ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:293

クラミジア検査で骨盤内炎症性疾患の予防は可能か

クラミジア感染症スクリーニングの実施で、PID(骨盤内炎症性疾患)の発病率を減らすことができるのか。ロンドン大学セント・ジョージア校地域保健科学部門のPippa Oakeshott氏らが無作為化試験を行い、BMJ誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月8日号)で報告している。クラミジア感染症は欧米で最も多い性感染症で、毎年新規患者は300万人以上。しかし症状に乏しいため放置され、PID発病を招くケースが少なくない。その医療コストは米国で年間20億ドル以上と推計されているという。

在宅後期高齢者への積極的な介護予防介入、効果は疑問

在宅ケアを受けていない高齢者に、積極的な介護予防を行うことが、健康長寿をもたらし、医療コスト削減に結びつくのか。カナダ・マクマスター大学看護学部のJenny Ploeg氏らが、機能低下リスクを有する75歳以上高齢者を対象に行った1年間にわたる無作為化試験の結果、通常ケア群とで有意差は認められなかったという。BMJ誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月16日号)掲載より。

新規糖尿病治療薬リラグルチドとシタグリプチン、血糖降下作用はどちらが優れるか?

メトホルミン単独では血糖値が十分にコントロールされない2型糖尿病患者において、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体作動薬リラグルチド(商品名:ビクトーザ)は、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害薬シタグリプチン(同:ジャヌビア、グラクティブ)に比べ糖化ヘモグロビン(HbA1c)の低下作用が優れることが、アメリカVermont大学医学部のRichard E Pratley氏らが実施した無作為化試験で示された。近年、2型糖尿病ではインクレチン系をターゲットとした治療が重要とされ、主なインクレチンホルモンとしてGLP-1とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)が挙げられる。GLP-1受容体作動薬がGLP-1の薬理活性を増強するのに対し、DPP-4阻害薬は内因性のGLP-1とGIPの濃度を上昇させるという。Lancet誌2010年4月24日号掲載の報告。

新規アンドロゲン受容体アンタゴニスト、去勢抵抗性前立腺がんで高い抗腫瘍効果と耐用性を確認

男性ホルモン阻害薬が無効となった去勢抵抗性の前立腺がんに対し、新規化合物MDV3100が高い抗腫瘍効果を示し、耐用性も良好であることが、アメリカ・スローンケタリング記念がんセンターのHoward I Scher氏らが実施した第I/II相試験で示された。MDV3100はアンドロゲン受容体へのアンドロゲンの結合を遮断し、リガンド-受容体複合体の核移行やコアクチベーター動員を阻害するアンドロゲン受容体アンタゴニストで、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導し、アゴニストとしての活性は持たないという。去勢抵抗性前立腺がんはアンドロゲン-受容体シグナル伝達に依存して持続的に増殖するため、このシグナル伝達をターゲットとする新たな分子標的薬を用いた内分泌療法の開発が進められている。Lancet誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月15日号)掲載の報告。

壊死性膵炎患者、低侵襲ステップアップアプローチで標準法よりも転帰改善

壊死性膵炎の患者に対し、低侵襲のステップアップアプローチを行うことで、従来の標準治療とされる開腹膵壊死部摘除術よりも、転帰が改善したことが報告された。ユトレヒト大学病院Hjalmar C. van Santvoort氏らオランダ国内7つの大学病院、12の教育病院が参加したオランダ膵炎研究グループによる多施設共同研究による。NEJM誌2010年4月22日号掲載より。

心血管リスクを有する耐糖能異常患者への速効型インスリン分泌促進薬:NAVIGATOR研究

経口糖尿病薬の1つ、速効型インスリン分泌促進薬ナテグリニド(商品名:スターシス、ファスティック)について、心血管疾患あるいは心血管リスクを有する耐糖能異常患者の糖尿病発症や心血管イベントを抑制しないとの報告が、NAVIGATOR研究グループによって発表された。同種の研究はこれまで行われておらず、本報告は追跡期間約5年、9,300名余を対象とした2×2二重盲検無作為化臨床試験により明らかにされた。NEJM誌2010年4月22日号(オンライン版2010年3月14日号)掲載より。

妊娠中の新型H1N1インフルエンザ発症、死亡率5%と高率

妊娠中に2009年流行の新型インフルエンザ(H1N1)に感染し発症した場合、死亡率は5%と高率であることがわかった。また、発症後2日以内に抗インフルエンザウイルス薬の服用を開始することで、入院リスクや死亡リスクは大幅に減少することも明らかになった。米国疾病対策センター(CDC)のAlicia M. Siston氏らが、妊娠中に新型インフルエンザを発症した800人弱について追跡し、明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。

砂糖など添加甘味料の摂取が多いと脂質代謝異常リスク増加

砂糖など、カロリーのある甘味料の摂取量が多いと、高比重リポ蛋白コレステロール(HDL-C)値が低くなったり、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値が高くなるなど、脂質代謝異常リスクが増加する傾向があるようだ。米国Emory大学のJean A. Welsh氏らが、6000人超の米国の成人を対象に行った調査で明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月21日号で発表した。添加甘味料と脂質値についての研究は、これが初めてという。

降圧薬+スタチンの降圧効果:PHYLLIS試験の2次解析

スタチンは、血清コレステロールの低減、また特異的(多面的)と思われる保護作用で心血管予防に寄与する。一方でいくつかの試験で、降圧効果も発揮するとの報告があるが、付加的防御機構として公表するには、試験に方法論的な限界があるともされている。そこでイタリア・Milano-Bicocca大学臨床・予防医学部門のGiuseppe Mancia氏ら研究グループは、以前に報告したスタチン併用による頸動脈の内膜-中膜厚の進行抑制を検討した試験PHYLLISから、24時間自由行動下血圧を基にした2次解析を行い、スタチンに付加的な降圧効果が認められるかを検討した。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月25日号)掲載より。

高血圧診断・管理には日中自由行動下血圧

軽度高血圧の診断に24時間自由行動下血圧が基準値とされているが、その治療や、あるいは中等度~重度の高血圧診断には用いられていない。オーストラリアのベーカーIDI心臓・糖尿病研究所のGeoffrey A Head氏らは、高血圧の診断と治療のための、年齢・性別24時間自由行動下血圧基準値作成を、診察室血圧値と検討しながら試みた。BMJ誌2010年4月17日号(オンライン版2010年4月14日号)掲載の報告。

酒類価格の下限設定や安売り制限が、アルコール飲料による健康被害を低減する

アルコール飲料の最低価格を設定する施策および割引制限は、アルコール飲料の消費を抑制し、健康被害や医療費の低減をもたらすことが、イギリスSheffield大学のRobin C Purshouse氏らによる調査で明らかとなった。近年、多くの国ではアルコール飲料による健康被害が社会に及ぼす影響への関心が高まっており、公衆衛生学的な介入の効果に注目が集まっている。アルコール飲料の価格を設定する施策がアルコールによる健康被害の抑制に有効なことは知られているが、医療費や健康関連QOLに対する効果を飲用の程度別に検討した試験はほとんどないという。Lancet誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月24日号)掲載の報告。

小児の非心原性の院外心停止、胸部圧迫に人工呼吸を併用する心肺蘇生が有効

院外で非心原性の原因で心停止をきたした子どもに対する処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来の心肺蘇生(CPR)は、胸部圧迫のみのCPRに比べ神経学的予後が良好な生存の可能性を高めることが、京都大学保健管理センターの北村哲久氏らが実施したコホート試験で明らかとなった。アメリカ心臓協会(AHA)は、成人の院外心停止例にはその場に居合わせた目撃者による胸部圧迫のみのCPRを推奨しているが、子どもはその限りでない。これは、成人の心停止は心原性の場合が多く、従来型CPRと胸部圧迫のみのCPRに生存率の差はなく、また胸部圧迫単独の方が簡便であるのに対し、小児の心停止は心原性よりも呼吸器疾患(窒息、溺水など)を原因とする場合が多く、動物実験では呼吸器疾患による心停止には人工呼吸併用CPRの方が予後が良好なことが示されているためだ。Lancet誌2010年4月17日号(オンライン版2010年3月3日号)掲載の報告。

PCI後の抗血小板併用療法の長期投与のリスクと有効性

現行の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)ガイドラインでは、患者の出血リスクが高くない場合は薬剤溶出ステント挿入後、クロピドグレル(商品名:プラビックス)75mg/日投与を用いた抗血小板併用療法を12ヵ月以上行うべきことを推奨している。しかしその勧告に関するエビデンス(リスクおよび有効性)は明らかでない。韓国・ウルサン大学校循環器科のSeung-Jung Park氏ら研究グループは韓国で行った2つの多施設共同無作為化試験からの結果、併用療法がアスピリン単独療法と比べてイベント抑制効果があるとは言えない結果が得られたと報告した。本論点に関する無作為化試験報告はこれが初めてという。NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)より。

心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも有効

持続性心房細動患者の心拍数コントロールは緩やかでも、厳格に行った場合と効果は同程度であることが確認された。コントロール達成も容易だった。オランダ・フローニンゲン大学循環器科のIsabelle C. Van Gelder氏らRACE II試験グループが、600名超を対象に行った多施設共同前向き無作為化試験で明らかにしたもので、NEJM誌2010年4月15日号(オンライン版2010年3月15日号)で発表している。心拍数コントロールは、心房細動治療の選択肢で、ガイドラインでは厳格に行うことを推奨しているが、臨床エビデンスはなかった。

無保険や医療費支払いに関する経済的不安で、急性心筋梗塞発症後のケアに遅れ

医療保険未加入者や、保険に加入はしているものの医療費支払いに関する経済的不安を抱える人は、急性心筋梗塞の発症後、病院に行くまでの時間が遅い傾向があることが明らかになったという。オランダTilburg大学医療・神経心理学のKim G. Smolderen氏らが、急性心筋梗塞で米国内24ヵ所の病院に来院した約3,700人について調べた結果で、JAMA誌2010年4月14日号で発表した。米国で医療保険に加入していない人は4,500万人超に上り、その他に約2,500万人は経済的不安から医療機関への受診を避けていることが報告されている。

新型インフル、住民の13.5%が抗体陽転、施設入所者・職員は1.2%に留まる:シンガポール

シンガポールでは、2009年の新型(H1N1)インフルエンザ流行後に抗体陽転が起こっていたのは、一般住民の13.5%に上っていたという。一方で、長期ケア施設入所者・職員の同割合は、1.2%と低かった。シンガポールTan Tock Seng病院のMark I. C. Chen氏らが、一般住民や軍人など異なる集団の抗体陽転率について調査を行い明らかにしたもので、JAMA誌2010年4月14日号で発表した。

rosiglitazoneの安全性に好意的な研究者と製薬会社との関係

2型糖尿病治療薬rosiglitazone(国内未承認)の安全性について好意的な見解を表明している研究者は、そうでない研究者に比べ製薬会社と金銭的な利益相反を有する傾向が強いことが、アメリカMayo Clinic内科学のAmy T Wang氏らの調査で明らかとなった。最近の透明性の向上を求める声にうながされて、利益相反の開示に関する指針のさらなる厳格化と、いっそうの普及が進められている。過去10年間に実施された様々な試験において、利益相反と製薬会社を支持する結論の関連が示されているという。BMJ誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月18日号)掲載の報告。

結腸・直腸がんをプライマリ・ケアで早期発見する方法とは?

 プライマリ・ケアにおける結腸・直腸がんの診断では、症状の組み合わせと便潜血検査(特に免疫化学に基づく検査法)によるアプローチが最も有望であることが、オランダVU大学医療センターのPetra Jellema氏らによるメタ解析で示された。結腸・直腸がんはヨーロッパで2番目に多いがんであり、5年生存率は早期がんの90%以上に対し進行がんでは10%以下であるため早期診断が重要とされる。腹部症状のある患者は通常プライマリ・ケア医を受診するので、早期診断におけるプライマリ・ケア医の役割は大きい。しかし、腹部症状自体は頻度が高い一方、1名のプライマリ・ケア医が結腸・直腸がんに遭遇する機会は年にわずか1例にすぎないことから、診断精度の高い簡便な検査法の開発が切望されている。BMJ誌2010年4月10日号(オンライン版2010年4月1日号)掲載の報告。

コ・トリモキサゾール予防投与、ARTを開始したHIV感染者の死亡率を低減

3剤併用抗レトロウイルス療法(ART)を開始したHIV感染者に対し、コ・トリモキサゾール[トリメトプリム・スルファメトキサゾール(ST)合剤、商品名:バクタ、バクトラミンなど]を予防的に投与すると、死亡率が有意に低下することが、イギリス医学研究評議会(MRC)臨床試験ユニットのA S Walker氏らの検討で明らかとなった。コ・トリモキサゾールは、医療資源が不足する環境で市中肺炎の予防および治療に使用される安価な抗生物質である。本薬剤を予防投与すると、未治療のアフリカ人HIV感染者の死亡率が低減することが示されているが、このベネフィットは併用ARTと同時に投与しても維持されるかについては不明であったという。Lancet誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月29日号)掲載の報告。

非小細胞肺がん、術後補助化学療法の有効性を確認:2つのメタ解析から

切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)に対して切除術後あるいは切除術+放射線療法後に補助化学療法を行うと、これを施行しない場合に比べ放射線療法の有無にかかわらず5年生存率が改善されることが、イギリス医学研究評議会(MRC)臨床試験ユニットのSarah Burdett氏らNSCLCメタ解析共同研究グループの検討で示された。毎年約150万人が肺がんを発症し、その約85%がNSCLCだが、治癒切除が可能なのは20~25%にすぎない。同研究グループの以前の検討ではシスプラチンベースの術後補助化学療法が生存期間を延長する傾向が示された(ハザード比:0.87、95%信頼区間:0.74~1.02、p=0.08)が、切除術+放射線療法後の補助化学療法の価値は明確ではないという。Lancet誌2010年4月10日号(オンライン版2010年3月24日号)掲載の報告。