ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:340

先天性心疾患を有する新生児の脳発達異常は生まれつき?

先天性心疾患を有する新生児には発育上の全般的な機能障害がみられる。カリフォルニア大学神経学学部のSteven P. Miller氏らのグループは、先天性心疾患のある新生児について、脳の成熟度を示す尺度となる脳代謝とミクロ構造の特徴に関して、心臓手術前の時点で対照新生児との検討を行った。NEJM誌2007年11月8日号より。

未熟児無呼吸発作に対するカフェイン療法の長期的影響は?

メチルキサンチン等カフェインは、新生児集中治療で頻繁に使用される薬剤の1つで、未熟児無呼吸発作に対して一般的に用いられているが、その有効性と安全性に関する十分なデータはない。ハミルトン大学(カナダ)Barbara Schmidt氏ら未熟児無呼吸発作カフェイン療法研究グループ(Caffeine for Apnea of Prematurity Trial Group)は、神経発達と成長の長期的影響に関する知見を報告した。NEJM誌11月8日号掲載。

BMI値と死因死亡率との関連について

本報告を行った米国保健統計センター/疾病予防管理センターのKatherine M. Flegal氏らは2000年時点の検討報告として以前に、低体重、過体重、肥満それぞれの全死因死亡率との関連について報告を行っている。すなわち正常体重群と比べて、低体重群と肥満群では全死因死亡率の有意な増加との関連が認められたが、過体重群では有意な減少が認められたとするものだった。 本報告では、BMI値と全原因死亡率との関連(2004年時点における)を調査。JAMA誌11月7日号で掲載された。

肥満者の健康リスクは改善されてはいない

近年の研究報告は、肥満者は1960年代以降死亡率および心血管系のリスク因子が減少しており健康が高まっている、という示唆を与えるものとなっている。それに対しペンシルベニア大学(アメリカ)のDawn E. Alley氏らは、肥満者は以前と比べ長期にわたって危険因子に耐えているだけで、健康どころか、むしろ半面で能力機能障害が増大しているのではないかと提言。肥満症と能力機能障害との経時変化に着目した関連性を検討した。JAMA誌11月7日号掲載より。

ADL集中型作業療法は脳卒中発症後の活動性低下を防止する

リハビリテーションは脳卒中発症後の日常生活動作(ADL)を改善することが示されているが、作業療法の有用性は明らかでない。また、これまでの脳卒中後の作業療法に関するレビューは、個々の患者の活動性の評価が十分ではなかった。 そこで、Lynn Legg氏(イギリス・グラスゴー大学王立病院NHSトラスト老年医学)らは、脳卒中発症後のADLに重点を置いた作業療法による機能回復の改善効果について検討した研究の系統的レビューとメタ解析を行った。BMJ誌9月27日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。

救急医療隊員による病院到着前の治療介入が軽症高齢患者のアウトカムを改善

救急医療隊員は、訓練によって病院外で創傷、低血糖、転倒、鼻出血など広範な病態をトリアージして、治療あるいは照会できるようになる。また、地域社会において広範な保健医療やプライマリケアによるアウトリーチの役割を実現するには、特に地方などでは病院前救護活動(pre-hospital practitioner working)が有益なことが指摘されている。一方、救急部受診者の12~21%を高齢者が占め、そのほとんどが偶発事故や転倒である。 そこで、Suzanne Mason氏(イギリス・シェフィールド大学保健サービス研究科)らは、軽症疾患の高齢患者の評価および治療における、訓練を受けて技術が向上した救急医療隊員の役割を評価するための検討を行った。BMJ誌10月4日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。

人工着色料・食品添加物(AFCA)は子どもの多動性を増強する

9月上旬、本報告がLancet誌オンライン版に掲載されるや、欧米では大きな反響が巻き起こったという。この試験で用いられている人工着色料・食品添加物(AFCA)の多くは日本でも使用されているため、今後、本邦においても広範な議論が展開されることを期待したい。 AFCAの子どもの行動への影響が指摘されて30年以上が経過している。AFCAによる主な行動障害は多動性(過活動、衝動性、不注意)と推察されるため、この行動パターンを示す子どもは注意欠陥多動性障害(ADHD)でない場合でも、ADHDと診断されている可能性がある。また、最近のメタ解析ではADHDに対する有意な影響も示唆されている。 Donna McCann氏(イギリス・サザンプトン大学心理学科)らは、AFCAの摂取が子どもの行動に及ぼす影響を広範に評価するために、対象年齢を拡大した検討を行った。Lancet誌9月6日付オンライン版、11月3日付本誌掲載の報告。

薬物溶出ステント(DES)が経済的なのは高リスク病変のみ

ステント留置後18ヵ月間の費用対効果を検討すると、薬物溶出ステント(DES)が効率的なのは高リスク病変への留置のみであり、低リスク病変に対する費用対効果はベアメタル・ステント(BMS)に軍配が上がることが、無作為化試験BASKETの結果明らかになった。Basel(スイス)、University HospitalのHans Peter Brunner-La Rocca氏らがLancet誌11月3日号で報告した。

胃癌術後患者の補助化学療法に関する日本発エビデンス:ACTS-GC

経口フッ化ピリミジン系薬剤(S-1)に関して、日本国内の109医療機関、患者1,059人が参加して行われたACTS-GC試験(Adjuvant Chemotherapy Trial of TS-1 for Gastric CancerTS-1:胃癌術後補助化学療法比較試験 http://acts-gc.jp/index.html)の結果が、NEJM誌11月1日号に掲載された。筆頭執筆者は北里大学の桜本信一氏。治癒的切除術が施行された胃癌患者に対するS-1を用いた補助化学療法の有用性を評価したもの。

脳MRIは無症候性の脳異常の発見に結びつく

研究および臨床領域双方で利用が増している脳の磁気共鳴画像(MRI)は、一方ではスキャナやMRIシークエンスの改善がなされている。そうした画像診断技術の進歩は、脳腫瘍、動脈瘤、無症状の血管病変など予期しない無症候性の脳異常の発見に結びつく可能性があるとして、オランダのエラスムスMC大学医療センターのMeike W. Vernooij氏らは、偶発的な脳所見が一般集団で出現する割合を検討した。NEJM誌11月1日号より。

ザンビアでのエイズ罹患小児への抗レトロウイルス療法

ザンビア保健省はヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した小児への抗レトロウイルス療法(ART)を首都ルサカにある初期医療施設で提供しているが、同国では周産期予防の規模拡充にもかかわらず小児の多くが感染している状況にある。治療を受けた小児の臨床および免疫学的予後に関する調査報告がJAMA誌2007年10月24日号に掲載された。

産学結びつきの現状ともたらす影響

産学連携(Institutional Academic-Industry Relationships:IAIR)は、組織内に利害対立をも引き起こす可能性をはらんでいる。しかしこれまで、大学および教育病院と産業界との関係を管理する方針や手法に関して確立・評価するのに役立つ観察データは示されていなかった。そこで医学部と教育病院の産学連携の性質、範囲そして影響について、学部教授を対象とした全国調査がマサチューセッツ総合病院のEric G. Campbell氏らによって行われ、その結果がJAMA誌2007年10月17日号に掲載された。

高血圧放置が減少、血圧コントロール率の改善も:メキシコ公的健康保険プログラム

無保険者が健康保険に加入することにより、高血圧治療を受ける患者が有意に増えるだけでなく、血圧コントロール率まで改善される可能性が、メキシコにおける横断的住民研究の結果、明らかになった。米国Johns Hopkins School of Public HealthのSara N Bleich氏らが、BMJ誌オンライン版10月22日付けで早期公開、その後本誌27日号で掲載されている。

激しい興奮状態の精神疾患患者を速やかに鎮静するには?

精神疾患症状としての興奮症状や暴力的行動に対し、速やかな鎮静を図る手段として、筋注olanzapine(オランザピンは筋注剤は日本未承認)と筋注ハロペリドール+プロメタジンとを比較する無作為化臨床試験の結果が報告された。インドVelloreにあるキリスト教医科大学精神医学部Nirmal S Raveendran氏らによる。BMJ誌オンライン版10月22日付け、本誌10月27日号で掲載。

子宮摘出術の安易な第一選択は避けるべき

機能性子宮出血、平滑筋腫など良性疾患に対する治療法としては、子宮摘出術が優先的に行われている。しかし一方で、断定的ではないものの子宮摘出による下部尿路へのリスク増加が指摘されてきた。 スウェーデン、カロリンスカ研究所(ストックホルム)のDaniel Altman氏らは、スウェーデン国内女性を対象に、子宮摘出後の腹圧性尿失禁手術のリスクを調査。結果がLANCET誌10月27日号で報告された。

インスリン療法の追加はどのタイプが適切なのか?

2型糖尿病患者で経口糖尿病薬による血糖コントロールが不十分になると、インスリンが追加されることは一般的である。しかし、どのようなインスリン療法が適切なのか、これまで大規模な調査は行われておらずエビデンスに限界があった。 そこでオックスフォード大学(英国)チャーチル病院糖尿病センターのRury R. Holman氏ら4T(Treating to Target in Type 2 Diabetes)研究グループが、多施設共同非盲検対照試験を実施。NEJM誌オンライン版9月21日付、本誌10月25日号で結果が掲載された。

頭頸部扁平上皮癌の導入化学療法に関する第3相無作為化試験

頭頸部扁平上皮癌はアメリカでは、成人で新たに癌と診断される者のうちの5%を、世界的には8%を占め、初期ステージでは根治も期待される疾患である。標準治療は化学療法(手術+放射線療法)だが、最適な治療スケジュールが確立しておらず、薬物療法+放射線療法の導入化学療法が実質的に標準治療となっている。薬物療法ではシスプラチン+フルオロウラシル(PF)療法が、局所進行例での有益性から標準とされているが、ドセタキセル(タキソール)を加えたTPF療法の有益性に関する臨床試験が進行中である。その第3相無作為化試験の結果がNEJM誌10月25日号に掲載された。

国連ミレニアム開発目標を達成するための効果的な介入方法

国連ミレニアム開発目標(MDGs)は、世界的に重大な貧困、健康および持続的な諸問題に関して具体的目標を立て2015年までに達成するというものである。しかし現状では目標日時までの達成は非常に難しいことがわかってきており、目標達成のための計画および資源配分を効果的に行い、1つの介入で複数のMDG達成に寄与できないかが検討課題となっている。 ハーバード大学(アメリカ)Initiative for Global HealthのEmmanuela Gakidou氏らは、環境および栄養改善を目標とするMDGsへの介入の、乳幼児死亡率低下への寄与、および介入対象が置かれている経済状況によっての差異などを調査し、より有効な介入のあり方について検討を行った。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。

健康・福祉サービスの充足は受給者の「権利」認識不足解消から

発展途上国の中でも特に社会・経済的地位の低い人々が、権利として与えられているはずの健康・福祉サービスを十分に受け取ることができていないのは、そもそもサービスを受け取れるという認識不足が原因ではないか。世界銀行(アメリカ・ワシントン)南アジア人財開発部門のPriyanka Pandey氏らは、世界でアフリカ・サハラ以南に次いで貧困層が多いインド(全人口の35%が1日1ドル未満で暮らす)を対象に、情報資源に乏しい農村部の人々に情報をもたらすことで、どれぐらいサービス送達量に変化が生じるのかを調査した。JAMA誌10月24日号掲載の報告から。