ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:285

認知症患者家族への介入で、患者の4ヵ月後アウトカムが良好に:COPE試験

居宅認知症患者の家族介護者に対し、OT(作業療法士)などによる訪問指導を頻繁に行い、患者の機能状態等に合わせた家庭環境に改善する介入を行うことで、介入を行わなかった群に比べ、4ヵ月後のアウトカムは、良好になることが明らかにされた。米国トーマス・ジェファーソン大学ジェファーソン加齢・健康研究センターのLaura N. Gitlin氏らが、200例超の認知症患者・家族について行った、前向き無作為化比較試験COPE(Care of Persons with Dementia in their Environments)の結果で明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。COPE試験は、認知症患者の機能低下を引き延ばす手段が確立していないことを受け、患者の能力に見合った再調整という非薬物的介入の効果を検討することが目的の試験。

遺伝子変異キャリアへの乳房切除術や卵管卵巣摘出術、がん発症・死亡率を大幅に減少

BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子(以下、BRCA1/2遺伝子)変異キャリアに対する、がん発症リスク減少を目的とする乳房切除術の実施は乳がん発症を低下すること、同目的の卵管卵巣摘出術の実施は、卵巣がん、初発乳がん、全死亡、乳がん死亡、卵巣がん死亡のリスクを低下することが明らかにされた。米国ペンシルバニア大学医学部アブラムソンがんセンターのSusan M. Domchek氏らが、約2,500人のBRCA1/2遺伝子変異キャリアを対象に行った前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2010年9月1日号で発表した。

高齢者の転倒への恐れと生理学的転倒リスクはいずれも転倒予測因子

 高齢者によくみられる転倒への恐れは、転倒に関する重大な心理的要因であることが認められている。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のKim Delbaere氏らの研究グループは、転倒出現率を精査し高齢者の転倒への恐れの認識実態を把握すること、また転倒リスクを認識する要因および生理学的転倒リスクの要因を調査すること、さらに転倒リスクに対する認識と生理学的転倒リスクの、転倒発生への影響を調査することを目的として前向きコホート研究を行った。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)より。

新規糖尿病患者への集団教育プログラム実施の費用対効果:英国DESMONDプログラム

糖尿病新規診断患者に対する糖尿病教育・自己管理指導(DESMOND)プログラムの、長期的な臨床効果と費用対効果に関する調査結果が、英国シェフィールド大学Health and Related Research校のM Gillett氏らによって報告された。服薬治療だけの通常ケアと比較して、DESMONDプログラム導入の費用対効果は高く、体重減少、禁煙実現といった利点があることが明らかになったという。BMJ誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載より。

boceprevir追加により、C型慢性肝炎の持続的ウイルス陰性化率が約2倍に

未治療のC型肝炎ウイルス(HCV)ジェノタイプI型感染患者では、標準治療であるペグインターフェロンα-2b(商品名:ペグイントロン)+リバビリン(同:レベトール、コペガス)による導入療法後にboceprevirを追加する治療法が、標準治療単独に比べ持続的ウイルス陰性化率(SVR)を約2倍にまで改善することが、アメリカ・インディアナ大学医学校のPaul Y Kwo氏らが実施した無作為化第II相試験(SPRINT-1試験)で示された。標準治療は免疫系を刺激することで非特異的にウイルスの複製を抑制するもので、SVRは50%以下にすぎない。NS3プロテアーゼ阻害薬であるboceprevirはウイルス複製に重要な蛋白を阻害する「直接作用的抗ウイルス薬」と呼ばれる薬剤の一つであり、標準治療による導入療法の薬剤血中濃度が最適化された時点でこれを追加併用投与するアプローチの有用性に期待が集まっているという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月9日号)掲載の報告。

トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。

分子標的薬としてのエベロリムスの多発性嚢胞腎への効果は?

本邦では免疫抑制薬(商品名:サーティカン)、分子標的薬としては腎細胞がんへの抗がん薬(商品名:アフィニトール)として製剤が承認されているエベロリムスの、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)に対する有効性を検討した試験の結果が報告された。ドイツ・フライブルグ大学病院のGerd Walz氏らによる。ADPKDは緩徐に進行する遺伝性疾患で、ほとんどが末期腎不全に至る。数年前に、遺伝子突然変異が基因にあることが同定されたが、嚢胞肥大を抑え腎不全を予防するための有効な治療法は開発されていない。そうした中、嚢胞肥大に哺乳類ラパマイシン標的蛋白(mTOR)が重要な役割を演じていることが示唆されたことから、mTORを選択的に阻害する分子標的薬としてのエベロリムスに期待が寄せられた。NEJM誌2010年8月26日号(オンライン版2010年6月26日号)より。

大人のADHD患者には、服薬治療とともに認知行動療法を

注意欠陥・多動性障害(ADHD)は、成人においてもみられるようになっている。成人期ADHDは薬物療法だけでの治療は難しく、一方で心理社会的治療のエビデンスは十分ではない。そこで米国マサチューセッツ総合病院のSteven A. Safren氏らは、認知行動療法の有効性を検討する無作為化試験を行った。JAMA誌2010年8月25日号より。

左室機能不全や重度冠動脈疾患へのPCI前IABP挿入、術後アウトカムを改善せず

左室機能不全や重度冠動脈疾患に対する、経皮的冠動脈血管形成術(PCI)前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)は、術後アウトカムの改善にはつながらないことが報告された。英国King's College London循環器部門のDivaka Perera氏らが、前向きオープン多施設共同無作為化試験を行って明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。これまでの観察研究では、PCIに先立つIABPは、術後アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。

妊娠初期の単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬服用、先天性欠損症リスクを増大せず

母親が妊娠初期に、単純ヘルペスや帯状疱疹の治療薬である、アシクロビル(商品名:ゾビラックスなど)、バラシクロビル(同:バルトレックス)、ファムシクロビル(同:ファムビル)の抗ウイルス薬のいずれかを服用しても、出産児の先天性欠損症リスクは増大しないことが報告された。デンマークStatens Serum Institut疫学研究部門のBjorn Pasternak氏らが、約84万児を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月25日号で発表した。

複合アウトカムを信用してはいけない?

臨床試験で使用される複合アウトカム(composite outcome)は、多くの場合、個々のアウトカムを組み合わせる根拠が不十分で、定義に一貫性がなく、報告も正確性を欠いていることが、デンマーク・コペンハーゲン大学のGloria Cordoba氏らによる系統的なレビューによって明らかとなった。複合アウトカムによる評価では、個々のアウトカムのうち最も重要な項目の有効性が最低だったり、重要性が低い項目の有効性が最も高くなる場合が多いが、複合アウトカムの結果が統計学的に有意な場合、このデータを見た臨床医は有効性が低いにもかかわらず重要アウトカムを予測しがちだという。複合アウトカムを用いる主な利点は、統計学的に十分なイベント数を確保してサンプル数を少なくし、コストと時間を節減することだが、統計学的な有意性を確実なものにするには、複合アウトカムに含める個々のアウトカムの選択基準を確立すべきとの見方もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。

隠された代替アウトカムが、誤った結論を誘導する?

無作為化臨床試験のうち主要アウトカムとして代替アウトカム(surrogate outcome)を用いたものは17%に及ぶが、その使用を明記し、妥当性につき考察を加えた試験は約3分の1にすぎないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のJeppe Lerche la Cour氏が行ったコホート研究で示された。代替アウトカムは、無作為化試験において主要アウトカムの代わりに使用可能な場合があるが、不用意に用いると誤解を招いたり、有害な介入が実施されてしまう可能性があるという。欧米では、代替アウトカムに基づいて新薬の市販承認が行われる場合があり、その危険性を指摘する声もある。BMJ誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月18日号)掲載の報告。

小児がん患児に対する骨盤内照射で、将来の死産、新生児死亡のリスク増大

小児がん患児の性腺系への放射線照射は、将来、男児の場合はその子どもに重篤な有害作用をもたらすことはないが、女児では子宮や卵巣への照射によって死産、新生児死亡のリスクが有意に増加することが、アメリカ・国際疫学研究所(ロックビル)のLisa B Signorello氏らによるコホート研究で明らかとなった。近年、小児がんに対する積極的な治療により生存期間の改善が得られているが、変異原性の治療法である放射線治療は生殖細胞に障害をもたらし、この有害な作用は患児の子どもにも遺伝する可能性が示唆されている。しかし、受胎前の放射線曝露が死産、新生児死亡に及ぼす影響は不明だという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年7月23日号)掲載の報告。

5価経口生ロタウイルスワクチン、アジアの開発途上国の乳幼児にも有効

5価経口生ロタウイルスワクチン(商品名:RotaTeq ※国内未承認)は、アジアの開発途上国の乳幼児に対し安全に接種可能で、重症ロタウイルス胃腸炎に対し有効なことが、バングラデシュ・国際下痢性疾患研究センターのK Zaman氏らが行った無作為化試験で示された。WHOの試算では、2004年の世界のロタウイルスによる死亡例数は52万7,000例で、そのうちアジアの開発途上国6ヵ国で21万5,896例を占める。先進国では、乳幼児の重症ロタウイルス胃腸炎の予防にロタウイルスワクチンが有効なことが証明されているが、アジアの開発途上国では同ワクチンの有効性に関する試験は行われていないという。Lancet誌2010年8月21日号(オンライン版2010年8月6日号)掲載の報告。

線維筋痛症に太極拳が有効

線維筋痛症には太極拳が有用な治療である可能性が、米国ボストンにあるタフツ大学リウマチ科のChenchen Wang氏らの研究グループによる無作為化試験の結果、報告された。線維筋痛症治療ガイドラインでは、薬物療法、認知行動療法と並んで、健康教育と運動療法を含む集学的治療が提唱されている。なかでも運動は線維筋痛症に有効とされ、治療の中心的な構成要素として提唱されてきたが、患者の多くは診断後、何年にもわたって重篤な疼痛に悩まされ、症状のコントロールに薬物療法を必要としている。Wang氏らは、これまでの研究で太極拳が線維筋痛症に効果があるとの示唆を受け、試験を行った。NEJM誌2010年8月19日号より。

肺がん患者への早期緩和ケア導入はQOL、精神症状、余命を改善

転移性の非小細胞肺がん患者には、早期緩和ケア導入のベネフィットが大きいことが明らかにされた。QOL、精神症状を有意に改善し、標準的ながん治療を受けた患者と比較して積極的治療は少ないにもかかわらず、生存期間がより長かったという。米国マサチューセッツ総合病院のJennifer S. Temel氏らの報告によるもので、NEJM誌2010年8月19日号に掲載された。転移性非小細胞肺がんはつらい症状に苦しむ上に、末期でも積極的治療を受ける場合がある。

STEMI患者へのPCI、システム1時間遅延ごとに死亡率1割上昇

ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者の、救急通報を受けてからの経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施までの所要時間(システム遅延)が、1時間増すごとに、死亡率が1割上昇することが明らかにされた。デンマークAarhus大学病院循環器部門のChristian Juhl Terkelsen氏らが、6,000人超を対象に行った試験で明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。STEMI患者が、医療機関に到着してから再潅流治療を受けるまでの、いわゆる「ドアからバルーンまで」(door-to-balloon)の遅延とアウトカムに関する研究はこれまでにも発表されているが、救急通報時点から医療機関到着までの時間を含む、システム遅延とアウトカムに関する研究は、これが初めてという。

20年前と比べ、米国青少年の聴覚障害が増大、約2割に

米国の12~19歳の聴覚障害罹患率が、20年前と比べて増加傾向にあることが明らかになった。1988~1994年調査時の罹患率は約15%だったが、2005~2006年調査時は約20%になっていたという。米国ブリガム&ウィメンズ病院Channing LaboratoryのJosef Shargorodsky氏らが、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)のデータを分析し明らかにしたもので、JAMA誌2010年8月18日号で発表した。著者らは、「増加の要因と、回避・防止し得るリスクファクターを特定することが必要」と提言している。

外気温の低下により心筋梗塞リスクが増大

心筋梗塞のリスクは外気温が低下するごとに増大するが、外気温が高いこととは関連がないことが、イギリス・ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のKrishnan Bhaskaran氏らがMyocardial Ischaemia National Audit Project(MINAP)のレジストリーについて実施した解析で明らかとなった。外気温は短期的な死亡率増加のリスクに影響を及ぼし、暑い日も寒い日にも死亡率は増大することが示されている。一方、外気温が心筋梗塞のリスクに及ぼす影響については明らかにされていないという。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月10日号)掲載の報告。

認知症の抑制に、果物/野菜摂取の増進とうつ病/糖尿病の予防が有望

認知症の発症を最大限に抑制するアプローチとして、結晶性知能(crystallized intelligence)と果物/野菜の摂取の増進およびうつ病と糖尿病の予防が有望なことが、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)La Colombiere病院のK Ritchie氏らによるコホート研究で示された。認知症の臨床的、環境的なリスク因子は多岐にわたり、修正可能なことが一般人口を対象とした試験で示されている。そこで、認知症に特異的なリスク因子を検出し、これを除去することで発症を抑制するアプローチが進められている。BMJ誌2010年8月14日号(オンライン版2010年8月5日号)掲載の報告。