ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:265

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率や必要検査数、男女間で格差

腺腫、進行腺腫、大腸がんの有病率は、同年齢層でみるといずれも男性で高率であり、検診で1人の疾病を検出するための必要検査数(NNS)も性別によって異なることが明らかにされた。オーストリア胃腸・肝臓学会のMonika Ferlitsch氏らが、約4万4,000人について行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。

高齢者の頸動脈ステント留置術、施術者の経験がアウトカムに有意に影響

高齢者に対する頸動脈ステント留置術は、施術者の年間手術件数が少ないと、多い場合に比べ、30日死亡リスクが約2倍に増大することが明らかにされた。通算手術数が少ない施術者の同リスクは1.7倍であったという。米国・ミシガン大学ヘルスケアアウトカム・政策センターのBrahmajee K. Nallamothu氏らが、頸動脈ステント留置術を行った高齢者、約2万5,000人について行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月28日号で発表した。これまで、ステント術の有効性については臨床試験で検証がされているが、施術者の経験がアウトカムに及ぼす影響について臨床ベースで検討されていなかった。

大気汚染による心肺死亡率上昇、心筋梗塞リスク以外の影響が大きい

心筋梗塞のリスクは、典型的な交通関連の大気汚染物質である直径10μm未満の大気粒子(PM10)と二酸化窒素(NO2)への曝露によって一過性に上昇するものの、時間の経過とともに低下しており、大気汚染による心肺死亡率の上昇には他のメカニズムの影響が大きいことが、英国・ロンドン大学公衆衛生学熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らの検討によって示唆された。いくつかの大気汚染物質については、日常的な高レベル状態が死亡率の上昇に関連することが示されている。大気汚染が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響に関するエビデンスは存在するが、曝露後数時間における短期的な影響を評価した研究はほとんどないという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月20日号)掲載の報告。

統合失調症/双極性障害患者は一般人よりも若くして自然死する傾向に

統合失調症および双極性障害の患者は、一般人に比べて実質的に若くして自然死していることが、イギリス・オックスフォード大学のUy Hoang氏らの調査で示された。統合失調症/双極性障害患者は、自然死、不自然死の割合がともに一般人よりも高い。イギリスでは精神疾患患者の自殺や不自然死は安定化しつつあるとされ、最近の政府のメンタルヘルス戦略では「早死にする精神障害者は減少するだろう」と明言しているという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載の報告。

2009年イギリスのA/H1N1型インフルエンザ流行は軽度のパンデミックだった

2009年のイギリスにおけるA/H1N1型インフルエンザの流行は軽度のパンデミックであり、従来のサーベイランスシステムではパンデミックの程度を正確に推定するには不十分なことが、イギリスCambridge University Forvie SiteのA M Presanis氏らの調査で示された。2009年のA/H1N1型インフルエンザの流行が当初どの程度と推定されたかは不明であり、後に比較的軽度だが感染の年齢分布が季節性のインフルエンザとは異なることが示唆されている。パンデミックの程度に関する以前の研究では、バイアスの説明が不十分で、不確実性の定量化に関連するエビデンスが包括的に援用されておらず、パンデミックの程度の変化や定期的なサーベイランスシステムの妥当性の評価が含まれていないなどの問題があるという。BMJ誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月8日号)掲載の報告。

腸管出血性大腸菌O104: H4感染による重度神経症状に免疫吸着療法が有効

腸管出血性大腸菌O104: H4感染に起因する溶血性尿毒症症候群(HUS)患者にみられる重篤な神経症状のレスキュー治療として免疫吸着療法が有効なことが、ドイツ、エルンスト・モーリッツ・アルント大学のAndreas Greinacher氏らの検討で明らかとなった。2011年5月の北ドイツ地方におけるShiga毒素産生性腸管出血性大腸菌O104: H4の感染拡大により、血漿交換療法や抗補体抗体(eculizumab)に反応しない腸炎後の溶血性尿毒症症候群や血栓性微小血管症が多発した。患者の中には、腸炎発症の1週間後に発現した重篤な神経学的合併症のために人工呼吸を要する者がおり、これは症状の発現機序に抗体が介在することを示唆するという。Lancet誌2011年9月24日号(オンライン版2011年9月5日号)掲載の報告。

ロタウイルスワクチン導入後、5歳未満児の入院、医療コストが激減

米国で2006年から開始された、乳児への5価ロタウイルスワクチン(RV5;2、4、6ヵ月齢に経口投与が標準)の直接的、間接的ベネフィットについて、米国疾病管理予防センター(CDC)のJennifer E. Cortes氏らが調査を行った結果、導入後3年間で入院が推定で約6万5千件減少、医療コストは2億7,800万ドル削減と、いずれも激減したことが報告された。ワクチン導入時は、年間の下痢関連受診が約40万人、救急外来受診20万人、入院は5万5千件で、年間20~60人の5歳未満児が死亡しており、医療コストは年間3億ドルを要していたという。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。

週3回血液透析における2日間隔は、死亡・入院リスクを高める

 週3回行われる血液維持透析は、1日間隔と2日間隔のインターバルが存在するが、2日という間隔が血液透析を受けている患者の死亡率を高める時間的要因であることが明らかにされた。本研究は、米国NIHの資金提供を受けたUnited States Renal Data SystemのRobert N. Foley氏らがnational studyとして行った結果で、20年来の懸念となっていた血液透析患者の生存率の低さ、および末期腎不全患者の大半は循環器疾患を有した状態で血液透析を始めるが、長期インターバルがそれら患者の死亡リスクを高めているのではないかとの仮説に対して言及することを目的に行われた。NEJM誌2011年9月22日号掲載より。

在胎週数が短いと、早期小児期と若年成人期で死亡率が増加

在胎週数の短さは、5歳以下の早期小児期と、18~36歳の若年成人期の死亡増大の独立した因子であることが明らかにされた。米国・スタンフォード大学のCasey Crump氏らが、スウェーデンの単生児約2万8,000人を対象に行ったコホート試験で明らかにしたもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。これまで先進国において、早産は乳児死亡の大きな原因であることは知られていたが、成人期の死亡リスクとの関連については明らかにされていなかった。

小児・青年期の強迫性障害、SRI+認知行動療法で治療効果が有意に向上

小児や青年期の強迫性障害(OCD)の治療には、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)の服薬指導と徹底した認知行動療法(CBT)の介入を併用することで、服薬指導のみや、服薬指導と簡単なCBT指示のみの介入に比べ、治療効果が有意に向上することが明らかにされた。米国・ペンシルベニア大学のMartin E. Franklin氏らが、7~17歳のOCD患者124人について行った、無作為化比較試験の結果報告したもので、JAMA誌2011年9月21日号で発表した。

慢性腰椎神経根症へのステロイドまたは生理食塩水注射は推奨できない

慢性の腰椎神経根症に対する仙骨部硬膜外ステロイドまたは生理食塩水注射は「推奨されない」と結論する多施設盲検無作為化試験の結果が報告された。ノルウェー・北ノルウェー大学病院リハビリテーション部門のTrond Iversen氏らによる。腰椎神経根症への硬膜外ステロイド注射は1953年来の治療法だが、長期有効性のエビデンスは乏しかった。それにもかかわらず、例えば米国では1994年から2001年に10万患者当たり553例から2,055例へと使用が増加、英国では2002~2003年の最も頻度の高い脊椎注射処置の1つとなっていた。本試験では、同注射の有効性について、短期(6週)、中期(12週)、長期(52週)の評価が行われた。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。

マンモグラフィ検診導入後、手術例が顕著に増大:ノルウェー調査

ノルウェーでは1996年から2004年にかけて順次、50~69歳女性の乳がん検診としてマンモグラフィ・スクリーニングを導入した。その手術治療への影響について、オスロ大学病院病理学部門のPal Suhrke氏らが検証した結果、手術例が導入前と比べて1.7倍と顕著に増えており、乳房切除術の割合も、マンモグラフィ検診非対象群では減少していたが、50~69歳群では増大し、若年群との比較で約1.3倍の格差があったという。ただし増大は一時的で、時代が下がるにつれ上昇は鈍り、2002年以降は減少に転じていた。Suhrke氏は、「初期の頃の増大要因は過剰診断によるものと思われた。後年に起きた変化は、手術方針の変化によるもののようだ」と分析している。BMJ誌2011年9月17日号(オンライン版2011年9月13日号)掲載報告より。

大腸菌集団感染発生時の血漿交換療法は有用:デンマークO-104発生時の観察研究結果

成人の下痢関連溶血性尿毒症症候群(HUS)に対して、早期段階での血漿交換療法が、経過の改善に有用である可能性が示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のEdin Coli氏らが報告したもので、Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月25日号)にて発表された。成人の下痢関連HUSは、急性の溶血性貧血、血小板減少症、腎不全によって特徴づけられ、稀な疾患であるが死亡率は高い。血漿交換療法は死亡率を低下する可能性は示唆されていたが、その有用性については議論の的となっていた。今回示された知見は、南デンマークで2011年5月に発生したO-104集団感染患者への同手技に関する所見をまとめた観察研究の結果である。

70歳以上の非小細胞肺がん患者への併用化学療法は生存ベネフィットあり

非高齢の進行型非小細胞肺がん患者に対して推奨されるプラチナ製剤ベースの併用化学療法カルボプラチン(同:パラプラチンなど)+パクリタキセル(同:タキソールなど)は、従来推奨されていなかった70歳以上の高齢患者においても、ビノレルビン(商品名:ナベルビンなど)やゲムシタビン(同:ジェムザールなど)の単剤療法との比較で、毒性作用の増大はあるものの生存ベネフィットが認められることが示された。フランス・ストラスブール大学Elisabeth Quoix氏らが、第3相無作為化試験「IFCT-0501」の結果、報告したもので、「現在の高齢患者への治療パラダイムを再考すべきと考える」と結論している。がんの疾患リスクは先進諸国では、長寿社会の進展とともに増大しており、肺がんの診断時の年齢中央値は現在63~70歳と、高齢患者の顕著な増加が認められているという。Lancet誌2011年9月17日号(オンライン版2011年8月9日号)掲載報告より。

頭蓋内動脈狭窄症に対するPTAS vs. 積極的薬物治療

頭蓋内動脈狭窄症患者に対するステント治療と積極的薬物治療とを比較検討した試験「SAMMPRIS」の結果、積極的薬物治療単独のほうが予後が優れることが明らかになった。検討されたのはWingspanステントシステム(米国ボストンサイエンス社製)を用いた経皮的血管形成術・ステント留置術(PTAS)であったが、その施術後の早期脳梗塞リスクが高かったこと、さらに積極的薬物治療単独の場合の脳梗塞リスクが予測されていたより低かったためであったという。PTASは、脳梗塞の主要な原因であるアテローム硬化性頭蓋内動脈狭窄症の治療として施術が増えているが、これまで薬物療法との無作為化試験による比較検討はされていなかった。米国・南カリフォルニア大学のMarc I. Chimowitz氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年9月7日号)掲載報告より。

心房細動患者に対するapixaban vs. ワルファリン

心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症のイベント抑制効果について検討された「ARISTOTLE」試験の結果、新規経口直接Xa阻害薬apixabanはワルファリンと比較して、同イベント発生を約2割低下し、予防に優れることが明らかにされた。大出血発生については約3割低く、全死因死亡率は約1割低かった。ワルファリンに代表されるビタミン拮抗薬は、心房細動患者の脳卒中の予防に高い効果を示すが、一方でいくつかの限界もあることが知られる。apixabanについては、これまでにアスピリンとの比較で、同等の集団において脳卒中リスクを抑制したことが示されていた。米国・デューク大学医療センターのChristopher B. Granger氏を筆頭著者とする、NEJM誌2011年9月15日号(オンライン版2011年8月28日号)掲載報告より。

大動脈二尖弁患者の大動脈解離発生率は、一般住民に比べて有意に高率

先天性心疾患で多くみられる大動脈二尖弁(BAV)を有する人の長期大動脈解離発生率は、1万患者・年当たり3.1例と低かったものの、一般住民の8.4倍と有意に高率であることが明らかにされた。未診断だった人も含めた発生率は同1.5例であった。報告は、米国・メイヨークリニックのHector I. Michelena氏らによる後ろ向きコホート研究の結果による。これまで、BAVを有する人は重度の大動脈解離が起きやすいとされていたが、長期にわたる住民ベースのデータはなかったという。JAMA誌2011年9月14日号掲載より。

米国18歳未満対象の段階的運転免許制度、死亡事故抑制には機能しておらず

米国の18歳未満を対象とする段階的運転免許(graduated driver licensing:GDL)制度の効果について検証したCalifornia Department of Motor VehiclesのScott V. Masten氏らは、16歳ドライバーの死亡事故はかなり低かったが、18歳ドライバーの死亡事故がやや高くなっており、「18歳ドライバー死亡事故の原因解明とGDL制度を改善すべきかを検証する必要がある」とまとめた報告を、JAMA誌2011年9月14日号で発表した。米国では自動車事故死が10代若者の主要な死因となっており、2000~2008年の16~19歳自動車死亡事故者は、ドライバー2万3,000人、同乗者1万4,000人以上に上った。また、事故発生は18~19歳で最も多かったが、走行距離補正後の死亡事故発生はより若い年齢で高く、18~19歳と比べて16歳は150%増、17歳は90%増であったという。

アデノイド切除、小児の反復性上気道感染症にベネフィットを認めず

小児の反復性上気道感染症に対する治療戦略について、即時のアデノイド切除が、経過観察群を上回る臨床的ベネフィットを示さなかったことが報告された。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのM T A van den Aardweg氏らが行った、非盲検無作為化試験の結果による。アデノイド切除は、小児中耳炎ではいくつかの臨床的ベネフィットをもたらしており、反復性上気道感染症も一般的に適応となるが、そのエビデンスは不足していた。BMJ誌2011年9月10日号(オンライン版2011年9月6日号)掲載報告より。

30年の長期追跡研究で明らかになった頭痛持ちの実態

タイプ別にみた頭痛症候群と長期転帰との関連について調べるため、一般住民を長期追跡した結果、各頭痛タイプが重複して発生していることが明らかになった。米国NIHのKathleen R Merikangas氏らが、スイス・チューリッヒ州の住民を若年成人の段階から30年間追跡した、国際頭痛分類第2版(ICHD-2)の初の長期前向き研究の結果による。国際研究の多くが、片頭痛の高い有病率と重大な機能障害との関連について報告しているが、Merikangas氏は「本研究は、頭痛持ちの人を前向きに追跡することは重要であることを際立たせるものとなった」と述べるとともに「一般住民における頭痛の本質は、タイプ別差異に基づく頭痛の診断名適用では正確には捉えられないだろう」と結論している。BMJ誌2011年9月10日号(オンライン版2011年8月25日号)掲載報告より。