ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:240

長期ケア中の高齢者の転倒原因、現場ビデオ画像で解析/Lancet

 長期ケア中の高齢者の転倒原因として最も多いのは不適切な体重移動であり、前方歩行中の転倒が多いものの、既報に比べれば歩行中の転倒は少なかったとの調査結果が、カナダ・サイモンフレーザー大学のStephen N Robinovitch氏らによって報告された。高齢者の転倒は保健医療上の重大な負担であり、長期ケア環境ではとくに重要となるが、高齢者の転倒状況や原因に関するエビデンスはほとんどないという。Lancet誌2013年1月5日号(オンライン版2012年10月17日号)掲載の論考から。

超早産児に対するCPAP対サーファクタント、長期アウトカムも有意差みられず/NEJM

 米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のYvonne E. Vaucher氏らは、超早産児に対する早期の持続的気道陽圧法(CPAP)とサーファクタント投与の比較について、長期の死亡や神経発達障害のアウトカム改善に有意差がみられなかったことを報告した。また、酸素飽和度目標値の違いによるアウトカムについても、低目標値(85~89%)と高目標値(91~95%)間の有意差がみられないこと、および死亡率が低目標値群で増大傾向がみられたことを報告した。同研究グループは既存報告で、上記比較の短期アウトカム(死亡または気管支肺異形成症)について、CPAP対サーファクタントでは有意差がみられなかったことを、また目標値の違いでは低目標値群で網膜症発症と死亡率が増大することを報告していた。NEJM誌2012年12月27日号掲載より。

重症外傷性脳損傷への頭蓋内圧モニタリング、アウトカム改善につながらず/NEJM

 重症外傷性脳損傷に対する頭蓋内圧モニタリングによる治療を行っても、アウトカムは画像・臨床診断に基づく治療を行った場合と同等であることが示された。米国・ワシントン大学のRandall M. Chesnut氏らが、300人超について行った無作為化試験の結果、明らかにした。頭蓋内圧モニタリングは、重症外傷性脳損傷への標準的治療とされ頻繁に用いられているが、アウトカムの改善については厳密な評価はされていなかったという。NEJM誌12月27日号(オンライン版2012年12月12日号)掲載より。

インターフェロン治療SVR達成の慢性C型肝炎患者は全死因死亡が有意に低下/JAMA

 慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染症・進行性肝線維症患者の全死因死亡率について、インターフェロン治療により持続的ウイルス学的著効(SVR)がみられる人では有意な低下がみられたことが、オランダ・エラスムス大学のAdriaan J. van der Meer氏らによる評価の結果、明らかにされた。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。

軍人スタディで判明、米国の心疾患対策で残された課題/JAMA

 2001~2011年間のイラク戦争で死亡した米国軍人の剖検からアテローム性動脈硬化症の有病率を調べた結果(8.5%)から、朝鮮戦争(77%)およびベトナム戦争(45%)当時よりも減少が示唆されたことが、米国・Uniformed Services University of the Health SciencesのBryant J. Webber氏らによる調査の結果、示された。米国では朝鮮・ベトナム戦争時の剖検結果から、虚血性心疾患が発症する20、30年前から冠動脈のアテローム性動脈硬化症が進行している可能性が示唆され、以来、軍人のみならず小児や若者をターゲットとした健康政策が実行されてきたという。その成果がみられるとしながらも著者は、「年齢別、心血管リスク因子別にみると、さらなる改善の目標は残っている」と報告した。JAMA誌2012年12月26日号掲載より。

ヒトとトナカイの鼻腔微小血管は類似していることが明らかに/BMJ

 クリスマスソングに登場する世界で最も有名なトナカイのルドルフ。歌にあるように、トナカイの鼻が明るく赤く発光しているのは、鼻腔微小血管の赤血球が豊富で血管密度が高い(ヒトよりも25%高値)からであることを、オランダ・エラスムス大学のCan Ince氏らが、ハンディカムタイプの生体内用ビデオ顕微鏡を使った観察研究によって明らかにした。同ビデオ顕微鏡の登場でヒトの臓器の微小血管を描出することが可能になったが、これまで鼻腔微小血管の描出は行われたことがないという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月14日号)掲載「クリスマス特集」より。

イヌの嗅覚を活かしたC difficile感染症の病棟スクリーニングの可能性/BMJ

 オランダ・VU University Medical CentreのMarije K Bomers氏らは、イヌの優れた嗅覚を、便検体および入院患者のクロストリジウム・ディフィシル(C difficile)感染症の検出に活用できることを実証するための試験(principle study)を行った。その結果、感度・特異度ともに高く(便検体では100%)、検出が可能であることが示されたという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月13日号)掲載「クリスマス特集」より。

世界中で起きている障害を有する人の高齢化/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の障害生存年(years lived with disability:YLD)について、オーストラリア・School of Population HealthのTheo Vos氏らがGlobal Burden of Diseases Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。その結果、10万人当たりのYLD有病率は20年間でほぼ一定であったが、年齢に伴う着実な上昇が認められたという。背景には人口増加と平均年齢の上昇があった。またYLDの最も頻度の高い原因(メンタル問題、行動障害、筋骨格系障害など)の有病率は減少しておらず、著者は「各国のヘルスシステムは死亡率ではなく障害を有する人の増加について対処する必要があり、その上昇する負荷に対する効果的かつ可能な戦略が、世界中のヘルスシステムにとって優先すべきことだ」と提言した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。

世界の死因は過去20年で大きく変化、心疾患やCOPD、肺がんなどが主因に/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の死因別死亡率の動向について、米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのRafael Lozano氏らがGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2010(GBD2010)の系統的解析を行い報告した。Lancet誌2012年12月15/22/29日合併号掲載の報告。  GBD2010において研究グループは、世界187ヵ国から入手可能な死因に関わるあらゆるデータ(人口動態、言語剖検、死亡率サーベイランス、国勢調査、各種サーベイ、病院統計、事件・事故統計、遺体安置・埋葬記録)を集め、1980~2010年の年間死亡率を235の死因に基づき、年齢・性別に不確定区間(UI)値とともに算出し、世界の死因別死亡率の推移を評価した。

活動性全身型JIAへのカナキヌマブ投与、症状改善などに効果/NEJM

 活動性の全身型若年性特発性関節炎(JIA)へのカナキヌマブ(商品名:イラリス)投与は、症状改善効果と、再び症状が悪化する再燃リスクを減少する効果があることが明らかにされた。イタリア・Istituto Giannina GasliniのNicolino Ruperto氏らが、190人の全身型JIA患者について行った、カナキヌマブに関する2つの第3相臨床試験の結果、報告した。NEJM誌2012年12月20日号掲載より。

多枝冠動脈疾患の糖尿病患者、DES-PCIよりCABGが長期アウトカム良好/NEJM

 糖尿病で多枝冠動脈疾患の認められる患者には、冠動脈バイパス術(CABG)が、積極的薬物治療併用の薬剤溶出性ステント(DES)による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、長期アウトカムが良好であることが明らかになった。一方で脳卒中発生率は、CABG群でDES-PCI群のおよそ2倍に上った。これまでに、糖尿病患者に対するCABGがPCIより良好であるとする試験結果はあったが、DES-PCIと積極的薬物治療の併用を比較したものは今回が初めてという。米国・Mount Sinai School of MedicineのMichael E. Farkouh氏らが、140ヵ所の医療機関を通じて行った無作為化比較試験「FREEDOM試験」の結果、報告した。NEJM誌2012年12月20日号(オンライン版2012年11月4日号)掲載より。

「世界貿易センター健康レジストリ」登録者のがん発生リスクは増大したか?/JAMA

 2001年9月11日の世界貿易センタービルへのテロ攻撃は、周辺環境に発がん性物質を拡散したといわれており、市民の間に、その曝露により、がん罹患の可能性が増大したとの懸念があった。ニューヨーク市保健・精神衛生部のJiehui Li氏らは、「世界貿易センター健康レジストリ」に登録された人におけるがん発生状況を調べた。その結果、救急隊員/復旧作業員について、一般レジストリ者と比べて2007-2008年に前立腺がん、甲状腺がん、骨髄腫の過剰リスクがみられたが、発生数は少なく、この年にすべてのがんが増大したということではなかった。著者は、「曝露の強さの違いによる関連は認められなかった」と述べた上で、「潜伏期間が長期にわたるがんもあるので、長期のフォローアップと特異的がんについては注意が必要である」と結論している。

長期アスピリン常用と加齢黄斑変性リスクとの関連/JAMA

 アスピリンの常用と加齢黄斑変性(AMD)発症との関連について調査した長期試験の結果、服用期間が5年では有意な関連はみられなかったが、10年では、わずかだが統計的に有意な発症遅延リスクの上昇が血管新生型AMDでみられたことを、米国・ウィスコンシン大学医学部眼科部門のBarbara E. K. Klein氏らが報告した。アスピリンは関節炎などの疼痛緩和や心保護効果があるとして広く使用されている。その使用は、眼科医にとっても関心が高いという。JAMA誌2012年12月17日号掲載報告より。

減速バンプ通過時に感じる痛みは、急性虫垂炎の診断に有効か/BMJ

 急性虫垂炎の診断は難しく、さまざまな臨床的特徴(痛点の移動や反跳圧痛など)が評価に用いられている。なかには、痛みについて、「車道に埋め込まれた減速バンプの上を通過する際に感じた痛み」について質問する医師もいるが、この質問に関する科学的根拠は見つかっていない。英国・オックスフォード大学のHelen F Ashdown氏らは、減速バンプを通過する際に感じる痛みが、急性虫垂炎の診断精度向上に本当に役立つのかについて検証した。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載「クリスマス特集」より。

調理済み食品vs.鉄人レシピ、栄養価に優れ健康的なのは?/BMJ

 英国・ニューカッスル大学のSimon Howard氏らは、テレビで人気シェフが考案し提案する家庭料理レシピと、スーパーマーケットで売られている調理済み食品(レディーミール)について、エネルギー量や各栄養素の含有量などを調べ、WHOと英国食品基準庁(FSA)が推奨している栄養ガイドラインと照らし合わせ比較する横断研究を行った。テレビで紹介される家庭料理は、各種スタディの被験者も「料理の参考にしている」と回答し、次々とレシピ本がつくられ売れていることからも、多くの人の食生活に影響を与えていると思われる。しかし、その影響の程度は明らかとはなっていない。また、スーパーマーケットで売られている調理済み食品も、食事の選択肢として多くの人が利用するが、その定義は曖昧であり、包括的な栄養学的調査は行われていなかったという。BMJ誌2012年12月22日号(オンライン版2012年12月17日号)掲載「クリスマス特集」より。

世界の疾病負担、死亡率は低下するも健康寿命は国によって大きな差:GBD2010/Lancet

 1990~2010年の20年間の世界の疾病負担の状況は、死亡率の抑制には実質的な進展がみられたものの、非致死的疾患や傷病の発生はほとんど低下しておらず、健康寿命(healthy life expectancy:HALE)は国によって大きな差があることが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJoshua A Salomon氏らの検討で示された。疾病負担については、1)医学的介入によって疾患による致死率は低下するが発生率は抑制されないため有病率が上昇するとの説[有病状態の拡大(expansion of morbidity)]と、2)死亡率が低下すると予防により慢性疾患の発症年齢が上昇し身体機能障害をともなう罹病期間が短縮するとの説[有病状態の圧縮(compression of morbidity)]があるが、これらの仮説は将来の保健医療計画や医療コストに大きな影響を及ぼすとされる。そのため適切な評価が重要な課題とされ、HALEは有用な指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。

2010年の世界的な平均余命、男性67.5年、女性73.3年:GBD2010/Lancet

 世界的な出生時平均余命の延長は1990年台にいったん停滞したが、1970~2010年の40年間で持続的かつ実質的に延長し、2010年には男性が67.5年、女性は73.3年に達したことが、米国・ワシントン大学のHaidong Wang氏らの調査で明らかとなった。集団における原因別死亡率を抑制し、早期死亡率を適切に評価するには疾病負担の算定を要するが、その初期段階として年齢階層別、男女別の死亡数や死亡率の予測が重要とされる。ミレニアム開発目標4(乳幼児死亡率の削減)の期限(2015年末)が迫る中、乳幼児死亡率の正確な評価への関心が世界的に高まっているという。Lancet誌2012年12月15・22・29日合併号掲載の報告。

心腎症候群を呈した急性非代謝性心不全患者への限外濾過法vs.段階的薬物療法/NEJM

 急性非代謝性心不全で腎機能低下と持続的うっ血(心腎症候群)を呈した患者への限外濾過法(Aquadex System 100を使用)の有効性と安全性について、段階的薬物療法と比較した無作為化試験の結果、限外濾過法よりも段階的薬物療法のほうが腎機能保護効果に優れていることが米国・ヘネピン郡医療センターのBradley A. Bart氏らにより報告された。また体重減少は同程度であったが、有害事象の発現率は限外濾過法のほうが高かったという。急性非代謝性心不全患者で利尿薬静注を受ける患者は多いが、25~33%で心腎症候群が伴い転帰不良と関連する。心腎症候群には利尿薬静注が直接関与する場合もあり、また腎機能低下後の利尿薬投与はさらなる腎損傷を招く可能性があり、限外濾過法は代替療法としてガイドラインでも明記されている(クラスIIa、エビデンスB)。しかしこれまで有効性と安全性についてはほとんど不明であった。NEJM誌2012年12月13日(オンライン版2012年11月6日号)掲載より。

ICDプログラミング変更で不適切作動は約8割低下し、死亡は半減に/NEJM

 植込み型除細動器(ICD)の不適切作動を減らすために、異なる3つの作動プログラミング設定(標準、高心拍、待期的)について検証した国際多施設無作為化試験「MADIT-RIT」の結果が、米国・ロチェスター大学医療センターのArthur J. Moss氏らにより発表された。高心拍および待期的の両作動プログラミングとも、標準作動プログラミングよりも不適切作動は低減し、全死因死亡率も低下したという。ICDは、致死的不整脈リスクを有する患者の死亡率低下への有効性が高いが、一方で不適切作動の頻度が高く(8~40%に及ぶとされる)、その影響は致命的である可能性がある。これまで、不適切作動を低減する最適なICDプログラミングについては不明であったという。NEJM誌2012年12月13日号(オンライン版2012年11月6日号)掲載より。

eGFR低値、高アルブミン尿の年齢別にみた転帰への影響:205万人メタ解析/JAMA

 慢性腎臓病(CKD)の測定マーカーである推定糸球体濾過量(eGFR)とアルブミン尿の、年齢階層別にみた予後との関連について調べた結果、eGFR低値と高アルブミン尿は、年齢を問わず死亡および末期腎不全(ESRD)と独立した関連がみられることが、ノルウェー科学技術大学のStein I. Hallan氏らCKD-PC(CKDの予後に関する多施設共同研究)が約205万人の個人データをメタ解析した結果、報告した。ただしeGFR低値のリスクは高齢であるほど弱まるなど、高齢者では両値との関連について、絶対リスクは高いが相対リスクは低いことが示されたという。CKDは高齢の患者に多くみられるが、eGFR低値と高アルブミン尿のリスクについて、全年齢にわたるのかについては議論の的となっていた。JAMA誌2012年12月12日号掲載より。