ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:325

タミフルは有効:インドネシアの鳥インフルエンザ感染実態調査を踏まえて

インドネシアで実施された高病原性鳥インフルエンザA (H5N1型インフルエンザ)感染死の実態調査により、感染例を同定するにはより優れた診断法の開発と患者管理法の改善が必要であり、それによってオセルタミビル(販売名:タミフル)による早期治療が可能となり死亡率の低下につながることが示された。H5N1型インフルエンザ感染例は致死率がきわめて高く、そのほとんどがインドネシアで発見されている。同国保健省疾病管理・環境衛生総局のI Nyoman Kandun氏が、Lancet誌2008年8月30日号(オンライン版2008年8月14日号)で報告した。

診療の質に応じた報奨制度が医療格差の解消に寄与

イギリスの診療の質に応じた報奨制度は、貧困に関連した医療格差の解消に実質的に寄与することが、制度開始3年間のデータ解析から明らかとなった。“quality and outcomes framework”はイギリスの一般医に対する診療報酬支払い制度で、診療の質的な指標に対する達成度の評価に基づく。しかし、貧困地域よりも富裕地域の診療報酬が高いという事態になれば、この制度はケア提供の格差をむしろ増大させかねないという。Manchester大学国立プライマリ・ケア研究/開発センターのTim Doran氏が、Lancet誌2008年8月30日号(オンライン版2008年8月11日号)で報告した。

脳由来神経栄養因子はヒトのエネルギーホメオスタシスで重要な働き

脳由来神経栄養因子(BDNF)が、動物モデルでは重要なエネルギーホメオスタシスであることはわかっているが、ヒトのエネルギーバランスにおける役割についてはほとんど明らかにされていない。 染色体11p14.1上の遺伝子であるBDNFのヘテロ接合性の欠失は、ゲノムサイズで約4Mbセントロメア側に隣接する染色体11p13上の遺伝子WT1とPAX6の単機能不全を引き起こし、やがてウィルムス腫瘍、無虹彩症、尿生殖器異常、精神遅滞(WAGR)症候群を引き起こす。過食症と肥満はWAGR症候群患者のサブグループで観察されていることから、米国NIHのJoan C. Han氏らの研究グループは、WAGR症候群におけるサブ表現形としての肥満はBDNFの単機能不全を誘発する染色体欠失に起因していると仮定し遺伝子解析を行った。NEJM誌2008年8月28日号より。

多発性骨髄腫の初期治療にはMP+ボルテゾミブ併用療法

これまで、高用量治療の適応とならない多発性骨髄腫に罹患した患者の標準治療はメルファラン+プレドニゾン(MP)療法であったが、08年6月に米国FDAは新たに、再発多発性骨髄腫やマントル細胞リンパ腫の治療剤として使用されていたボルテゾミブ(国内販売名:ベルケイド)を多発性骨髄腫の第一選択薬として承認した。本稿は、サラマンカ大学病院(スペイン)のJesus F. San Miguel 氏らによる第III相臨床試験の結果。NEJM誌2008年8月28日号に掲載された。

ネット販売のアーユルヴェーダ剤から有害金属類を検出

「アーユルヴェーダ(Ayurveda)」はインドの伝統医学だが、インターネットを通じて米国内で購入できるアーユルヴェーダ剤の5分の1から、鉛と水銀、ヒ素が検出されたとボストン・メディカル・センターのRobert B. Saper氏らが報告した。特に、薬草を金属や鉱物、真珠などと組み合わせる「rasa shastra」製法に起因する可能性があると指摘している。JAMA誌2008年8月27日号より。

憩室性疾患とナッツ等やトウモロコシの摂取は無関係

憩室は欧米に多い消化器系疾患で、医師はこれまでさしたる根拠もなく、炎症や出血など合併症のリスクを減らすためとして、患者にナッツやトウモロコシ、ポップコーン、種子類を食べないよう、しばしば勧告してきた。米国人男性を対象に、ナッツやトウモロコシ、ポップコーン摂取と憩室の関連を調べていたワシントン大学医学部(シアトル市)のLisa L. Strate氏らは「ナッツなどの接取と憩室に関連はなく、勧告は見直すべき」と報告した。JAMA誌2008年8月27日号より。

低・中所得国の心血管疾患対策に母子栄養改善を

妊婦および幼児への公衆衛生プログラムに加えて栄養補助介入が、栄養不足集団での心血管疾患リスクを低減するかどうか。Hygiene and Tropical Medicineロンドン学校のSanjay Kinraらによる長期追跡調査の結果、「母子栄養改善策は、低・中所得国の心血管疾患に対する負担軽減対策として有効のようだ」と報告された。BMJ誌2008年7月25日号より。

複合組織同種移植は、顔面の広範な叢状神経線維腫の修復に有効

顔面の広範な叢状神経線維腫に対する複合組織同種移植(CTA)は実行可能であり、十分に満足できるリスク対ベネフィット比が得られることが、フランスで実施された1年間のフォローアップ研究で明らかとなった。CTAによる顔面移植のリスク対ベネフィット比については議論が続いているが、手技そのものは技術的にはすでに実行可能であったという。パリ第12大学医学部のLaurent Lantieri氏が、Lancet誌2008年8月23日号で報告した。

複合組織同種移植は、重度顔面損傷の長期的修復法となるか

複合組織同種移植(CTA)によるヒト顔面移植術が短期的には成功したと見なしうる重度顔面損傷の事例が、Lancet誌2008年8月23日号に掲載された。中国・第4軍医大学Xijing病院形成外科(陝西省西安市)のShuzhong Guo氏らが実施した部分的顔面同種移植の2年間のフォローアップ研究の報告で、合併症は避けられないものの、重度の顔面損傷の長期的な修復の治療選択肢となる可能性があるという。CTAの最近の進歩は、重度顔面損傷に対する新たな治療法の可能性を示唆していた。

アダリムバブは若年性関節リウマチに対し有効

本論は、関節リウマチの新しい治療薬として国内では2008年2月に承認された、生物学的製剤の一種である抗TNFαモノクローナル抗体アダリムバブ(商品名:ヒュミラ)の有効性と安全性に関する、国際共同研究グループからの報告。若年性関節リウマチ患児を対象としたもので、Daniel J. Lovell(シンシナティ小児病院医療センター)らは「アダリムバブ療法は有効である」と報告した。NEJM誌2008年8月21日号より。

スタチン誘発性ミオパチーと関連する遺伝子変異を同定

高LDLコレステロール血症治療薬として広範に用いられているスタチンは、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールを低下させ、心血管イベントを大幅に減少させる。高用量ほどコレステロール低下作用も大きいが、高用量で他の特定薬物と併用された場合、まれにミオパチーが生じて筋力が低下することがある。これに関して英国・オックスフォード大学のゲノム全域研究チーム「SEARCH Collaborative Group」が「スタチン誘発性ミオパチーと強く関連する遺伝子変異を同定した」との報告が、NEJM誌2008年8月21日号(オンライン版2008年7月23日号)に掲載された。スタチン療法に際して遺伝子検査を行うことで、スタチン用量を個別化し安全性を向上できる可能性があるとしている。

冠動脈疾患患者の2次予防にビタミンBは無効

総ホモシステイン濃度と心血管疾患とのリスクの関連性は観察研究によって報告されている。血漿総ホモシステイン濃度は、葉酸+ビタミンB12の内服によって低下させることができるが、Haukeland大学病院心臓疾患部門(ノルウェー)のMarta Ebbing氏らは、冠状動脈疾患もしくは大動脈弁狭窄症患者の2次予防として、葉酸+ビタミンB12の服用効果と、葉酸+ビタミンB6の服薬効果を、無作為化試験で比較評価した。JAMA誌2008年8月20日号より。

イラク、アフガン従軍兵のアルコール問題

ベトナム戦争や湾岸戦争時も報告された、兵士の除隊後の高率なアルコール依存症発症等については、現戦争のイラク戦争やアフガニスタン侵攻に関しても報告されているが、兵役と重篤なアルコール依存症発症との関連リスクについてより詳細な調査を行っていた、米国国防総省ナバル・ヘルス・リサーチセンター(サンディエゴ州)のIsabel G. Jacobson氏らによって、「予備・州兵とより若い軍人でリスクが高い」と報告された。JAMA誌2008年8月13日号より。

スコットランドの超過死亡率は薬物常用による

 スコットランドの死亡率がイングランドとウェールズよりも高いことは早くから知られていた。特に、1981年の超過死亡率は12%だったが、2001年には15%になるなど、死亡率の格差は開いている。その原因の一つとしてこれまで、就職率や車の所有率、階級構成などの低さが指摘されてきた。しかし、このところスコットランドとイングランド、ウェールズとの貧富の差はかつての半分以下に縮まっている。この反比例の関係は「スコットランド効果」と呼ばれており、説得力のある説明はなされていなかった。この「スコットランド効果」の原因を調べるため、グラスゴー大学のMichael Bloor氏らのグループは、薬物使用状況と有病率に着目し、「DORIS」と命名されたコホート研究の二次解析を行った。BMJ誌2008年7月22日号より。

女性の心血管イベント予防には片頭痛情報とFraminghamリスクスコアを

ジグザクラインや光の点滅を見たりする前兆を伴う片頭痛は、心筋梗塞を含む虚血性の脳卒中や狭心症など血管性イベントのリスク増加と関連しているとされるが、生物学的メカニズムは明らかではない。その関連について、Framinghamリスクスコアに基づく血管リスクの状態による変化(女性対象)を調べていたブリガム&ウィメンズ病院(米国・ボストン)予防医学部門のTobias Kurth氏らは、「血管リスクの状態によって関連は異なる。片頭痛と血管リスクの情報は、心血管イベントの将来予測に寄与するようだ」と報告した。BMJ誌2008年8月7日号掲載より。

テルミサルタン+ラミプリル併用で腎機能はむしろ低下:ONTARGET試験

血管リスクの高い集団の腎機能に及ぼすテルミサルタンの効果はラミプリルと同等であり、両薬剤を併用した場合は単剤投与に比べ蛋白尿は改善するものの腎機能はむしろ低下することが、ONTARGET試験の参加者を対象とした解析で明らかとなった。アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬は蛋白尿を抑制することが確認されており、併用による腎機能の改善効果が期待されていた。ドイツLudwig Maximilians大学Schwabing総合病院のJohannes F E Mann氏が、Lancet誌2008年8月16日号で報告した。

チロフィバンの入院前投与はPCI後のSTEMIの臨床転帰を改善するか:On-TIME 2

血小板糖蛋白IIb/IIIa受容体拮抗薬チロフィバンの入院前高用量急速静注投与により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)に対するPCI施行後の臨床転帰が改善することが、ヨーロッパで行われたプラセボ対照無作為化試験(On-TIME 2)で明らかとなった。PCIが適用となる急性のSTEMIでは、抗血小板療法の最も効果的な強度およびタイミングが重要とされ、さまざまな治療アプローチの評価が進められている。オランダIsala Klinieken循環器科のArnoud W J van't Hof氏らによる報告で、Lancet誌2008年8月16日号に掲載された。

tiboloneで骨折と乳癌リスクは低下するが脳卒中リスクが増大

合成ホルモン剤tiboloneには、エストロゲンやプロゲステロン、アンドロゲンと同様の効果があり、骨量減少を予防できるが、骨折や乳癌、心血管疾患に対する作用は不明である。この点について米国カリフォルニア大学のSteven R. Cummings氏らは、閉経後の高齢女性を対象にした大規模な無作為化試験の結果、「tiboloneは骨折と乳癌の発症リスクを低下させるが、脳卒中リスクを増大させる」と警告した。NEJM誌2008年8月14日号より。

安定冠動脈疾患患者へのPCI追加によるQOL改善効力は3年

慢性冠動脈疾患の治療法に関する臨床試験「COURAGE」では、最適薬物療法に経皮的冠動脈介入(PCI)を加えても、死亡率や心筋梗塞発生率の改善につながらなかった。しかし、最適薬物療法+PCIがQOLを改善できるかどうかを検証していた、同試験メンバーのWilliam S. Weintraub氏(米国・Christiana Care Health System)らは、「PCI追加によって、治療初期にはよりQOLが改善されるが、3年後には差がなくなる」と報告した。NEJM誌2008年8月14日号より。