ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:7

コロナ罹患後症状の累積発生率、変異株で異なるか/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染後に生じる罹患後症状(postacute sequelae of SARS-CoV-2 infection:PASC)は多くの臓器システムに影響を及ぼす可能性がある。米国・退役軍人省セントルイス・ヘルスケアシステムのYan Xie氏らは、パンデミックの間にPASCのリスクと負担が変化したかを調べた。感染後1年間のPASC累積発生率はパンデミックの経過に伴って低下したが、PASCのリスクはオミクロン株が優勢になった時期のワクチン接種者においても依然として持続していることが示された。NEJM誌オンライン版2024年7月17日号掲載の報告。

オピオイド拮抗薬ナロキソン、患者自己負担と処方の関連~米国/JAMA

 オピオイド使用障害の治療薬ナロキソンについて、患者の一部自己負担(cost sharing、費用分担)の廃止で、民間保険加入患者およびメディケア患者への処方調剤は増加可能であることが、米国・ミシガン大学のKao-Ping Chua氏らによる検討で示された。オピオイド使用障害による死亡が深刻な米国では、オピオイド死の抑止のために、ナロキソンへのアクセスの障壁を取り除くことが重要なステップとされている。先行研究で、費用分担がナロキソン処方調剤の障壁になっている可能性が示唆されていたが、横断研究のデザインや使用したデータベースが調剤されなかった処方箋を捕捉していないという限界があった。JAMA誌2024年7月9日号掲載の報告。

線維筋痛症、治療用スマホアプリで症状改善/Lancet

 線維筋痛症の成人患者の管理において、スマートフォンアプリを用いて毎日の症状を追跡するアクティブコントロール群と比較して、アプリを用いたアクセプタンス・コミットメント療法(ACT)によるセルフガイド型のデジタル行動療法は、患者評価による症状の改善度が優れ、デバイス関連の安全性に関するイベントは発生しないことが、米国・Gendreau ConsultingのR. Michael Gendreau氏らが実施した「PROSPER-FM試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月8日号で報告された。

パーキンソン病の構音障害、音声治療LSVT LOUDが有効/BMJ

 パーキンソン病患者の構音障害の治療において、Lee Silverman音声治療(Lee Silverman voice treatment:LSVT)は、国民保健サービスの言語聴覚療法(NHS SLT)を行う場合やSLTを行わない場合(非介入)と比較して、構音障害の影響の軽減に有効であり、またNHS SLTは非介入と比較して有益性はないことが、英国・ノッティンガム大学のCatherine M. Sackley氏らPD COMM collaborative groupが実施した「PD COMM試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年7月10日号に掲載された。

高齢の心臓手術患者、脳波ガイド下麻酔は術後せん妄を抑制せず/JAMA

 心臓手術を受ける高齢患者において、脳電図(EEG)ガイド下で脳波の抑制(suppression)を最小限にして行う麻酔投与は、通常ケアと比較して術後せん妄の発生を抑制しなかった。カナダ・モントリオール大学のAlain Deschamps氏らCanadian Perioperative Anesthesia Clinical Trials Groupが「Electroencephalographic Guidance of Anesthesia to Alleviate Geriatric Syndromes(ENGAGES)試験」の結果を報告した。術中の脳波の抑制は、全身麻酔の投与量が過剰であることを示唆するとともに、術後せん妄と関連することが先行研究で示されていた。JAMA誌2024年7月9日号掲載の報告。

CAR19療法後再発LBCL、CAR22療法が有望/Lancet

 CD19を標的としたキメラ抗原受容体(CAR)-T細胞(CAR19)療法後に疾患進行が認められた大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者において、CD22が免疫療法の標的として特定され、このCD22を標的としたCAR-T細胞(CAR22)療法により持続する臨床的有効性が認められたことが、米国・スタンフォード大学のMatthew J. Frank氏らCARdinal-22 Investigator groupが行った第I相の用量設定試験で示された。CD22はほぼ普遍的に発現しているB細胞表面抗原であるが、LBCLにおけるCAR22療法の有効性は不明であった。今回の結果について著者は、「有望ではあるが、第I相用量設定試験であることを認識することが重要である」とし、「さらなる検討を行い、長期有効性を確立するとともに、CAR22療法によって最も利益を受けられる患者サブグループを特定する必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2024年7月9日号掲載の報告。

動機付け面接などの行動介入で、身体活動は増える?97試験のメタ解析/BMJ

 動機付け面接を含む行動介入は、総身体活動を増加させるがエビデンスの確実性は低く、中高強度身体活動(MVPA)の増加と座位時間の減少効果についてはエビデンスの確実性が非常に低かった。また、介入の効果は時間の経過と共に低下し、1年を超えて身体活動を増加させる動機付け面接の有用性を示すエビデンスは確認されなかった。英国・オックスフォード大学のSuFen Zhu氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。動機付け面接は患者を中心とした行動変容アプローチで、少数の臨床試験のこれまでのメタ解析では、慢性の健康障害を有する人々においては比較対照群より優れていることが報告されていたが、これらは効果を過大評価している可能性があった。BMJ誌2024年7月10日号掲載の報告。

ニルセビマブ、乳児のRSV感染症入院リスクを83%減少/NEJM

 実臨床において、長時間作用型の抗RSVヒトモノクローナル抗体であるニルセビマブは、RSウイルス(respiratory syncytial virus:RSV)関連細気管支炎による入院リスクの低下に有効であることが示された。フランス・Paris Cite UniversityのZein Assad氏らが、生後12ヵ月未満の乳児を対象とした多施設共同前向きマッチング症例対照研究「Effectiveness of Nirsevimab against RSV-Associated Bronchiolitis Requiring Hospitalization in Children:ENVIE研究」の結果を報告した。RSVは細気管支炎の主な原因であり、世界中で毎年300万例が入院している。ニルセビマブ承認後の、実臨床におけるRSV関連細気管支炎に対する有効性については不明であった。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。

腎移植後の抗体関連型拒絶反応、抗CD38抗体felzartamabが有望/NEJM

 移植腎廃絶の主な原因である抗体関連型拒絶反応を呈した患者において、抗CD38モノクローナル抗体felzartamabは、許容可能な安全性および副作用プロファイルを示した。オーストリア・ウィーン医科大学のKatharina A. Mayer氏らが第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究で、移植腎障害を引き起こす同種抗体とナチュラルキラー(NK)細胞を抑制するため、CD38を標的とすることが治療選択肢となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。

産後VTE予防のエノキサパリン、より高リスク例へ限定可能?/JAMA

 妊娠に関連した静脈血栓塞栓症(VTE)予防のためのヘパリン(エノキサパリン)ベースのプロトコルに、より選択的なリスク層別化アプローチを追加することで、産後VTEが増加することなく血腫が減少したことを、米国・アラバマ大学のMacie L. Champion氏らが報告した。著者らのアラバマ大学では、2016年に米国産科婦人科学会のガイドラインに基づく妊娠関連VTE予防プロトコルを導入したが、血腫の発生確率が2倍以上となり(補正後オッズ比[aOR]:2.34)、VTEは減少しなかったため、2021年に、より選択的なリスク層別化アプローチを取り入れたという。JAMA誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。  研究グループは、ヘパリンベースの産科学的血栓予防プロトコル(エノキサパリンプロトコル)に対する、より選択的なリスク層別化アプローチのアウトカムを後ろ向き観察研究で評価した。

tisotumab vedotin、再発子宮頸がんの2次・3次治療に有効/NEJM

 再発子宮頸がんの2次または3次治療において、化学療法と比較してtisotumab vedotin(組織因子を標的とするモノクローナル抗体と微小管阻害薬モノメチルアウリスタチンEの抗体薬物複合体)は、全生存期間(OS)と無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、新たな安全性シグナルの発現はないことが、ベルギー・Universitaire Ziekenhuizen LeuvenのIgnace Vergote氏らが実施した「innovaTV 301/ENGOT-cx12/GOG-3057試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年7月4日号で報告された。  本研究は、日本を含む27ヵ国168施設が参加した非盲検無作為化第III相試験であり、前治療後に病勢が進行した再発子宮頸がん患者におけるtisotumab vedotinの有効性と安全性の評価を目的に行われた(GenmabとSeagenの助成を受けた)。

進行期古典的ホジキンリンパ腫の1次治療、BrECADDが有効/Lancet

 進行期の古典的ホジキンリンパ腫の成人患者に対する1次治療において、ブレオマイシン+エトポシド+ドキソルビシン+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プロカルバジン+prednisone(eBEACOPP)療法と比較して、2サイクル施行後のPET所見に基づくbrentuximab vedotin+エトポシド+シクロホスファミド+ドキソルビシン+ダカルバジン+デキサメタゾン(BrECADD)療法は、忍容性が高く、無増悪生存(PFS)率を有意に改善することが、ドイツ・ケルン大学のPeter Borchmann氏らAustralasian Leukaemia and Lymphoma Groupが実施した「HD21試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年7月3日号に掲載された。

脳卒中後の血圧コントロール不良、看護師電話管理で改善/JAMA

 コントロール不良の高血圧で主に低所得の黒人およびヒスパニックの脳卒中生存者では、家庭血圧遠隔モニタリング(HBPTM)単独と比較して、電話を用いた看護師による患者管理(NCM)をHBPTMに追加することで、1年後の収縮期血圧(SBP)が有意に低下し、2年後の脳卒中の再発には差がないことが、米国・ニューヨーク大学ランゴーン医療センターのGbenga Ogedegbe氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年7月2日号で報告された。  本研究は、ニューヨーク市の合計8つの脳卒中センターと外来診療施設で実施した臨床ベースの無作為化試験であり、2014年4月~2017年12月に参加者を登録した(米国国立神経疾患・脳卒中研究所[NINDS]の助成を受けた)。

EGFR陽性NSCLCの1次治療、amivantamab+lazertinibがPFS延長/NEJM

 未治療の上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の治療において、標準治療であるオシメルチニブ(第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬[TKI])と比較して、amivantamab(EGFRと間葉上皮転換因子[MET]を標的とする二重特異性抗体)+lazertinib(活性化EGFR変異とT790M変異を標的とする第3世代EGFR-TKI)の併用療法は、無増悪生存期間(PFS)が有意に長く、安全性のデータは既報の第I、II相試験と一致することが、韓国・延世大学校医科大学のByoung C. Cho氏らMARIPOSA Investigatorsが実施した「MARIPOSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月26日号に掲載された。

中絶薬の有効性・安全性、遠隔医療(検査なし)vs.対面(超音波検査実施)/JAMA

 遠隔医療でのスクリーニング(無検査)と薬の郵送による中絶は、超音波検査を伴う対面診療を経ての処方・中絶と比較し、完全な中絶率に関して非劣性であり、有害事象の発現率は低かった。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のLauren J. Ralph氏らが、非劣性解析を伴う前向き観察研究の結果を報告した。米国では、遠隔医療およびミフェプリストン製剤の郵送を介するなど、診療履歴による適格性評価(無検査)を用いた中絶薬による中絶の利用希望が急速に拡大しており、その有効性と安全性に関するさらなるエビデンスが求められていた。JAMA誌オンライン版2024年6月24日号掲載の報告。

高リスク高血圧患者の降圧目標、140mmHg未満vs.120mmHg未満/Lancet

 心血管リスクの高い高血圧患者では、糖尿病や脳卒中の既往によらず、収縮期血圧(SBP)の目標を120mmHg未満とする厳格降圧治療は、140mmHg未満とする標準降圧治療と比較して、主要心血管イベントのリスクが低下したことが示された。中国・Fuwai HospitalのJiamin Liu氏らESPRIT Collaborative Groupが無作為化非盲検評価者盲検比較試験「Effects of Intensive Systolic Blood Pressure Lowering Treatment in Reducing Risk of Vascular Events trial:ESPRIT試験」の結果を報告した。SBPを120mmHg未満に低下させることが140mmHg未満に低下させることより優れているかどうかは、とくに糖尿病患者や脳卒中の既往患者でははっきりしていなかった。Lancet誌オンライン版2024年6月27日号掲載の報告。

局所進行上咽頭がんの1次治療、sintilimab併用は有益か/Lancet

 局所進行の上咽頭がんの1次治療として、化学放射線療法へのsintilimab上乗せは、無イベント生存(EFS)率を改善し、有害事象の発現が増加したが管理可能な範囲のものであったことが、中国・中山大学がんセンターのXu Liu氏らによる第III相多施設共同非盲検並行群間無作為化試験「CONTIUUM試験」で示された。再発または転移のある上咽頭がんでは、抗PD-1療法+化学療法が1次治療として推奨されているが、局所進行の上咽頭がんにおけるPD-1阻害薬の有益性については明らかになっていなかった。Lancet誌2024年6月22日号掲載の報告。

StageIII悪性黒色腫への術後ダブラフェニブ+トラメチニブの最終結果/NEJM

 BRAF V600変異陽性StageIII悪性黒色腫の患者に対するダブラフェニブ+トラメチニブの併用による術後補助療法は、約10年の追跡調査時点でプラセボと比較して、無再発生存期間(RFS)および無遠隔転移生存期間(DMFS)は良好であった。全生存期間(OS)については、併用群の死亡リスクがプラセボ群と比較して約20%低かったが、有意差は示されなかった。オーストラリア・シドニー大学のGeorgina V. Long氏らが870例を対象とした第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「COMBI-AD試験」の最終解析結果を報告した。同試験事前規定の中間解析では、3年時のOSが有意差は示されなかったが併用群で延長したことが、また5年時解析ではRFSとDMFSについて併用群での延長が示され、OSを含むより長期の結果が求められていた。NEJM誌オンライン版2024年6月19日号掲載の報告。

PPIのpantoprazole、侵襲的換気患者の上部消化管出血を予防/NEJM

 集中治療室(ICU)で侵襲的機械換気を受けている患者では、プラセボと比較してプロトンポンプ阻害薬pantoprazoleは、臨床的に重要な上部消化管出血のリスクを有意に低下させ、その一方で死亡率には影響を及ぼさないことが、カナダ・マクマスター大学のDeborah Cook氏らが実施した「REVISE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2024年6月14日号に掲載された。  REVISE試験は、8ヵ国68施設で実施した医師主導の無作為化試験であり、2019年7月~2023年10月に患者を登録した(カナダ保健研究機構[CIHR]などの助成を受けた)。

低リスク前立腺がんの監視療法、10年後の病勢進行率は?/JAMA

 未治療の低リスク前立腺がん患者では、プロトコールに基づく監視療法(active surveillance)により、診断から10年の時点で49%の男性が病勢の進行がないか治療を開始しておらず、転移病変の発生は2%に達せず、前立腺がんによる死亡は1%未満であり、監視療法中の病勢進行や治療はアウトカムの悪化とは関連しないことが、米国・Fred Hutchinson Cancer CenterのLisa F. Newcomb氏らが実施した「Canary PASS研究」で示された。研究の成果は、JAMA誌2024年6月25日号で報告された。  Canary PASS研究は、米国とカナダの10施設で実施した前向き観察研究であり、2008~22年8月に、低リスク前立腺がんと診断され、前治療歴のない男性2,155例を登録した(Canary Foundationなどの助成を受けた)。