ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:17

肩関節脱臼のリハビリテーション、理学療法は有効か?/BMJ

 外傷性肩関節前方脱臼の急性期リハビリテーションにおいて、自己管理を支援する助言のみを受けた患者と比較して、助言に加えて個々の患者の病態に合わせて調整した理学療法を行っても、6ヵ月後の肩関節機能は改善せず、合併症プロファイルは両群で同程度であることが、英国・ブリストル大学のRebecca S. Kearney氏らが実施した「ARTISAN試験」で示された。研究の詳細は、BMJ誌2024年1月17日号で報告された。  ARTISAN試験は、英国の国民保健サービス(NHS)トラストが運営する41施設で実施した実践的な無作為化対照比較試験であり、2018年11月~2022年3月に参加者を募集した(英国国立衛生研究所[NIHR]の助成を受けた)。

CD55欠損症(CHAPLE症候群)、pozelimabが有効/Lancet

 補体因子C5に対する完全ヒト型IgG4P抗体であるpozelimabの皮下投与は、補体の過剰活性化を阻害し、CD55欠損症(CHAPLE症候群)の臨床症状および検査所見を消失させたことが、トルコ・マルマラ大学のAhmet Ozen氏らによる第II相および第III相多施設共同非盲検単群ヒストリカル対照試験の結果で示された。CD55欠損症は、CHAPLE(CD55 deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathy)症候群とも呼ばれ、補体の過剰な活性化による腸管のリンパ管障害、リンパ管拡張症および蛋白漏出性胃腸症を特徴とするきわめてまれな生命を脅かす遺伝性疾患である。この希少遺伝性疾患であるCHAPLE症候群に対して、pozelimabは現時点での最初で唯一の治療薬として見いだされ、有効性と安全性の評価が行われた。著者は、「既知の原因が除外された蛋白漏出性胃腸症の患者では、CD55欠損症の検査を考慮し、CHAPLE症候群と診断された場合は早期にpozelimabによる治療を検討すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月23日号掲載の報告。

前立腺がん治療10年後の排尿・性機能、治療法による違いは?/JAMA

 限局性前立腺がん患者の治療後10年間の追跡調査の結果、ベースラインで受けた治療に応じて予後良好群に分類した患者では、前立腺全摘除術は外照射放射線療法(EBRT)または積極的監視療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。予後不良群に分類した患者では、前立腺全摘除術はEBRT+アンドロゲン除去療法(ADT)併用療法と比較し、尿失禁が悪化したが性機能の悪化は認められなかった。しかし、EBRT+ADT併用療法は前立腺全摘除術と比較し、排便およびホルモン機能の悪化がみられたという。米国・バンダービルト大学医療センターのBashir Al Hussein Al Awamlh氏らが、観察コホート研究「CEASAR研究」の結果を報告した。JAMA誌2024年1月23・30日号掲載の報告。

悪性黒色腫への個別化mRNAワクチン+ペムブロリズマブの効果は?(KEYNOTE-942)/Lancet

 完全切除後の高リスク悪性黒色腫に対する術後補助療法として、個別化mRNAがんワクチンmRNA-4157(V940)とペムブロリズマブの併用療法は、ペムブロリズマブ単剤療法と比較し、無再発生存期間(RFS)を延長し、安全性プロファイルは管理可能であった。米国・Laura and Isaac Perlmutter Cancer Center at NYU Langone HealthのJeffrey S. Weber氏らが、米国およびオーストラリアで実施した第IIb相無作為化非盲検試験「KEYNOTE-942試験」の結果を報告した。免疫チェックポイント阻害薬は、切除後のIIB~IV期悪性黒色腫に対する標準的な術後補助療法であるが、多くの患者が再発する。mRNA-4157は、脂質ナノ粒子製剤中に最大34個のネオアンチゲンをコードするmRNAを含む個別化ワクチンで、個人の腫瘍mutanomeとヒト白血球抗原(HLA)タイプに特異的に合わせて調製されている。著者は、「今回の結果は、mRNAに基づく個別化ネオアンチゲン療法の術後補助療法における有益性を示すエビデンスとなる」とまとめている。Lancet誌オンライン版2024年1月18日号掲載の報告。

超早産児の動脈管開存症、イブプロフェンによる早期治療は無益/NEJM

 超早産児の動脈管開存症(PDA)の治療において、早期のイブプロフェン投与はプラセボと比較し、最終月経後年齢36週時における死亡または中等度~重度気管支肺異形成症のリスクを低下させないことが示された。英国・ダラム大学のSamir Gupta氏らが、英国の新生児集中治療室(NICU)32施設で実施した多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるイブプロフェンは、早産児のPDA治療に使用できるが、大きなPDAへの選択的早期治療が、短期アウトカムを改善するかどうかは不明であった。NEJM誌2024年1月25日号掲載の報告。

切除可能III期NSCLC、toripalimab併用で無イベント生存期間が改善/JAMA

 切除可能なStageIIIの非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療では、周術期の化学療法にtoripalimab(プログラム細胞死タンパク質1のヒト化IgG4Kモノクローナル抗体)を追加すると、化学療法単独と比較して、無イベント生存期間が有意に改善し、安全性プロファイルは管理可能であることが、中国・上海交通大学のShun Lu氏らが実施した「Neotorch試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年1月16日号に掲載された。  Neotorch試験は、中国の50施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2020年3月12日~2023年6月19日に参加者を登録した(中国・Shanghai Junshi Biosciencesの助成を受けた)。

HIV感染妊婦のマラリア予防、間欠的予防療法の追加が有効/Lancet

 スルファドキシン/ピリメタミン耐性が高度で、通年性のマラリア感染がみられる地域において、ドルテグラビルをベースとする抗レトロウイルス薬の併用療法(cART)を受けているHIV感染妊婦に対するマラリアの化学予防では、コトリモキサゾール連日投与による標準治療への、dihydroartemisinin-piperaquine月1回による間欠的予防療法の追加は、これを追加しない場合と比較して、分娩までのマラリア原虫(Plasmodium属)の活動性感染のリスクが有意に低下することが、ケニア中央医学研究所のHellen C. Barsosio氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年1月12日号で報告された。

新型コロナ、ワクチン接種不足で重症化リスク増/Lancet

 英国において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が推奨回数に満たないワクチン接種不足者が、2022年6月時点の同国4地域別調査で32.8~49.8%に上り、ワクチン接種不足が重症COVID-19のリスク増加と関連していたことが、英国・エディンバラ大学のSteven Kerr氏らHDR UK COALESCE Consortiumが実施したコホート研究のメタ解析の結果で示された。ワクチン接種不足は完全接種と比較して、COVID-19による入院や死亡といった重症アウトカムのリスク増大と関連している可能性がある。研究グループは、ワクチン接種不足の要因を特定し、ワクチン接種不足者の重症COVID-19のリスクを調査する検討を行った。Lancet誌オンライン版2024年1月15日号掲載の報告。

進行慢性疾患の高齢入院患者、緩和ケア相談は有益か?/JAMA

 進行した慢性疾患を有する高齢患者の入院時に、緩和ケア相談がデフォルトでオーダーされていても在院日数を短縮しなかったが、緩和ケア提供の増加や迅速化ならびに終末期ケアの一部のプロセスは改善した。米国・ペンシルベニア大学のKatherine R. Courtright氏らによる、プラグマティックなステップウェッジクラスター無作為化試験の結果が報告された。入院患者への緩和ケア提供の増加が優先課題となっているが、その有効性に関する大規模で実験的なエビデンスは不足していた。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

性腺機能低下症のテストステロン補充、骨折リスクを増大/NEJM

 性腺機能低下症の中年以上の男性において、テストステロン補充療法はプラセボと比較し臨床的骨折の発生率を低下させることはなく、むしろ同発生率は数値的には増加していた。米国・ペンシルベニア大学のPeter J. Snyder氏らが、テストステロン補充療法の心血管安全性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「TRAVERSE試験」のサブ試験の結果を報告した。性腺機能低下症の男性におけるテストステロン補充療法は、骨密度や骨質を改善することが報告されているが、骨折リスクを減少させるかどうかの判断には十分な症例数と期間による試験が必要であることから、TRAVERSE試験のサブ試験として検討が行われていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

米国の乳がん死亡率の低下、治療の変化との関連は?/JAMA

 米国の乳がん死亡率は、乳がんのスクリーニングと治療の改善によって、1975年から2019年までに58%低下したことが、米国・スタンフォード大学のJennifer L. Caswell-Jin氏らによるシミュレーションモデル研究で示された。シミュレーションでは、StageI~IIIの乳がんの治療が、47%の低下に寄与していることが示された一方で、転移のある乳がんについては、治療の寄与は29%、スクリーニングの寄与は25%であった。米国における乳がん死亡率は、1975年から2019年の間に減少したことが報告されていたが、転移のある乳がん治療の変化と乳がん死亡率低下との関連はわかっていなかった。JAMA誌2024年1月16日号掲載の報告。

軽症~中等症の新型コロナ、経口simnotrelvirの早期投与は?/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の成人患者において、simnotrelvir+リトナビルの早期投与(発症後72時間以内)は、明らかな安全性の懸念はなく、症状消失までの時間を短縮したことが、中国・中日友好医院のBin Cao氏らが1,208例を対象に行った第II/III相プラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で示された。simnotrelvirは、中国で開発中の経口3-キモトリプシン様プロテアーゼ阻害薬で、in vitroでSARS-CoV-2に対する活性を示すことが見いだされ、第Ib相試験で有用である可能性が示されていた。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

NYHA分類II/III心不全への除細動の長期転帰、CRT-D vs.ICD/NEJM

 駆出率低下、QRS幅延長を認めるニューヨーク心臓協会(NYHA)心機能分類II/III度の心不全患者は、植込み型除細動器(ICD)と比べて両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)の治療を受けたほうが、追跡期間中央値約14年時点においても、生存ベネフィットが維持されていたことが示された。カナダ・アルバータ大学のJohn L. Sapp氏らが、「Resynchronization-Defibrillation for Ambulatory Heart Failure Trial(RAFT)」の長期アウトカムの結果を報告した。RAFT試験では、CRT-D治療を受けた患者のほうがICD治療を患者と比べて、5年時点で、死亡率に関するベネフィットが大きかったことが示されていたが、長期生存へのCRT-D治療の効果は明らかになっていなかった。NEJM誌2024年1月18日号掲載の報告。

ガイダンスに基づくオピオイド処方で死亡率が低減/BMJ

 オピオイド使用障害の患者では、「リスク軽減ガイダンス(Risk Mitigation Guidance; RMG)」に基づくオピオイド処方により、過剰摂取による死亡および全死因死亡の発生率が有意に低下し、違法薬物に代わる医薬品の提供は有望な介入策となる可能性があることが、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のAmanda Slaunwhite氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年1月10日号で報告された。  研究グループは、RMGに基づくオピオイド(モルヒネ)および精神刺激薬(デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート)の処方が、薬物の過剰摂取と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)という公衆衛生上の二重の緊急事態下に、死亡と急性期治療のための受診に及ぼした影響を明らかにする目的で、住民ベースの後ろ向きコホート研究を行った(カナダ健康研究所[CIHR]などの助成を受けた)。

ERCP後膵炎予防、インドメタシン単独の効果は?/Lancet

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)施行後の膵炎のリスクが高い患者における膵炎予防では、標準治療である非ステロイド性抗炎症薬インドメタシン+予防的膵管ステント留置の併用と比較して、インドメタシン単独投与は非劣性に至らないだけでなく予防効果が劣ることが、米国・サウスカロライナ医科大学のB. Joseph Elmunzer氏らの検討で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2024年1月11日号に掲載された。  本研究は、米国とカナダの20施設で実施した無作為化非劣性試験であり、2015年9月~2023年1月に患者を登録した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。

周産期うつ病、家族要因を問わず死亡リスク増大/BMJ

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のNaela Hagatulah氏らは、同国の全国規模の住民ベース適合コホート試験の結果、周産期うつ病と診断された女性では、家族的要因を考慮してもとくに診断直後の1年間の自殺による死亡リスクが増加していたことを報告した。周産期うつ病は、妊娠に伴い最もよくみられる合併症の1つで、出産前後の女性の罹患率は最大で20%と報告されている。産後精神障害(精神病性障害、感情障害、不安障害など)を有する女性は、それらの影響を受けなかった女性や一般の女性集団と比べて死亡リスクが高いことが報告されているが、産前を含む周産期うつ病との関連についてエビデンスは限定的であった。また、家族内で共有する要因が周産期うつ病や自殺による死亡リスクの増加に寄与する可能性も指摘されているが、検討された試験データはなかった。著者は今回の結果を踏まえて、「周産期うつの影響を受けた女性、その家族、医療従事者は、これら周産期うつ病後の重大な健康リスクを認識する必要がある」と提言している。BMJ誌2024年1月10日号掲載の報告。

妊娠高血圧腎症予防のCa補充、低用量vs.高用量/NEJM

 妊娠中のカルシウム補充について、低用量(500mg/日)は高用量(1,500mg/日)に対し、妊娠高血圧腎症のリスクに関して非劣性を示したことが、インドとタンザニアでそれぞれ行われた無作為化試験の結果で示された。また、早産のリスクに関して、インドの試験では非劣性であったが、タンザニアの試験では同様の所見は示されなかったという。インド・St. John's Research InstituteのPratibha Dwarkanath氏らが報告した。世界保健機関(WHO)は、妊娠高血圧腎症のリスク軽減のため、食事からのカルシウム摂取量が少ない住民集団の妊婦に対して、1日1,500~2,000mgのカルシウムを3回に分けて補充するよう推奨している。しかし、服薬アドヒアランスへの懸念と複雑な投与計画に伴う高コストのプログラムのために、現状では高用量カルシウム補充を実施している国は数ヵ国にとどまるという。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

公平な再入院を達成している病院の特徴は?/JAMA

 公平性は医療の質の本質的な領域である。米国・コロンビア大学のKatherine A. Nash氏らは、米国のメディケア・メディケイドの運営主体Centers for Medicare & Medicaid Services(CMS)が開発した臨床アウトカムの公平性を評価する2つのDisparity Methodsを用いた研究を行い、公平な再入院を達成している病院は少数派であり、公平な再入院が行われていない病院とは明らかに異なる特徴が認められることを明らかにした。具体的には、公平な再入院が行われている病院では黒人患者の数が少なかったという。著者は、「従来型のアウトカム評価では、黒人患者の受け入れが少ない病院に報酬を与える可能性があり、病院レベルでの不公平さが構造的人種差別の役割を強化する可能性がある」とし、「公平な再入院を実現するには、リスクのある患者の病院間の分布に、ばらつきがあることを考慮しなければならない」と述べ、不公平を助長しない慎重な政策設計の必要性を提言している。JAMA誌2024年1月9日号掲載の報告。

ATTR心アミロイドーシス、acoramidisが予後を改善/NEJM

 トランスサイレチン型(ATTR)心アミロイドーシス患者において、acoramidisの投与により、全死因死亡、心血管関連入院および心機能と身体機能の要素を含む4段階の階層的主要アウトカムがプラセボより有意に改善し、有害事象は両群で類似していた。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJulian D. Gillmore氏らが、第III相無作為化二重盲検比較試験「Efficacy and Safety of AG10 in Subjects with Transthyretin Amyloid Cardiomyopathy:ATTRibute-CM試験」の結果を報告した。ATTR心アミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)の心臓への蓄積が特徴である。acoramidisは四量体TTRの解離を阻害する高親和性TTR安定化薬で、ex vivoでは異なる投与間隔の全体で90%以上の安定化をもたらし、第II相試験で有効性が確認されていた。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。

ROS1融合遺伝子陽性NSCLC、repotrectinibが有望/NEJM

 ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、repotrectinibはROS1チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の治療歴を問わず、持続的な臨床活性を示したことが、米国・スローンケターリング記念がんセンターのAlexander Drilon氏らが行った第I/II相試験(「TRIDENT-1試験」)で示された。有害事象は主にグレードが低く、長期の投与に適するものであった。ROS1融合遺伝子陽性NSCLCの治療に承認されている初期世代のROS1 TKIは、抗腫瘍活性を有するが、耐性が生じ、頭蓋内活性が最適とはいえない。repotrectinibは、前臨床試験においてROS1 G2032Rなどの耐性変異を含むROS1融合遺伝子陽性がんに対する活性が示された次世代のROS1 TKIであり、研究グループは承認申請のため本検討を行った。NEJM誌2024年1月11日号掲載の報告。