医療一般|page:17

アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール長期延長試験

 アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾールの有用性が、12週間のランダム化比較試験において実証された。しかし、長期的な有用性については、これまで十分に検証されていなかった。米国・大塚製薬のSaloni Behl氏らは、ブレクスピプラゾールの長期的な安全性および忍容性を評価するため、長期延長試験の結果を報告した。Journal of Alzheimer's Disease誌2024年11月号の報告。

高リスク早期TN乳がんの術前・術後ペムブロリズマブ、バイオマーカー解析結果(KEYNOTE-522)/SABCS2024

 高リスクの早期トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対し、術前および術後補助療法としてペムブロリズマブの追加を検討したKEYNOTE-522試験では、ペムブロリズマブ追加により病理学的完全奏効率(pCR)、無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)が有意に改善したことが報告されている。今回、本試験の探索的バイオマーカー解析で、T細胞浸潤18遺伝子発現プロファイル(TcellinfGEP)、腫瘍遺伝子変異量(TMB)、TcellinfGEP以外のコンセンサスシグネチャーなどのバイオマーカーとpCRおよびEFSとの関連を調べた結果について、米国・Baylor-Sammons Cancer CenterのJoyce O’Shaughnessy氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で報告した。

乳製品と死亡リスク減少、牛乳vs.ヨーグルト/慶應大

 日本人における乳製品摂取と死亡リスクとの関連を12年間追跡調査した結果、男女ともにヨーグルトの摂取量が多いほど全死因死亡リスクが低く、女性ではさらに乳製品全般および牛乳摂取と全死因死亡リスク、牛乳摂取とがん死亡リスク、ヨーグルト摂取と心血管疾患死亡リスクの低下が関連していたことを、慶應義塾大学の宮川 尚子氏らが明らかにした。Journal of Atherosclerosis and Thrombosis誌オンライン版2024年11月13日号掲載の報告。  これまでの研究において、日本人集団における乳製品摂取と死亡リスクとの関連は、研究間で、とくに男女間で一貫していない。そこで研究グループは、日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)の追跡データを用いて、乳製品摂取と全死因死亡やがん死亡、心血管疾患死亡との関連を調べた。

ビタミンB3はCOPD患者の肺の炎症を軽減する?

 ビタミンB3を毎日摂取することで、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺の炎症が軽減する可能性のあることが、小規模な臨床試験で明らかになった。コペンハーゲン大学(デンマーク)のMorten Scheibye-Knudsen氏らによるこの研究結果は、「Nature Aging」に11月15日掲載された。Scheibye-Knudsen氏は、「炎症は、COPD患者の肺機能を低下させる可能性があるため、この結果が意味するところは大きい」と述べている。  COPD患者は、肺炎やインフルエンザ、その他の重篤な呼吸器感染症に罹患しやすく、罹患した場合には致命的となることもある。Scheibye-Knudsen氏らは、安定期COPD患者40人(平均年齢71.9歳)と、年齢や性別、BMIが類似した健康な対照20人(平均年齢70.9歳)を対象にランダム化二重盲検プラセボ対照試験を実施し、COPDに対するニコチンアミドリボシド(NR)の効果を評価した。NRはビタミンB3の一種である。COPD患者と対照は、それぞれの群内で、6週間にわたりNR(2g)またはプラセボを摂取する群に1対1の割合でランダムに割り付けられた。対象者は12週間後に追跡調査を受けた。主要評価項目は、炎症マーカーであるインターロイキン8(IL8)のベースラインから6週間目までの変化量とした。

シスプラチン不耐の頭頸部がん患者に最善の治療選択肢は?

 シスプラチンは頭頸部がん患者にとって頼りになる化学療法であるが、ほぼ3分の1の患者はその副作用に耐えられず、治療を中止してしまう。こうした患者に対する最善のセカンドライン治療薬に関して、新たな臨床試験で驚くべき結果が示された。それは、頭頸部がんの治療において、モノクローナル抗体のセツキシマブ(商品名アービタックス)が、より新しい薬である免疫チェックポイント阻害薬のデュルバルマブ(商品名イミフィンジ)よりも有効性が高いというものだ。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)クリニカル・トランスレーショナルリサーチ分野のLoren Mell氏らが実施したこの臨床試験の結果は、「The Lancet Oncology」に11月14日掲載された。

急性呼吸器感染症が2025年4月から5類感染症に/厚労省

 厚生労働省は、2025(令和7)年4月7日から感染症法施行規則改正により急性呼吸器感染症(Acute Respiratory Infection:ARI)を感染症法上の5類感染症に位置付け、定点サーベイランスの対象とすることを発表した。  ARIは、急性の上気道炎(鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎)または下気道炎(気管支炎、細気管支炎、肺炎)を指す病原体による症候群の総称で、インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれる。

向精神薬誘発性尿閉リスクの高い薬剤は〜国内医薬品副作用データベース

 向精神薬は、抗ムスカリン作動性およびその他のメカニズムにより尿閉を引き起こすことが報告されている。しかし、尿閉は致死的な問題ではないため、あまり気にされていなかった。東邦大学の植草 秀介氏らは、国内医薬品副作用(JADER)データベースを用いて、向精神薬に関連する尿閉の発生率を調査した。Drugs-Real World Outcomes誌2024年12月号の報告。  JADERデータベースを用いて、74種類の向精神薬における尿閉のレポートオッズ比を算出した。多変量ロジスティック回帰分析を用いて、尿閉に対する性別、基礎疾患、年齢の影響を調整した。変数選択には、性別、年齢、前立腺肥大症、うつ病、各薬剤の段階的選択を含めた。

ベースアップ評価料のさらなる算定を政府に要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「令和6年度補正予算案におけるベースアップ評価料のさらなる算定と各地方公共団体への積極的な働きかけについて」をテーマに松本氏が医師会から政府などへの要望提出について説明を行った。  「ベースアップ評価料」とは、2024年6月の診療報酬改定で新設された医療関係職種(医師・歯科医師、事務職員除く)の賃上げを目的にした点数で、各地域の厚生局への届け出により算定が可能になる。

手術可能な高齢乳がん患者の予後、即時手術vs.局所再発まで延期/SABCS2024

 70歳以上の手術可能な乳がん患者における、即時手術または局所再発まで手術を延期した場合の長期的リスクを調査したメタ解析によって、即時手術は5年以内の局所再発率を大幅に低下させ、長期的な遠隔再発率と乳がん死亡率も低下させたことを、英国・オックスフォード大学のRobert K. Hills氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。  これまでの研究により、年齢が上がるほど、とくに80歳以上になると手術の実施率が下がることが報告されている。そのため、手術可能な早期乳がんであっても、高齢患者に対しては内分泌療法のみを実施して手術は局所再発時まで行わないことがあるが、手術を延期することの長期的リスクは不明である。そこで研究グループは、即時手術と手術延期の転帰を比較するために、1980年代に開始された3つの無作為化試験を用いて個々の患者データのメタ解析を実施した。対象は、70歳以上の手術可能な乳がんの女性1,082例(全例がタモキシフェンを少なくとも5年間投与)であった。これらの試験では、放射線療法や化学療法は予定されていなかった。

国内高齢者の4人に1人、75歳以上では3人に1人がCKD

 日本人高齢者の4人に1人は慢性腎臓病(CKD)であり、75歳以上では3人に1人に上ることが明らかになった。広島大学医系科学研究科疫学・疾病制御学分野の福間真悟氏、東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科学の小林亜理沙氏らが、全国約60万人の健診データを用いて推計した結果であり、詳細は「Clinical and Experimental Nephrology」に10月5日掲載された。  国内のCKD患者数は、2009年に行われた調査を基に「成人の約13%、約1330万人が該当する」とされている。しかしこの調査から15年たち、平均寿命の延伸、CKDリスクに関連のある糖尿病などの生活習慣病の有病率の変化により、CKD患者数も変化していると考えられる。特に腎機能は加齢とともに低下することから、高齢者の最新のCKD有病率を把握することが重要と考えられる。これらを背景として福間氏らは、全国規模の医療費請求データおよび健診データの商用データベース(DeSCヘルスケア株式会社)を用いた新たな解析を行った。

切除不能肝細胞がん1次治療としてのニボルマブ+イピリムマブvs.レンバチニブまたはソラフェニブ、アジア人解析結果(CheckMate 9DW)/ESMO Asia2024

 切除不能肝細胞がん(HCC)に対する1次治療として、抗PD-1抗体ニボルマブと抗CTLA-4抗体イピリムマブの併用療法は、レンバチニブまたはソラフェニブ単剤療法と比較して全生存期間(OS)を有意に改善したことが、国際共同無作為化非盲検第III相CheckMate-9DW試験の結果示されている。今回、同試験のアジア人サブグループ解析結果を、香港・Queen Mary HospitalのThomas Yau氏が欧州臨床腫瘍学会アジア大会(ESMO Asia2024)で報告した。  全体集団において、追跡期間中央値35.2ヵ月におけるOS中央値は、ニボルマブ+イピリムマブ群23.7ヵ月vs.対照群20.6ヵ月で、ニボルマブ+イピリムマブ群における統計学的に有意な改善が認められた(ハザード比[HR]:0.79、95%信頼区間[CI]:0.65~0.96、p=0.018)。

高リスクHR+/HER2-乳がんの1次治療、パルボシクリブ+内分泌療法vs.化学療法単独(PADMA)/SABCS2024

 高リスクHR+/HER2-転移乳がんの1次治療として、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用が国際的ガイドラインで推奨されているが、化学療法単独との比較を前向きに実施した試験は報告されていない。今回、ドイツ・German Breast Groupが実施したPADMA試験で、パルボシクリブ+内分泌療法の併用が化学療法単独に比べて、治療成功期間(TTF)と無増悪生存期間(PFS)の統計学的有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを、Sibylle Loibl氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。

片頭痛治療をためらう理由とは〜OVERCOME研究

 片頭痛の治療法は、さまざまであるにもかかわらず、片頭痛患者の多くは、医療に消極的であり、診断および効果的な治療機会を逃し、疾病負担を軽減する機会を喪失している可能性がある。患者が片頭痛治療を躊躇する理由を明らかにすることは、医療専門家や支援者の障壁に対処し、アウトカム改善につながると考えられる。米国・バーモント大学のRobert E. Shapiro氏らは、片頭痛治療を躊躇することと関連する因子を特定するため、米国大規模サンプルを対象に、調査を行った。Neurology and Therapy誌オンライン版2024年11月2日号の報告。

HEPAフィルターによる空気清浄、急性呼吸器感染症の予防効果は?

 高齢者居住施設において、HEPA-14フィルターを使った高性能空気清浄が急性呼吸器感染症(ARI)の発生率に及ぼす影響について、オーストラリア・ニューカッスル大学のBismi Thottiyil Sultanmuhammed Abdul Khadar氏らの研究チームがランダム化臨床試験を実施した。その結果、HEPA-14フィルターを用いた場合とそうでなかった場合で、ARI発生率に有意差は認められなかった。JAMA Network Open誌2024年11月11日号に掲載。

心房細動を有する心不全発症患者で死亡や入院のリスクが増加

 新たに心不全を発症し、不整脈の一種である心房細動も有する患者の10人に4人は予後不良となる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。米インターマウンテン・ヘルスの心臓血管疫学者であるHeidi May氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会年次学術集会(AHA 2024、11月16〜18日、米シカゴ)で発表されるとともに、要旨が「Circulation」に11月11日掲載された。May氏は、「心房細動は、心不全をさらに厄介で治療が複雑な疾患にする可能性がある」と話している。  心房細動と心不全は、ともに有害事象のリスク増加と関連しているが、両方の診断を受けている患者は少なくない。今回の研究では、心不全の新規診断を受けた患者における心房細動の影響を、駆出率が40%未満に低下した心不全(HFrEF)と駆出率が40%以上に保持されている心不全(HFpEF)に分けて検討し、両群間でリスクに差があるかどうかが調査された。対象は、2000年から2019年の間に心不全を発症し、診断から30日以内に駆出率を測定され、1年間追跡されていた2万1,925人であった。心不全の内訳は、HFrEF患者7,931人(36.2%)、HFpEF患者1万3,994人(63.8%)であった。対象者の40.5%(8,879人)は、心房細動を併発しており、その罹患率はHFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高かった(65.2%対34.8%)。心房細動併発患者の中では、HFpEF患者の方がHFrEF患者よりも高齢で(76歳対72歳)、女性が占める割合が高かった(52.7%対30.8%)。

ダイナペニック肥満は心血管疾患のリスク因子―久山町24年間の縦断解析

 肥満でありながら筋力が低下した状態を指す「ダイナペニック肥満」が、心血管疾患(CVD)発症の独立したリスク因子であることが、久山町研究から明らかになった。九州大学大学院医学研究院衛生・公衆衛生学分野の瀬戸山優氏、本田貴紀氏、二宮利治氏らの研究によるもので、「Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle」に論文が10月8日掲載された。  筋肉量の多寡にかかわらず筋力が低下した状態を「ダイナペニア」といい、筋肉量と筋力がともに低下した状態である「サルコペニア」と並び、死亡リスク上昇を含む予後不良のハイリスク状態とされている。さらに、その状態に肥満が加わったサルコペニア肥満やダイナペニック肥満では、CVDのリスクも高まる可能性が示されている。しかしダイナペニック肥満に関してはCVDとの関連の知見がまだ少なく、海外からの報告がわずかにあるのみであり、かつ結果に一貫性がない。これを背景として本研究グループは、1961年に国内疫学研究の嚆矢として福岡県糟屋郡久山町でスタートし、現在も住民の約7割が参加している「久山町研究」のデータを用いた検討を行った。

高リスクHR+/HER2-早期乳がんの術前療法、HER3-DXd単独vs.内分泌療法併用(SOLTI VALENTINE)/SABCS2024

 高リスクのHR+/HER2-早期乳がん患者の術前療法として、HER3-DXd単独、HER3-DXdとレトロゾール併用、化学療法を比較した第II相SOLTI VALENTINE試験の結果、HER3-DXdによる治療はレトロゾールの有無にかかわらず化学療法と同程度の病理学的完全奏効(pCR)を示し、Grade3以上の有害事象の発現は少なかったことを、スペイン・Vall d’Hebron University HospitalのMafalda Oliveira氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2024、12月10~13日)で発表した。  高リスクのHR+/HER2-早期乳がんでは、化学療法と内分泌療法の両方が有効であるにもかかわらず、再発リスクが長期にわたって持続するため、転帰を改善するための新たな戦略が必要とされている。HER3-DXdは、HER3を標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、複数の乳がんサブタイプに活性を示す可能性がある。そこで研究グループは、術前療法としてのHER3-DXd(±レトロゾール)の有効性と安全性を評価することを目的として研究を実施した。

EGFRエクソン20挿入変異陽性肺がんのアンメットニーズと新たな治療/J&J

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(法人名:ヤンセンファーマ)は、「EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」の適応で2024年9月に本邦での製造販売承認を取得したアミバンタマブ(商品名:ライブリバント)を、同年11月20日に発売した。これを受け、11月29日にライブリバント発売記者発表会が開催され、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)が講演を行った。

うつ病に対する対人関係療法と抗うつ薬治療の比較〜IPDメタ解析

 成人うつ病に対する第1選択介入は、抗うつ薬治療と対人関係療法であるが、長期的および抑うつ症状以外に対するアウトカムにおける相対的な有効性は、不明である。個別被験者データ(IPD)を用いたメタ解析は、従来のメタ解析よりも、より正確な効果推定値を算出可能である。米国・アリゾナ大学のZachary D. Cohen氏らは、対人関係療法と抗うつ薬治療における治療後およびフォローアップ期間中のさまざまなアウトカムを比較するため、IPDメタ解析を実施した。Psychological Medicine誌オンライン版2024年11月4日号の報告。

心肺フィットネスの向上は認知症リスクの軽減につながる

 認知症リスクが高い遺伝子を持つ人は、定期的な運動により心肺フィットネス(cardiorespiratory fitness;CRF、心肺持久力とも呼ばれる)を向上させることで、認知症リスクを軽減できる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。カロリンスカ研究所(スウェーデン)老化研究センターのWeili Xu氏らによるこの研究の詳細は、「British Journal of Sports Medicine」に11月19日掲載された。  CRFとは、運動中の筋肉に酸素を供給する体の循環器系と呼吸器系の能力のことを指す。この能力は、20代から筋肉量の減少に伴い低下し始め、その後、加速度的に低下する。70代になると、CRFは10年当たり20%以上低下する。低CRFは、あらゆる原因による死亡や、脳卒中や心筋梗塞などの心臓関連イベントの強力な予測因子である。