ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:318

3種混合ワクチン接種の公式報告は実態反映せず

小児に対する3種混合ワクチンの実施状況は、実態調査に基づくデータと各国の公式報告の間に乖離が見られ、目的志向型かつ業績志向型のグローバル イニシアチブが過大な公式報告を助長している可能性があることが、ワシントン大学(アメリカ)健康基準/評価研究所のStephen S Lim氏らが行った系統的な解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月13日号掲載の報告。

適切な抗マラリア薬併用療法はどれか?

抗マラリア薬併用療法はこれまで「クロロキン」をベースとしたものだったが、耐性が進み、「アーテミシニン」をベースとした新たな治療戦略がWHOによって推進されている。しかし、有効な対策には地域性を考慮した治療戦略が欠かせない。複数種のマラリア原虫が存在し年間を通して深刻な感染が見られるインドネシア・パプアニューギニアでは、どのような抗マラリア薬併用療法が適切か? 西オーストラリア大学医学・薬理学校のHarin A. Karunajeewa氏らは、従来療法とアーテミシニン系合剤ベースの3つの療法、計4つの療法に関するオープンラベル無作為化並行群間比較試験を行い、適切な治療戦略を検討した。NEJM誌2008年12月11日号(オンライン版2008年12月8日号)より。

薬物過剰摂取による死者の90%以上がオピオイド使用

米国ウエストバージニア州で薬物乱用が原因で死亡した人のうち、90%以上がオピオイドを使用、その4割超が処方箋なしで不正入手していたことが明らかになった。これは、米国疾病予防管理センター(CDC)のAron J. Hall氏らの調べによるもので、JAMA誌2008年12月10日号で発表した。同州は1999~2004年にかけて、薬物過剰摂取による死亡率が全米で最も増加した地域だった。

末期心不全への補助人工心臓治療、1年生存率は3~5割程度

米国の末期心不全に対する補助人工心臓治療は、1年生存率が3~5割程度に留まることがわかった。米Duke大学のAdrian F. Hernandez氏らが、メディケア(米国の公的高齢者向け医療保険)の被保険者データを調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月26日号で発表した。米国では2003年から、末期心不全に対し、補助人工心臓治療をメディケアの支払い対象にしている。

妊娠予定の女性はカフェイン摂取を100mg/日未満に

カフェイン摂取は、妊娠中に消費される最も多い生体異物である。300mg/日以上のカフェイン摂取が低体重児出産のリスクを増大することが明らかにされているが、わずか141mg/日以上でもリスクを増大とするとの知見もあり、英国「食品中の化学物質に関する委員会(Committee on Toxicity of Chemicals in Food)」が2001年に発表した論文レビューに基づく見解でも、300mg/日以上が自然流産と関連している可能性があるとしながらエビデンスは不明としていた。加えて近年、摂取量よりもカフェイン代謝の変動が胎児発育遅延と密接に関わるとの研究報告も寄せられている。それら知見を踏まえ本論は、リード大学とレスター大学の2つのティーチングホスピタルを基点に参加者を募り行われた大規模な前向き観察研究「CARE Study」の結果で、BMJ誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月3日号)にて報告された。

公衆衛生施策における大腸がんスクリーニングの精度:フィンランド

便潜血検査を取り入れた大腸がんスクリーニングは死亡率を低下させることは、4つの無作為化スクリーニング試験で明らかになっている。しかし、公衆衛生施策において死亡率低下の効果があることが常に示されているわけではない。フィンランドがん登録機関のNea Malila氏らの研究グループは、2004年にフィンランドで開始された、大腸がんの無作為化スクリーニング・プログラムについて検証した。BMJ誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月3日号)より。

非心臓手術周術期のβ遮断薬投与は不要?

米国心臓学会/米国心臓協会(ACC/AHA)のガイドラインの推奨にもかかわらず、非心臓手術時の周術期における心血管死や脳卒中の予防を目的としたβ遮断薬の使用を支持する確固たるエビデンスはないことが、米Brigham and Women's病院循環器科のSripal Bangalore氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。Lancet誌2008年12月6日号(オンライン版2008年11月11日号)掲載の報告。

イルベサルタン、左室駆出率45%以上心不全患者のアウトカム改善せず

心不全患者の約半数では左室駆出率が少なくとも45%あるが、これら患者の予後を改善する治療法は示されていない。サンフランシスコ退役軍人メディカルセンターのBarry M. Massie氏らのI-PRESERVE研究グループは、これら心不全患者へのイルベサルタン(商品名:イルベタン、アバプロ)の治療効果について検証した。NEJM誌2008年12月4日号(オンライン版2008年11月11日号)より。

ACE阻害薬、利尿薬とよりもCa拮抗薬との併用のほうが優れる:ACCOMPLISH試験

 米国の現行の高血圧治療ガイドライン(JNC 7)では、ハイリスクの高血圧患者に対してサイアザイド系利尿剤を含んだ併用療法を用いることを推奨しているが、最適な併用治療は十分に検討されていなかった。国際的な多施設共同試験ACCOMPLISHは、ACE阻害薬「ベナゼプリル」+ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬「アムロジピン」と、「ベナゼプリル」+サイアザイド系利尿薬「ヒドロクロロチアジド」とを比較したもので、ACE阻害薬+Ca拮抗薬併用療法のほうが、心血管イベントの減少効果が優れていることを報告した。NEJM誌2008年12月4日号より。

薬物抵抗性の側頭葉てんかん、前頭側頭葉切除術で期待余命や生活の質改善

薬物抵抗性側頭葉てんかんで、前頭側頭葉切除術が可能な人には、手術をすることで期待余命が5年ほど延長し、また生活の質も改善するようだ。米国コロンビア大学のHyunmi Choi氏らが、モンテカルロ・シミュレーションを用いた研究で明らかにしたもので、JAMA誌2008年12月3日号で発表した。なお、てんかん患者のおよそ20~40%が、薬物抵抗性だという。

中年女性のアルコール摂取、1日2杯以上は心房細動リスクを増大

 45歳以上の健康な女性がアルコールを1日2杯以上定期的に摂取すると、全く飲まない人に比べ、心房細動の発症リスクはおよそ1.6倍に増大するという。一方で、1日2杯未満の摂取なら、同リスクは増えないとも。米国ハーバード大学医学部のDavid Conen氏らが「Women’s Health Study」で明らかにしたもので、JAMA誌2008年12月3日号で発表した。これまでの研究で、男性の中程度~多量のアルコール摂取が、心房細動の発症リスクを増大する可能性があることは知られていたが、女性についての適切な研究はなかった。

心電図検査の予後評価は病歴聴取の域を出ない

狭心症疑いの外来患者への心電図検査(ECG)の予後評価は、病歴聴取で得られる情報に基づく予後評価の域を出ず、将来的に虚血性心疾患を発症するか否かにECGは、ほとんど役に立たない、Newham University Hospital(イギリス)のNeha Sekhri氏らがコホート調査の結果として報告した。ECGはイギリスの胸痛クリニックでは59%の実施率、最近のEuro heart surveyでは76%と臨床現場では慣例化している。BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)掲載より。

多施設共同試験の参加者募集について英国CTOCSからの教訓

英国での多施設共同無作為化対照試験はこれまで、当初目標としていた参加者を十分に集められたのはわずか3分の1未満に過ぎない。UCL EGA 研究所婦人科オンコロジー部門のUsha Menon氏らの研究グループは、その原因は、試験の管理・運営に十分な注意が払われてこなかったためではないかと考え、20万人以上の女性の参加を得て成功を収めた、過去最大の無作為化試験の1つである英国の卵巣癌スクリーニング共同試験(CTOCS)の要因を探った。BMJ誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)より。

Step試験が早期中止に、細胞性免疫ワクチンはHIV感染を予防できず

期待の大きさを反映してか、落胆の声が世界中に広がっているという。MRKAd5 HIV-1 gag/pol/nefワクチンによる細胞性免疫はHIV-1感染の予防効果およびウイルス量の減少効果を示さず、一部の症例ではむしろ感染リスクを上昇させる可能性があることが、国際的な第II相Step試験の中間解析で判明したのだ。試験はすでに早期中止となっている。米San Francisco公衆衛生局HIV研究部のSusan P Buchbinder氏が、Lancet誌2008年11月29日号(オンライン版2008年11月13日号)で報告した。

64列CT、冠動脈疾患の診断に有用だが従来法より優るとはまだ言えない

64列マルチスライスCTは冠動脈疾患の診断に有用だが、現段階では従来法に取って代わるほどではないことが、ジョンズホプキンス大学医学部のJulie M. Miller氏らによる国際的な多施設共同試験CORE64(Coronary Artery Evaluation Using 64-Row Multidetector Computed Tomography Angiography)の結果として報告された。これまでマルチスライスCTの診断精度については十分な検証が行われていなかった。NEJM誌2008年11月27日号掲載より。

遺伝子型スコアは2型糖尿病リスクの予測能に優れているか?

 遺伝性の2型糖尿病のリスクの予測に新時代到来か? 家族性糖尿病を有する人は有さない人に比べ2~6倍のリスク増大がある。また最新の研究で、複数の遺伝子座が2型糖尿病のリスクと関連していること(リスク対立遺伝子ごとに5~37%増大)が証明されたことを受け、マサチューセッツ総合病院遺伝子治療部門のJames B. Meigs氏らは、これら遺伝子座に関する知見を用いることで糖尿病リスクの予測は、従来の臨床的なリスクファクターのみを用いた場合の予測能よりも優れたものとなるのではとの仮説を立て検証を行った。NEJM誌2008年11月20日号より。

冠動脈性心疾患、うつ症状による心血管イベントリスクの増大は運動不足などが原因

冠動脈性心疾患でうつ症状のある人は、心血管イベントのリスクが高いことは知られているが、その原因は、運動不足などのうつ症状に付随する行動的要因にあるようだ。米サンフランシスコVA Medical CenterのMary A. Whooley氏らが、安定冠動脈性心疾患の1,000人超について追跡し、明らかにしたもので、JAMA誌2008年11月26日号で発表した。これまで、うつ症状が心血管イベントリスクを増大することは明らかになっていたが、その要因については不明だった。