ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:217

中大脳動脈領域梗塞の減圧開頭術、高齢者でも有益/NEJM

 悪性中大脳動脈領域梗塞を起こした61歳以上の高齢患者に対する減圧開頭術は、重度の障害を伴わない生存者を増大することが、ドイツ・ハイデルベルク大学のEric Juttler氏ら「DESTINY II」共同研究グループによる検討の結果、示された。大部分の生存者は介助を必要としたが、その大半は身体的ニーズだった。先行研究により、中大脳動脈領域全体、またはほぼ全体に梗塞を起こした60歳以下の患者において、早期の減圧開頭術は死亡率を低下し重度障害リスクも増大しないことが示されていた。しかし高齢患者において同様のベネフィットがあるのかは不明であった。NEJM誌2014年3月20日号掲載の報告より。

乳がん術後リンパ節転移への放射線療法、効果が明確に/Lancet

 乳房切除術および腋窩郭清後の放射線療法の効果について、1~3個のリンパ節転移があり全身治療が行われた場合でも、再発率、乳がん死亡率を低下することが明らかにされた。英国・オックスフォード大学のEarly Breast Cancer Trialists 共同研究グループ(EBCTCG)が22試験、8,135例の患者データをメタ解析し報告した。先行研究のメタ解析で、乳がん切除後の放射線療法は、リンパ節転移が認められる全女性について、再発および乳がん死亡の両リスクを低下することが示されていた。しかし、転移が1~3個と少ない患者におけるベネフィットは不明であり、本検討は、それらの患者の放射線治療の効果について評価することが目的であった。Lancet誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。

高齢者の肺塞栓症除外には年齢補正Dダイマー値が有用/JAMA

 血漿Dダイマー値を用いた急性肺塞栓症(PE)患者の除外診断について、固定指標値500μg/Lをカットオフ値として用いるよりも、年齢補正Dダイマー値を用いたほうが有用であることが、スイス・ジュネーヴ大学病院のMarc Righini氏らによる多施設共同前向き試験ADJUSTの結果、示された。Dダイマー測定は、PEが臨床的に疑われる患者において重要な診断戦略として位置づけられている。しかし、高齢者の診断ではその有用性が限定的で、年齢補正の必要性が提言されていた。JAMA誌2014年3月19日号掲載の報告より。

米成人の半数がスタチン治療を受ける時代に?/NEJM

 米国心臓病学会および米国心臓協会(ACC/AHA)は昨年11月、関連するガイドラインを改訂したが、デューク大学臨床研究所のMichael J. Pencina氏らは、その影響について調べた。結果、スタチン治療が適格となる患者が1,280万人増大し、米国成人(40~75歳)の約半数(48.6%)5,600万人がスタチン治療対象者となることが推算されたという。増大者のうち大半は心血管疾患を有さない高齢者であった。NEJM誌オンライン版2014年3月19日号掲載の報告より。

重症敗血症、アルブミンを投与しても死亡率変わらず/NEJM

 重症敗血症または敗血症性ショックの患者に対し、晶質液に加えてアルブミンを投与しても、晶質液単独投与と比較して28日、90日の生存率は改善しなかったことが示された。イタリア・ミラノ大学のPietro Caironi氏らが、1,818例対象の多施設共同非盲検無作為化試験ALBIOSの結果、報告した。先行研究において、重症敗血症に対するアルブミン投与のベネフィットが示唆されたが、有効性については十分には確立されていなかった。NEJM誌オンライン版2014年3月18日号掲載の報告より。

妊婦の禁煙にニコチンパッチは有効か?/BMJ

 ヘビースモーカーの妊婦に対するニコチンパッチを用いた禁煙補助療法は、禁煙率の達成および出生児の体重増のいずれにも寄与しなかったことが報告された。フランス・パリ第6大学(ピエール・エ・マリー・キュリー)のIvan Berlin氏らが402例を対象に行った多施設共同無作為化プラセボ対照試験の結果、判明した。ガイドラインでは、ニコチン置換療法(NTR)の一般集団に対する優れた安全性と有効性を踏まえて、妊婦の喫煙者への禁煙介入にNTRを追加することを提案している。しかし、そのエビデンスとして確定的なものは示されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年3月11日号掲載の報告より。

ピアレビュー論文、Wiki引用が増加/BMJ

 健康科学系のピアレビュー論文でも、Wikipedia(ウィキペディア、以下Wiki)からの引用が増加していることが明らかにされた。定義に関する引用は31.6%、解説に関する引用は23.5%であったという。カナダ・オタワ大学のM Dylan Bould氏らが2011年に発表された1,008誌1,433論文を調べ報告した。Wikiからの引用については、同サイト発足時から議論の的となっており、近年その引用が増加傾向にあることが指摘されていた。先行研究では、Wikiの内容と妥当性に関する検討は行われていたが、健康科学系論文でWikiがどのように利用されているかについてエビデンスは示されていなかった。BMJ誌オンライン版2014年3月6日号掲載の報告より。

膣脱への2つの手術、有効性、安全性は同程度/JAMA

 膣尖部脱と腹圧性尿失禁を有した女性に対する、2つの手術法(仙棘靭帯固定術:SSLF、仙骨子宮靱帯挙上術:ULS)および周術期介入(骨盤底筋訓練、BPMT)の有効性、安全性を検討した結果、術後2年時点のアウトカムは、SSLFとULSのいずれも解剖学的、機能的アウトカム、または重大イベントのアウトカムについて有意な差は示されなかったことが明らかにされた。また、BPMTによるアウトカム改善効果(6ヵ月の排尿症状、2年時点の膣尖部脱アウトカム)も示されなかった。米国・クリーブランドクリニックのMatthew D. Barber氏らが無作為化試験の結果、報告した。米国では骨盤臓器脱(子宮脱)に対する手術が年間30万件以上行われており、SSLFとULSはいずれも米国では一般的に行われているが、有効性、安全性についての比較検討、および周術期介入によるアウトカム改善効果についても明らかではなかった。JAMA誌2014年3月12日号掲載の報告より。

EV71ワクチン、乳幼児の手足口病に効果、中国発/NEJM

 中国で開発されたエンテロウイルス71(EV71)ワクチンの、乳幼児における手足口病またはヘルパンギーナに対する有効性、安全性および免疫原性について、中国疾病予防管理センター(CDC)のFengcai Zhu氏らが、第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を発表した。プラセボ群との比較で、ワクチンの有効率は94.8%と有意に高く、一方で重篤な有害事象の発生は同程度であり、接種後56日時点で2回接種により98.8%に免疫応答が認められたことを報告した。またEV71関連疾患の入院、および神経合併症を伴う手足口病については100%の予防効果が認められたという。著者は、「乳幼児におけるEV71関連の手足口病またはヘルパンギーナは、EV71ワクチン接種によって予防された」と結論づけている。NEJM誌2014年2月27日号掲載の報告より。

薬剤溶出ステントの直接比較、1年と5年では異なる結果に/Lancet

 ゾタロリムス溶出ステントとシロリムス溶出ステントを直接比較した多施設共同オープン無作為化試験SORT OUT IIIの1年時点と5年時点の臨床転帰を検証した結果、1年時点ではシロリムスの優越性が有意であったが、5年時点ではシロリムスの優越性が失われていたことが判明した。薬剤溶出ステントの直接比較試験では、主要エンドポイントの評価は伝統的に9~12ヵ月時点で行われてきたが、この時期での評価が最適なのかについては不明なままであった。デンマーク・オーフス大学病院のMichael Maeng氏らによる報告で、Lancet誌オンライン版2014年3月13日号で発表された。

無作為化試験の中断、最も多い理由とは/JAMA

 無作為化試験(RCT)の中断頻度は高く、その理由として最も多いのは被験者不足であることが明らかにされた。スイス・バーゼル大学病院のBenjamin Kasenda氏らが、スイス、ドイツ、カナダの6つの研究倫理委員会がプロトコルを承認した全無作為化試験(RCT)を、レトロスペクティブに調査し報告した。RCT中断は、倫理に対する懸念をもたらし、また乏しい研究資源をすり減らすが、中断された試験がどれほどあるのか、また中断理由などの“疫学”は不明であった。JAMA誌2014年3月12日号掲載の報告より。

身近にファストフード店が多いほど肥満になりやすい/BMJ

 宅周辺、職場周辺、通勤経路別に、ピザやバーガーといったいわゆるファストフード店への曝露と、それら食品のテイクアウト消費および体重との関連について調べた結果、用量依存の有意な関連があることが明らかにされた。英国・ケンブリッジ大学医学部のThomas Burgoine氏らが、ケンブリッジシャー州で行った住民ベースの断面調査研究の結果、曝露が大きいほど消費量、体重は増加し、曝露環境別では職場周辺の関連が最も強かったことを報告した。また3つの環境曝露を複合し四分位範囲で分類して評価した結果、最大曝露環境下の人は最小曝露環境下の人と比べて、BMIが相対指数で1.21倍高く、肥満リスクは1.80倍高かったことも示されている。BMJ誌オンライン版2014年3月13日号掲載の報告。

メタ解析の新たな問題/BMJ

 ネットワークメタ解析からの所見報告は、記述方法が不均一であることが、フランス・オテル=デュー病院のAida Bafeta氏らによる系統的レビューの結果、報告された。著者は、背景には報告要項に関するコンセンサス不足があるのではないかとして、執筆者および読者がネットワークメタ解析の報告を批判的に検証できるよう、報告書に関するガイドライン整備の必要性を提言した。ネットワークメタ解析の所見については、臨床医および担当医がどう解釈をしたらよいのか困難な場合がある。また、報告書式の不備が解析に影響をもたらす可能性や、臨床研究者をミスリードする可能性もあることから本検討は行われた。BMJ誌オンライン版2014年3月11日号掲載の報告より。

深部静脈血栓症の除外診断で注意すべきこと/BMJ

 WellsルールとDダイマー検査による深部静脈血栓症(DVT)除外診断は、性別やDダイマー検査の種別、プライマリ・ケアか入院時かなどを問わず、がん患者を除き有効であることが示された。ただしDVT再発が疑われる場合には、Wellsスコアに1ポイント加えるといった注意が必要となる。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのG J Geersing氏らが、13試験についてメタ解析を行った結果、報告した。これまでの試験結果から、患者全般についてWellsルールとDダイマー検査がDVT除外診断に有効であることは知られていたが、がん患者などのサブグループについての有効性については議論が分かれていた。BMJ誌オンライン版2014年3月10日号掲載の報告より。

高度貧困地域からの転出、男児は精神障害リスクが増大/JAMA

 米国の高度貧困地域に住む子供が、家族と共に低所得者居住地域に引っ越すことで、男児では思春期におけるうつ病や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった精神障害の発症リスクが2~3倍増大することが報告された。一方で女児については、同引っ越しにより、思春期のうつ病や行為障害の発症リスクが4~9割減少した。米国・ハーバードメディカルスクールのRonald C. Kessler氏らが、小児約3,700例について行った前向き無作為化比較試験の結果、報告した。高度貧困地域の子供は思春期に心の問題を抱える青少年が多い。本検討は、地域への介入について、地域が与える影響を理解することを目的に、小児期への住環境介入とその後の思春期の精神障害との関連を調べた。JAMA誌2014年3月5日号掲載の報告より。

出生前検査、非侵襲的DNA検査は低リスク妊婦でも優れる/NEJM

 低リスクを含む一般妊婦集団を対象に、出産前DNA検査について、大量並列塩基配列決定法による母体血漿無細胞DNA検査(cfDNA検査)と標準的スクリーニングの検出力を比較検討した結果、同集団でもcfDNA検査群のほうが、21トリソミー(ダウン症)、18トリソミー(エドワーズ症候群)の偽陽性率は有意に低く、陽性適中率は有意に高いことが明らかにされた。米国・タフツ大学病院のDiana W. Bianchi氏らが、全米14州21施設から登録された妊婦1,914例を対象とした検討の結果、報告した。非侵襲的な出生前検査であるcfDNA検査は、高リスク妊婦においては胎児の常染色体異数性を正確に検出することが知られる。しかし、低リスク妊婦における同検出力については不明であった。NEJM誌2014年2月27日号掲載の報告より。

大腸がんスクリーニング、年齢で推奨するのは不適切/BMJ

 大腸がんスクリーニングの実施を年齢ベースで推進することは適切ではないことを、米国・退役軍人(VA)アナーバーヘルスケアシステムのSameer D Saini氏らが、後ろ向きコホート研究の結果、報告した。米国で最大の統合ヘルスケアシステムのVAヘルスケアシステム加入者を対象に行った検討において、75歳以降では実施が顕著に低下しており、75歳で健康に問題がある人では過剰に、76歳で健康な人では過小に行われているなどの状況が示されたという。現在、同システムでは50~75歳でのスクリーニング実施が推奨されており、全米、英国でも同様に広く行われている。しかし、今回の結果を踏まえてSaini氏は、単に年齢ではなく、もっと個々人の臨床的なリスク・ベネフィットに着目した質的指標を開発すべきであると述べている。BMJ誌オンライン版2014年2月26日号掲載の報告より。

気道感染症への抗菌薬治療 待機的処方 vs 即時処方/BMJ

 気道感染症に対する抗菌薬治療では、即時的処方に比べ待機的処方で抗菌薬服用率が顕著に低いが、症状の重症度や持続期間に差はないことが、英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏らの検討で示された。同国のプライマリ・ケアでは、気道感染症の治療の際、抗菌薬の不必要な使用を抑制するために非処方または待機的処方という戦略が一般に行われている。一方、文献の系統的レビューでは、待機的処方は即時的処方に比べ症状の管理が不良であり、非処方よりも抗菌薬の服用率が増加する可能性が示唆されている。待機的処方には、服用に関する指示書を付して処方薬を渡したり、再受診時に渡すなどいくつかの方法があるが、これらの戦略を直接に比較した試験は、これまでなかったという。BMJ誌オンライン版2014年3月5日号掲載の報告。

早期前立腺がん、根治切除の長期生存ベネフィットが判明/NEJM

 根治的前立腺切除術は、前立腺がん患者の長期的な生存を実質的に改善することが、スウェーデン・ウプサラ大学のAnna Bill-Axelson氏らが進めるScandinavian Prostate Cancer Group Study Number 4(SPCG-4)の最長23年以上に及ぶ追跡調査で確認された。SPCG-4は前立腺特異抗原(PSA)の臨床導入以前に診断された患者を対象とし、すでに15年のフォローアップにおける根治的前立腺切除術の生存ベネフィットが示されている。一方、PSA検査導入初期に行われたProstate Cancer Intervention versus Observation Trial(PIVOT)では、手術による12年後の全死亡、前立腺がん死の改善効果は得られておらず、PSA検診の影響の大きさが示唆されている。NEJM誌2014年3月6日号掲載の報告。

糖尿病による脳卒中リスクに男女差はあるか?/Lancet

 脳卒中のリスク因子としての糖尿病について、性差による違いがあるかどうかを調べた結果、男性よりも女性のほうが受ける影響が強いことが明らかになった。オランダ・ユトレヒト大学のSanne A E Peters氏らがシステマティックレビューとメタ解析にて、被験者77万5,385例、うち脳卒中1万2,539例を含む64コホートを分析し報告した。糖尿病は脳卒中の強力なリスク因子であるが、これまで性差により違いがあるのかについては検討されていなかった。Lancet誌オンライン版2014年3月7日号掲載の報告より。