ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:256

更年期症状に悩む女性に適切なアドバイス可能な研究成果が報告

女性が経験する自然閉経前後の症状を特徴づけ、症状のプロファイルや変遷別に階層化すること、また各症状プロファイルと社会統計学的因子や健康への取り組みとを関連づけることを目的とする前向きコホート研究が英国で行われた。同国University College and Royal Free Medical SchoolのGita D Mishra氏らによるもので、「医療従事者が自然閉経を迎えさまざまな症状を経験する女性に対し、個々に見合った適切なアドバイスを提供するのに役立つ結果が得られた」と報告している。BMJ誌2012年3月3日号(オンライン版2012年2月8日号)掲載報告より。

新開発の分子アッセイ、早期NSCLCのリスク評価に有用

扁平上皮がんを除く早期非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、切除術後の死亡リスクが高い例を高精度で判別する分子アッセイが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校のJohannes R Kratz氏らによって開発された。早期のNSCLCは、切除術時に検出されなかった転移病変が原因で再発することが多い。これらの患者の管理では予後の予測が重要で、潜在病変を有する可能性が高い患者を同定する必要がある。Lancet誌2012年3月3日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

大幅な拡充進む、中国の保健医療サービスと健康保険

近年、中国では保健医療の利用増加やその内容の拡充が進み、保険の補償や入院患者の保険償還が著明に増大していることが、中国衛生部保健統計情報センターのQun Meng氏らの調査で示された。1978年の政府による経済自由化政策の導入をきっかけに、中国では経済成長と貧困削減が急速に進んだが、保健医療システムの改革は同じ歩調では進展しなかったという。2009年、中国政府は、2020年までに誰もが利用可能な医療制度の確立を目標に保健医療の改革政策を導入した。Lancet誌2011年3月3日号掲載の報告。

重度外傷性脳損傷へのアマンタジンのプラセボ対照試験

外傷後意識障害を有する患者に対し、アマンタジン塩酸塩(商品名:シンメトレルほか)は、機能回復を早めることが示された。米国・JFKジョンソン・リハビリテーション研究所のJoseph T. Giacino氏らが報告した。アマンタジンは、外傷性脳損傷後の遷延性意識障害患者に最も多く処方される薬剤の一つで、予備的研究で、アマンタジンが機能回復を促進する可能性があることが示唆されていた。NEJM誌2012年2月29日号より。

妊婦への禁煙支援としてニコチンパッチ療法は有効か?

妊婦への禁煙行動療法に加えてのニコチンパッチ使用(16時間につき15mg)の有効性と安全性について、英国・ノッティンガム大学のTim Coleman氏らによる二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、出産までの禁煙率を有意に高めることはなかったことが報告された。有害な妊娠または分娩アウトカムのリスクを有意に高めることもなかったという。ただし、本試験は被験者の治療コンプライアンス率が介入群7.2%、プラセボ群2.8%と低く、安全性評価については「大幅に制限された」と結論している。ニコチン置換療法は妊婦以外の人の禁煙には効果的であることが示されており、妊婦への使用も広く推奨されているが、これまでの試験は規模が小さくエビデンスは不足していた。NEJM誌2012年3月1日号に掲載された。

心筋梗塞、女性は胸痛少なく、若年の院内死亡率は高率

女性の心筋梗塞は、男性に比べ胸痛のない割合が高く、若年での院内死亡率はより高いという特徴が明らかにされた。ただしこうした傾向は年齢によって変化し、65歳以上では、院内死亡率は男性のほうが高かった。米国・Watson Clinic and Lakeland Regional Medical CenterのJohn G. Canto氏らが、心筋梗塞の入院患者114万人超について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22日合併号で発表した。

左室肥大を伴うCKD患者へのビタミンD投与、左室心筋重量係数に変化なし

左室肥大を伴う慢性腎臓病(CKD)に対し、48週間にわたる活性型ビタミンD化合物paricalcitolを投与した結果、左室心筋重量係数に変化は認められなかったことが示された。米国・マサチューセッツ総合病院のRavi Thadhani氏らが、約230人のCKD患者について行った無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月15日号で発表した。先行研究では、ビタミンDが心血管関連の罹患率や死亡率を減少することが示されていたが、それが心構造や心機能の修正に基づくものなのかについて、エビデンスは乏しかったという。

ICU入院中のせん妄発現リスクの予測モデルを開発

集中治療室(ICU)入院患者におけるせん妄の発現リスクを、入院後24時間以内に評価が可能なリスク因子を用いて予測するモデルが、オランダRadboud大学ナイメーヘン医療センターのM van den Boogaard氏らによって開発された。せん妄は、精神状態の変動や意識レベルの変化の急性な発現で特徴付けられ、罹病率や死亡率の高い重篤な病態である。ICU入院中の患者はせん妄のリスク因子を有するが、その発現の予測モデルは確立されていないという。BMJ誌2012年2月25日号(オンライン版2012年2月9日号)掲載の報告。

PPI常用により、閉経後女性の大腿骨頸部骨折リスクが増大

プロトンポンプ阻害薬(PPI)の使用により、閉経後女性の大腿骨頸部骨折のリスクが35%増大し、喫煙歴がある場合は50%以上高いことが、米マサチューセッツ総合病院のHamed Khalili氏らの検討で示された。米国では、PPIは2003年に処方箋なしの店頭販売が認可されて以降、胸焼け、胃食道逆流症、消化性潰瘍の治療薬としてその使用量が劇的に増加した。これまでのPPI使用と大腿骨頸部骨折の関連を検討した研究では相反する結果が報告されているが、これらの試験の多くはライフスタイルや食事という影響の大きい因子に関する情報が限られていたという。BMJ誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。

小児重症肺炎、地域の女性医療ワーカーによる診断と抗菌薬投与が有効

パキスタン農村部地域の女性医療ワーカー(LHW)は、小児重症肺炎の自宅での診断および治療において、十分な役割を果たし得ることが、パキスタン・Aga Khan大学のSajid Soofi氏らの調査で示された。肺炎は世界的に5歳未満の小児の主要な罹病および死亡の原因である。パキスタンでは、肺炎による死亡率は都市部に比べ医療施設が少ない農村部で高く、自宅で死亡する患児が多いという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

リチウムの有害事象プロフィール:385試験のメタ解析

リチウム治療は、尿濃縮能の低下、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、体重増加のリスクを増大させるが、腎機能には臨床的に重大な影響を及ぼさないことが、英国・オックスフォード大学のRebecca F McKnight氏らの検討で示された。リチウム(商品名:リーマスほか)は気分障害の有効な治療薬として広範に使用されている。リチウムの安全性への関心は高いが、有害事象のエビデンスに関する適正な統合解析は行われていないという。Lancet誌2012年2月25日号(オンライン版2012年1月20日号)掲載の報告。

大腸がんスクリーニングとしての内視鏡検査vs.FIT:中間報告

大腸がんは世界的にみると3番目に頻度の高いがんであり、2番目に主要ながん関連死の原因である。いくつかの研究で、大腸がんスクリーニングは、平均的リスク集団では効果的で費用対効果に優れていることが示され、スクリーニング戦略として推奨されるのは、検便検査と組織検査の2つのカテゴリーに集約されている。そうした中、スペイン・ウニベルシタリオ・デ・カナリア病院のEnrique Quintero氏らは、便免疫化学検査(FIT)が、他のスクリーニング戦略より有効でコストもかさまない可能性が示唆されたことを受け、内視鏡検査に非劣性であると仮定し無作為化試験を行った。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

大腸内視鏡的ポリープ切除、大腸がん死亡を長期に予防

大腸腺腫性ポリープの内視鏡的切除は、長期的に大腸がんによる死亡を予防し得ることが示された。米国・マウントサイナイ医療センターのAnn G. Zauber氏らが、全米ポリープ研究(National Polyp Study;NPS)の被験者を23年にわたり前向きに追跡し、内視鏡的ポリープ切除が大腸がん死亡に与える長期的な影響について解析した結果による。NEJM誌2012年2月23日号掲載報告より。

無細胞百日咳を含む混合ワクチンの熱性痙攣リスク、てんかんリスクは?

ジフテリア・破傷風・無細胞百日咳/ポリオ/ヘモフィルスインフルエンザb型菌(DTaP-IPV-Hib)混合ワクチンの接種後リスクについて、接種当日の熱性痙攣のリスクが、3ヵ月齢での接種第1回目、5ヵ月齢での接種第2回目当日のリスクは4~6倍に増大することが報告された。しかし、絶対リスクは小さく、てんかんのリスクについては増大は認められなかった。デンマーク・Aarhus大学のYuelian Sun氏らが、約38万人の乳幼児について行ったコホート試験の結果、明らかにしたもので、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。これまで、全細胞百日咳ワクチンは熱性痙攣リスクを増大することが知られていたが、無細胞百日咳ワクチンについての同リスクとの関連は明らかではなかった。

成人への肺炎球菌ワクチン接種、23価よりも13価のほうが費用対効果が大きい

 成人への肺炎球菌ワクチン接種に関して、13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)と23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)との費用対効果について比較した結果、PCV13接種に高い費用対効果があることが報告された。ただし報告では、前提条件次第で逆転もあり得ることも示されている。米国・ピッツバーグ医科大学のKenneth J. Smith氏らが、50歳成人の仮定コホート群を対象として行った解析の結果で、JAMA誌2012年2月22・29日号で発表した。同種の検討はこれまで行われていなかった。

医学ジャーナルのプレスリリースは、新聞報道に影響するか?

医学ジャーナルが特定の論文について発表したプレスリリースの質が高い場合は、それを報じる新聞記事の質も高くなるが、プレスリリースの質が低ければ関連新聞記事の質も低下することが、米在郷軍人局医療センターのLisa M Schwartz氏らの調査で明らかとなった。医学ジャーナルが発行するプレスリリースには質のばらつきがみられ、重要な要素が除外されたり、試験の重大な限界を伝えていないことが多いという。これらのプレスリリースが、新聞報道の質に及ぼす影響は不明であった。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月27日号)掲載の報告。

治療を完遂したがん患者、運動によりQOLが改善

治療を終えたがん患者では、運動によってQOLの改善を含め種々の好ましい効果が得られることが、中国・香港大学のDaniel Y T Fong氏らの検討で示された。がんサバイバー(cancer survivor)は、治療終了後に診断前と同等の生活を期待するが、治療の影響で疲労感が増大したり、身体活動性やQOLが低下することが多い。がん治療を完遂した患者における運動の効果に関する最近のメタ解析では、試験の不均一性の増大が指摘されており、その原因は異なるドメインあるいは異なる方法でアウトカムを評価した試験が混在しているためだという。BMJ誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月31日号)掲載の報告。

高用量抗ウイルス薬治療、HSV-2再活性化の抑制効果は不十分

単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、高用量抗ウイルス薬治療中にも潜在性の再活性化を認めることが、米国・ワシントン大学のChristine Johnston氏らの検討で示された。同氏は「HSV感染の除去には、より強力な抗ウイルス薬治療を要する」と指摘している。HSV-2感染は世界的に蔓延し、HIV-1感染リスクを増大させることが示されている。抗ウイルス薬の連日投与は性器病変を減少させ、性器粘膜表面へのHSV排出を抑制するが、性感染リスクの改善効果は十分ではないという。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月5日号)掲載の報告。

人工妊娠中絶は世界的に低下、危険な中絶は増加傾向に

最近の人工妊娠中絶の世界的な傾向として、1995年以降に観察された中絶率が実質的に低下した状態が、現在まで継続しているものの、危険な中絶は増加していることが、米国・Guttmacher研究所のGilda Sedgh氏らの調査で明らかとなった。妊産婦の健康増進(ミレニアム開発目標5)や家族計画の利用状況を評価するには、妊娠中絶の発生率やその傾向に関するデータが必要となる。また、中絶を取り巻く議論の一つに、中絶を制限する法律が、果たして女性を中絶から救出し得るかという問題がある。Lancet誌2012年2月18日号(オンライン版2012年1月19日号)掲載の報告。

がん化学療法中の患者へのsemuloparin、血栓塞栓症イベントを低下

がん化学療法を受けている患者に対するsemuloparinの投与は、重大出血の顕著な増加なく、血栓塞栓症イベント発生率を低下することが明らかにされた。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らが、47ヵ国395施設から3,212例を対象とした多施設共同無作為化二重盲検試験の結果による。がん化学療法を受けている患者は、静脈血栓塞栓症のリスクが高いことが知られる。これまで、抗血栓薬の予防処置の臨床上の有益性が支持された試験データは限定的なものだった。NEJM誌2012年2月16日号掲載報告より。