ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:67

小児マラリア、ワクチン+化学予防で入院・死亡を大幅抑制/NEJM

 合併症のない臨床的に軽症の小児マラリアの予防治療において、季節性のRTS,S/AS01Eワクチン接種は化学予防に対し非劣性であり、RTS,S/AS01Eワクチンと化学予防の併用はワクチン単独および化学予防単独と比較して、軽症マラリア、重症マラリアによる入院、マラリアによる死亡を大幅に抑制することが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のDaniel Chandramohan氏らが西アフリカで行った臨床試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月25日号で報告された。

嚢胞性線維症、3剤併用療法で肺機能が改善/NEJM

 Phe508del-ゲーティング遺伝子型またはPhe508del-機能残存遺伝子型を有する嚢胞性線維症患者の治療において、elexacaftor+tezacaftor+ivacaftorによる3剤併用療法は、肺機能の改善に有効で安全性も良好であり、既存の嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)調節薬(ivacaftorまたはtezacaftor+ivacaftor)よりも大きな利益をもたらすことが、英国・マンチェスター大学のPeter J. Barry氏らが行った「VX18-445-104試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年8月26日号に掲載された。

シノバック製ワクチン、ガンマ株蔓延下のブラジルで有効性検証/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のγ変異株(ブラジル型)が広くまん延している状況下で、70歳以上の集団における不活化全粒子ワクチンCoronaVac(中国Sinovac Biotech製)の2回接種者は非接種者と比較した場合、2回目接種から14日以降における症候性の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症に対するワクチン有効率は47%であり、COVID-19関連の入院に対する有効率は56%、死亡に対する有効率は61%との研究結果が、スペイン・ISGlobalのOtavio T. Ranzani氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年8月20日号に掲載された。

世界の高血圧患者数、30年で2倍に/Lancet

 1990~2019年における高血圧有病率、治療率およびコントロール率の改善は、国・地域によって大きく異なり、一部の中所得国がほとんどの高所得国を上回っている現状が明らかにされた。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのBin Zhou氏らが、約200の国・地域の研究1,201件、計1億400万人のデータの解析結果を報告した。著者は、「高所得国だけではなく低所得国や中所得国においても、高血圧の1次予防と治療およびコントロールの強化を介して高血圧有病率を減少させる二元的アプローチ(dual approach)は達成可能である」と強調している。Lancet誌オンライン版2021年8月24日号掲載の報告。

mRNAワクチン、初回接種後2週間は要注意/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のmRNAワクチンは、2回接種により症候性感染と重症化に対する高い有効性が認められることが示された。ただし、1回接種の場合、とくに高齢者では接種直後は有効性が低かった。カナダ・ICESのHannah Chung氏らが、診断陰性例コントロール試験の結果、明らかにしたもので、結果を踏まえて著者は、「mRNAワクチンの症候性感染に対する効果は、1回接種では中程度であることから、とくに初回接種後最初の2週間(高齢者ではさらに長い期間)は効果がないこと、マスク着用や物理的距離、社会的な集まりを避けるなどの推奨されている公衆衛生対策を継続して行うべきであることを、人々に伝える必要がある」と指摘している。BMJ誌2021年8月20日号掲載の報告。

異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

 米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。

ファイザーワクチン後の重篤な有害事象リスク、感染後より低い/NEJM

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種は、ほとんどの臨床的に重要な有害事象のリスク増大とは関連しておらず、ワクチン接種と心筋炎の過剰リスクとの関連は認められたが(10万人当たり1~5件)、これら心筋炎を含めた重篤有害事象リスクは、SARS-CoV-2感染後のほうが大幅な増大が認められた。イスラエル・Clalit Research InstituteのNoam Barda氏らが、イスラエルの半数超の国民が加入する健康保険データを基に解析を行い報告した。NEJM誌オンライン版2021年8月25日号掲載の報告。

atogepant予防的投与で、片頭痛日数が減少/NEJM

 片頭痛の予防治療において、小分子カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体作動薬atogepantの1日1回経口投与はプラセボと比較して、12週間の片頭痛日数および頭痛日数を減少させ、片頭痛急性期治療薬の使用日数やQOLも良好であり、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・MedStar Georgetown University HospitalのJessica Ailani氏らが実施した「ADVANCE試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年8月19日号に掲載された。  本研究は、atogepantの3つの用量の1日1回経口投与の有効性と安全性の評価を目的とする第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、2018年12月~2020年6月の期間に、米国の128施設で患者登録が行われた(Allerganの助成を受けた)。

認知刺激の強い仕事は高齢期の認知症リスクを低下させる可能性/BMJ

 認知刺激が強い労働に従事している人々は、認知刺激が弱く受動的な労働に就いている人々と比較して、高齢期の認知症のリスクが低く、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害する血漿タンパク質のレベルが低下していることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのMika Kivimaki氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年8月18日号で報告された。  研究グループは、認知刺激が強い労働と、後年の認知症リスクの関連を評価し、この関連に関与するタンパク質生合成経路の特定を目的にマルチコホート研究を行った(NordForskなどの助成を受けた)。

腎細胞がん術後補助療法、ペムブロリズマブがDFS延長/NEJM

 再発リスクが高い腎がん患者の術後補助療法として、ペムブロリズマブはプラセボと比較し無病生存(DFS)期間を有意に延長することが認められた。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のToni K. Choueiri氏らが、第III相国際共同無作為化二重盲検比較試験「KEYNOTE-564試験」の中間解析結果を報告した。腎摘除術を受ける腎細胞がん患者では、再発リスクを低下させる術後補助療法として、エビデンスレベルが高い選択肢はこれまでなかった。NEJM誌2021年8月19日号掲載の報告。  研究グループは、18歳以上の淡明細胞型腎細胞がん患者で、再発リスクが高く(Grade4または肉腫様分化を伴うpT2、pT3以上、局所リンパ節転移、またはM1 NED[原発巣の切除と同時または術後1年以内に転移巣完全切除後、病変が認められない患者])、全身療法未実施、術後12週以内の患者を、ペムブロリズマブ(200mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、それぞれ3週ごと、最大17サイクル(約1年)投与した。

介護施設でファイザーワクチン2回接種、コロナ入院リスク95%減/BMJ

 スペイン・カタルーニャ州保健省のCarmen Cabezas氏らは、前向きコホート研究の結果、介護施設の入居者、スタッフ、および医療従事者の3つのコホートすべてにおいて、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンBNT162b2(Pfizer-BioNTech製)の接種によりSARS-CoV-2感染が80~91%減少し、介護施設の入居者の入院および死亡率が最大5ヵ月にわたって大きく低下したことを明らかにした。著者は、「ワクチンの長期的な効果については、さらなるデータが必要である」とまとめている。BMJ誌2021年8月18日号掲載の報告。  研究グループは、SARS-CoV-2感染に対するBNT162b2ワクチン接種と、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院・死亡との関連を明らかにする目的で、前向きコホート研究を行った。

行動的減量プログラム後のリバウンド、その原因は?/BMJ

 体重減量後の再増加の早さは初期の減量の大きさと関連していたものの、初期の減量の大きさは行動的減量プログラム終了後少なくとも5年間、減量との関連が持続していた。英国・オックスフォード大学のJamie Hartmann-Boyceらが、行動的減量プログラムの特徴とプログラム終了後の体重変化について検証したシステマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。行動的体重管理プログラムは、肥満成人の治療法として推奨されている。ほとんどの行動的減量プログラムにより短期間で減量できるが、プログラム終了後の体重変化には非常にばらつきがあり、その原因はわかっていなかった。BMJ誌2021年8月17日号掲載の報告。

ファイザー製ワクチン、SARS生存者で強力な交差性中和抗体産生/NEJM

 シンガポール・Duke-NUS Medical SchoolのChee-Wah Tan氏らは、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス1:SARS-CoV-1)の既感染者で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するBNT162b2 mRNAワクチン(Pfizer-BioNTech製)の接種を受けた人では、サルベコウイルス亜属(コロナウイルス科βコロナウイルス属に属するウイルスの一群で、SARS-CoV-1やSARS-CoV-2が属する)に対する強力な交差性中和抗体が産生されることを明らかにした。この交差性中和抗体は、抗体価が高く、懸念されているSARS-CoV-2の既知の変異株だけではなく、コウモリやセンザンコウで確認されヒトへ感染する可能性があるサルベコウイルスも中和でき、著者は「今回の知見は、汎サルベコウイルスワクチン戦略の実現性を示唆するものである」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。

2002~16年米国の医療費、人種・民族別で格差/JAMA

 2002~16年の米国医療費は、年齢・健康状態調整後も人種・民族で異なり、総医療費は多人種系や白人が最も高かった。また、医療サービス別医療費についても人種・民族で差があり、白人は外来医療費が、黒人は入院や救急医療費が、全体平均に比べいずれも高かった。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L Dieleman氏らが、データベースを基に行った探査的研究で明らかにした。著者は、「さらなる研究で、COVID-19パンデミックに関連する支出などを含む現在の医療費を、人種・民族別に確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2021年8月17日号掲載の報告。

高リスクCOVID-19外来患者への高力価回復期血漿療法の効果は?/NEJM

 高リスクの新型コロナウイルス(COVID-19)外来患者に対する、発症1週間以内の早期高力価回復期血漿療法について、重症化の予防効果は認められなかったことが、米国・ミシガン大学のFrederick K. Korley氏らの研究グループ「SIREN-C3PO Investigators」が、救急診療部門を受診した511例を対象に行った、多施設共同無作為化単盲検試験の結果、示された。COVID-19回復患者の血漿を用いた早期回復期血漿療法は、高リスクCOVID-19患者の疾患進行を防ぐ可能性があるのではと目されていた。NEJM誌オンライン版2021年8月18日号掲載の報告。

teclistamabが再発/難治性多発性骨髄腫に有望/Lancet

 再発または難治性多発性骨髄腫の患者の治療において、B細胞成熟抗原(BCMA)×CD3二重特異性T細胞誘導抗体teclistamabは、持続的で深い奏効をもたらし、忍容性も良好であることが、米国・Levine Cancer Institute/Atrium HealthのSaad Z. Usmani氏らが実施した「MajesTEC-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月10日号に掲載された。  本研究は、再発/難治性多発性骨髄腫の患者におけるteclistamabの安全性、忍容性および暫定的な有効性の評価を目的とする非盲検単群第I相試験であり、2017年6月~2021年3月の期間に、5ヵ国(米国、スペイン、フランス、オランダ、スウェーデン)の12施設で患者のスクリーニングが行われた(Janssen Research & Developmentの助成による)。

コロナワクチン接種後の脳静脈血栓症、VITT併存で重症化/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン接種後の脳静脈血栓症は、ワクチン起因性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)が併存すると、これを伴わない場合に比べより重症化し、非ヘパリン抗凝固療法や免疫グロブリン療法はVITT関連脳静脈血栓症の転帰を改善する可能性があることが、英国・国立神経内科・脳神経外科病院のRichard J. Perry氏らCVT After Immunisation Against COVID-19(CAIAC)collaboratorsの調査で示された。研究グループは、これらの知見に基づきVITT関連脳静脈血栓症の新たな診断基準を提唱している。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2021年8月6日号で報告された。

第XI因子阻害薬abelacimab、術後VTE予防に有効/NEJM

 術後静脈血栓塞栓症の発生に第XI因子は重要であり、人工膝関節全置換術後の第XI因子阻害モノクローナル抗体abelacimabの単回静脈内投与は、術後静脈血栓塞栓症の予防に有効であることが示された。出血リスクは低かった。ベルギー・ルーヴェン・カトリック大学のPeter Verhamme氏らANT-005 TKA研究グループが、412例を対象とした非盲検並行群間比較試験の結果を報告した。NEJM誌2021年8月12日号掲載の報告。  研究グループは、人工膝関節全置換術を受ける412例を無作為に4群に割り付け、abelacimabレジメン(30mg、75mg、150mgのいずれか)を術後単回静脈内投与、またはエノキサパリン40mgを1日1回皮下投与した。

異種ワクチン接種、AZ/ファイザーとファイザー/AZの有効性と安全性/Lancet

 アデノウイルスベクターワクチン(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製、ChAd)とmRNAワクチン(BNT162b2、Pfizer-BioNTech製、BNT)の異なるワクチンを用いた接種法について、BNT/ChAd接種法はBNT/BNT接種法に対する非劣性基準を満たさなかったが、BNT/ChAdおよびChAd/BNTの2つの異種接種法はいずれもChAd/ChAd接種法と比べて、SARS-CoV-2抗スパイクIgG値が高く、COVID-19疾患および入院に対して有効であることが示された。英国・オックスフォード大学のXinxue Liu氏らが同種vs.異種COVID-19ワクチンプライムブースト接種法の安全性と免疫原性を検討した参加者盲検無作為化非劣性試験「Com-COV試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「ChAd/ChAdと比べてBNT/ChAdの免疫原性は高いことに加えて、今回の試験データは、ChAdおよびBNTを用いた異種プライムブーストワクチン接種を柔軟に行うことを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2021年8月6日号掲載の報告。

AZ製ワクチンによるVITTの臨床的特徴とは?/NEJM

 ワクチン誘発性免疫性血栓性血小板減少症(VITT)による死亡率は高く、とくに血小板数が低く頭蓋内出血を起こした患者で最も高いことが、英国のVITT 220例の検証の結果、明らかとなった。英国・Oxford University Hospitals NHS Foundation TrustのSue Pavord氏らが、報告した。VITTは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の原因ウイルスSARS-CoV-2に対するChAdOx1 nCoV-19ワクチン(アストラゼネカ製)に関連した新たな症候群で、この疾患に対する臨床特性や予後に関するデータは不足していた。結果を踏まえて著者は、「治療法は不明なままであるが、予後マーカーの特定が今後の有効な管理に役立つ可能性がある」とまとめている。NEJM誌オンライン版2021年8月11日号掲載の報告。