ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:310

メトクロプラミドの妊娠第1期服用は安全

メトクロプラミド(商品名:プリンペランほか)は妊婦の制吐薬の第一選択薬として用いられているが、安全性についは十分に検証されていなかった。イスラエルのベングリオン大学疫学/ヘルスサービス・サイエンス部門のIlan Matok氏らは、イスラエル南部で10年間に出生した約11万強の乳児のデータを調査。母親が妊娠初期に同剤を服用(1日30mg、平均7.2±5.4日)していた約3,500児(4.2%)について奇形発生などを調べたが、メトクロプラミド曝露による関連は見られず、「安全に対する保証が与えられた」と報告した。NEJM誌2009年6月11日号より。

冠動脈疾患の合併がある2型糖尿病患者の治療戦略:BARI 2D

最適な治療法が確立されていない、冠動脈疾患の合併がある2型糖尿病患者に対する治療戦略について、複数あるいずれの治療戦略をとっても、転帰(死亡率、主要心血管イベント発生率)に有意差がないことが明らかになった。2型糖尿病と冠動脈疾患の合併患者の治療戦略を検証する「BARI 2D」試験からの報告で、米国メイヨークリニックのRobert L. Frye氏らが、NEJM誌2009年6月11号(オンライン版2009年6月7日号)で発表した。

心臓CT検査、放射線被曝量減少プロトコル導入で被曝量およそ半減

心臓CT血管造影(CCTA)を行う際、放射線被曝量を減らす目的で作られたプロトコルに従うことで、画質は保ちながら、被曝量をおよそ半分に減らすことができることがわかった。これは、米国William Beaumont病院のGilbert L. Raff氏らが、CCTAを行った約5,000人を対象に行った対照試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年6月10日号で発表した。

27週未満の早産児、91%がNICUで受療、1年生存率7割:スウェーデン

過去5年間に生まれた周産期27週未満の早産児について調べたところ、生児出生の場合の生後1年後生存率が7割に上ることがわかった。そのうち45%は、主な新生児疾患が見られなかったという。これはスウェーデンLund大学のKarel Marsal氏らが行った研究、Extremely Preterm Infants in Sweden Study(EXPRESS)からの報告で、同試験は、2004~2007年に周産期27週未満に生まれた早産児1,000児超の、短期・長期アウトカムの評価を目的に行われた。今回の結果は、JAMA誌2009年6月3日号で発表された。

認知症患者のビデオを見せながらのIC

患者が自ら選択した治療を尊重することは、人生の終末期の質を高める重要な鍵となる。その選択に際し医師は伝統的に、言葉だけでインフォームド・コンセント(IC)を行ってきた。米国マサチューセッツ総合病院内科のAngelo E Volandes氏らは、実際の末期患者を撮影したビデオを見せながらのICが、患者が望むケアの選択に寄与すると提唱する。ビデオを見せることが、患者が望むケア選択を形作ることができるのか。高齢者を対象に、認知症が進行した場合の治療選択について、ビデオを見せた群と口頭のみの群との選択肢の違いに関する無作為化試験を行った。BMJ誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月28日号)より。

内視鏡検査による結腸直腸がんリスク低下の効果、7年後時点では確認できず

内視鏡検査が結腸直腸がんを、前悪性腺腫の段階で検出・除去でき予防に寄与することは確認されている。しかし、腺腫の自然退縮の期限についてはほとんどわかっていないため、この内視鏡検査による効果は過大評価されているのではとも言われている。そこで、ノルウェーのGeir Hoff氏らの研究グループは、大規模コホートを対象とする、軟性S状結腸鏡検査後被験者の追跡調査を行っている。その7年時点の結果が、BMJ誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月31日号)にて掲載された。

段階的弾性ストッキングは脳卒中後の深部静脈血栓を予防しない

大腿部までの長さの段階的弾性ストッキング(GCS)の着用は、脳卒中後の深部静脈血栓(DVT)のリスクを低減しないことが、イギリスEdinburgh大学臨床神経科学部のMartin Dennis氏らが実施した無作為化試験(CLOTS 1)によって明らかとなった。脳卒中後は一般にDVTや肺塞栓症が見られるが、手術を受けた患者を対象とした小規模な試験においてGCSによるDVTリスクの低減効果が確認されている。エビデンスとしては十分でないにもかかわらず、脳卒中ガイドラインはこれらの知見を外挿して脳卒中患者に対するGCSの使用を推奨している。Lancet誌2009年6月6日号(オンライン版2009年5月27日号)掲載の報告。

4価HPVワクチンは24~45歳の未感染女性にも有効

ヒトパピローマウイルス(HPV)に対する遺伝子組換え4価(HPV-6、-11、-16、-18)ワクチンは、HPV未感染の24~45歳の女性にも有効であることが、コロンビア国立がん研究所(ボゴタ市)のNubia Munoz氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。4価ワクチンは、すでに16~26歳の女性における有効性が確認されている。女性のHPV感染は初回性体験から5~10年以内(おおよそ15~25歳)にピークを迎えるが、30~40歳代あるいは閉経後に第2のピークが見られるとする報告もある。この第2のピークが潜伏感染の再活性化あるいはコホート効果なのか、それとも新たなHPV感染によるものなのかは不明だが、同氏らの以前の検討では新規感染による可能性が高いという。Lancet誌2009年6月6日号(オンライン版2009年6月2日号)掲載の報告。

米国における移民・難民の結核疫学調査

結核は、感染症死亡世界第2位で、発病率は1990年から2003年の間に世界的に増加した。WHOによれば、2005年の新規患者は世界で約880万人、うち84.1%がアジアおよびサハラ以南のアフリカからの報告だったという。一方、先進国の発病率も、こうした国からの移民・難民の影響を受けていると言われ、米国では、1年間の結核の新規患者の約6割が、外国生まれの人であり、その大半は、移民や難民と推定されるという(2007年調べ)。こうした外国生まれの人に対する結核予防対策を講じるため、米国疾病管理予防センター(CDC)のYecai Liu氏らは、詳細な疫学調査を実施した。NEJM誌2009年6月4日号より。

新しい抗結核薬TMC207、多剤耐性肺結核の治療薬として有効:第II相第1段階試験

新たな抗結核薬として開発が進められているdiarylquinoline(TMC207)の第II相試験第1段階の結果、多剤耐性肺結核の治療薬として有効であることが確認された。南アフリカUniversity of Stellenboschヘルスサイエンス学部のAndreas H. Diacon氏らによる報告で、NEJM誌2009年6月4日号で発表された。TMC207は、結核菌のATP合成酵素を阻害するというこれまでにない作用機序を有する。in vitroで、薬剤感受性・薬剤耐性結核菌を強力に阻害すること、薬剤感受性の肺結核患者で殺菌作用を示すことが明らかになっていた。

生後3ヵ月の過度な体重増、早期成人期の心血管疾患や2型糖尿病リスク因子と関連

生後3ヵ月に急激な体重増が見られた人は、早期成人期に、インスリン感受性の低下など心血管疾患や2型糖尿病のリスク因子の発症率が増加することがわかった。新生児期の成長速度と、心血管疾患や2型糖尿病リスクとの関連についての研究結果は少ないという。オランダErasmus Medical CenterのRalph W. J. Leunissen氏らが、200人超の早期成人について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2009年6月3日号で発表した。

うつ病歴のある親を持つ子どもへの認知行動療法

うつ病歴のある親を持ち、同じくうつ病歴、または軽度うつ症状のある子どもに対し、8週間の認知行動療法を行うことで、うつ症状の改善に効果があることがわかった。ただし、親が現在うつ病である場合には、この改善効果は見られなかったという。米国Vanderbilt大学のJudy Garber氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2009年6月3日号で発表した。これまでの研究結果から、親がうつ病歴のある子どもは、少年・少女期にうつ症状を発症するリスクが大きいことがわかっている。

入院からPCI施行までの時間は短いほどよい

ACC/AHAガイドラインでは、ST上昇型急性心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)は、入院後90分以内を推奨しているが、米国エール大学のSaif S Rathore氏らが行った調査で、入院からPCI施行までの時間は短いほど死亡リスクが低下することが明らかになった。「90分以内で行っている施設も、できるだけ短縮すべきである」としている。BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月19日号)より。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の異常プリオン罹患率、100万人中289人

 英国では、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)の病原と考えられる異常プリオンタンパクの罹患率は、多くとも100万人中289人であることが明らかになった。これまでの調査結果では、同罹患率の95%信頼区間が100万人中60~853人だった。今回の結果は前回の結果と整合性はあるものの、より少ない予測数が算出された。報告は、英国Health Protection AgencyのJonathan P Clewley氏らが、6万人超について行った調査によるもので、BMJ誌2009年5月30日号(オンライン版2009年5月21日号)で発表した。

MDR結核、中国、旧ソビエト諸国でなお脅威

結核の最新統計が、Global Project on Anti-Tuberculosis Drug Resistanceから発表された。Lancet誌2009年5月30日号(オンライン版2009年4月15日号)で公表されたのは、2002~2007年の83ヵ国の集計結果。それによると、多剤耐性(MDR)結核の脅威が、中国の2つの行政区と旧ソビエトの9ヵ国で続いていることが明らかになった。一方で、特にアフリカで顕著だが、薬剤耐性に関するデータが適切に集計できない国が多く、より簡単にデータを収集する方法の開発が必要だとしている。

低用量アスピリンの1次および2次予防のベネフィット:ATT

低用量アスピリンの1次予防および2次予防のベネフィットに関して、抗血栓療法に関する国際共同研究グループATT(Antithrombotic Trialists')コラボレーションによるメタ解析の結果が、Lancet誌2009年5月30日号にて報告された。いまだ明確になっていない1次予防に関して、「価値が認められるとの確証は得られなかった」と結論。ただし断定を避け、「さらなる試験が進行中」と結んでいる。

認知症治療の効果を評価する際は、年齢を考慮すべき

ケンブリッジ大学のGeorge M. Savva氏らの研究グループは、神経病理学的所見と認知症との関連について、加齢が及ぼす影響を推定するため、献体を用いた住民ベースの調査を行った。NEJM誌2009年5月28日号より。アルツハイマー病の研究は主に、65歳未満の若年高齢者に焦点を当てているが、より高齢な人を対照に含む研究で、アルツハイマー病と認知症との間の病理学的所見の関連は低いことが報告されてはいる。

食道腺がんに移行しやすいバレット食道、内視鏡的切除でリスクを減少

食道腺がんへの移行リスクが高い疾患として知られるバレット食道は、食道上皮の腸上皮化生を伴う。欧米の研究報告によると、慢性の逆流性食道炎患者の約10%に見られ、最近の住民スタディでは有病率1.6%、がん発病率は1970年代から500%以上増加、5年生存率は15%未満と高い致死率が報告されている。一方で、長期研究により、大半は非異形成か悪性度は低いままであることが明らかになってもいる。それでも悪性度の高い異形成に進行した場合、がん発病率は10%/人年以上で、現在まで異形成に対する最適な治療は明らかになっていない。米国ノースカロライナ大学食道疾患/嚥下センターのNicholas J. Shaheen氏らは、異形成を伴うバレット食道を、内視鏡的高周波アブレーションによって消失できるかどうか、それによってがん発病のリスクを低下することができるかどうかを多施設共同偽処置対照無作為化試験(米国内19施設)にて調査した。NEJM誌2009年5月28日号より。

制酸薬服用で院内肺炎の発症率が1.3倍に

 入院患者のうち、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの制酸薬を服用している人は、そうでない人に比べ、院内肺炎の発症率が約1.3倍に増加するようだ。制酸薬の種類別では、H2受容体拮抗薬の服用では同発症率に有意な増加は見られなかったが、PPI服用患者では同発症率が1.3倍に有意に増加していた。米国ベス・イスラエル・ディーコネスセンターのShoshana J. Herzig氏らが、6万人超を対象にした調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月27日号で発表した。

筋骨格の疼痛とうつ症状、12ヵ月の3段階治療で大きく改善

筋骨格の疼痛とうつ症状の緩和には、薬物療法の最適化や痛みの自己管理などを含めた3段階治療が効果があるようだ。米国Indiana大学内科/老年病学のKurt Kroenke氏らが無作為化試験で明らかにしたもので、JAMA誌2009年5月27日号で発表した。12ヵ月間にわたる介入で、被験者の26%が、痛みとうつ症状の両方が大きく改善したという。痛みとうつ症状は、プライマリ・ケアの中で最も多い患者の訴えで、その30~50%が両者を併発している。