ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:327

赤身肉の大量摂取は血圧上昇を招く

1981年に提示された「iron-heart」仮説では、男性と女性(閉経前)と冠疾患リスクの差は、鉄分蓄積量の差によって説明できるとされたが、その後の研究からその裏づけとなる結果は、得られていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門Ioanna Tzoulaki氏らの研究グループは、食事による鉄分(総鉄、ならびにヘム鉄、非ヘム鉄)の摂取、サプリメントなどによる補足的な鉄分摂取、さらに赤身肉の摂取と血圧との関連を調査する横断的疫学研究を行った。BMJ誌2008年7月15日号より。

抗レトロウイルス治療が有効でも、HIVはパートナーに感染する

有効な治療が行われていれば、異性間性交渉によるHIV感染リスクは低いがまったくないとはいえず、男性の同性間性交渉における感染リスクは曝露を繰り返す間に高くなることが、数学的モデルによる解析で判明した。Swiss Federal Commission for HIV/AIDSのコンセンサスでは、有効な抗レトロウイルス療法によって血漿HIV RNAが検出されなくなった症例(<40コピー/mL)からは性交によるHIV感染はないとされていたが、これを覆す知見が得られたことになる。オーストラリアNew South Wales大学、国立HIV疫学・臨床研究センターのDavid P Wilson氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

HIV感染例の平均余命が改善、高所得国の併用抗レトロウイルス療法施行例

 併用抗レトロウイルス療法(CART)を受けているHIV感染例の平均余命は1996年から2005年の間に延長しており、高所得国における20歳時の平均生存例数は一般人口の約2/3であることが、国際的なコホート研究(ART-CC)で明らかにされた。CARTはHIV感染例の生存率およびQOLを有意に改善するが、一般集団レベルにおける余命への影響は明確でなかったという。カナダBritish Columbia Centre for Excellence in HIV/AIDS のRobert Hogg氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

ソラフェニブは進行性肝細胞癌患者の生存期間を延長する

進行性の肝細胞癌患者に有効な全身療法はないが、これまでの予備試験の結果、分子標的薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール、本年1月承認で国内では腎癌のみ適応)が、肝細胞癌にも有効である可能性が示されている。本論は、スペイン・バルセロナ大学のJosep M. Llovet氏らによる報告で、ソラフェニブの国際共同第III相臨床試験SHARPの結果。「ソラフェニブは生存期間を延長する」と報告されている。NEJM誌2008年7月24日号より。

薬剤耐性HIV-1にraltegravirと至適基礎療法の併用が有効

既存の抗レトロウイルス薬に感受性または耐性を示す活性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対しても、HIV-1インテグレース阻害剤のraltegravir(MK-0518)は活性を示す。raltegravirの国際的第III相臨床試験BENCHMRKにおいて、抗レトロウイルス療法に失敗し治療の選択肢が限られた3クラス薬剤耐性HIV-1感染患者に、raltegravirを至適基礎療法と併用することで良好なウイルス抑制効果があることが報告された。ニューヨーク州立大学Roy T. Steigbigel氏らによる報告は、NEJM誌2008年7月24日号にて掲載された。

外国生まれの米国居住者における結核感染状況

アメリカでは結核対策の強化によって感染者が減少している。しかし、外国生まれの米国居住者の患者数は、2006年における全米の患者数の57%を占めていた。現行の対策では、入国者における高い結核感染率と潜在的な結核感染症への対処が不十分だとして、米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らが、入国者集団の感染状況およびスクリーニング法を評価。JAMA誌2008年7月23日号に結果が掲載された。

うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行う必要はない

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行うべきか、それとも臨床適応となった場合にだけ行えばよいか。CDC(疾病予防管理センター)では感染対策の観点から72~96時間ごとに変えるべきとしているが、そのエビデンスは乏しく、また近年、ルーチンに変えるほうが静脈炎の発症率が高いといった報告もある。そうしたなか王立ブリスベーン&ウーマンズ病院(オーストラリア)臨床看護センターのJoan Webster氏らは、静脈炎発症率とコストの面で検討を行い、「臨床適応の場合だけ行えばいいようだ」と報告した。BMJ誌オンライン版2008年7月8日号より。

アミロイドβペプチドワクチンはアルツハイマー病の神経変性を予防しない

 全長アミロイドβペプチド(Aβ42)ワクチン(AN1792)はアルツハイマー病のアミロイド斑を除去するが、進行性の神経変性は予防しないことが、開発中止後の長期的な事後検証試験の結果から明らかとなった。Aβ42ワクチンの第I相試験では、アミロイド斑の除去効果に加え、多様性が高く広範な非用量依存性を示す抗体反応が確認されていた。イギリスSouthampton大学臨床神経科学部のClive Holmes氏が、Lancet誌2008年7月19日号で報告した。

急性心筋梗塞の最良の脂質関連リスク因子が解明された:INTERHEART試験

急性心筋梗塞(AMI)の最も優れた脂質関連のリスク予測因子は非空腹時のアポリポ蛋白B100(Apo B)/Apo A1比であることが、国際的な症例対照研究(INTERHEART試験)で明らかとなった。同試験では、修正可能な9つのリスク因子(喫煙、運動、果物/野菜、アルコール、高血圧、糖尿病、腹部肥満、心理社会的状態、Apo B/Apo A1比)で心筋梗塞の人口寄与リスク(PAR)のほとんどを説明できることがすでに示されており、なかでもApo B/Apo A1比はPARの半分に関与しているという。カナダMcMaster大学のMatthew J McQueen氏がLancet誌2008年7月19日号で報告した。

在胎期間が短いほど成人後のリスクは増大

周産期医療の進歩によって、早産児の生存数は増加しているが、こうした早産児が成人期に必要とする能力については懸念がある。ノルウェー・ベルゲン大学のDag Moster氏らは全国民を対象とした登録制度に基づき長期追跡調査を行った結果、「早産児は成人後も、在胎期間が短いほど医学的・社会的リスクが増大する」と報告した。NEJM誌2008年7月17日号より。

エビデンスある高齢者の転倒防止対策を普及させよう

米国エール大学医学部のMary E. Tinetti氏らは、「転倒は高齢者によくみられる一般的な病的状態である。またその効果的な予防対策は明らかになっているにもかかわらず、十分に活用されていない」として、コネティカット州において、地域医療や看護・介護関係者に転倒防止対策を採るよう介入を行った。結果、転倒関連の外傷を減らすことができたと報告している。NEJM誌2008年7月17日号より。

子供の運動不足は10代前半で急速に進行する

運動不足は小児肥満症の増加と重要な関係がある。米国農務省は、1日最低60分間の「中程度から強度の身体活動」(MVPA)を推奨しているが、実際に最近の子供たちがどのように運動しているかを検証した継続的研究はほとんどなかった。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部小児科のPhilip R. Nader氏らは、9~15歳の追跡調査。10代前半で運動量が急激に減少していると警告した。JAMA誌2008年7月16日号より。

シンバスタチンは神経線維腫症1型の認知機能障害を改善しない

神経線維腫症1型(NF1)は、学習障害(LD)の発症頻度が最も高い遺伝病の1つだが、近年、NF1マウス・モデルで、HMG-CoA還元酵素(3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase)のスタチンが認識欠損を修復できることが示された。このため、オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学NF1研究チームのLianne C. Krab氏らが、NF1の小児におけるスタチン系薬剤シンバスタチンの効果を検証する無作為化試験を行ったが、結果は「認知機能障害は改善されなかった」と報告されている。JAMA誌2008年7月16日号より。

筋力アップが死亡率低下に結びつく

慢性疾患予防や健康増進に有効であるとしてフィットネスが推奨されている。筋力と全死亡率の負の相関はこれまでにも報告されていたが、男性における、筋力と全死因・心血管疾患・癌の死亡率に関する大規模な前向きコホート研究が行われ、筋力と全死因・癌の死亡率は独立した負の相関関係にあることが、BMJ誌2008年7月1日号で公表された。スウェーデン王立カロリンスカ研究所のJonatan R Ruiz氏らによる報告。

オリンピックレベルの選手の突然死を防ぐために

心血管異常を見つけ突然死や症状悪化を防ぐために、スポーツ選手への事前スクリーニングは有効だとされる一方、ここ数十年にわたり臨床有用性が議論されてもいる。米国心臓協会は不支持の態度を示しているが、ヨーロッパ心臓病学会と国際オリンピック委員会は、イタリアで25年以上前から行われていることに注目し、若いアスリートへの事前スクリーニングは必要であるとの態度を表明した。本論は、イタリア・フィレンツェにあるスポーツ医学研究所のデータをフローレンス大学血栓治療センターFrancesco Sofiらが分析・検討した結果で、臨床有用性はあると報告された。BMJ誌2008年7月3日号より。

腎細胞癌に対する自己腫瘍由来ワクチンによる術補助療法の有効性示せず

腎細胞癌に対する腎摘出術後の自己腫瘍由来熱ショック蛋白ワクチン(HSPPC-96、vitespen)療法は無再発生存率を改善しないことが、米国M D Anderson癌センターのChristopher Wood氏が行った無作為化第III相試験で明らかとなった。限局性腎細胞癌の標準治療は局所あるいは根治的な腎摘出術であるが、有効な補助療法がないため患者は実質的に再発のリスクに晒されているという。Lancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年7月3日号)掲載の報告。

手術の世界的な年間施行数はどれくらい?

 世界全体では毎年、膨大な数の手術が行われ、大手術(major surgery)の手技に起因する高い死亡率および合併症発生率ゆえに、いまや手術の安全性は国際的な公衆衛生学の実質的な懸案事項とすべきことが、「WHO患者安全プログラム」の一環として実施された調査で明らかとなった。手術のニーズは工業化に伴う疾病パターンの転換に伴って医療資源の多寡にかかわらず急激に増加した。この、いわゆる「疫学的な過渡期」ゆえに公衆衛生における手術の役割も増大してきたが、その安全性の改善やサービスの不足を補うためにも、手術的介入の総数、配分状況を把握する必要があるという。米国Harvard大学公衆衛生学部のThomas G Weiser氏がLancet誌2008年7月12日号(オンライン版2008年6月24日号)で報告した。

急性心原性肺水腫への非侵襲的換気療法、死亡率は改善せず

急性心原性肺水腫患者に対して、気管切開・挿管によらない非侵襲的換気療法(持続気道陽圧換気療法:CPAP、または非侵襲的間欠陽圧換気療法:NIPPV)は有効で、死亡率を低下させる可能性があるとされる。そこで、英国エジンバラ王立病院のAlasdair Gray氏らThree Interventions in Cardiogenic Pulmonary Oedema:3CPOの研究グループは、気管挿管による標準酸素療法とCPAP、NIPPVを比較検討した。NEJM誌2008年7月10日号より。