医療一般|page:15

ChatGPT-4の眼関連の知識と推論能力は眼科専門医と同等

 人工知能(AI)の大規模言語モデル(LLM)の一つである「ChatGPT-4(以下、GPT-4)」は、眼関連の知識と臨床推論力という点で眼科専門医と同等レベルに達しつつあることを示すデータが報告された。英オックスフォード大学のArun James Thirunavukarasu氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Digital Health」に4月17日掲載された。  LLMは近年、目覚ましく進歩してきており、一部では臨床応用の試みも始まっている。眼科領域でもGPT-4の有用性を示唆する研究結果が既に存在するが、それらの研究では、そのようなGPT-4の知識の豊富さが臨床能力に直結するかという点が検討されておらず、かつ、検証に用いられた課題がLLMの開発段階で既にネット環境に存在しているという“contamination”(汚染)によって、能力を正しく評価できていない可能性が指摘される。そこでThirunavukarasu氏らは、英国眼科専門医フェローシップ(FRCOphth)試験の予想問題を利用した検証を行った。FRCOphthの試験の出題内容は眼科専門医の実践的スキルにとって重要であり、かつそれらの情報がネット環境に公開されていないため、LLMの機械学習に利用されにくい。

ヘルスケアへのAI導入に対して米国人は複雑な感情を抱いている

 スマートホームデバイスから娯楽やソーシャルメディアのアルゴリズムまで、今や人工知能(AI)は生活のさまざまな場面で使われているが、医療の現場での活用について人々はどう感じているのだろうか。米オハイオ州立大学ウェクスナー医療センターが8月21日に報告した、1,006人の米国人を対象にした新たな調査から、ほぼ7割以上の米国人が、ヘルスケア向上のために医療現場でもAIを活用すべきだと考えていることが明らかになった。  この調査により明らかになったことは、以下の通り。

新たな「血小板スコア」で脳卒中や心筋梗塞リスクを予測

 実験段階にある遺伝子検査によって、命に関わることもある血栓症のリスクを予測できる可能性のあることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医科大学院心血管疾患予防センターのJeffrey Berger氏らの研究で示された。この新たな検査でスコアが高かった末梢動脈疾患(PAD)患者は、下肢血行再建術(足の閉塞した動脈を広げて血流を取り戻す治療)後の心筋梗塞や脳卒中、下肢切断のリスクが2倍以上であることが示されたという。この研究結果は、「Nature Communications」に8月20日掲載された。

若年発症大腸がん、主な要因は赤肉か

 近年、50歳以下で大腸がんを発症する若年発症大腸がん患者が増加傾向にあるが、赤肉や加工肉がその主な原因である可能性があるようだ。代謝産物と腸内微生物叢のデータ分析から、食事由来、中でも赤肉や加工肉に関連する代謝産物が若年発症大腸がんリスクの主な要因である可能性が示された。米クリーブランドクリニックのNaseer Sangwan氏らによるこの研究の詳細は、「NPJ Precision Oncology」に7月17日掲載された。  研究グループは過去の研究で、若年発症大腸がん患者と平均的な年齢で発症した大腸がん患者では代謝産物に違いがあることを明らかにしていた。また別の研究では、大腸がんの若年患者と高齢患者では腸内微生物叢に違いがあることが示されている。Sangwan氏は、これらの研究は、若年発症大腸がんの研究を進める上で多くの示唆をもたらしたが、がんリスクに関わる要因が増えることにより、研究結果の解釈やその後の計画も複雑になると指摘する。さらに、腸内微生物が代謝産物を消費して独自の代謝産物を生成するという代謝産物と腸内微生物叢の相互作用も、問題をさらに複雑化する。

再発難治MCLに対する新薬ピルトブルチニブが発売/日本新薬

 2024年8月、日本新薬と日本イーライリリーは、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬ピルトブルチニブ(商品名:ジャイパーカ)の発売を開始した。適応はほかのBTK阻害薬に抵抗性又は不耐容の再発又は難治性のマントル細胞リンパ腫(MCL)。発売に合わせ、9月5日に行われた日本新薬主催のプレスセミナーでは、がん研究会有明病院の丸山 大氏が「マントル細胞リンパ腫に対する既存のBTK阻害剤後のアンメットニーズ」と題した講演を行った。

CABG後のAF予防、カリウム正常上限値の維持は不要/ESC2024

 冠動脈バイパス術(CABG)後の新規発症心房細動(AF)予防としてのカリウム投与について、濃度が正常下限値を下回った場合にのみカリウム投与することが、正常上限値になるまで定期投与することよりも劣らないことが最新の研究で明らかになった。本研究結果はドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBenjamin O'Brien氏らが8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインで発表し、JAMA誌オンライン版2024年8月31日号に同時掲載された。  これまで、心臓手術後の心房細動(AFACS)予防のために血清カリウム濃度を正常値に維持するためのカリウム投与が行われていたが、明確な根拠がない上にリスクや費用を伴うため、疑問視されていた。

喘息・COPD好酸球性増悪へのベンラリズマブ、症状・治療失敗率を改善/ERS2024

 好酸球性増悪は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)増悪の30%、喘息増悪の50%を占めるとされている。治療には経口ステロイド薬(OCS)が用いられることがあるが、治療効果は短く、治療失敗率も高いという課題が存在する。そこで、好酸球を速やかに除去する作用を有するベンラリズマブの好酸球性増悪に対する効果を検討することを目的として、海外第II相無作為化比較試験「ABRA試験」が実施された。その結果、ベンラリズマブはOCSのプレドニゾロンと比較して、28日後における症状と90日後における治療失敗率を改善することが示された。欧州呼吸器学会(ERS International Congress 2024)において、英国・オックスフォード大学のMona Bafadhel氏が報告した。

緑内障による認知機能障害や認知症リスク~メタ解析

 緑内障と認知症に関して、病理学的メカニズムおよび病因的因子が共通していることを裏付ける十分なエビデンスが報告されている。しかし、緑内障、認知症、認知機能障害の関連性は十分に解明されていない。中国・河南中医薬大学のXiaoran Wang氏らは、緑内障が認知症または認知機能障害のリスク上昇に及ぼす影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Aging Clinical and Experimental Research誌2024年8月20日号の報告。

男性のがん罹患状況、2022年データから2050年を予測

 男性は飲酒や喫煙など、がんの修正可能なリスク因子を有する割合が高く、結果としてがんの発症率が高く、生存率が低くなる。年齢層や国による差異を含め、男性におけるがん負担に関する包括的なエビデンスは乏しい。オーストラリア・クイーンズランド大学のHabtamu Mellie Bizuayehu氏らは、がんの罹患や死亡に関する2022年の世界的な統計データ(GLOBOCANデータ)を用いて2050年の予測値を算定、Cancer誌オンライン版2024年8月12日号で報告した。

末期腎不全の高齢患者に透析は本当に必要か

 末期腎不全を患っているが腎移植の対象とはならない高齢患者に透析を行っても、得られるベネフィットと健康上のリスクのバランスは悪く、透析を行わない選択肢を検討する方が望ましいケースもあるとする研究結果が報告された。この研究によると、腎不全の診断後1カ月以内に透析を開始した高齢患者は、透析開始まで1カ月以上待った患者や透析を受けなかった患者に比べて、生存日数は平均で9日長かったものの、入院日数も13.6日多かったことが明らかになったという。米スタンフォード大学医学部腎臓学分野のMaria Montez-Rath氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に8月20日掲載された。

EGFR陽性NSCLC、amivantamab+lazertinibはOS・PFS2も改善か/WCLC2024

 EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療について、EGFRおよびMETを標的とする二重特異性抗体amivantamabと第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬lazertinibの併用療法は、国際共同第III相無作為化比較試験「MARIPOSA試験」において、オシメルチニブ単剤と比較して無増悪生存期間(PFS)を改善したことが報告されている。米国・Henry Ford Cancer InstituteのShirish Gadgeel氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)でMARIPOSA試験の最新の解析結果を発表した。本発表では、amivantamabとlazertinibの併用療法はPFS2(後治療開始後のPFS)、全生存期間(OS)を改善する傾向がみられた。また、効果は長期にわたって持続することが示唆された。

大腸がん術後合併症、電動自動吻合器の活用でリスク削減の可能性

 吻合部出血や縫合不全など、大腸がん術後の吻合に関する合併症は依然として深刻な問題となっている。大阪大学の三吉 範克氏・水元 理絵氏らは、単施設の後ろ向きコホート研究および同研究を含む2,700例以上を対象としたメタ解析を行い、吻合部合併症リスク削減のための電動自動吻合器(以下、電動吻合器)の有用性を検討した。Oncology Letters誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告より。  2018年1月~2022年12月までに大阪大学医学部附属病院で円形吻合器を用いた大腸がんの根治切除および吻合術を受けた患者を対象に、後ろ向きコホート研究が実施された。緊急手術、炎症性腸疾患を有する症例、およびほかのがんと同時手術の症例は除外され、主要評価項目は吻合部の合併症率であった。経験豊富な消化器外科医が電動吻合器(ECHELON CIRCULAR Powered Stapler)または手動吻合器(ETHICON Circular Stapler CDHまたはEEA Circular Stapler)を使用して手術を行い、術者によるバイアスは確認されなかった。すべてのデータは術後 30 日までの医療記録から収集された。

SB623、外傷性脳損傷による慢性期運動機能障害の第II相試験で良好な結果/サンバイオ

 サンバイオは2024年9月5日、2016~19年に実施した外傷性脳損傷に起因する慢性期運動機能障害を有する患者を対象に、ヒト(同種)骨髄由来加工間葉系幹細胞SB623の有効性および安全性を検討する第II相多施設共同無作為化二重盲検比較試験(STEMTRA試験)の48週(最終)までの結果がNeurology誌に掲載されたと発表した。  STEMTRA試験では、適格患者63例がSB623低用量群(2.5×106個群)、中用量群(5.0×10個群)、高用量群(10.0×106個群)および偽手術群に1:1:1:1で無作為化され、46例にSB623が投与され15例が対照群として偽手術を受けた。

腫瘍循環器におけるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用/腫瘍循環器学会

 がん関連の循環器合併症に臨床応用が望まれるダルテパリン、デクスラゾキサンの適応外使用について、また、アントラキノン心筋症に対する新たな予防薬について第7回日本腫瘍循環器学会学術集会で発表された。  同学会の保健委員会委員長であるJCHO星ヶ丘医療センターの保田知生氏は、ダルテパリン、デクスラゾキサンの申請活動状況を報告した。

降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。

境界性パーソナリティ障害を合併した双極症患者における認知機能低下

 双極症は、重度の精神疾患であり、境界性パーソナリティ障害(BPD)を合併することが多く、これにより症状がより複雑化する。中国・河北医科大学のChao-Min Wang氏らは、双極症患者のBPD合併の有無による認知機能障害への影響を調査した。World Journal of Psychiatry誌2024年8月19日号の報告。  対象は、BPD合併双極症患者(BPD+BD群)80例およびBPDを合併していない双極症患者(BD群)80例、健康対照群80例。各群の認知機能の評価には、神経心理検査アーバンズ(RBANS)中国語版、ストループ検査(SCWT)、ウェクスラー式知能検査改訂版(WAIS-RC)を用いた。

切除可能NSCLCへのニボルマブ、術前術後vs.術前(CheckMate 77T vs.816)/WCLC2024

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の薬物療法について、術前および術後にニボルマブを用いた治療を受けた患者は、術前のみニボルマブを用いた治療を受けた患者と比較して、無イベント生存期間(EFS)が良好であることが示唆された。術前および術後にニボルマブを用いたCheckMate 77T試験、術前のみニボルマブを用いたCheckMate 816試験の個別被験者データ(IPD:Individual Patient-level Data)の解析により示された。米国・ジョンズ・ホプキンス大学Bloomberg-Kimmel Institute for Cancer ImmunotherapyのPatrick M. Forde氏が、2024年9月7~10日に米国・サンディエゴで開催された世界肺がん学会(WCLC2024)で本研究結果を発表した。

大手術の周術期管理、ACE阻害薬やARBは継続していい?/ESC2024

 周術期管理における薬剤の継続・中止戦略は不明なことが多く、レニン-アンジオテンシン系阻害薬(RASI:ACE阻害薬またはARB)もその1つである。RASI継続が術中の血圧低下、術後の心血管イベントや急性腎障害につながる可能性もあるが、Stop-or-Not Trialのメンバーの1人である米国・カルフォルニア大学サンフランシスコ校のMatthieu Legrand氏は、心臓以外の大手術を受けた患者において、術前のRASI継続が中止と比較して術後合併症の発生率の高さに関連しないことを示唆した。この報告は8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで報告され、同時にJAMA誌オンライン版2024年8月30日号に掲載された。

生殖補助医療で生まれた子供のがんリスクは?

 体外受精をはじめとする生殖補助医療によって生まれる子供の数は年々増え続け、日本では2021年に約7万人、出生児全体の約11.6人に1人となっている。一方で、小児がんは小児における主要な死因の1つであり、生殖補助医療に使用される治療法はエピジェネティックな障害や関連する先天奇形の可能性があるため、小児がんリスク因子の可能性が指摘されている。フランス医薬品・保健製品安全庁のPaula Rios氏らは生殖補助医療後に出生した小児と自然妊娠で出生した小児を比較し、全がんおよびがん種別にリスクを評価した。JAMA Network Open誌2024年5月2日号掲載の報告。

医師の燃え尽き症候群と関連する覚醒度~日本全国調査

 日本の医師の約40%は年間960時間以上の残業を報告しており、10%は1,860時間を超えている。2024年、医師の健康を守るため、年間の残業時間に上限が設定された。順天堂大学の和田 裕雄氏らは、長時間労働医師の働き方改革に関する全国横断調査において、自己報告による睡眠時間と、メンタルヘルスおよび客観的覚醒度との関連を調査した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2024年8月12日号の報告。  調査に協力した医師は、毎日の睡眠時間、燃え尽き症候群(Abbreviated Maslach Burnout Inventory:マスラック・バーンアウト尺度簡易版)、うつ病(CES-D:うつ病自己評価尺度)、交通事故に関して自己報告を行った。覚醒度は、精神運動覚醒度検査短縮版を用いて評価した。