ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:296

ショック時の昇圧薬、第一選択はドパミンかノルエピネフリンか?

ショック時における昇圧薬の第一選択薬は、ドパミン、ノルエピネフリンいずれが優れているのか。コンセンサス・ガイドラインでは両剤ともが第一選択薬と推奨されているが、ドパミン使用の方が死亡率が高いとの試験報告がある。しかしノルエピネフリンが優れているとの試験報告はないことから、ベルギー・Erasme大学病院病院集中治療部門のDaniel De Backer氏らの研究グループは、ノルエピネフリンの方が死亡率が低いのかどうかを評価する多施設共同無作為化試験「SOAP II」を行った。NEJM誌2010年3月4日号掲載より。

高齢ICU生存者の約4割が、3年以内に死亡

米国の65歳以上で入院中に集中治療室(ICU)での治療を受け生存退院した人のうち、約4割が3年以内に死亡していたことが報告された。年齢や性別などをマッチした対照群に比べ、そのリスクは約2.4倍だったという。米国コロンビア大学救急部門のHannah Wunsch氏らが、3万5,000人超のICU生存者とその対照群について後ろ向きに調べ明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月3日号で発表した。

ABI値0.95以下・心血管疾患症状のない人への予防的アスピリン投与の効果は?

スコットランドEdinburgh大学市民健康科学センターのF. Gerald R. Fowkes氏らは、心血管疾患症状はないものの、ABI(足関節/上腕血圧比)値が0.95以下の人に対し、アスピリンを投与しても、血管イベントリスクの低下は認められなかったことを報告した。無作為化プラセボ対照二重盲検試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年3月3日号で発表した。

5つの推奨項目でできるカテーテル関連血流感染症の発生低下

集中治療室(ICU)での中心静脈カテーテルに関連した血流感染症は、医療従事者の感染防止意識と手技によってある程度防ぐことができるとされ、継続的な質向上への取り組みが広く行われはじめている。ジョンズ・ホプキンス大学のPeter J Pronovost氏らは、状況を評価するため、米国ミシガン州病院協会の「Keystone ICU project」に参加するICUが、カテーテル関連血流感染症の発生率低下をどれだけ維持できているかを評価する観察研究を行った。BMJ誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月4日号)に掲載された。

頸動脈狭窄、内膜摘除か?ステント留置か?:短期・中期アウトカムの比較

米国ミシガン大学のPascal Meier氏らの研究グループは、議論が続いている頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜摘除術と頸動脈ステント留置術の、周術期における安全性と中期の有効性を評価するため、過去に行われた無作為化臨床試験のシステマティックレビューとメタ解析を行い、BMJ誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月12日号)に発表した。

スタチン治療により糖尿病発症リスクがわずかに増大、診療方針には変更なし

スタチン治療により、糖尿病の発症リスクがわずかながら増大するものの、心血管疾患のリスクを有する患者や心血管疾患患者の診療方針を変更するほどではないことが、イギリスGlasgow大学Glasgow心血管研究センターのNaveed Sattar氏らによるメタ解析で示された。スタチンのプラセボ対照試験における糖尿病の発症率は、JUPITER試験ではロスバスタチン群で高かったのに対し、WOSCOPS試験ではプラバスタチン群で低いなど相反する知見が得られている。これによりスタチンの長期使用の安全性に疑問が生じたため、系統的な検討が求められていた。Lancet誌2010年2月27日号(オンライン版2010年2月17日号)掲載の報告。

搬送中の上腕虚血プレコンディショニング、primary PCI後の心筋救済を改善

急性心筋梗塞が疑われる患者に対する搬送中の上肢の虚血プレコンディショニングは、primary PCI施行後の心筋救済(myocardial salvage)を改善し安全性も良好なことが、デンマークAarhus大学Skejby病院のHans Erik Botker氏らが実施した無作為化試験で明らかとなった。虚血プレコンディショニングは、心筋を事前に短時間の虚血状態に曝露するとその後に起きる心筋障害が軽減される現象で、内因性の心保護作用として重視されている。上肢や下肢の遠位虚血プレコンディショニングは待機的手術や血管形成術施行時の心筋障害を抑制することが示されている。Lancet誌2010年2月27日号掲載の報告。

HIV感染者への結核診断アルゴリズム

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者に対しては、結核スクリーニングが、早期診断と抗レトロウイルス療法とイソニアジド予防投与を安全に開始するために推奨されている。しかし、慢性的な咳についてのスクリーニングは一般的に行われているものの、その最適方法について、エビデンスに基づく国際的に認められたガイドラインは今のところない。米疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らの研究グループは、その開発に取り組んだ。NEJM誌2010年2月25日号より。

骨粗鬆症治療薬lasofoxifeneのイベントリスク減少に関する評価:PEARL試験

 非ステロイド性の選択的エストロゲン受容体調節物質であるlasofoxifeneについて、骨粗鬆症の閉経後女性の、骨折および乳がん、心血管疾患のリスクが減少するかを評価する「PEARL試験」の結果が、米国カリフォルニア大学のSteven R. Cummings氏らによって報告された。高用量投与(0.5mg/日)では、骨折、乳がん、冠動脈疾患、脳卒中のリスクは減少が確認されたが、静脈血栓塞栓のイベントリスクは増加がみられたという。NEJM誌2010年2月25日号掲載より。

医師の労働時間7%減、報酬は25%減

ここ10年ほどで、米国医師の労働時間は約7%減少する一方、報酬は25%も減ってきていることが明らかになった。労働時間の減少率は、レジデントを除外すると45歳未満の若手、非勤務医が大きかった。米国Dartmouth College経済学部門のDouglas O. Staiger氏らが、1976~2008年の米国勢調査局の人口調査に基づく、約11万7,000人の医師について調べた結果で、JAMA誌2010年2月24日号で発表した。

尿路感染症疑い例管理の費用対効果:試験紙法か経験的投与に軍配、価値基準設定で変化

英国サウサンプトン大学ウェセックス研究所のDavid Turner氏らが、尿路感染症に対する5つの治療管理方法の費用対効果について検討した結果、最も費用対効果に優れているのは「試験紙法」だったと報告した。ただし結果は条件付きのうえ不確定要素が多いとし、また費用対効果に求める価値基準設定によっては、「速やかな経験的投与」が最も費用対効果に優れることも示されている。BMJ誌2010年2月20日号(オンライン版2010年2月5日号)掲載より。

尿路感染症疑い例管理の有効性:管理方法間で有意差なし、経験的投与も3日目以降で

尿路感染症疑い例に対する5つの管理方法の有効性について無作為化試験の結果、症状コントロール達成に5つの方法間に差異はなく、「48時間以降に試験紙法で処方抗菌薬を決定して」あるいは「48時間以降に経験的投与」が、より少量の抗菌薬投与で症状コントロール達成が可能なことが明らかになった。英国サウサンプトン大学地域臨床学部門プライマリ・ケア医学グループのP Little氏らの報告によるもので、BMJ誌2010年2月20日号(オンライン版2010年2月5日号)に掲載された。

炎症性腸疾患の静脈血栓塞栓症リスク、外来再燃時に最も高い

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患患者では、静脈血栓塞栓症の発症リスクが増大しており、特に緩解導入後の急性再燃時にそのリスクが高いことが、イギリスNottingham大学疫学・公衆衛生学のMatthew J Grainge氏らによるコホート研究で明らかとなった。下肢の静脈血栓塞栓症による短期的死亡率は6%で、肺循環に塞栓が発生した場合は20%にも達することが示されている。この生命に関わる疾患には感染や炎症が関与しており、特に炎症性腸疾患患者はリスクが高く、血栓塞栓症の発現時には活動性の炎症性腸疾患がみられることが多いという。Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2月9日号)掲載の報告。

先天異常の疾患別、サブタイプ別の20年生存率が明らかに

イングランド北部で実施された地域住民研究の結果、一つ以上の先天異常を有する患者の20年生存率は85.5%で、各疾患のサブタイプ間には差がみられることがわかった。先天異常は周産期および幼児期の死亡の主要原因とされる。治療法の進歩によって予後の改善がもたらされた疾患やサブタイプもあるが、多くの先天異常の生存率(特に1歳以降)はよく知られていないという。イギリスNewcastle大学保健・社会研究所のPeter W G Tennant氏らが、Lancet誌2010年2月20日号(オンライン版2010年1月20日号)で報告した。

1日1gの減塩は降圧薬を上回るか?

減塩への取り組みがもたらす健康へのベネフィットはいったいどれぐらいなのか? 米国カリフォルニア大学医学部疫学・生物統計学部門のKirsten Bibbins-Domingo氏らは、米国35~84歳の冠動脈疾患(CHD)政策モデルを使って、1日1~3gの減塩でもたらされる健康へのベネフィット(心血管イベント、全死因死亡、医療費など)を、コンピュータシミュレーションした。日本やイギリスなど多くの国では、食品業界を巻き込んでの、加工食品への塩分量表示や公衆教育を通じた減塩に対する意識喚起が行われている。一方、米国では塩分摂取量が年々上昇しており(2005~2006年:目標5.8g未満に対し男性10.4g、女性7.3g)、その約8割が加工食品からの摂取で、研究グループは公衆衛生改善を提起するため本研究を行った。NEJM誌2010年2月18日号(オンライン版2010年1月20日号)掲載より。

重度の脳損傷を受けた意識障害患者との会話、機能的MRIの応用で可能?

集中治療技術の進展により、重度の脳損傷を受けても生存する患者が増加しているが、良好な回復を示す患者がいる一方、一部は植物状態のままで、大半の患者はこん睡状態から目覚めても再現性のある意思疎通ができる状態にまでは回復しない。2002年にAspen Neurobehavioral Conference Work Groupが、意識障害患者の枠組みに「最小意識状態」(minimally conscious state;MCS)という「意思表示を行動で示せない患者」の区分を加えた。しかしベッドサイド検査だけでは鑑別診断が難しく誤診率は約40%に及ぶという。そこで英国医学研究審議会(MRC)認知・脳科学ユニットのMartin M. Monti氏らは、機能的MRIを用いた意思疎通を図れるかを試験した。NEJM誌2010年2月18日号(オンライン版2010年2月3日号)掲載より。

ツタンカーメン、死因は骨壊死とマラリアが重なってか!?

 古代エジプトのツタンカーメン王の死因は、無血管性骨壊死と熱帯熱マラリアによる可能性が高いことが判明した。また、ツタンカーメン王の両親のミイラについても、特定された。エジプト考古最高評議会のZahi Hawass氏らが「King Tutankhamun Family Project」の中で、エジプト新王国時代の16体のミイラについて遺伝子指紋法やCTスキャンなどによる詳細な調査を行った結果、明らかにしたもの。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。

米国子どもの肥満・慢性疾患有病率の動向

肥満や慢性疾患を有する米国2~14歳児の割合は、1988~2006年の間で増加傾向にあることが、米国マサチューセッツ総合病院青少年保健政策センターのJeanne Van Cleave氏らの調べで明らかになった。また肥満や慢性疾患は、必ずしも長年にわたり継続しているのではなく、追跡調査期間6年の中で新規発症や完治といった動きが多いこともわかったという。JAMA誌2010年2月17日号で発表した。

タモキシフェン治療中の高齢乳がん患者、パロキセチン併用で乳がん死が増大

タモキシフェン(TAM)治療中の乳がん女性にパロキセチン(商品名:パキシル)を併用投与すると、乳がん死のリスクが増大することが、カナダSunnybrook医療センターのCatherine M Kelly氏らが実施したコホート研究で示された。乳がんの内分泌療法の標準治療薬であるTAMは、チトクロームp450 2D6(CYP2D6)によって活性代謝産物であるエンドキシフェンに変換されるプロドラッグである。TAM投与を受けている乳がん女性にはパロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が広く用いられているが、SSRIはCYP2D6を阻害するためエンドキシフェンの産生が低下してTAMの効果が減弱する可能性が指摘されていた。BMJ誌2010年2月13日号(オンライン版2010年2月8日号)掲載の報告。