ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:304

2型糖尿病患者の複合インスリン療法は、1日2回タイプより超速効型、持効型が有効

経口糖尿薬での血糖コントロールが最適とならない場合のインスリン複合療法として、どのタイプのインスリン療法が有効なのか。英国オックスフォード大学Rury R. Holman氏らTreating to Target in Type 2 Diabetes(4-T)研究グループは、3タイプのインスリン療法(1日2回の二相性アナログ製剤、食前1日3回の超速効型、基礎インスリンとしての1日1回の持効型)について約700人を対象に、非盲検多施設共同無作為化試験を行った。これまで、どのタイプのインスリン療法が有効かについてエビデンスはほとんどなかった。本試験の結果、3年時点の有効性は、二相性に比べて超速効型、持効型でのコントロールが良好であり、持効型では低血糖の発生頻度がより低く、体重増加はより小さかったことが報告されている。NEJM誌2009年10月29日号(オンライン版2009年10月22日号)掲載より。

人工透析患者の死亡リスクは8倍強、心血管疾患死以外も増加の傾向

人工透析患者の死亡リスクは、心血管疾患死に限らず、透析を受けていない人の8倍強に上ることが明らかにされた。オランダLeiden大学のDinanda J. de Jager氏らが、12万人超の透析患者について調べた結果で、JAMA誌2009年10月28日号で発表した。これまで、人工透析を受けている患者は心血管疾患死のリスクが、10~20倍に増大することは報告されていたが、それ以外の死亡リスクの増大については明らかではなかった。

小児・青年期に第2世代抗精神病薬服用、体重増やコレステロール・プロファイルを悪化

 小児・青年期の第2世代抗精神病薬の服用で、体重増加や、コレステロール・プロファイルの悪化が見られたという。米国Zucker Hillside HospitalのChristoph U. Correll氏らの試験で明らかになったもので、JAMA誌2009年10月28日号で発表した。同薬剤の心血管代謝に及ぼす影響について、小児・青年期を対象に行った試験はほとんど行われていない。

抗うつ薬処方が増大している真の理由:英国

英国における抗うつ薬処方は、ここ20年で実質的にかなりの伸びを示したという。処方率の増加は1970年代中頃から確認されているが、特に2000~2005年の間に処方率は36%増、コストは20%増を示した。その半分は、45%増という伸びを示した選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が占めた。2005年以降も、特許切れを迎えた製剤がありコストは減少したが、SSRIについてはさらに増加しているという。英国・サウサンプトン大学Aldermoor医療センターのMichael Moore氏らは、こうした長期的増加傾向の要因について、登録患者300万人分が集約されている開業医リサーチデータベース「GPRD」を使って明らかにすることを試みた。BMJ誌2009年10月24日号(オンライン版2009年10月15日号)より。

研修医によるケア後の有害事象は、やはり年度初月に集中していた

研修医によるケア後の有害事象の発生は、臨床何年目かを問わず、年度初めの月に集中して起きていることが明らかにされた。スイス・ジュネーブ大学附属病院麻酔学・薬理学・集中治療部門のGuy Haller氏らが実施した、診療・患者データからの後ろ向きコホート研究によるもの。年度替わりには、米国の教育病院では10万人以上のインターン/レジデントが、ヨーロッパでは32,000人以上が新たな臨床トレーニングに就く。この「過渡期」に入院するのは最悪だ(英国では「August killing」、米国では「July phenomenon」)と言われているが、実際にこの時期に有害事象が増大するのか、ケアの質が低下するのかが検証された。BMJ誌2009年10月24日(オンライン版2009年10月13日)からの報告。

ペメトレキセドによる維持療法、進行非小細胞肺がんに対する有用性を確認

進行非小細胞肺がんに対するペメトレキセド(商品名:アリムタ)による維持療法は良好な耐用性を示し、プラセボに比べ無進行生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善することが、ルーマニアIon Chiricutaがん研究所のTudor Ciuleanu氏らが実施した無作為化第III相試験で明らかとなった。ペメトレキセドは葉酸代謝拮抗薬であり、欧米ではシスプラチンとの併用で悪性胸膜中皮腫の1次治療として、単剤で非扁平上皮型の進行非小細胞肺がんの2次治療として、またシスプラチンとの併用で非扁平上皮型の進行非小細胞肺がんの1次治療として承認されている。本試験は2009年米国臨床腫瘍学会(ASCO)で最終報告が行われ、注目を集めた。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月20日号)掲載の報告。

新規の血管拡張薬darusentan、治療抵抗性高血圧における降圧効果を確認

新規の選択的エンドセリンA受容体拮抗薬darusentanは、3剤以上の降圧薬を用いても降圧目標を達成できない治療抵抗性の高血圧患者にさらなる降圧をもたらすことが、アメリカNew York州立大学のMichael A Weber氏らが実施した無作為化試験で示された。治療抵抗性高血圧とは、利尿薬を含む3剤以上を推奨用量の上限または患者が耐用可能な最大用量まで使用しても降圧目標に到達しない場合と定義される。高血圧や糖尿病の患者の循環血中ではエンドセリン1が増加しており、その受容体を遮断するアプローチは治療抵抗性高血圧に有効な可能性があるという。Lancet誌2009年10月24日号(オンライン版2009年9月14日号)掲載の報告。

CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。

重症急性腎障害患者への透析療法、強度を変えても90日死亡率は44.7%

米国から最近報告された急性腎障害(AKI)患者に有効とされる透析療法の強度について、オーストラリアとニュージーランドの共同研究グループ(RENAL Replacement Therapy Study)が、高低2つの強度による多施設共同無作為化試験を行い検証した。強度を高めたほうが有益ではないかとの仮説を立てての試験だったが、主要評価項目の90日死亡率に、強度による差はなかったと報告している。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。

医師労働人口の推定・予測値、医師会調査と国勢調査でデータに格差が:米国

米国医師労働人口について、米国医師会の医師に関する原ファイル(American Medical Association Physician Masterfile)を基に推定した場合と、米国勢調査局の現況人口調査(Current Population Survey:CPS)を基にした場合とでは、格差があることがわかった。CPSデータによる推定値のほうが、「若い医師が多く、高齢の医師の数は少ない。全体としては医師の労働人口は少ない」という結果だった。米国Dartmouth CollegeのDouglas O. Staiger氏らの研究で明らかになったもので、JAMA誌2009年10月21日号で掲載されている。米国医師会のデータは、これまでにも、退職した医師の情報の更新に時間がかかり、結果として医師の労働人口を過剰に推定する傾向が指摘されていた。

心不全患者へのアルドステロン拮抗薬処方、適応患者の3分の1:米国調査結果

アルドステロン拮抗薬(商品名:セララ)が適応となる心不全患者のうち、退院時に同薬の処方を受けていたのは、3分の1にも満たないことが明らかになった。病院間での処方率の格差も大きかった。米国Cleveland ClinicのNancy M. Albert氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年10月21日号で発表されている。これまでの研究から、アルドステロン拮抗薬は、中等度から重度の心不全患者に対して有効であることが明らかになっている。そのため米国心臓協会(AHA)などの臨床ガイドラインでも、投与が勧告されている。

うつがあると肥満になるリスクが高い:うつと肥満の相互関係

うつ病や不安障害といったありふれた精神疾患は肥満になりやすいのか、あるいは肥満であることがうつや不安をもたらすのか、相互の関連性については明らかになっていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門のMika Kivimaki氏らは、両者間に用量反応の関係性が存在するのかを調査した。BMJ誌2009年10月17日号(オンライン版2009年10月6日号)より。

乳幼児突然死症候群発生状況の最近の傾向

最近の乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生状況について、英国ブリストル大学地域医療学部門のPeter S Blair氏らが調査を行った。SIDSは、1990年代初期の「仰向けで寝かせよう」とのキャンペーン以降、徐々にだが着実に減少し90年代末期には半減したが、一方で最近の報告では、誰かと一緒に就寝していた状況下での発生が目立つようになっていた。Blair氏らは、睡眠時の状況に着目し、SIDS群と、無作為に選んだ対照群、およびハイリスク群(母親が喫煙者・若い・貧しい・多重産)の3群で比較を行った。BMJ誌2009年10月17日号(オンライン版2009年10月13日号)より。

体外式膜型人工肺は、重篤な成人呼吸不全患者の治療として従来法よりも有効

体外式膜型人工肺(extracorporeal membrane oxygenation; ECMO)は、重篤だが回復の見込みのある成人呼吸不全患者の生存率を、従来の人工呼吸器に比べ有意に改善することが、イギリスGlenfield病院心胸郭外科のGiles J Peek氏らが実施した多施設共同試験(CESAR試験)で明らかとなった。成人の急性呼吸不全の治療では、人工呼吸器技術のほか、ステロイド、腹臥位人工呼吸、気管支鏡、一酸化窒素吸入などの進歩が見られるが、急性呼吸窮迫症候群の死亡率は34~58%と依然として高い。生存例にも、呼吸器や筋骨格系の身体的障害のほか、情緒面や認知機能など精神的な障害が残る場合が多いという。Lancet誌2009年10月17日号(オンライン版2009年9月16日号)掲載の報告。

ワクチン接種時の幼児に対する解熱薬のルーチンな予防投与は推奨されない

幼児に対するワクチン接種時のパラセタモール(別名アセトアミノフェン)の予防投与により、発熱の発症率は有意に低減するものの、ワクチン抗原に対する抗体反応を減弱させる場合があることがわかった。チェコ共和国・防衛大学陸軍保健科学部のRoman Prymula氏らの検討で判明したもので、同氏は「それゆえ、パラセタモールのルーチンの予防投与は推奨されない」としている。発熱はワクチン接種後の正常な炎症反応の一種だが、高熱や熱性痙攣の緩和を目的に解熱薬の予防投与が推奨されることがあるという。Lancet誌2009年10月17日号掲載の報告。

末期腎疾患高齢患者への透析導入はADLの持続的な低下と強く関連

末期腎疾患高齢患者への透析導入は、日常生活動作を障害してしまうことが報告された。スタンフォード大学腎臓学部門のManjula Kurella Tamura氏らが、アメリカで末期腎疾患(ESRD)の高齢患者で透析導入が増えていることを受け、有益性を調べるために行った調査で明らかになった。透析開始後1年死亡率は、70歳以上では35%超、80歳以上では50%超とされる一方、延命効果やQOLへの効果は不確かなままであることが調査の背景にあった。NEJM誌2009年10月15日号より。

認知症が進行した人の末期は肺炎や発熱が頻繁に起きる

 認知症が進行した患者は、肺炎、発熱エピソード、食事に関する問題が頻繁に起き、それらが6ヵ月死亡率を高めていることが明らかにされた。アメリカで認知症が主要な死因として増えていることを踏まえ、ボストンにあるHebrew SeniorLife Institute for Aging ResearchのSusan L. Mitchell氏らが、末期病態としての認知症の臨床経過を明らかにすることを目的に、ナーシングホーム入所者で認知症が進行した人を対象に調査を行った。NEJM誌2009年10月15日号より。  調査は、ボストン近郊にあるナーシングホーム22施設(いずれも60床以上)に入所する、認知症が進行した323人[中央値86.0歳、女性85.4%、白人89.5%、認知症(アルツハイマー型72.4%)と診断されてから平均6.0年、入所年数3.0年]と、彼らのケアに関する意思決定代理人(health care proxies)を対象に行われた。  被験者は、2003年2月~2007年8月の間に登録され、18ヵ月間の、認知症入所者の生存有無、合併症、症状、治療に関するデータが収集され、代理人が担当認知症入所者に関して予想される予後や合併症について理解しているかどうかを調べた。

深夜手術執刀後同日の手術、医師の睡眠時間が6時間以下の場合のみ合併症リスクが1.7倍に

医師が深夜0時以降、手術に臨み執刀し、同日の日中に別の手術をした場合、深夜手術後の睡眠時間が6時間以下の場合には6時間超の場合に比べて、合併症発症リスクが約1.7倍に増大することが報告された。一方、睡眠時間を考慮に入れず勤務時間(12時間以上・未満で比較)だけで検討した場合の合併症リスクには有意差は見られなかったという。米国ボストンにあるブリガム&ウィメンズ病院総合内科/プライマリ・ケア部門のJeffrey M. Rothschild氏らが、経験ある医師200人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年10月14日号で発表した。これまで、経験ある医師の労働時間や睡眠時間、患者の安全性について調べた研究結果は、ほとんどないという。

約75%が乳房温存手術を選択も、約12%が後に乳房切除術を実施:米国乳がん患者

米国の乳がん患者の約75%が、初回手術として乳房温存手術を選択しているようだ。そのうち約12%が、再手術で乳房切除術を実施している。米国Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのMonica Morrow氏らが、約3,000人を対象に行った調査で明らかになったもので、JAMA誌2009年10月14日号で発表した。米国では、乳がん治療における乳房切除術の過剰実施が懸念されている。

新型インフルに、季節性インフルワクチン有効か?:メキシコからの最新報告

新型インフルエンザウイルス(汎発性2009インフルエンザA/H1N1)に対し、2008~2009年の季節性インフルエンザ3価不活化ワクチンが限定的ではあるが一定の有効性を示すことが、メキシコ国立衛生研究所のLourdes Garcia-Garcia氏らが行った症例対照研究で示唆された。特に重症例に対する効果が期待されるという。2009年4~6月にかけて、新型インフルエンザA/H1N1の感染確定例が報告され、WHOは感染爆発(パンデミック)の警戒レベルをフェーズ3から6へ引き上げた。7月6日までに、122ヵ国から公式に報告された感染例数は9万4,512件にのぼった。これまで、季節性インフルエンザワクチンは新型インフルエンザウイルスに対する有効性をほとんどあるいはまったく持たないと考えられていた。BMJ誌2009年10月10日号(オンライン版2009年10月6日号)掲載の報告。