ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:302

高リスクのHPV-16陽性外陰上皮内腫瘍、ワクチン接種で完全寛解47%

ヒトパピローマウイルス(HPV)-16陽性・グレード3の外陰上皮内腫瘍患者に対する、ワクチン接種の臨床的有効性が報告された。オランダ・Leiden大学病院婦人科部門のGemma G. Kenter氏らが行ったphase 2の試験報告による。外陰上皮内腫瘍は、HPVに起因する慢性疾患で、特にハイリスク型のHPV-16によるものが多い。自然退縮は1.5%未満で、術後再発率も高いことが知られている。NEJM誌2009年11月5日号より。

冠動脈バイパス術(CABG)、on-pump対off-pump:ROOBY Study Group

冠動脈バイパス術(CABG)は、体外循環下で施行されてきたが(on-pump CABG)、体外循環を用いないCABG(off-pump CABG)による、人工心肺関連の合併症を減少させる可能性が期待されている。本論は、米国ノースポート退役軍人医療センターのA. Laurie Shroyer氏らの研究グループ(ROOBY Study Group)が行った、約2,200例を対象に両手技を比較検討する無作為化試験からの報告。NEJM誌2009年11月5日号より。

カリフォルニア、新型インフルの入院・死亡リスクは1歳未満が最大

米国カリフォルニア州の調査によると、新型(A/H1N1)インフルエンザで入院または死亡した割合は、年齢別では1歳未満の乳幼児が最大で、10万人中11.9人に上ることが報告された。入院または死亡した人の年齢中央値は27歳(範囲:1~92歳)と、通常のインフルエンザに比べて低年齢の傾向であることも確認された。米国カリフォルニア州公衆衛生局のJanice K. Louie氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年11月4日号で発表している。

医療従事者のインフルエンザ予防、サージカルマスクはN95マスクと効果同等

 医療従事者のインフルエンザ予防に、サージカルマスク装着が、N95マスクを装着した場合と同等の効果があることが、カナダMcMaster大学のMark Loeb氏らによる、看護師400人超を対象とした無作為化試験で明らかにされた。サージカルマスクとN95マスクを比較してのインフルエンザ予防効果に関するデータは、ほとんどなかった。一方でN95マスクは、入手が不可能な国もあるうえ、インフルエンザ流行時期には入手困難になる場合が少なくない。JAMA誌2009年11月4日号(オンライン版2009年10月1日号)からの報告。

それでも低調、パンデミック宣言後の香港市民の新型インフルワクチン接種意欲

香港の医療従事者を対象とした調査(5月)で、新型インフルのワクチン接種希望者が半数以下にとどまることが報告されている(2009/10/02配信:http://www.carenet.com/news/det.php?nws_c=10240)。低調の背景には過去の季節性インフルワクチンの“歴史”が大きく影響しており、ワクチンの効果や安全性に対する疑念があった。では一般市民の意識はどうなのか。香港大学のJoseph T F Lau氏らが、接種費用およびワクチン効果に関する5つの仮説を用意し、接種意図について約300人に電話インタビューを行った。これまでの接種動向を見ると、2006~2007年シーズンの季節性インフルワクチン接種率は、高齢者35%、妊婦4%、2歳未満児9%、持病がある人23%、健常者15%と低調だったという。BMJ誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月27日号)より。

腎移植後のEPO製剤投与、ヘモグロビン濃度125g/L超で死亡率が上昇

腎移植後に貧血を呈する患者は40%近くに達し、重症貧血患者の約20%はエリスロポエチン(EPO)製剤の投与を受けている。しかし最近のデータは、EPO製剤投与が一定の条件下で死亡率を増加させる可能性があることを示唆していた。オーストリア・ウィーン医科大学のGeorg Heinze氏らの研究グループは、EPO製剤の安全かつ死亡率上昇を招かないヘモグロビン濃度の最適範囲を調べるため、後向きコホート研究を実施した。BMJ誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月23日号)より。

中枢神経系リンパ腫、高用量メトトレキサート+シタラビン併用療法が有用

原発性中枢神経系リンパ腫の治療として、高用量メトトレキサート(商品名:メソトレキセート)に高用量シタラビン(同:キロサイド、サイトサール)を併用する方法は、高用量メトトレキサート単剤に比べ予後良好で、有害事象も許容できることが、イタリアSan Raffaele科学研究所腫瘍科リンパ性悪性疾患部のAndres J M Ferreri氏らInternational Extranodal Lymphoma Study Group (IELSG)による無作為化試験で明らかとなった。中枢神経系リンパ腫はまれな疾患であるため無作為化試験の実施が難しく、治療法についても議論が多く無作為化試験を行うにも全体的な戦略や主要エンドポイントに関するコンセンサスが得られにくい状況だという。現時点で、新規診断例に最も頻用されているは高用量メトトレキサート+全脳照射である。Lancet誌2009年10月31日号(オンライン版2009年9月20日号)掲載の報告。

早期glatiramer acetate治療、多発性硬化症の臨床的進行を抑制:PreCISe試験

glatiramer acetateによる早期治療は、多発性硬化症(multiple sclerosis; MS)が疑われる最初の臨床症状(clinically isolated syndrome; CIS)とMRI上で活動性の脳病変が検出されている患者が、臨床的に確実なMS(clinically definite MS; CDMS)へ移行するのを遅延させることが、イタリアSan Raffaele科学研究所生命・健康大学実験神経学のG Comi氏ら実施した無作為化試験(PreCISe試験)で示された。MSは軸索の損傷および消失を伴う中枢神経系の炎症性脱髄性疾患で、軸索損傷の範囲は炎症の程度と密接に関連しており、罹患期間や臨床的カテゴリー分類が重要とされる。glatiramer acetateは、欧米ではすでに再発・寛解を繰り返すMS(relapsing-remitting MS; RRMS)における再発回数の減少効果について承認を得ており、1日1回皮下注法による再発率、MRI上の活動性病変数、疾病負担の低減効果が確認されているという。Lancet誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月7日号)掲載の報告。

小児尿路感染症の再発予防目的での抗菌薬投与は有効?

オーストラリア・シドニー大学公衆衛生校のJonathan C. Craig氏らが、オーストラリアの4つの施設で、低用量の経口抗菌薬を持続的に投与することで、再発の可能性のある小児の尿路感染症を予防できるかどうか検討した結果について、「発生数の減少と関連」と報告した。これまでも同手技は広く行われていたが、有効性に関する十分なプラセボ対照試験は行われていなかった。NEJM誌2009年10月29日号より。

2型糖尿病患者の複合インスリン療法は、1日2回タイプより超速効型、持効型が有効

経口糖尿薬での血糖コントロールが最適とならない場合のインスリン複合療法として、どのタイプのインスリン療法が有効なのか。英国オックスフォード大学Rury R. Holman氏らTreating to Target in Type 2 Diabetes(4-T)研究グループは、3タイプのインスリン療法(1日2回の二相性アナログ製剤、食前1日3回の超速効型、基礎インスリンとしての1日1回の持効型)について約700人を対象に、非盲検多施設共同無作為化試験を行った。これまで、どのタイプのインスリン療法が有効かについてエビデンスはほとんどなかった。本試験の結果、3年時点の有効性は、二相性に比べて超速効型、持効型でのコントロールが良好であり、持効型では低血糖の発生頻度がより低く、体重増加はより小さかったことが報告されている。NEJM誌2009年10月29日号(オンライン版2009年10月22日号)掲載より。

人工透析患者の死亡リスクは8倍強、心血管疾患死以外も増加の傾向

人工透析患者の死亡リスクは、心血管疾患死に限らず、透析を受けていない人の8倍強に上ることが明らかにされた。オランダLeiden大学のDinanda J. de Jager氏らが、12万人超の透析患者について調べた結果で、JAMA誌2009年10月28日号で発表した。これまで、人工透析を受けている患者は心血管疾患死のリスクが、10~20倍に増大することは報告されていたが、それ以外の死亡リスクの増大については明らかではなかった。

小児・青年期に第2世代抗精神病薬服用、体重増やコレステロール・プロファイルを悪化

 小児・青年期の第2世代抗精神病薬の服用で、体重増加や、コレステロール・プロファイルの悪化が見られたという。米国Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らの試験で明らかになったもので、JAMA誌2009年10月28日号で発表した。同薬剤の心血管代謝に及ぼす影響について、小児・青年期を対象に行った試験はほとんど行われていない。

抗うつ薬処方が増大している真の理由:英国

英国における抗うつ薬処方は、ここ20年で実質的にかなりの伸びを示したという。処方率の増加は1970年代中頃から確認されているが、特に2000~2005年の間に処方率は36%増、コストは20%増を示した。その半分は、45%増という伸びを示した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が占めた。2005年以降も、特許切れを迎えた製剤がありコストは減少したが、SSRIについてはさらに増加しているという。英国・サウサンプトン大学Aldermoor医療センターのMichael Moore氏らは、こうした長期的増加傾向の要因について、登録患者300万人分が集約されている開業医リサーチデータベース「GPRD」を使って明らかにすることを試みた。BMJ誌2009年10月24日号(オンライン版2009年10月15日号)より。

研修医によるケア後の有害事象は、やはり年度初月に集中していた

研修医によるケア後の有害事象の発生は、臨床何年目かを問わず、年度初めの月に集中して起きていることが明らかにされた。スイス・ジュネーブ大学附属病院麻酔学・薬理学・集中治療部門のGuy Haller氏らが実施した、診療・患者データからの後ろ向きコホート研究によるもの。年度替わりには、米国の教育病院では10万人以上のインターン/レジデントが、ヨーロッパでは32,000人以上が新たな臨床トレーニングに就く。この「過渡期」に入院するのは最悪だ(英国では「August killing」、米国では「July phenomenon」)と言われているが、実際にこの時期に有害事象が増大するのか、ケアの質が低下するのかが検証された。BMJ誌2009年10月24日(オンライン版2009年10月13日)からの報告。

ペメトレキセドによる維持療法、進行非小細胞肺がんに対する有用性を確認

進行非小細胞肺がんに対するペメトレキセド(商品名:アリムタ)による維持療法は良好な耐用性を示し、プラセボに比べ無進行生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善することが、ルーマニアIon Chiricutaがん研究所のTudor Ciuleanu氏らが実施した無作為化第III相試験で明らかとなった。ペメトレキセドは葉酸代謝拮抗薬であり、欧米ではシスプラチンとの併用で悪性胸膜中皮腫の1次治療として、単剤で非扁平上皮型の進行非小細胞肺がんの2次治療として、またシスプラチンとの併用で非扁平上皮型の進行非小細胞肺がんの1次治療として承認されている。本試験は2009年米国臨床腫瘍学会(ASCO)で最終報告が行われ、注目を集めた。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月20日号)掲載の報告。

新規の血管拡張薬darusentan、治療抵抗性高血圧における降圧効果を確認

新規の選択的エンドセリンA受容体拮抗薬darusentanは、3剤以上の降圧薬を用いても降圧目標を達成できない治療抵抗性の高血圧患者にさらなる降圧をもたらすことが、アメリカNew York州立大学のMichael A Weber氏らが実施した無作為化試験で示された。治療抵抗性高血圧とは、利尿薬を含む3剤以上を推奨用量の上限または患者が耐用可能な最大用量まで使用しても降圧目標に到達しない場合と定義される。高血圧や糖尿病の患者の循環血中ではエンドセリン1が増加しており、その受容体を遮断するアプローチは治療抵抗性高血圧に有効な可能性があるという。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月14日号)掲載の報告。

CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。

重症急性腎障害患者への透析療法、強度を変えても90日死亡率は44.7%

米国から最近報告された急性腎障害(AKI)患者に有効とされる透析療法の強度について、オーストラリアとニュージーランドの共同研究グループ(RENAL Replacement Therapy Study)が、高低2つの強度による多施設共同無作為化試験を行い検証した。強度を高めたほうが有益ではないかとの仮説を立てての試験だったが、主要評価項目の90日死亡率に、強度による差はなかったと報告している。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。

医師労働人口の推定・予測値、医師会調査と国勢調査でデータに格差が:米国

米国医師労働人口について、米国医師会の医師に関する原ファイル(American Medical Association Physician Masterfile)を基に推定した場合と、米国勢調査局の現況人口調査(Current Population Survey:CPS)を基にした場合とでは、格差があることがわかった。CPSデータによる推定値のほうが、「若い医師が多く、高齢の医師の数は少ない。全体としては医師の労働人口は少ない」という結果だった。米国Dartmouth CollegeのDouglas O. Staiger氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年10月21日号で掲載されている。米国医師会のデータは、これまでにも、退職した医師の情報の更新に時間がかかり、結果として医師の労働人口を過剰に推定する傾向が指摘されていた。

心不全患者へのアルドステロン拮抗薬処方、適応患者の3分の1:米国調査結果

アルドステロン拮抗薬(商品名:セララ)が適応となる心不全患者のうち、退院時に同薬の処方を受けていたのは、3分の1にも満たないことが明らかになった。病院間での処方率の格差も大きかった。米国Cleveland ClinicのNancy M. Albert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年10月21日号で発表されている。これまでの研究から、アルドステロン拮抗薬は、中等度から重度の心不全患者に対して有効であることが明らかになっている。そのため米国心臓協会(AHA)などの臨床ガイドラインでも、投与が勧告されている。