ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:326

急性心筋梗塞の再灌流障害に関するシクロスポリンの作用

細胞内のミトコンドリア防御作用を有するシクロスポリンが、心筋梗塞の再灌流時に起こる致死的心筋障害を減らすことは、実験的に示されている。フランス・Hopital Arnaud de VilleneuveのChristophe Piot氏らは小規模ながら、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)前にシクロスポリンを投与することで、梗塞範囲を抑えられるかどうかを検証。NEJM誌2008年7月31日号に結果が掲載された。

胃癌手術でリンパ節拡大郭清を行っても生存率は改善しない

治療可能な胃癌に対して、2群リンパ節郭清を伴う胃切除術は、東アジアにおける標準治療である。しかし、2群郭清に加えて大動脈周囲リンパ節郭清(PAND)を行う3群郭清(拡大郭清)が、生存率を改善するかどうかは論争の的となっている。国立がんセンター中央病院の笹子三津留氏ら日本臨床腫瘍研究グループが、国内で大規模な比較試験を行った結果、3群郭清は生存率改善につながらないと報告した。NEJM誌2008年7月31日号より。日本胃癌学会の胃癌治療ガイドライン速報でも取り上げられた報告。

家族歴のある大腸癌患者の再発と死亡リスクは低い

一親等親族に大腸癌患者がいた場合、大腸癌発症リスクは増大するが、癌再発と生存に家族歴がどう影響するか明らかではない。米国・ハーバード大学医学部ダナ・ファーバー癌研究所のJennifer A. Chan氏らは、「ステージIIIの大腸癌患者に大腸癌の家族歴がある場合は、再発と死亡は有意に減少する」と報告した。JAMA誌2008年6月4日号より。

fetuin-A高値は糖尿病発症と関連

肝分泌タンパク質のfetuin-Aは、インスリン受容体と結合してインスリン活性を阻害する。これまでの研究で、fetuin-A高値とインスリン抵抗性との関連は指摘されていたが、2型糖尿病との関係は不明だった。米国・カリフォルニア大学医学部のJoachim H. Ix氏らは、高齢者において、fetuin-A高値の者が糖尿病を有するどうか検証。「高齢者では、fetuin-Aと糖尿病発症は相関する」と報告した。JAMA誌2008年7月9日号より。

好意的賛同を得られるバイオバンク運営のキーは?

保健医療と医学に対する信用の失墜は、医学研究にとって厳しい影響を及ぼす。しかし、最近の国際的な調査によれば、少なくとも80%の人々は、医学研究の発展のために生体試料を提供することに好意的であるとされる。とりわけ、いち早くバイオバンク法が整備されたスウェーデン人の意識はより高いとされるが、ウプサラ大学(スウェーデン)のLinus Johnsson氏らのグループは、採取したサンプルの保存と研究目的での使用について、スウェーデンではどれぐらいの患者が拒絶または使用目的を制限しているのか、またそれがバイオバンク研究にとって脅威となるのかどうかを検討した。BMJ誌2008年7月10日号より。

赤身肉の大量摂取は血圧上昇を招く

1981年に提示された「iron-heart」仮説では、男性と女性(閉経前)と冠疾患リスクの差は、鉄分蓄積量の差によって説明できるとされたが、その後の研究からその裏づけとなる結果は、得られていない。ロンドン大学疫学・公衆衛生部門Ioanna Tzoulaki氏らの研究グループは、食事による鉄分(総鉄、ならびにヘム鉄、非ヘム鉄)の摂取、サプリメントなどによる補足的な鉄分摂取、さらに赤身肉の摂取と血圧との関連を調査する横断的疫学研究を行った。BMJ誌2008年7月15日号より。

抗レトロウイルス治療が有効でも、HIVはパートナーに感染する

有効な治療が行われていれば、異性間性交渉によるHIV感染リスクは低いがまったくないとはいえず、男性の同性間性交渉における感染リスクは曝露を繰り返す間に高くなることが、数学的モデルによる解析で判明した。Swiss Federal Commission for HIV/AIDSのコンセンサスでは、有効な抗レトロウイルス療法によって血漿HIV RNAが検出されなくなった症例(<40コピー/mL)からは性交によるHIV感染はないとされていたが、これを覆す知見が得られたことになる。オーストラリアNew South Wales大学、国立HIV疫学・臨床研究センターのDavid P Wilson氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

HIV感染例の平均余命が改善、高所得国の併用抗レトロウイルス療法施行例

 併用抗レトロウイルス療法(CART)を受けているHIV感染例の平均余命は1996年から2005年の間に延長しており、高所得国における20歳時の平均生存例数は一般人口の約2/3であることが、国際的なコホート研究(ART-CC)で明らかにされた。CARTはHIV感染例の生存率およびQOLを有意に改善するが、一般集団レベルにおける余命への影響は明確でなかったという。カナダBritish Columbia Centre for Excellence in HIV/AIDS のRobert Hogg氏がLancet誌2008年7月26日号で報告した。

ソラフェニブは進行性肝細胞癌患者の生存期間を延長する

進行性の肝細胞癌患者に有効な全身療法はないが、これまでの予備試験の結果、分子標的薬のソラフェニブ(商品名:ネクサバール、本年1月承認で国内では腎癌のみ適応)が、肝細胞癌にも有効である可能性が示されている。本論は、スペイン・バルセロナ大学のJosep M. Llovet氏らによる報告で、ソラフェニブの国際共同第III相臨床試験SHARPの結果。「ソラフェニブは生存期間を延長する」と報告されている。NEJM誌2008年7月24日号より。

薬剤耐性HIV-1にraltegravirと至適基礎療法の併用が有効

既存の抗レトロウイルス薬に感受性または耐性を示す活性ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV-1)に対しても、HIV-1インテグレース阻害剤のraltegravir(MK-0518)は活性を示す。raltegravirの国際的第III相臨床試験BENCHMRKにおいて、抗レトロウイルス療法に失敗し治療の選択肢が限られた3クラス薬剤耐性HIV-1感染患者に、raltegravirを至適基礎療法と併用することで良好なウイルス抑制効果があることが報告された。ニューヨーク州立大学Roy T. Steigbigel氏らによる報告は、NEJM誌2008年7月24日号にて掲載された。

外国生まれの米国居住者における結核感染状況

アメリカでは結核対策の強化によって感染者が減少している。しかし、外国生まれの米国居住者の患者数は、2006年における全米の患者数の57%を占めていた。現行の対策では、入国者における高い結核感染率と潜在的な結核感染症への対処が不十分だとして、米国疾病管理予防センター(CDC)のKevin P. Cain氏らが、入国者集団の感染状況およびスクリーニング法を評価。JAMA誌2008年7月23日号に結果が掲載された。

うつ病治療に伴う女性の性機能障害にもバイアグラが有効

抗うつ薬の選択的・非選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SRI)治療に関連する一般的な副作用として性機能障害があり、しばしば抗うつ薬による治療を早期に中断せざるを得ない要因ともなっている。これまでSRIによる性機能障害に、シルデナフィル(商品名:バイアグラ)が有効なことは知られていたが、米国ニューメキシコ大学医学部のH. George Nurnberg氏らは、女性にも同様に効果があると報告した。JAMA誌2008年7月23日号より。

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行う必要はない

末梢静脈カテーテルの交換はルーチンに行うべきか、それとも臨床適応となった場合にだけ行えばよいか。CDC(疾病予防管理センター)では感染対策の観点から72~96時間ごとに変えるべきとしているが、そのエビデンスは乏しく、また近年、ルーチンに変えるほうが静脈炎の発症率が高いといった報告もある。そうしたなか王立ブリスベーン&ウーマンズ病院(オーストラリア)臨床看護センターのJoan Webster氏らは、静脈炎発症率とコストの面で検討を行い、「臨床適応の場合だけ行えばいいようだ」と報告した。BMJ誌オンライン版2008年7月8日号より。

アミロイドβペプチドワクチンはアルツハイマー病の神経変性を予防しない

 全長アミロイドβペプチド(Aβ42)ワクチン(AN1792)はアルツハイマー病のアミロイド斑を除去するが、進行性の神経変性は予防しないことが、開発中止後の長期的な事後検証試験の結果から明らかとなった。Aβ42ワクチンの第I相試験では、アミロイド斑の除去効果に加え、多様性が高く広範な非用量依存性を示す抗体反応が確認されていた。イギリスSouthampton大学臨床神経科学部のClive Holmes氏が、Lancet誌2008年7月19日号で報告した。

急性心筋梗塞の最良の脂質関連リスク因子が解明された:INTERHEART試験

急性心筋梗塞(AMI)の最も優れた脂質関連のリスク予測因子は非空腹時のアポリポ蛋白B100(Apo B)/Apo A1比であることが、国際的な症例対照研究(INTERHEART試験)で明らかとなった。同試験では、修正可能な9つのリスク因子(喫煙、運動、果物/野菜、アルコール、高血圧、糖尿病、腹部肥満、心理社会的状態、Apo B/Apo A1比)で心筋梗塞の人口寄与リスク(PAR)のほとんどを説明できることがすでに示されており、なかでもApo B/Apo A1比はPARの半分に関与しているという。カナダMcMaster大学のMatthew J McQueen氏がLancet誌2008年7月19日号で報告した。

在胎期間が短いほど成人後のリスクは増大

周産期医療の進歩によって、早産児の生存数は増加しているが、こうした早産児が成人期に必要とする能力については懸念がある。ノルウェー・ベルゲン大学のDag Moster氏らは全国民を対象とした登録制度に基づき長期追跡調査を行った結果、「早産児は成人後も、在胎期間が短いほど医学的・社会的リスクが増大する」と報告した。NEJM誌2008年7月17日号より。

エビデンスある高齢者の転倒防止対策を普及させよう

米国エール大学医学部のMary E. Tinetti氏らは、「転倒は高齢者によくみられる一般的な病的状態である。またその効果的な予防対策は明らかになっているにもかかわらず、十分に活用されていない」として、コネティカット州において、地域医療や看護・介護関係者に転倒防止対策を採るよう介入を行った。結果、転倒関連の外傷を減らすことができたと報告している。NEJM誌2008年7月17日号より。

子供の運動不足は10代前半で急速に進行する

運動不足は小児肥満症の増加と重要な関係がある。米国農務省は、1日最低60分間の「中程度から強度の身体活動」(MVPA)を推奨しているが、実際に最近の子供たちがどのように運動しているかを検証した継続的研究はほとんどなかった。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校医学部小児科のPhilip R. Nader氏らは、9~15歳の追跡調査。10代前半で運動量が急激に減少していると警告した。JAMA誌2008年7月16日号より。

シンバスタチンは神経線維腫症1型の認知機能障害を改善しない

神経線維腫症1型(NF1)は、学習障害(LD)の発症頻度が最も高い遺伝病の1つだが、近年、NF1マウス・モデルで、HMG-CoA還元酵素(3-hydroxy-3-methylglutaryl coenzyme A reductase)のスタチンが認識欠損を修復できることが示された。このため、オランダ・ロッテルダムのエラスムス大学NF1研究チームのLianne C. Krab氏らが、NF1の小児におけるスタチン系薬剤シンバスタチンの効果を検証する無作為化試験を行ったが、結果は「認知機能障害は改善されなかった」と報告されている。JAMA誌2008年7月16日号より。