ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:312

母親の身長が高いほど、生まれる子どもの死亡率が低下

 母親の身長が高いほうが、生まれてくる子どもの死亡率は下がる傾向があるようだ。子どもが標準体重未満になるリスク、また発育不全、るいそう、貧血のそれぞれの発生リスクもまた、母親の身長が高いほど低下するという。これは米国Harvard大学のS. V. Subramanian氏らが、インドの5万人超の子どもについて行った調査で明らかにしたもので、JAMA誌2009年4月22/29日号で発表した。

米国高齢者の外来から入院への継続的ケア、過去10年で状況は悪化

米国で、高齢入院患者に対する、外来時からの継続的ケアの状況を調べたところ、過去10年間で悪化していることがわかった。入院前1年間に外来で診察をした医師が、入院時にも診察をしていた割合は、1996年の約5割から、2006年には約4割に減少していた。これは、米国Texas大学のGulshan Sharma氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2009年4月22/29日号に発表した。

ICUでの投薬ミスは日常的に起きている、報告・チェック体制がミスを防ぐ最大の武器

非経口の投薬ミスは、ICUでは日常的に起きており、深刻な医療安全の問題であることが、ESICM(European Society of Intensive Care Medicine)の質改善研究グループによって行われた、27ヵ国113施設のICUを対象とした多国籍前向き研究の結果、明らかになった。BMJ誌2009年4月18日号(オンライン版2009年3月12日号)掲載より。

50歳を過ぎて禁煙できない人は、せめて休みの日に運動を

中高年で禁煙ができない人も、休みの日に少しでも体を動かせば、禁煙したのと同じくらい長生き効果があることが、スウェーデン中部の都市ウプサラ県での住民コホート追跡調査から報告された。ウプサラ大学(スウェーデン)整形外科/研究センターのLiisa Byberg氏らが、1970~1973年の間に満50歳だった同県男性2,205人を35年にわたり追跡調査した結果で、2009年4月18日号(オンライン版2009年3月5日号)で掲載された。

ドベシル酸カルシウムに、糖尿病による黄斑浮腫の抑制効果はない:CALDIRET試験

ドベシル酸カルシウムは、糖尿病患者において臨床的に有意な黄斑浮腫(clinically significant macular oedema; CSME)の発症リスクを低減させないことが、ドイツLudwig-Maximilians大学眼科のChristos Haritoglou氏らが実施した多施設共同試験(CALDIRET試験)で明らかとなった。糖尿病性網膜症は労働年齢人口の最も重要な失明原因であり、レーザー治療などの有効な治療法があるにもかかわらず1型糖尿病患者の約90%が網膜症や黄斑浮腫で失明している。静脈治療薬であるドベシル酸カルシウムは慢性静脈不全や痔核などの血管疾患に有効で、現在60ヵ国以上で処方されているという。Lancet誌2009年4月18日号掲載の報告。

HIV-1感染者に対する抗レトロウイルス薬療法はいつ開始すべきか?

AIDS非発症HIV-1感染者に対する抗レトロウイルス薬療法は、CD4細胞数が350/μLまで低下する前に開始すべきことが、When To Start Consortiumによる共同解析で明らかとなった。HIV-1感染者にどのタイミングで併用抗レトロウイルス薬療法を開始すべきかという重要課題を解決するには、CD4細胞数の閾値の下限を決定する必要があるが、これを目的とした無作為化対照比較試験はいまだなされていないという。同研究グループのJonathan A C Sterne氏(イギリスBristol大学社会医学科)らが、Lancet誌2009年4月18日号(オンライン版2009年4月9日号)で報告した。

ARB バルサルタン、心房細動の再発予防効果得られず

 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与によっても心房細動の再発予防効果が得られなかったことが報告された。心房細動に関して今のところ、コントロール可能な理想的な治療はないとされる一方で、実験的研究でARBが心房リモデリングに影響を与えることが、また臨床試験からはARBの心房細動予防の可能性が示唆されていた。報告は、バルサルタン(商品名:ディオバン)に関する大規模多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験GISSI-AFからで、NEJM誌2009年4月16日号で掲載された。

抗てんかん薬の妊婦服用による出産児への影響には差がある

抗てんかん薬の妊婦服用に関して、米英での多施設共同前向き観察研究NEADの解析から、薬剤によって出産児のリスク増大に差異があることが明らかになった。抗てんかん薬は発達障害や奇形リスクを増大するとして、米国神経学会のガイドラインなどで一律に、妊婦の服用を禁じている。しかし、そのエビデンス研究は十分ではない。本報告は、NEJM誌2009年4月16日号に掲載されている。

高齢の2型糖尿病患者、重度低血糖で認知症リスクが増大

高齢の2型糖尿病患者で、入院や救急外来を必要とするほどの低血糖になると、認知症の発症リスクが有意に増大することが明らかにされた。1型糖尿病の小児で、急性低血糖が認知障害に関与する可能性があることは知られているが、高齢の2型糖尿病患者の同関連性についての研究は、これまで明らかにされていない。報告は、米国Kaiser PermanenteのRachel A. Whitmer氏らが、約1万7,000人の患者を追跡調査したもので、JAMA誌2009年4月15日号で発表した。

2型糖尿病患者への心筋シンチグラムに、心筋梗塞や心臓死の予防効果なし

冠動脈性心疾患の症状のない2型糖尿病患者に対し、アデノシン負荷心筋シンチグラムによりスクリーニングを行っても、心筋梗塞や心臓死の予防効果は認められないことが明らかにされた。1,000人超の2型糖尿病患者を対象に行われた、DIAD試験(無症状の糖尿患者における虚血の検出試験)からの結果で、JAMA誌2009年4月15日号で発表されている。

ニコチン補充療法、禁煙したくない・できそうもない人にも効果

ニコチン補充療法は、禁煙したくない・できそうもないと考えている人にも、有効かつ安全に禁煙できる方法だという。英国バーミンガム大学Health and Population Sciences校のDavid Moore氏らが行ったシステマティックレビューのメタ解析の結果で、BMJ誌2009年4月11日号(オンライン版2009年4月2日号)で報告された。

熱いお茶を飲む人ほど食道がんリスクが高い

熱いお茶を飲む人ほど食道がんのリスクが高いことが、イラン北部のGolestan州での大規模な住民ベースの症例対照研究の結果、報告された。同地域は世界的にも食道有棘細胞がんの発病率が高い地域の1つだが、欧米とは異なるユニークな疫学的特徴があること――主要なリスク因子とされる喫煙率や飲酒率が低く、また発病率に男女差があまりない――で知られていた。テヘラン大学(イラン)シャリーアティー病院消化器疾患リサーチセンターのFarhad Islami氏らは、同地域が、食道がん発病率の低い地域と比べるとお茶がとても飲まれていて、しかも熱いお茶が好まれているという特徴に着目し、飲茶パターン・温度と、食道がん発病との関連について調査を行った。BMJ誌2009年4月11日号(オンライン版2009年3月26日号)より。

火災関連死の現況が明らかに、インドの場合

インドでは若年女性で火災関連死の頻度が高く、これは台所事故、焼身自殺、一種の家庭内暴力などといった一般的原因と関連していることが、Prachi Sanghavi氏らが実施した後ろ向き解析によって明らかとなった。インドの病院ベースの調査では、公衆衛生上の問題としての火災関連死は放置されたままであることが指摘されている。全国調査のデータはなく、警察による発表が唯一の記録だという。Lancet誌2009年4月11日号(オンライン版2009年3月2日号)掲載の報告。

皮膚損傷後の瘢痕治療にTGFβ3製剤が有効

transforming growth factor β3(TGFβ3)製剤であるavoterminは、皮膚損傷後の瘢痕を加速度的、かつ恒久的に改善する可能性があることが、イギリスManchester大学生命科学部門のMark W J Ferguson氏らが実施した、3つの臨床試験の結果から示唆された。TGFβ3はおもにケラチノサイトと線維芽細胞から合成された皮膚の形態形成因子であり、20年の研究実績があるという。既存の皮膚瘢痕の治療法は経験的なものばかりで、無作為化対照比較試験よるエビデンスを有するものはない。Lancet誌2009年4月11日号掲載の報告。

男性の肥満は褐色脂肪組織の活性低下が関係

褐色脂肪組織が体重の調節にとって重要であることが動物実験などによって明らかになったが、褐色脂肪組織の成人にとっての生理的意義は? Nutrition and Toxicology Research Institute Maastricht(オランダ)のWouter D. van Marken Lichtenbelt氏らのグループは、つい最近まで小型哺乳類と乳児だけに関係する話とされていた褐色脂肪組織について、寒冷環境下での肥満および非肥満男性の違い(褐色脂肪組織の有無、分布、活性)について系統的調査を行った。NEJM誌2009年4月9日号より。

PPIは喘息コントロールを改善せず、胃食道逆流は喘息コントロール不良の原因ではない

喘息患者によくみられる胃食道逆流について、プロトンポンプ阻害薬(PPI)治療が、喘息症状のコントロールを改善するのかどうか、また胃食道逆流が喘息のコントロール不良の原因なのかどうかを検討した米国肺協会(ALA)喘息臨床研究センターの研究班は、いずれも否とする報告を寄せた。NEJM誌2009年4月9日号より。

2型糖尿病の10年リスク予測スコアの決定版!? QDScore

広く認められ日常診療でも使用可能な2型糖尿病のリスク予測スコアのアルゴリズムは、いまだ開発されていない。イギリス、ノッティンガムの一般開業医Julia Hippisley-Coxらは、これまで開発されたアルゴリズムの反省点を踏まえ、人種および社会経済的に多様な集団を対象に、10年間の2型糖尿病診断結果を基にした新たな糖尿病10年リスク予測スコアのアルゴリズム(QDScore)を開発した。BMJ誌2009年4月4日号(オンライン版2009年3月17日号)で発表している。

患者カルテ情報の研究利用、過度な個人情報保護は結果に重大な影響招く

2003年4月にアメリカで発効されたHIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act;医療保険の携行と責任に関する法律)などによる患者情報の秘匿性への重視から、患者のカルテ情報の研究利用について、かつては必要とされていなかったインフォームドコンセントが義務付けられることが多くなった。しかし、“義務的”にインフォームドコンセントを行った上で集めたデータに基づく研究結果には“バイアス”がかかって有効性に重大な影響を与えているのではないか――。そのような懸念は、すでに1977年頃には言われていたが、最近富みに編集レビュー委員らが強調するようになっていることから、マクマスター大学(カナダ・ハミルトン)臨床疫学・生物統計学部のMichelle E Kho氏らは、実際にインフォームドコンセントが前向き観察研究でバイアスを先導しているのか、システマティックレビューで検証を行った。BMJ誌2008年4月4日号(オンライン版2009年3月12日号)より。