討されていない。米国ブリガム&ウィメンズ病院循環器部門のMarc A. Pfeffer氏らは、被験者約4,000名を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TREAT」にて、その効果について検討した。NEJM誌2009年11月19日号(オンライン版2009年10月30日号)より。

葉酸、ビタミンB12の摂取はがん・総死亡率などを増加:ノルウェー虚血性心疾患患者調査

 ノルウェーの虚血性心疾患患者を対象に行った調査で、葉酸とビタミンB12の摂取ががんの発症率・死亡率と、総死亡率の増加につながることが報告された。これまでの研究で、葉酸摂取と大腸がんリスク増加との関連は示されていたが、他のがんとの関連は明らかにされていない。報告はノルウェーHaukeland大学病院心臓病部門のMarta Ebbing氏らの調べによるもので、JAMA誌2009年11月18日号で発表された。なおノルウェーでは、葉酸を強化した食品は販売されていないという。

米国成人のLDL-C高値有病率は減少傾向、2005~2006年は21%

20歳以上の米国成人で、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)高値の人の割合は、1999~2006年の間減少傾向にあり、2005~2006年の割合は21.2%であることが報告された。米国疾病対策センター(CDC)のElena V. Kuklina氏らの研究で明らかになったもので、冠動脈性心疾患の発症リスクにかかわらず同有病率を調べた研究結果は珍しいという。JAMA誌2009年11月18日号で発表されている。

イギリスで2000年に実行された救命救急医療改革の成果は?

2000年、イギリス保健省は救命救急医療改革の提唱を支持し、ベッド数を35%増やすための資金を投入した。その結果、治療プロセスや患者転帰(死亡リスク)が大幅に改善したといわれている。ロンドン大学公衆衛生・熱帯医学校のAndrew Hutchings氏らの研究グループは、2000年後半にイギリス全土を対象に始まった救命救急医療改革を評価するため、時系列で費用対効果の分析を行った。BMJ誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月11日号)より。

貧困とアテローム硬化症増加の関係

虚血性心疾患は社会経済的に恵まれた地域よりも貧困な地域に多い。この健康格差は、現に認知されている心血管の「古典的」リスクファクターでは十分に説明できず、「新興」リスクファクターが同定されつつある。英国・グラスゴー王立病院血管生化学部のKevin A Deans氏らは、貧困と頸動脈エコーによるアテローム硬化症指標(内膜中膜厚とプラークスコア)との関連、そして健康格差が古典的な心血管リスクファクターで説明できるのか、あるいは新興リスクファクターで説明されるのか、住民ベースの横断調査を行った。BMJ誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月27日号)より。

ICU収容の人工呼吸器装着患者、毎日の胸部X線検査は本当に必要か?

集中治療室(ICU)に収容され人工呼吸器を装着されている患者に対する胸部X線検査は、病態により必要に応じて施行しても治療の質や安全性を損なうことはないため、従来のように毎日ルーチンに行う必要はないことが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のGilles Hejblum氏らが実施したクラスター無作為化試験で判明した。米国放射線医学会(ACR)は、人工呼吸器装着患者には毎日のルーチン検査として胸部X線を施行し、必要に応じてさらなる検査を行うよう勧告しているが、患者の病態に応じて施行すれば十分との意見もあるという。ルーチン検査には、危機的病態における誤診を発見して対処できる、検査の可否を判断する必要がないという利点があるが、不要な放射線被曝やコストの面では必要に応じた検査のほうが有利と言える。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月5日号)掲載の報告。

糖尿病は、食事/運動療法により長期にわたり予防しうる:DPPアウトカム試験

食事/運動療法による生活習慣の改善やメトホルミン(商品名:メルビン、グリコランなど)投与による糖尿病の予防効果は、10年が経過しても維持されることが、「糖尿病予防プログラム(DPP)(http://www.bsc.gwu.edu/dpp/index.htmlvdoc)」の長期フォローアップ(DPPアウトカム試験;DPPOS)の結果から明らかとなった。DPP無作為化試験の2.8年のデータでは、糖尿病発症リスクの高い成人において、強化ライフスタイル介入(7%の減量と週150分以上の中等度~高度の身体活動の達成とその維持)により糖尿病発症リスクがプラセボに比べ58%低下し、メトホルミンの投与では31%低下することが報告されている。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年10月29日号)掲載の報告。